情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 エピローグ 終了 / 最新
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
未亡人 アナスタシア に 10人が投票した。
青年 サーシャ に 1人が投票した。
陽気な女将 サンドラ に 1人が投票した。
未亡人 アナスタシア は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、写眞店店主 シュテファン が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、無頼な整体師 ミハイル、講師 ダニール、永遠の旅人 エーテル、沈黙の カチューシャ、青年 サーシャ、落胤 ロラン、放蕩息子 ベルナルト、医者の娘 ナタリー、陽気な女将 サンドラ、賭博師 ユーリー の 10 名。
抵抗はしてもらったほうがいいな。
ヤリ甲斐があるってもんだ。
[ロランの言葉にはそう返す。
ただ、泣くのだろう?には、眉を寄せて、目をそらす。]
うるせぇな。
もう、ねぇよ。
ただの食い物だ。
[ただ、嗤いは消えて……。]
[...は様子のおかしかったアナスタシアの後を追い、食堂車を出た。
デッキに差し掛かるとそこには強く、冷たく吹きすさぶ、北の風。ほのかに白いものがちらついて見えるのは、風花だろうか。そして、目に暗い夜空とそこに瞬く星の光が飛び込んできた。]
え…?
[ありえない光景に動きが止まる。ドアが勝手に開くはずもない。
イヤな予感が走った。
転がり落ちないようにドアの取っ手にしがみつきながらも既に走ってきた後方を見るが、そこは闇の渦の中で、何も見えなかった]
― とある個室 ―
とにかく、お前はオレの獲物だ。
つまりは、オレの前にいなけりゃ、お前は死なないかもな。
[そして、行けよ、と顎で促す。]
大事なサーシャを見に行くといい。
ああ、まだ、殺されてはないだろうさ。
[そして、その個室の椅子にかけると、煙草をまた咥えて…煙を吐き出す。]
――……ああ、雪だな。
[呟いた。]
[視線の先には、脱出扉と車体のわずかな隙間に挟みこんで巻き込まれ、ちぎられたように見える黒い布。それはアナスタシアの着ていたものの布地に違いなかった]
誰かっ!
誰かきてーっ!!
飛び降りだよっ!!
・・・わぁああっ!!
[大きく車体がゆれ、危うく開いたままのドアから外に飛び出しそうになる]
[這うように扉から離れたが、悲鳴を聞きつけた誰かに抱き起こされると、アナスタシアのことだけを伝えて、そのまま気絶をした**]
[シュテファンが望み、アナスタシアが持っていた物。
女の口から呪詛のように繰り返し唱えられた単語だ、察する事が出来ぬ程鈍くはない。しかし。]
分かんねーな……
[小さく呟くと、寝台にごろりと横になる。
旧いながらもそれなりの弾力に押し返されながら、サイドの装飾を指で弄ぶ。]
[物心付いた時には、ひとりだった。
当たり前に与えられる筈のものでさえ、与えられなかった。
一族よりも小さな単位、家族の定義を問われたとする。
血縁集団か、愛情で結ばれた集団か、それとも?
己は、その全てに首を傾げるのだろう。
「父親」という肩書きを持つ者は居た。
「母親」という肩書きを持つ者も居た。
「弟」という肩書きを持つ者は、殺した。
望むことすら無かったから、
全く持って、理解し難い感情だった。**]
[聞こえた叫び声に、反射的にミハイルを見やる、
取り繕うことをやめた男はどのような反応を示しただろう。
彼を頼るのは、お門違いというものか]
……何かあったのだろうか。
少し、見てくる。
[風花舞う美しい闇の先で、
投げ出された命があることなど知る由もないまま、
廊下に出れば、風に軋む扉の音に気づいて、眼差しを向ける]
[そして、シュテファンは毒気を抜かれたのか、アナスタシアを捕縛する事は無かった]
[掛ける言葉も掛けたい言葉も特に無く、それぞれに去って行く二人を見送る。
アナスタシアを自由にさせる事に不安を抱きはしたけれど、服の裾を引かれる感覚>>3:214に振り返り]
……あ、ああ。そうだね。
アナスタシアさんをどうするか……シャノアールさんの状況を確認してからでも遅くはない筈だ。
[シャノアールの霊は未だ視えない。
人狼に害されたのか、それともそれ以外の何かに害されたのか。それすら伝えようとはせず]
…………行こう。
[運良く行けば、身体の傍に留まっている彼女に会える事もあるかもしれない。
ポケットから一本きりの蝋燭を取り出し、食堂の隅にぽつんと置いてあった燭台を取り火を灯した]
>>5
何やってんだ。食われる前に行けよ。
[立ち止まる様子に声をかける。]
ああ、別に他の奴に狼がいるって騒いでもいいぞ。
否定しないし。
ただ、来た奴は食うけど。
[そのとき、遠くの悲鳴。
聴こえないはずがなかった。]
飛び降り……
自殺、か。
[伝えられたその言葉に己が腕を抱いた。
風花の闇に飛び込んだのだろう、誰かが酷く寒い気がして]
……君はここにいるのか?
どうせなら、騒いだりしないように
見張っていたらどうだ。
>>16
ここにいると思うか?
[ロランの言葉に、また嗤いを作った。]
――……殺しにいくさ。誰かをな。
ククク………。
[そして、出て行く奴にばいばい、と手を振る。]
人間を殺されたくないんなら……。
騒いでみたらどうだ?
それとも、お前が持ってるその火薬。
使うか?
[利く鼻はとっくに火器の存在など見抜いていて…。]
― 食堂車 → 一等車両内 ―
[小さな灯りを頼りに、食堂車から客車へと脚を踏み出す。
自分の居た二等車両に比べ、足裏に伝わる感触は少しだけ上質な物]
……足元、気をつけて。
[同行するナタリーの足元に灯りが届くように燭台を差し出しながら、注意を促す。
ふと、彼女は怖くないのだろうかと思った]
[一人は怖い。暗がりから何かが――奴等が襲って来やしないかと不安だ。
二人なら、どちらか一方が襲われれば、自動的にもう一方が怪しまれる。だからこそ、お互いへの牽制にもなる]
[けれど、襲われてしまえばそこで仕舞いだ。
奴等に人間が単独で敵うとは、とても思えない]
[自分は、怖くないのだろうかと思う。
……問うまでもない、怖い]
[ただ、正直なところ。
怖いのは、独りで居ること。この列車に居るという人狼を、みすみす外に送ってしまうこと]
[ここには護りたい者も居ない。自分を望む者も居ない。
だから誰が死のうと、怯える気持ちの裏の、奥の方ではどうでもいいと感じている]
[その筈なのに。
蝋燭の小さな灯りを通して覗き込んだ裏に視得たのは、全くの他人の姿。
色読めない瞳のサーシャの笑顔と。大切にしていた息子と、それに重なるように映るユーリーの像]
…………。
ここ、だろうか?
[詮無い思考を脚と共に止めると、炎が揺らぎ扉を照らす。
各人の部屋割りなどは知らないから、行き当たった部屋を片端から確認する心積もりでナタリーに形ばかりの問い掛けをする]
― 一等者・シュテファンの個室 ―
[暗い室内は、とても静かだった]
[生きた人の気配の無い、寒々しい静けさ。
倒れ臥した男の周りには、彼の愛機が無残に砕かれ討ち捨てられている]
…………ナタリーくん。
部屋を、間違えたようだ。
[小さな灯りに照らされた室内には、シャノアールは居ない。
代わりのように『在る』のは、生を失くしたシュテファンの肉体と、その傍らに立つ彼自身]
>>21
はぁ?
[ロランの言うことに怪訝な顔をする。]
お前、オレが怖くないのかよ。
オレはそんな銃は怖くないぞ?
[そして、手足が獣に変わっていく…。]
[彼は何も言わない。否、言えないのだろうか。
死後に生者へ伝える声すらも奪われるのか、人狼に襲われ亡くなった者は、何事も訴えて来ることはない]
[彼の胸に深く突き刺さったナイフが、蝋燭の光を紅く照り返す。
そのナイフが、シャノアールの胸に突き立てられていた物と同一だとは、己には知り得ないこと]
………………っ。
[血の臭いに、口元を覆う。
象牙の意匠の施された刃は深く刺さったままだというのに出血が激しいのか、辺りに血の臭いが立ち込めていた]
>>25
はぁ?
[嗤うと痛いと、胸が…そんなことを言い出す目の前の細い女に、顔を顰める。]
何言ってる。
そうか、閉じ込められて暮らした反動がそれか?
