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>>49
ん?
もっかい確かめるけど、お前、女だよな?
[見つめると、白に朱が走り、そして、また睨み俯いた様子に、にや、と嗤う。]
朝か。
まぁ、でも、夜も嫌いじゃないんだがな。
[そう人狼の領分はそこであるし…。]
ちょっと、こっち向けよ。
[俯いた顔、白さはやすっぽい灯りの下でも、よく映える。
そして、ロランがこっちを見上げれば、怯えたように振るその顎をとって、煙草くさい唇をその薄い唇に押し付けようと…。]
お前は旨そうだ。本気でどうだ?
[少し掠れた声でそう囁いて、
問題はカチューシャを同時に抱えていることなどお構いなしっぽい…。]
[目の前で起きようとしていることに、あわあわと。
顔を真っ赤にして、手で自分の目を覆うように…しつつも、指の隙間からばっちりと見ていたり。]
それがなんだと――…
[声に潜む嗤いから、目を背けるように俯いたまま。
零れた黒髪は、もう長くはないから視界を隠してはくれす。
華奢な頤も、細い首筋も、曝されたまま]
――……、
[声に従ってしまったのは、何故だろう。
体は本能に従って、あとずさるように下がるのに、
向け、と言われれば見開いた瞳は男から目が離せずに]
あ――……、
[鼓膜を擽る掠れた声、唇が触れる。
少女が間近にいることは、知っていたはずなのに、意識の片隅から滑り落ちた]
>>51>>52
[子どもが見てようと見てまいと、多分、あんまりこの男にとっちゃ関係はなかった。
女?の問いに否定がなければ、なお遠慮はなく、
抵抗なければ、そのまま口付けはやめないまま、
まるで、お試しといった風に味わうと、いい加減なところで放し…。]
ああ、そっか、子どもがいたんだった。
[ぬけぬけとそんなことを言うと、またにやにや嗤いながら、食堂車の方面へ、カチューシャを抱いたまま足を向けた。]
早くこいよ。ローラ…。
[呼び方もそう変えて、それでも動かないようなら、手をゆるりと伸ばす。**]
ん――…、
[椅子の背もたれにぶつかった指先が幽かに震える。
粟立つ肌は怯えからなのか嫌悪からなのか、あるいはもっと別のものなのか。嬲るように貪られれば、理性は役に立たず、本能は抵抗を諦めいてた]
ッ……、
[解き放たれる、背もたれに触れていた手が体を支えた。
喘ぐような呼吸を整えて、濡れた唇を手の甲で、拭う。
手はそのまま、コート越しの火器に触れて、落ちる]
……君は、
[口の中に残る煙草の後味、伸ばされた手を再び掴むことは出来ずに。抱きあげられた少女と視線があえば目を伏せたけれど、同行しないわけにはいかなかった。]
[食堂車で周囲の話に聞き流しながら自分の考えにふけっていたが、車内の一部が突如、空気が変わったのに気付いた]
どうしたんだい?
[床に座り込んだユーリーに、ロランが離れて出て行った。そして、その時始めてイヴァンの異変に気付く]
・・・・・・・・・・ひっ!!
そ、そんな…!!!
[いきなり急変する周囲。食堂車にいなかった人たちも戻ってきていたりもする中、シャノアールの死も耳に飛び込んできた]
嘘…でしょ・・・?
[先ほど触れた水晶の感触が残っている指先をぎゅっと握り締めた]
何がなんだかさっぱりわからない…。
……。
[毒を塗ったナイフを嬉しそうに月にかざして。部屋に戻るか少し迷って、結局食堂車に向かうことにした。
ちょっと前まであんなに騒がしかったとは思えない、静かな部屋。]
……イヴァン?
[まとめ役をかってでようとした青年が、椅子に座っているのを見つける。
お誂え向きに、静かな部屋。ポケットにはナイフと毒薬。
……にぃ、と笑んだ。]
―個室―
[頭から、不気味に笑むサーシャのビジョンが離れない。
……占い対象をサーシャにしなければ。
雑念があれば、イヴァンを占う事は出来ないから。]
Слушайте кристалла.
Является ли он человек или волк?
Если блестящие красные волки.
<<水晶に問う。彼は人か狼か?狼ならば紅く光れ>>
[無反応を願った。
この占いには、<<死>>が必要。
占い成功という事は、誰かの<<死>>が生じたという事。
水晶は――白く、光った。]