おめでたすぎるな…。
[そして、ふうっと息を吐くと、みるみるその身体は黒毛に包まれていく。
目の前の女は見ることになるだろう。まさに人狼という存在を。
眼は黒から紅く光る石になり、爪はそこらの刃物よりも鋭く。
牙からは唾液が滴る。
もちろん、ロランよりもはるかに巨大なそれ…。]
――……グルルルル
[言葉を発さない獣は、その前に立ちはだかった。**]
[嘲るような言葉に、きつく口唇を引き結ぶ。
彼の言っていることは的確なのかもしれない、けれど]
……何が悪い。
君のせいで痛いのなんて、私の勝手だ…!
[無茶苦茶なことを言った。
その間にも、彼の獣への変化は全身に及んでいく、針の様に煌く黒檀の毛並みと紅玉の眸。サーシャの高揚した声を思い出す、この力ある獣には確かに狂気を誘う何かが、ある。
力ある者の象徴のような鋭い爪と牙の輝きに、気おされる。威嚇の唸りに、見開いた瞳は、その紅を瞳孔に映しだした]
ミハイル――……
私を喰らう気に、なったのか?
[言葉を発さぬ獣に問いかけながら、
その身は小さく後ずさる、恐れと畏怖と――けれどやはり、痛みをもたらすものは消えず、残って]
[ロランとミハイル。言葉を交わした数の多い二人が去ってしまえば、食堂車は急にその空気を変える。
よそよそしく。広く。ぎゅうぎゅうの。ざわざわ。ぞわぞわ。]
……。
[いつも感じていたもの。何を言っているかがわからなくて、何を求められているのかがわからなくて。
空想に逃げればより一層遠くなるし、膜で隔てられているような気がするのに、突き刺さる痛みだけが通り抜けてくる。]
……食べられたら、死んじゃうけど、食べてもらえる。
[答え損ねた、ミハイルの問い>>3:99の答え。小さく呟いて、彼の唇の動きを思い出そうとする。
『いい子だな』と言ってくれた低い声。舞い上がるような幸福を呼び覚ますはずの……人狼の声。
けれどそれは、回想の中でさえ、ロランの悲痛な声にかき消された。]
……なんでかな。
[彼が人狼だと、確信が持てていないから?
理屈をつけてみる。うまくいかない。狂った感覚が、彼を狼だと告げている。]
わかんない。……わかんない。
[ぶつぶつと小さなつぶやき。自分の中に完全に入り込んでしまって、周囲の騒ぎには気がつかない。
アナスタシアが出て行ったことも。ユーリーが愛を語っていることも。
……ましてや、別の部屋で、ロランが危険にさらされていることなど、気づけるはずもなく。]
がたん、ごとん。がたぁん、がたぁん……
[揺れる列車の音をいつしかなぞり始める、その瞳の焦点はどこにもあわないまま。**]
−シュテファンの個室前−
[ダニールが扉を開けた途端、血の臭いが鼻についた。
けれど、彼は、部屋を間違えたというー。>>22
背中ごしに覗き込むと、血を流し横たわっていたのは。]
あぁ、シュテファンさん…。
[彼が食堂車を出ていったのはつい先ほどのことだったのに。
きっと彼もまた温かいのだろう。
口元を手で覆いつつ、もう一方の手で、 ダニールの背に触れた。
その手は小刻みに震えていて、恐怖のためか寒さのためかひんやりとしていた。
胸元に深々と突き立てられているナイフ。
シャノアールの死体に刺さっていたものと同じだということは、
彼女もまた気づかなかった。]
― どこかの個室(おそらくは二等車両 ―
>>27
[獣は唸り声をあげる。
大きいが、確かに獣である足は、ゆっくりとロランのほうに歩み寄る。
人の姿でもラビの首を片手でへし折ったその力は、人狼化すればその倍にもなっただろう。
だが、もちろん、不死身なわけではない。
シャノアールが言ったように……攻撃されれば、普通に傷つき、死ぬ存在。
同時にそれは小さいといえども、火器は最大の武器でもある。]
誰がこんな…?
[行動を共にしているダニールも答えようがない問いを口にする。
もしかしたら人狼の仕業だと聞かされるかもしれないが。]
あ…他の人にも知らせないと…。
[そう口にしたものの、すぐには体は動かなかった*]
[しかし、それでも相手は柔肌のか細い女。
それがわかっていたのに、
獣はその前まで歩み寄ったあと、ロランの細い身体に軽くぶつかると、横に押し退けた。
おそらく彼女には絶体絶命な気がしたかもしれないが…。]
グルルルル……
[そして、ロランを押し退けた獣は、そのまま、二等車両の廊下に出ると、]
――…… !!
[明らかに獣がいるという遠吠えをした。
それはきっと、人狼事件を経験したものには、その恐怖を呼び起こさせるのに十分な声だっただろう。]
[その獣は遠吠えのあと、ピタリ止まると、何かを探すように……。
そして、その匂いが前方から、一等車両あたりから流れてくるのを感じ取れば、そちらに駆け出していく…。]
ガルルルルル……
[まずは、食堂車にその姿を見せた。]
[びくり。
聞こえてくるうなり声に、かつての記憶がよみがえります。
そして知らず、体がふるふると震えだしました。
落ち着け、落ち着けと、荷物入れの中にその小さな身体を押し込め、隠れようとします。
おとうさんも、おかあさんも、おにいさんも、おねえさんも、みんな人狼に殺されてしまいました。次こそは、少女の番なのでしょうか?]
― 食堂車 ―
[そこには誰がいただろうか。
やはり一番に目についたのは、ただ、亡と座るサーシャだっただろう。
その横を黒光りする獣が歩いていく。
おそらく、イヴァンの死体のところにまず向かうと、その匂いを嗅ぐ…。
だが、毒にやられたものとわかったのか、顔を背けた。
そして、新たな血の匂いはどこだとサーシャに近づいていく…。
その左手首から、新鮮な鉄の匂いを感じたのかもしれない。]
[獣が――ミハイルが近づいてくる、
彼自身が言葉を発さなくとも、こちらの言葉は通じているものと思って。ただ問いの返答を待つように、火器に触れる手は動かぬまま、ただその爪と牙と、紅い眸を注視していた]
――……ッ、あ
[けれど、その凶器は動かない。
扉を塞ごうとする体が弾かれれば、ただ退けられただけで、体には痛みも熱も何も伝わってはこなかった。慌てて戸口を振り返れば、存在を知らしめるような遠吠え]
ミハイル……!
[人の集まるほうに駆け出していく、その後を追う。]
[――喰わせたくない。
思いは酷く独善的で自己満足だ。
人も獣も、食わなければ生きられないだろうに。]
“でも喰いたいと思ったらどうするんだ?”
その問いに苦痛を見出したのは、思い込みか願望だろうか
わからないけれど、そう感じたのなら、思ったのなら]
……ああ、
止めれば、いいのか。
―食堂車―
[息を切らせて食堂車にたどり着く、
その場は獣の来襲にどのような状態だっただろう、サーシャへと近寄る姿に駆ける。とりあえず止めなければと咄嗟に取った行動は――]
やめて…!
[獣の腕に掴みかかること、
先ほどのように簡単に弾かれるだろうことは頭になくて]
― 食堂車 ―
[サーシャの様子はどうだったろうか。
左手首ににじむ血の匂いに、獣はだらだらと涎を流す。
そのとき、声をあげてその前脚を掴んでくるロランに気がつくだろう。
避けるまでもなく、黒い毛皮に白く細い指が埋もれるが、その脚はビクともしない。]
ウルセェ……。
ウルセェ……。
[獣とも人とも区別のつかない、空気交じりの引く声がその喉から漏れる。]
―食堂車―
[柔い掌が、針のような毛を掴めばそれだけで痛みが走った。
力を込めて引っ張っても、痛いだけでどうにもならない、少し掌は傷ついたかもしれなかった]
――……、……
[声のようなものが聞こえれば、
咄嗟に名前を呼びそうになって押し黙る。
皆にも彼だと気づかれるのは、時間の問題だと思ったけれど]
……君の獲物は私ではないのか。
[小さく低く囁けば、鼓膜を揺るがす咆哮。
思わず、腕は離れて身を竦める]
[威嚇すると、ロランの手が離れる。
その手が少し切れたのか、血の匂い。
獲物は私ではないか、というロランにちらと視線は向けただろう。
だが、首を振ると、サーシャからも離れ、また前車両のほうに脚を進め始めた。
そう、そこにある、シュテファンの遺体。
それが今食うのに一番最適な、
死んだばかりの新鮮な肉。]
クワセロ……。
[不気味な声をあげて、獣はそちらに向かっていく。**]
[元来、別の狼に仕えるべき狂人の悩みなど。
初めて出来た、人間の友人に心惹かれる悩みなど。
──狼の咆哮は、瞬時にかき消した。はずだった。]
狼様っ!?
[はじかれたように顔を上げる。同時に駆けだしていいはずの体は何故か動かない。
一瞬の逡巡。その間に、獣は食堂車へと姿を見せる。]
ぁ……あ……あ……!!
[……今度こそ吹き飛んだ躊躇。自然に、椅子を降り跪く形になる。
なんと気高い姿だろう。なんと美しい姿だろう。なんと恐ろしい姿だろう。
──逃げ出したくなる本能的な恐怖をねじふせる。そのことにすら、脳が焼き切れそうな昂揚を感じる。]
狼様……。
[褥で囁かれるかのような、うっとりとした声。
その爪で切り裂かれたならば、腹や喉に溜まるどろどろした感情も、ぼんやりとした苛立ちも全てぶちまけられるのだろう。
その牙に貫かれたならば、この迷いも一瞬で砕け散るのだろう。]
狼様……。
[黒くつややかな毛皮に、そっと手のひらを埋める。]
……ぁ
[そうすれば手首の傷に鼻先を近づけられて、胸がちくりと痛んだ。
──狼が村を旅立ったとき、自分でつけた傷。それがこの黒い狼の前では、ひどく恥ずかしいものに思えて。
けれでも彼の鼻先に押しつけるように腕の角度を変える。狼が望むならその通りに。狼のやりやすいように。そんな自然な反応。]
[姿に。息づかいに。毛皮の感触に。幸福を拾う脳は溶けてしまいそうだ。]
ろらん。
[友人が駆けてくる。その必死な姿と対照的に、とても、とても幸せそうに笑った。]
おーかみさま、いたよ。あいにきてくれた。
[ぎゅう、と、硬い毛に頬を押しつける。]
……しんじゃったかも、なんて、おもってごめんなさい。
でもね、おれ、がんばったよ。じゃまなひと、ちゃぁんと。
[後半は獣の声にかき消されたかも知れない。咆哮に、本能が体をびくり、震わせる。]
あ、……。
[離れていく獣。名残惜しげに指先に絡んだ毛を離す。
その姿がドアを完全にくぐり抜ける前に、ぱっと立ち上がった。
誰にも止められなければ、狼の後を追い、前車両のほうへと向かうだろう。
そして、そこで狼の食事を見ているのだ。オーロラに感動する子供のように、陶然とした瞳で。**]
[最後尾タラップ→前車両]
[シュテファンの肉を巨大な獣が貪る。ぴちゃ…ぴちゃ…という音が廊下にまで響く。…は、その部屋の前、廊下に煙の様に立っている]
衝動に突き動かされた…獣。
貴方は…何を求めているの?
…何の為に生きているの?
[…の瞳に恐れの色は無く…ただただ、憐れみに満ちている。
すっと、懐から一枚のカードを出す。カードは「死神」の逆位置…意味は「孤立」「孤独」…]
[サーシャが蕩けたような表情でわらう、零れる苦い呟き]
……ちがう、
[否定したかったのは何だったのか、
彼が“狼様”であるという事実だろうか。
あるいは彼が獣であることを喜ばしいこととするサーシャの言葉か。
きっと両方だと、気づいて]
私は彼に、人間であってほしいんだ……。
[恐れよりも先立つ痛みは、
語りかけようと零れる言葉は、ただそう望んでいるから]
[発した言葉にミハイルの紅い眸が己を向く]
――……、
[首を振る仕草、それは否定にも何かに抗うようにも見え、
追い詰めたのは自分の言葉と行動かと後悔が過ぎる。
けれど、言葉は届いている。追わぬ理由はない。
掌をコートで拭えば、かすかに赤い線が付いた]
待って――…、
[うなりに混ざる言葉が、聞こえた。
人を襲うなら止めたくて、急いた足でその後を追う*]
[一度目の咆哮。忘れもしない、あれは狼の。つまり、車内に混じる狼の…]
!
[眠気等一気に吹き飛んだ。身を起こし、声の方向を見遣る]
…エーテル……は?
[列車の最後尾に向かったはずの彼女の身が心配になった]
[部屋から飛び出そうとして、思い止まる。ドアノブに手を伸ばせば、右手の甲に残る忌ま忌ましい爪痕が視界に入る]
……。
[やはりこの傷は、極力隠して置きたかった。振り返り見回すと、手袋はベットの上に無造作に置かれていた]
ああ、そのほうがいいだろう。
シャノアールさんの部屋を確認したら、食堂に――
[予定外の出来事が起こってしまったけれど、当初の目的は果たされていない。
だからそれを為してからと口に仕掛けた己の瞳に、女の影が映る]
――――……アナスタシア、さん。
[つい先刻、食堂から去る背を見送った長い髪の婦人。
思い詰めたようにも見えるその姿は――既に生を持たず。
ただ、己はヒトだと、其れだけを伝えてくる]
[覆ったままの唇から漏れる呟きをナタリーが拾う事があれば、「アナスタシアさんも亡くなったようだ」と事実のみを告げる。
――その刹那、列車内に獣の咆哮>>36が響き渡った]
― 一等車両 ―
[そこに見つけるのは、殺されてほどないだろう写真屋の男の亡骸。
獣はその亡骸を前足で押さえると、その腕に牙をたて、ばきりばきりと肩からその腕をへし折り引き千切った。
そしてその腕をそのまま場牙帰途噛み砕き、それが二つに割れて落ちると、今度はアバラの下、腹に食いつき、ぐちゅぐちゅと肉を噛み千切る。
そこに飛ぶのは、血飛沫と肉片。
人がただの肉塊になっていく様子。]
[隣の部屋から、何やら恐ろしい音が聞こえて来ます。
果たしてあれは、こっちまでやって来るのでしょうか?そうなったらおしまいです。
それとも、誰かが都合のいいヒーローが何とかしてくれるのでしょうか?あるいは隣だけで満足し、どこか遠くへいくのでしょうか?
少女は小さく丸まって、荷物入れの中に隠れています。己の身に似た、白い羊を抱きしめながら。]
[そして、あらかたシュテファンの食えそうな部分は食しただろう。
それを追いかけてきたロランやサーシャはどんな顔で眺めていたのか。
だが、獣はそれだけでは飽き足らず、また匂いを嗅ぐ…。
それは、やわらかく、甘くて瑞々しい子どもの香り…。]
[隣の部屋が騒がしいです。
悲鳴や怒号が聞こえてくる気がします。
誰かが昔いっていました。人間が力を合わせれば、人狼だって倒せるのだと。
今聞こえてくるのはうなり声や何かが折れる音、ぐちゃぐちゃりとした粘り気のある不快な水音、悲鳴、うなり声…。
果たしてあれに対し、本当に人間は勝てるのでしょうか。やっぱり人間は、エサに過ぎないのしょうか。ふるふると体育座りで震えながら、少女は耳を澄ませています。]
[獣は今は食うことに集中していた。
そして、そのまま、隣の部屋に移動しようとする。
それは、多少の制止や叫びでは止まらないだろう。
今はまともな声もまるで夢のような高揚感。
おそらくは何かしらの武器を持って攻撃しない限り…人間の部分は、どんどんと獣の本能に埋もれていく。]
― 一等車両 ―
[それが最初から“死んでいた”ことなど、知らない。
辿りつけば、既にその食事は始まっていて、
悲鳴の一つもなかったことがおかしい、と気づけなかった]
――……ッ、
[亡骸が肉塊に、――ただのモノになってゆく。
跳ね上がる血飛沫も吐き気を催すような血臭も、感じているのに遠い。歩みを進めれば、靴底の粘ついた感触、ぴちゃり、跳ねて白に赤の彩がまた、増える。]
何故私を襲わない。
[こぼれた呟きに問う意図はなく。
ただ、その手はコートの下の火器に触れて]
[クローゼットの中には、新鮮な少女が震えながら潜んでいます。
果たしてそれは、床に横たわっているおねーさんと比べてどちらが美味しそうでしょうか?
少女に出来ることはただ、震えながら待つことだけです。]
― 一等車両 ―
[小傷の目立つ金の懐中時計を、無造作に投げ上げては片手で受け止めた。ぱし、という乾いた音が室内に響く。]
形見とか言われたって、顔知らねーし。
遺すんならもっとマシなもん遺せってんだ、ったく。
………
[否、屋敷にはもうこの懐中時計しか残されていないのだろう。殆どが処分されたようだと、部屋付きの使用人が語った。
母親――事故で死んだ継母ではなく、生みの母――の持ち物だというそれは、一度とて止まることなく二十数年もの時を刻み続けている。]
― 一等車両・カチューシャのいる部屋 ―
[そして、カチューシャの匂いを辿り、その部屋に獣は入る。
すぐにクローゼットに寄ると爪をその戸にがりりと立てた。]
ガオオオンッ……グルルルル
[クローゼットを揺らしはじめる。
それは明らかな目的のある行為。
少女を襲うという……。]
………何だ?
[はるか遠く、女性の悲鳴。また誰かが死んだのか。
次いで聞こえた獣の咆哮には、扉の向こうを透かし見るように瞳を細め眉根を寄せる。寝台から半身を起こした。]
あーあ。やっぱな…。
案内人一人を喰らっただけであいつらが満足するわきゃない、か。
[近くの廊下に人の集まる気配。
恐怖に慄いたような、悲痛な叫び。
部屋の扉を背に、喧騒の方向へとゆっくりと歩を進めて行く]
っ…。
[目尻に涙を浮かべ、ふるふると。
もしかしたら、昔のことを思い出しているのかも知れません。
まだ、誰も彼もが生きていて。
しあわせで。
そんな、おとぎばなしのようなむかしむかしの話を。
まるで、走馬燈のように。]
[ちょうど、クローゼットの扉が破れた時だった。
カチューシャの鳴き声が見えた時、
その行為に、追いかけてきたロランの銃が火を噴く。
轟音とともにそれは客室の壁に刺さるだろう。]
――………グルルル
[明らかな敵意の攻撃に獣は動きを止め、振り返る。]
― 一等車両 ―
[血と肉に、酔ったような唸りと煌々とした紅い眸、
黒い毛並みから“獲物”の体液を滴らせながら、獣が動く。
それは わるいゆめ のように絶望的で]
……ミハイル、ッ…
[押し殺す小さな呟きは掠れる、
それを聞き取れた者がいたかどうかはわからない。
火器は、比較的小さなものだったけれど、それでも柔らかな手に余る。
陶然とその光景を見つめていたサーシャが視界に入れば、黒い瞳は一層悲痛に歪んだけれど。両手に鈍い輝きを手に、彼の後を追う]
[黒い獣がクローゼットを揺らしている、
動きは激しいわけではないのに、狙いは上手く定まらない。
銃の扱いに慣れているわけではないのだ、その中に誰かがいるのだとしたら、]
――……ッ、
[トリガーを弾けば威嚇のような一撃、
細い身体は、反動を受け止めきれずに弾道がぶれた]
[黒くて大きい獣が、ミハイルと呼ばれるのをどこか他人事のように聞いています。
ミハイルおじさんと、ローラお兄さんは、とても仲が良さそうでした。
それなのに今は、武器を向けて。
とても悲しそうに。
訳もわからず、張り裂けそうになります。
一体自分は、どうなるのでしょうか。一体二人は、どうなるのでしょうか。少女はただ、黒い獣の赤い瞳をじっと見上げるだけです。]
[次射に備えて、ハンマーを起こす。
今度は、反動に備えてじりと脚の感覚を広げる。
照準を構えれば、その背後に少女の金色の髪が覗いた]
――はやく、逃げて。
[眼差しは振り返った獣の紅い眸を見据えたまま、
荒い呼吸に上下する肩とは裏腹に、
黒い瞳は哀しいほどにその静寂を取り戻していて]
ガオオオンッ!!
[銃に獣の怒りがあふれてくる。
カチューシャは逃げ出しただろうか。
歩みはロランのほうへ。
銃など怖くないとばかりに、あえて近づいていく。
紅い眼は、もう完全に化け物の領域。]
[獣が、シュテファンの身体を喰らう。筋肉をぶちぶちと千切り、鮮やかな内臓から血を溢れさせ。
血の臭いは部屋中に溢れかえり、呼吸のたび澱のように肺にたまる。人の身にそれが甘いはずもないのに。うっとりと獣を見つめている。だが。]
ろらん、やめて!
[ロランが持つ物に気づけば。彼を止めようと、慌て手を伸ばした。……弾の早さにかなうはずもないのに。]
っ! ロラン、やめて、お願い!
[倒れたロランを取り押さえようと。押し倒そうと。細い腕が伸ばされた。]
[はやく逃げて。
その言葉によろよろと立ち上がり、半分壊れたクローゼットの中からはい出します。
出口に向かい、とてとてと歩きだし、ぽけっと転んでしまいました。元より怪我をしていた膝をすりむいて、かさぶたが剥がれてとても痛そう。
こんな事態に、腰が抜けてしまったのでしょうか?それでも、全力で駆け出さないともっと痛いことになるのでしょうが。]
[照準を構えていれば、
唐突に横から伸ばされてくる腕に邪魔をされる]
――……サーシャ、 ッ、
[少しばかり、もみ合いのようになれば、
彼が怪我を負っているとはいえ、やはり男女の差はあっただろう。押されれば足元はぐらついて、けれど銃を手から離すわけにはいかない。]
君は…、――…ッ
君は、獣の悲しみを考えたことがあるか……!
[喰らわれることを願う彼へ、
そんな叫びは零れて、邪魔する腕を振り払おうと肘に力を込める]
[四つ足ではっていく姿は、イモムシよりも遅く。
人狼からしたら、まるで誘っているかのように見えるかも知れません。
当人からしたら、必死なのでしょうけれど。]
[シュテファンの部屋の方向に向かう。彼の部屋からは明らかな死の色が漂っていた。中を見ずとも、どのような状況であるのかは想像に難くない。
それよりも。]
な………!?
[乗客の隙間からシャノアールの部屋を覗き込むと、その双眸が見開かれる。
黒々とした獣が、部屋に居る。人間を喰らったばかりなのか、獣の毛から滴る血液は紅く、まだ新しいものに見えた。]
悲しみ……?
[わからない。獣と悲しみ、結びつかない言葉。
だって、狼はいつだって強くて。強大で。その爪に、その牙にかなうものなんていなくて。]
わかんない、わかんないわかんないやだっ!!
[どこから言葉に出来ていただろう。狼に褒めてもらいたいと、それだけで動く幼い精神は、ロランの言葉の理解を拒絶する。]
おおかみさまが、いたいの、やだ!!
[かろうじて出た対話らしき言葉は、そんな単純なもの。
振り払われようと、大きな声で怒鳴られようと、ただがむしゃらに銃へと手を伸ばす。]
[思いがけず旧知に会ったような感慨が浮かんだのは一瞬、この状況で、人狼の前で、無防備な背を晒す少女を見れば顔色を変え何を思う間も無く中に走りこんだ。]
カチューシャ!!!
[近づく黒い獣と少女の間に、割って入るかのように立ちはだかる。]
……っ、何してる!
早く逃げろ。入り口だ!
[攫い上げるには遅かった。
少女を背に庇い、素早く視線で扉を示した。]
なら、邪魔をするな…!
[狼様がいたいのは嫌だ、その言葉にきつく声を上げて。
それでも眼差しはただ、獣の動きだけを見据える。]
……ッ、
[がむしゃらに伸ばさる腕に、手を引っかかれながら、
銃だけは奪われぬように、抱き込むように庇う]
[少女は、ずりずりと這いずっていきます。
いつの間にか、羊さんをつけてない方の腕の包帯からは、赤い血が滲んでいました。
かたつむりのような速度でゆっくりと進んでいくのですが…べちゃり。おねーさんの血で滑ったのか、崩れ落ちるよう潰れてしまいます。]
>>81
グガァアアアアッ
[ベルナルトがカチューシャとの間に立ちふさがる。
獣は、それでも戸惑うことなく、その前脚を伸ばした。
それはベルナルトの背に伸ばされる。]
[獣と少女と間に立ちはだかる影が見えた、
距離が近すぎる、その巨大な爪が振り上げられた。
銃を抱き込んだまま、身を沈めて転がるように駆ける。]
だめだ……ッ、
[不思議と“彼”を撃つことには、躊躇いがなかった。
ずっと こんなにも 痛いのに。
凍れる水面のように、心は漣だつことすらなく]
―――……、ッ
[青年に向かうその黒い大きな背に向けて、
白い指はただ、トリガーを引いた。
急所を狙うほどの技量も狙いもあるはずもない、放たれた弾丸の行方を見ることなく、転がる勢いのまま床に倒れて]
>>85
――……ギャウンッ
[ベルナルトに爪がかかったか否か。
その刹那、轟音とともにその背中に弾丸が命中する。
小さいが、確かに凶器のそれは、獣の中に突き刺さり、その体内で止まった。]
――…・・・グ……ガァアアアア
[獣は動きを止め、その背から、自らの赤黒い血を噴出しはじめる。]
やだやだやだやだぁっ!!
[すでに狼の方も、カチューシャの方も、見ていなかった。ただただロランの銃を奪おうとする動き。]
あっ!
[胸元の傷の痛みに、一瞬腕が引き攣る。その隙を見逃さず、ロランが抜け出す。]
ロラン!!
[銃が構えられるのが見えた。手を伸ばす。引き金に駆けられた指。とっさの思考はとても単純。]
う、あ、あ……
[銃の前に体を投げ出した。けれどそれは腕をかすめただけ。血は流れても、威力は殺せず。
……獣の、悲鳴が聞こえた。]
[大きな獣の体越し、サーシャとロランが視界に入る。
獣を前に揉み合いをしているのはどういうことだろうか。状況を把握しかね、奥歯を噛み締める。
開いたクローゼット。壁に残るのは、弾痕――?]
――――っ!
[振り上げられた人狼の前脚、身を翻し押さえ込もうと咄嗟に腕を前へと伸ばす。
力が適う筈もない。まともに受けるのは愚策だ。
しかし避ければその爪はカチューシャを容赦なく襲うだろう。]
[獣の爪が肩を貫くとほぼ同時か。
正面から、白い閃光が迸るのを見た。]
……おーかみ、さま?
[苦しそうな声。吹き出す血。何が起こったのか……理解はゆっくりと。]
う……ああああああああああああああああああああ!!!!!!
[たたきつけるような叫び。倒れたロランに駆け寄り、その真っ白な首に手をかけた。]
ぐ……
[そして、獣化が微かに解ける。
もちろん、完全ではなく、上身のみ、顔も獣と人の間のような姿になっていく。]
……おま……え……
[その背からはやはり血が流れるが、弾丸は貫通しておらず、身体の中の鉛に眼が赤に黒に点滅した。]
――……ぐ……
[そして、一転後ずさると、窓まで背を向け、肘でその窓を割った。
とたん、吹き込む、夜の冷たい雪と風…。]
−回想つづき−
え、どうして…?
[呆然と咆哮が聞こえた先を見つめた。杳として様子が知れないが。
2度目の咆哮が届いた頃、]
あ、こっちに来る…!?
[まだ傍にいればダニール、そしてシュテファンの遺体に視線を向けた。
表情は強張らせたままー*]
[そして、一気に車内に入り込む雪と風、
それは瞬時、そこにいる面々の視界を真っ白に染めるだろう。
その強風が収まった時、
そこに獣の姿はなかった。*]
――……ミハイ ル……
[指先はトリガーに引っかかったまま、
凍ったように動かない、ずるずると肘をついて立ち上がれば、彼へと伸ばした片手が落ちる]
………ッ、
[咄嗟のことに何が起きたのかもわからぬまま。
訪れた窒息感、喘ごうにも呼吸は塞がれて、
ただ苦しげに眉根を寄せる]
[振り返り、呆然とその光景を見ていました。
身を挺して自分をかばってくれたべるにーさん。
必死に止めようとした、ローラお兄さん。
銃を奪おうとする、こわいおにーさん。
そして、窓から落ちようとしている…ミハイルおじさんを。
少女はただ、見つめていました。]
[誰も、その列車を外から見るものはいないだろうが、
その車体の上に、黒い影が張り付いている。
それは蠢いて、列車の上を這いずりながら移動していく…。**]
[意識を霞んでゆくのを感じていれば、
ふと、涼しげな風、冷気は何故か心地よく]
――…… 、
[口唇が何か言葉を発するように動いたけれど、
当然、それは淡い音にもならなかった]
なんで、なんで……!!
[泣く寸前のような、喉にひっかかった声。]
おおかみさま、なのに。
……ミハイル、なのに……!!
[つい先刻まで、よく話していた相手なのに。
腕に力を込めようとするけれど、かすめた弾丸と開いた傷のせいでまったく力は入らずに。
……その二つを言い訳にしていたのかも知れないけれど。]
ぐ、う……ッ、
[激しい痛みに息が止まる。
骨が砕かれるような衝撃、肉の裂ける嫌な感触。
血が噴き出し、体が僅かに前に傾いだ。]
………は………
[獣の動きが止まった。ぼんやりと霞がかかったような瞳で、赤色の点々と散る床に視線を落とす。
銃弾が狼に傷を負わせたこと、獣化の僅かに解けたその顔が誰の物だったのかも、真っ白に歪む意識の中では気づくことが出来たかどうか―――]
[割れた窓から、冷たい風が吹き込んできます。
血と硝煙と冷たさで満たされた部屋の中で、自分を守ってくれたお兄さんと、自分を殺す手伝いをしようとしたおにーさんが争っていました。
少女は縋るよう、助けを求めるように、べるおにーさんの方を見上げます。]
[サーシャが何か叫んでいる。
ロランの首に手が掛かる。
カチューシャは逃げ出せただろうか。
あの獣の名は―――
どれも確かめることの出来ぬまま床に頽れ、意識を手放した。*]
[けれども誰も助けてくれません。
元よりヒーローなんてものがこの世に存在しているなら、少女の家族は誰も死なずにすんだのですから。
ヒーローは、どこにもいません。
だから少女はよろよろと立ち上がり、ぽてりと羊さんを取り落とし、両手で部屋に備え付けられた水差しを持ち上げ、そして…]
[こわいこわい、サーシャおにーさんの頭めがけて、思い切りそれを振り下ろしました。
がちゃんと、陶器の割れる音が響きます。
非力な少女にだって、出来ることはあるんです。]
あ……。
[吹き込んできた冷気に、髪を乱され、視界が奪われる。
何があったのかと振り返れば……狼の姿は、ない。]
……え?
[落ちてしまったのかと、誰かが言ったか。大きな獣の圧迫感が無くなれば、部屋は、妙に広く。悪い夢の後のよう。]
……ぁ
[ロランの首に手をかけていることに気づき、顔が、一気に蒼白になる。]
ろらん、ねぇ、ろらん?
[真っ白な首に残った赤い指の痕。それが怖くて……ロランの肩を揺さぶり続けた。]
[だから、青年は気づかない。少女が何をしているかなど。
……否、はじめから視界に入ってなどいなかったのかもしれない。
音。痛み。目の前の光。初めに感じたのはどれだったか。]
……いた、い。
[自分の気持ちも、今何が起こったのかも、なに一つわからなくて。
痛みだけを感じて……どさり。ロランに覆い被さるように、倒れ、意識を手放した。]
[冷気に意識が少し覚める、白さの残る視界に移る姿を捉えれば
赤黒く汚れた指先は、己の首を絞める手首を掴もうと力なく伸ばされて]
――……、
[彼もまた泣くのだろうか、
言っている言葉の意味にまで思考は回らないのに、
彼が泣きそうだ、ということだけはわかって、
泣かせるのは嫌だな、と思って
意識は途切れたのか、続いたのか、わからない。
どちらにしても、それは一瞬のようだった]
[ぜぃぜぃと。
少女は呼吸を整えながら、割れた水差しの取っ手を放り捨てます。
そしてローラお兄さんの身体をゆさゆさと揺さぶりました。心配するように、その瞳を覗き込みながら。]
[揺れる。揺れて。吸い込めば。
喉を冷たい空気が通りすぎていった]
――…ッ、ほ、けほッ
[急いた呼吸に咽て咳き込めば、振りかかっていた冷たい滴。
明瞭になった視界に映るのは少女の姿、そして覆いかぶさるような温かい重み。
2人を見比べるように、黒い瞳は動いて――
少女にむけて大丈夫、とでも言うように目元を緩ませた]
―――……、りがと う。
[狭まった喉は掠れて、上手く音を紡げなかった。
なるべく衝撃がないように、サーシャの身体を支えながら、その下から這い出る。落ちたマフラーは彼の体の下にあるので、とりあえずそのままに諦めた。
銃は再びコートの下に、仕舞いなおして。
伏したサーシャの髪を一度撫でて、立ち上がる]
………、
[窓は深い闇の外、雪は吸い込まれそうな白い渦、
床に赤黒い痕は転々と続いていたか
近づけば、窓枠の上に手を伸ばし触れてみる]
[少女は辺りを見回します。
おねーさんの死体。
今は気絶している、身を挺してかばってくれたべるおにーさん。
割れた窓と、割れた水差し。
折り重なるように倒れている、サーシャおにーさんとロランお兄さん。]
‐食堂車‐
[...は車内の騒動を余所に、一人悄然と佇む。]
孤独で寂しい獣よ。貴方の行く末を見て差し上げましょう。
{18月:正}{19太陽:逆}{13死神:逆}
[...は、タロットカードを取り出し3枚を捲る]
[状況を確認すると、ロランお兄さんの手に自分の手を重ねて、引き金が優しく指を離そうとします。
信じて。
そう言うかのように、こくんと一度頷いて。]
月の正位置…意味は…不安、不満、嘘、裏切り、水面下の陰謀
太陽の逆位置…争いになる
死神の逆位置…孤独…孤立
…寂しい獣よ…貴方は、不満や不安から闘い、争い、そして闘い争うほどに、孤独、孤立を深めていく。
なんという、寂しく悲しい因果の鎖。
貴方がこの定めから逃れる事はあるのかしら…
――……、
[少女の手が固まる指先に伸ばされる。
ハンマーに触れぬように、示唆しながら、その手を預ける。
追わなければ、と気は急いていたけれど]
[ローラお兄さんから黒くてごつく、少女の手には不似合いなそれを受け取ると。
少女は躊躇わずにそれをサーシャおにーさんへと向け、かちりと撃鉄を上げました。]
[その銃口が倒れたサーシャに向けられれば、息を飲んだ]
カチューシャ……!
だめだ、それを返して。
[撃鉄の挙げられた銃の危険性はわかっていながらも、咄嗟に手を伸ばす。よもや今度は銃を奪おうとする側になるとは予想できるはずもなく]
[それを予想していたかのように銃口をローラお兄さんの腹部へ向けると、二度連続して引き金を引きました。
乾いた音が連続して鳴り響き、腹部へと二発の弾丸が吸い込まれていきます。
それは少女には不似合いなほど、慣れた動作でした。]
う……
[小さなうめき声。青年が、まだ生きていることを示すもの。
ああ、自分は今何をしていたんだっけ。視界はぼやけ、揺らいだまま。思い出せない。思い出せない。]
あ……
[視線をかろうじて動かす。なんだか黒いものが見えて。まぁるいもの。穴の開いたもの。なんだか見覚えのあるもの。]
ぁあ……
[ロランに、謝らなきゃ。
そう思う。頭をかばうようにのろのろと、動かない手を動かした。]
[ロランは声を上げただろうか。なんだか全てがスローモーションに見えて。
まだ半分見えない視界。血が足りなくてしびれた腕。力の入らない足。……構うものか。カチューシャへと飛びかかる。]
殺してやる殺してやる殺してやるっ!!!!
[先ほどロランに向けたものとは比べものにならない、明確な殺意。ポケットのナイフを抜いた。]
[それが、果たして当たったのか、逸れたのか。
わからない内に身を翻し、羊さんを拾い上げ走っていきます。
部屋を出て、食堂車の方へと。
怖いおにーさんが追って来るので、躊躇わず、全速力で。]
[デコッキングレバーへと、咄嗟に伸ばした腕は間に合わない。けれど、撃鉄を起こすシングルアクションのリボルヴァーに、連続射撃は不可能だ。1発弾丸を撃てば、次発までに間が開く]
――……、ッ
[腹に打ち込まれた弾丸、衝撃に吹き飛ぶ体。
意識を失わなかったのは、何故だろう、くず折れながら足は外へ**]
[やがて、血臭を嗅ぎ付け現れた獣。
獣の唸りともヒトの言葉とも呼気ともとれる、不気味な音がその口元から零れている]
[先客の存在など歯牙にも掛けず、彼は倒れ臥したままのシュテファンへと向かう。
蝋燭の灯りが、やけにゆっくりと獣の口元を映し出し、死肉に沈む鋭い牙を照らし出す]
……や、やめろっ!
彼は――私たちは、君たちの餌などでは……!!
[静止の声を上げる。
けれど、それは間に合う筈も無く、そして間に合わせる為の覇気も足らず。
震える声は途中で途切れ、じりじりと後退する足元でぴちゃりと濡れた音が上がる]
[離れていた意識を引き戻したのは、何処か近くで起こった硝子の割れる音。>>92
それに続くようにして起こる何かが割れた音>>104、それに銃声]
[気付けば周囲には、元の通りナタリーと己の二人きり。
これが白昼夢の類であればとの想いは、変わり果てたシュテファンの姿が否定してくれる]
………………。
[血臭の満ちた部屋で、震える身体を叱咤し息を整える。
耳元で強く刻まれる鼓動に眩暈を起こしながらも、周囲へと視線を走らせて]
……すまない。
[腹の中を曝したままのシュテファンの遺体。
そこに半ば抜け掛けながらも、辛うじて留まっている刃に指を掛け、引き抜く。
彼の身は既に大量の血を失っているというのに、こぽりと血が溢れ出した]
[ぎゅう、と手にした凶器を握る。
鞘の無い剥き身の刀身は、紅く濡れている]
[紅に濡れた黒い獣。陶然とそれを見詰めるサーシャの瞳]
――止めないと。
[独りごち、扉へと向かう。
辺りを薄明るく照らす燭台は、遺体からナイフを引き抜く際に床に置いたまま]
[ナタリーが後に続こうと続くまいと、其れを気に掛ける事は無く。
既に嵐の去った隣室へ、そうと知らず向かう]
― 一等車両・シャノアールの個室 ―
[其処に残るのは、獣の爪痕と諍いの痕跡。
割られた窓からごうごうと吹き込む夜気と雪とが、冷たく頬を打つ]
[転々と廊下へと続く血の跡は、月明かりが途絶えた先まで続いているのだろうか]
…………誰かいるのか?
[最早無人と思えた室内に、人の気配がする。
灯りを持ってくれば良かったと早速後悔しながら、月明かりを頼りに気配を辿って]
ベルナルトくん?
……おい君、起きて、何があった!?
[気を失う青年>>102の姿に駆け寄り、肩を軽く揺する。
近くにシャノアールの遺体もあるのだろうけれど、やはり彼女の意思は視えないままだった]
― 列車外・屋根 ―
[身を休める。
と言っても、傷から出ている血が凍るのを待っていたか…。
強靭な身体は、身に鉛を持ったままだが、そのことが急速に命を脅かすことはなかった。]
グルルルル……
[そして、ゆっくりと動き出す。
最後尾までたどり着くと、そのタラップに降りた。
姿は、半狼といった感じで。]
― 最後尾から自室へ ―
[傷は一旦凍ったとはいえ、また自らの熱で溶ける。
ただ、噴出すほどではなく、ぽたりぽたりと背中から血を落としながら、自らの部屋に入った。
そして、クローゼットを開け、簡易な寝具を見つけると身に着けた。
そう、今は、人間としての割合が戻っている。]
っ……はぁ……はぁ……っ!
[息が切れる。ナイフを構え、少女を追いかける青年。……どちらが悪役か、誰が見たって一目瞭然。]
ろらんを、ろらんを!
[足の遅い青年。それに加え、全身の怪我。割れた頭。……追いつけない。倒れるのが先か、取り押さえられるのが先か。]
ろらん……!!
[視界が揺れる。走る少女の背に、ナイフを投げつけた。
……血のにじむ腕に、投擲用では無いナイフ。届くかはわからなかったけれど。]
―個室―
―――…ッ、
[惨劇の部屋から、遠くはない個室に逃げ込んで、
鍵をかけたところで少し気を失っていたらしかった。
焼けるような痛みで覚醒する、出血はそう多くない。
掠めた弾丸は臓器を傷つけてはいないようだ。
もっとも手当ても出来ずに放置したままでいれば、
どうなるかは明白だったけれど――]
―――………、
[朝まで持つか、持たないか。
時を待たずとも喰らいにやってくるものがあるか。
薄暗い室内と同じく、先は見えない]
………っ、
[彼方で呼ぶ声がする。身体を揺さぶる手で意識を引き戻せば、は、と大きく息を吸い込み、そして吐いた。
寒いのは、割られた窓から絶え間なく冷気が吹き込んでいる為だろうか。]
ダニール……か?
[未だ少し朦朧としているか。頭が重い。
呼びかける声の主に、顔だけを向けた。]
何が……ああ、
[言葉の意味を理解するまでに、少々の時間を要した。]
人狼がこの部屋で暴れてやがった。
カチューシャが人狼に襲われかけてて……後ろでロランとサーシャが何か揉めててな…縺れ合って倒れた所までは見たけど、そっちはどうなったか分かんねー。
どっちかが攻撃たのか、人狼が急に苦しみ始めて、窓が割れて………それで、…それで?
あー……
獣の爪受けちまったもんで、其処から先は…悪い、覚えてねー。獣は死んだか逃げたかしたんじゃないかと…窓から。
[茫漠とした意識、説明をしようとする言葉も断片的で要領を得ないものにしかならなかったが、倒れる直前に見た物をダニールに伝える。
そして、この部屋で見た者が消えている事に気づくと、表情を曇らせた。]
― 自室 ―
[ロランが撃たれたことはさすがに知らない。
ただ、ロランから撃たれたというのに、彼女のことを恨む気など微塵もないことに気がつく。
むしろ、撃たれて、今も流れる痛みが、確実に正気を保たせていた。]
――……ッ
[人狼としてではなく、人間としての意識が高まれば、顔は歪んだ。]
[そのとき、声が聞こえる。>>131]
は?
[それはサーシャの声で、呼ぶ名はロランだった。
その声色に、ロランに何かが起きたこと、容易に想像できる。]
――……ち
[動けば傷からは流れ落ちる血。
だが、身体は立ち上がり、廊下に出る。]
――……
[声のする方向へ。
ロランの匂いを探して、二本の脚で歩き出す。]
―個室―
[止まない後悔という思考が意識を保たせる。
気を失ったままのサーシャを、置いてきてしまったことが、思い出される。あれの狙いはサーシャに向いていたのに。
3発目の銃声を聞いた覚えはないけれど、意識が保たれていなかったのかもしれない、確証はない。]
……ああ、
[じわりじわりと、白を染めてゆく赤。
銃創を抑える手は生温い鮮血に塗れて――
残る弾丸はあと2発、もっとも銃はもうこの手にない。
ましてこの状態では、引き金を引けるかどうかもわからない。
これではもう止めることは――殺すことは出来ない]
― 廊下 ―
[移動中誰かとすれ違っただろうか。
ロランの匂いを追うのだが、それ以上に匂ってくるのは鉄の匂い。そして、火薬の匂い。]
――……
[嫌な感じがするのは、撃たれた場所から血が流れているからだけじゃない。]
[薄暗い室内、窓の外、
降る雪の白さだけが仄かな灯りのように、綺麗で。
手を伸ばそうとしても、やはり届かない、けれど]
――……、い
[血が失われているせいか、寒さに口唇が震えて。
それなのに、傷口だけが焼けるように熱い。
目蓋が重くて、
とてもおもくて]
[目を閉じてはいけない、と思うのに]
[そして、匂いに確実に、その撃たれた人物が特定できた。]
ロランッ
[そして、顔を歪めて、ロランの血の匂いを嗅ぎ分けていく…。
やがて、一室の個室の前までくると開けようとして、鍵に阻まれ、ノブをガチャガチャさせ、ノックした。]
ロランッ
くっ
[獣の鼻は確実にそこにロランがいることを確信していた。
完全体だったら、そんなドアを壊すなど、そう難しくもなかっただろう。
しかし、現段階では、それは、おそらくはかなりの命を削る作業だったが…。
自分でもなぜそうするのかわからない。
だけど、気がつけば、ドアに体当たりを繰り返す。
やはり傷は新たに破れ、赤黒い血が飛び散った。
が、幾度めかの、何十回めかの体当たりで、ドアが開けば…]
ロランッ
[床に血だまりを作っている白い女を発見しただろう。]
けーだーもーのー…。
[そう呟きながら、ベッドのシーツを引っぺがし、
肉片と血だまりばかりのシュテファンにふわりとかけた。
それは、すぐに血が染みだして、赤黒く染まっていく。]
…気休めにもならないわね。
……ぅ
[ナイフを無理矢理投げたところで、力尽き、ずるずると壁伝いに崩れ落ちた。
誰か女の人の声が聞こえる。ナタリーか、サンドラか、いずれにせよカチューシャのしたことを信じてもらえるとは思えない。]
……ろら、ん……
[戻らなければ。手当てしないと。ゆっくりと食堂車に背を向ける。ロランが別の部屋に逃げ込んだことなど知らないから、一歩一歩、シャノアールの部屋へと。]
痛い……痛い……
[うわごとのような、うめき声。
この間の人狼騒ぎはあんなにも幸せだったのに。さっきまであんなに昂揚していたのに。
狼がそばにいるのに、どうしようもなく辛かった。]
[鍵の破られる音を、遠く、聞いていた。
間近に黒い影が差せば、重たげな眼差しが見上げる。]
――……ミハイル、
[薄闇の中、女の顔色は蒼褪めて。
頬は赤黒く血で汚れて、ひどい有様だったけれど。
それでも少し微笑ったように見えたかもしれない]
[怖いおにーさんに投げられたナイフは、肌をかすめていきました。
それに塗られた毒によって、少女はいずれ命を落とすかも知れません。
それでも少女は後ろを振り返ることもなく、銃を羊さんの内側へと隠し、食堂車に向かって走り続けます。傍目に映るこの光景を利用するため。捕まって組み伏せられて殺されるのを防ぐために。
生きるために走り続けました。文字通り、必死なのです。
食堂車へと着くと、怖いお兄さんは諦めたのか、追って来る様子はありません。とりあえずそこで一息つくことにしました。]
…ごめんなさい。
[そう呟いて、足元の燭台を手にして、ゆっくりと廊下に出た。
隣の、シャノアールの部屋から冷たい風と話し声が聞こえる。]
そういえばガラスの割れる音や銃声がした、ような?
[何処か上の空で呟いた。
状況を把握しなければ、とシャノアールの部屋に足を運ぼうとしたが、
食堂車の方からうめき声と何か引きずるような重い音が近づいてくるのを感じた。]
なんで、お前が、
[撃たれているんだと…顔を歪める。]
――……誰だ、やったのは。
[殺すと言っていた相手が実際死に掛かって、それに激しい怒りを感じている。
いろいろ矛盾をしている。
だけど、感情は止められない。
白い女が薄く微笑んだことに、背中の傷よりも胸が痛んだ。]
[抱き起こされれば、その体温が優しくて。
まどろみの中に誘われそうになる、けれど]
……カチューシャ、
[問いには答えなければ、と
色のない口唇が、ゆっくりと動く]
……そう、あの子、
サーシャを撃とうとし てた……
サーシャ、は……?
[どこの傷口が開いたのか、もう把握できない。足下に、ぽつぽつと血の跡。]
ぁ……
[前方に明かりが見えた。燭台の炎。誰かが居る。]
ろらん……?
[友人の元気な姿を、一瞬期待する。けれどそこに立っていたのは、数刻前に薬をくれた少女だけ。]
なたりー……
[足を速めようとして、前に倒れる。手当が出来ると言っていた、先ほどは拒んでしまったけれど。]
おねがい、ろらん、たすけて……!
あのこ、カチューシャ、ピストルで、ろらんのこと……
[途切れ途切れな説明。赤黒く汚れた指が、すがるように彼女の腕をつかんだ。]
>>150
カチューシャ、だ と?
[一瞬、耳を疑う。
あの子どもが撃ったというのか……。
だが、この場で嘘を言うとは思えない。
そう、カチューシャの中がシャノアールだということにはまだ気づけず…。]
サーシャ?
いや、サーシャは見ていない…。
[その声に力がない。
それは、確実に死の予感を感じさせていた。]
-回想:シュテファンの部屋前-
[何があったのかと部屋の中を覗こうとし、ナタリーからの説明で足が止まった]
…な に
シュテファンなの…?
[アナスタシアを捕縛したいと。武器はないかと問うてきた姿を思い出す]
ぁ…
[何かを告げようとしたが、口元を抑え頭を振る。…の顔は酷く青ざめていた]
ろらん……どこ……?
[ナタリーが手当を申し出たとしても、拒否してシャノアールの部屋へと向かう。
だが、窓が割られ、雪が吹き込む部屋に、求める姿はない。
ただ、白い白いマフラーが、落ちているだけ。]
どこ? ねえロラン! ロラン!!
[マフラーを握りしめて叫ぶ。おいて行かれた子供のように。]
…サーシャ、さん?
[前のめりに倒れながらも、自分の傍に近づこうとするサーシャに
慌てて駆け寄れば、腕を掴まれた。]
え?ロラン、さんを?
カチューシャさんがピストルでって。
銃を持ってたのはロランさんじゃないの?
そもそもカチューシャさんがどうして?
[隣の部屋で何が起こったのだろう。
錯乱しているのだろうか?]
…とりあえず、あなたの手当をしなきゃ。
[救急箱は食堂に置きっぱなしだった。]
[信じがたいような声に、伝えなければ、唇を開く。
口の中が乾いて、音を紡ぐのはとても難しくて]
……ただ、引き金を引けば、撃てる銃じゃな……
使い方を、知って――……
[ただの子供の持つ“知識”ではないこと、
伝えられただろうか。銃を見れば、それが単純な操作で扱えるのものではないことはわかるはずだった。]
――……、
[見ていない、その言葉に落胆の色は隠せずに。
立ち上がろうとするのだけれど、それはやはり上手くいかない]
>>156
[必死に伝える様子に、わかった、と頷く。]
わかった。
[その身体が冷たい。
流れ出る血は、食欲をそそるもののはずなのに、
それを感じられない。
むしろ、なぜか、絶望を思っている。
サーシャを見ていないことに関して落胆を見せれば、く、と顔を歪ませた。]
お前……
[彼が抗わなければ、上体を起こし床から壁際へと移動をさせようと]
……ともかく。
君と、人狼に襲われていたという人は、人狼じゃなさそうだね。
[カチューシャの名は知らなかったから、襲われたのが小さな少女だという事も知らない。
その少女が、見た目どおりの少女では無い事も、また]
手当て、しないと。
救急箱は食堂だったかな……?
[サーシャとロランに諍いがあったという点も気にはなったけれど、目の前の怪我人を放っておく事も出来ない。
闇雲に探しに出たとして、出会えるとも限らない――と、そう考えた所で、常よりも幼い口調の青年>>154が部屋に駆け込んできた]
-回想:シュテファンの部屋の前-
…ごめ、もぅこの臭いだけで…
後は2人に任せたよ…
[ダニールが話してくれたのであれば。アナスタシアの事を知るだろう]
シャノアールの、部屋……
俺が、首、絞めたりしたから!!
[ナタリーの問いかけに半狂乱で返して。部屋中を探し回る。
断片的に語るのだろう。ロランがミハイルを撃ったこと。ミハイルが列車から落ちたこと、カチューシャが自分とロランに銃を向けたこと……]
外……
[ロランも窓から外に落ちた? 思い至ってしまってぞっとする。振り払いたいのにじわじわと、恐怖。]
べつのへやかもしれない、だから、
[壁に手をつきながら、気持ちだけが急いて。廊下に戻る。]
[覚束無い口ぶりで一通りスティーブンに伝えた後、身を起こそうと試みて、もう一度呻く。
貫かれた肩は血を噴出し続け、麻痺したかのように動かない。
怪我をしているのかと問われ、頷きを返した。]
ああ。肩がイっちまってる。大分血が足りねえ……
悪いんだけど、この服の裾ンとこ割いて、止血お願い出来るか?
何ならあっちに着いてから、でも……
[何とか身を捩り起こし、胡坐のような形にまで持って行く。
軽い眩暈は覚えるが、会話をしているうちに少しずつ感覚戻って来ている。]
……段々思い出して来たぜ。
確か、銃が光って―――
[と、部屋に駆け込んで来る足音に身構える。]
[…は壁に手を付きながら、後部車両へ向かおうとする。そこに、何かが現れて…。そう、それは黒い獣だった。
あれは何だ…?
考えようとすると、頭が酷く痛んだ。
色は違うが、見た覚えが…]
……はじめての、ともだちなんだ。
[冷たいのか暖かいのか、
よくわからなくなってくる、
ただ彼と言葉を交わせるのはうれしい、気がした。
また、笑われるだろうか、と思って
黒い瞳は霞む視界のままに男を見上げる。
もっと言葉を交わしたいのに、思考は形にならなくて]
………サーシャ?
[ロランを求めて叫ぶ声は、サーシャの物か。
驚きが、怪訝そうな表情に変わる。]
お前、だってさっきロランを抑えて……
[意識を失った先の事を、彼は見ているのだろうか。]
あれから、何があった?
人狼はどうした? ロラン…カチューシャは無事なのか?
[あぁ、だが……。
彼は口元を抑え、特等室の方に戻って行った。食堂車には向かいたくなかった。
人狼が、出てきた場所なんて…。既に誰かの死体が……]
カチューシャがロランを撃ったんだ!!
[ベルナルトの言葉に返したのは絶叫。]
あのこ、やだ、ぜったい、ゆるさない……!!
[言い残して廊下に向かう。夜目はきかない。……それでも。]
……ろらん?
[一つだけ、明らかに破壊されたドアを見つけることは、出来た。]
[優しい腕の中で死ぬな、という言葉を聞いた。
人を食って泣く彼は、自分が死んでも泣くのだろうか。
赤く染まった冷たい指先が、そっとその頬に触れようと伸ばされて。
泣かないで、と
伝えたかった言葉は、音にならない]
>>166
そうか。 ともだちか。
友達は、大事にするべきだ。
[語るロランの口元を見る。
それは、赤みはきえて、紫に変色していっているか。]
…今、治療できるのがくる。
頑張れ。
[声をかける。
そう、死んでほしくない、と
思った。]
[食堂車の中には、フードを被った女の人がいました。
自分の身に起こったことを伝えたくて、必死に服を掴みます。けれどもそれでは何も伝わりません。
ですから少女は、広げたナプキンに食べ残しのソースを使って文字を書きました。
みはいる さーしゃ じんろう なかま
大きく大きく、そう書きました。
そしてまた、後部車両の方へと駆け出し出ていってしまいました。まるで誰かから逃げるように。
まるで誰かを捜すように。]
-特等室-
[シャワールームに飛び込むと、胃の中のものをぶちまけた。何度も何度も…。このまま水を浴びてしまいたかったが、すぐに動けないのは拙いのだと、どこか冷静に判断した]
[気だけが急いて、誰かの肩を借りることさえ思いつかなかった。
撃たれたと言い張るロランが居ないから、回りの人々は半信半疑なようで。それがもどかしい。]
ろらん、ねえ、いるの、へんじして、おねがい……!
[こんな時なのに、目の前が霞む。後頭部の傷がずきずきと痛む。]
なたりー、はやく! ろらん、さがして……!
[生まれて初めて。失うことへの恐怖を味わっていた。]
−廊下−
[しばらく廊下からシャノアールの部屋の様子を眺めていたが、
覚束ない足取りで出てきたサーシャに、]
私、先に行くから。ゆっくり付いてきて。
[そう声をかけて、踵を返して先を急ぐ。
一部屋一部屋ドアを確認しながら。]
[指先は力なく落ちる。
重い目蓋を支えていられなくて、目を閉じる。
再び開くことがあるのか、わからないから。
黒い瞳は、目の前の男の顔をじっと見つめて。
それはもう一度、静かな微笑を浮かべた。
閉ざされた目蓋の裏で、
夜の中、ちらちらと降り積もる雪が、重なる]
[血の道しるべをつけながら、どうにかたどり着く。
破られたドアの向こうには、二つの影。]
……ろらん!!
[駆け寄るけれど……その肌は、いつもにまして蒼白。]
ごめんなさい! ごめんなさい!! 俺が首しめたりしたから、ねえ、やだ、お願いろらん、いっちゃやだ! やだ!!
[涙が、あふれていた。]
−一等車両とある個室前−
[すぐに、酷くドアの破損された部屋が見つかった。
ノブを回すことなく、押すだけでドアは開いて。
元来た道を振り返つつ、部屋を覗く。
サーシャは付いてきているだろうか?
この部屋も血の臭いが充満している。]
見つけた…。
[ミハイルとロラン、二人の姿を見つけて、溜息をついた。]
でも、ごめんなさい。
救急箱は食堂なの、急いで取ってくるから、待ってて。
[部屋のドアの前に、灯りのついた燭台を置くと、
慌てて食堂へと救急箱を取りにいった。]
[冷たいのは、ロランだけではない。
そう、自らの背からも、おびただしい出血をしていること、
ふと、頭がぐらついて、自覚する。
だけど、それを感じさせたくなくて…。
再度、ロランを抱きしめる。]
お前、は、死ぬな…。
[そう、自らの頬が濡れている。
血じゃなくて、透明な何かで……。]
おねがい、おおかみさま、ろらん、たすけて!!
[ミハイルの腕をつかみ懇願する。だって、彼は狼で、狼は、強くて、気高くて、なんだって……
……出来るはずがないことは、流石に気づいていたのに。]
[食堂で、救急箱を取って返った。
誰かいたかもしれないが、確認する余裕はなかった。]
なんか、私、すごい役立たず、だわっ。
[思わずそんなことを口にしながら駆けていく。]
[部屋に戻ると、既にサーシャも辿りついていたようで。
ミハイルに抱きよせられているロランにすがりつくサーシャ…。]
…それじゃ、治療できない…。
サーシャさん、ロランをみせてくれるかな?
[呼ぶ声を、血ではない温かな滴を、
友達の無事を語りかける声を
かすかに感じた気はしたのだけれど
その意識はただ白い闇の中へ]
………はぁあ!?
[絶叫に呆然としたのは一瞬、彼の言葉を反復すれば片眉が跳ねた。]
何だそりゃ。
あいつが人狼に襲われてたのをお前だって見てただろーが!
撃ったって、んな馬鹿なことがあるかよ! 大体何でロランを……、
[気色ばんで掴み掛かろうとして、よろけた。
ダニールが聞きたい事があると言葉を投げるが、聞かずにサーシャが飛び出して行く。]
お、おい! まだ話は……!!
何が何だか分からない……
…銃。撃ったなんて、まさか、有り得ねーよ。
[大事な局面で意識を失ったのが悔やまれる。
結局自分は肝心なことは何も見ていないのだから。
ぎり、と奥歯を噛み締め、かぶりを振る。]
なんか、悠長にしてられねぇみたいだ。
早く行かねーと今度はサーシャに子供が殺されかねねー…
…移動。手伝ってくれて助かったぜ。
俺は食堂の方に向かう。ダニールはどうする?
[ダニールに礼を言い、壁に凭れながら何とか立ち上がる。
早くこの部屋を出なくてはならない。]
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 エピローグ 終了 / 最新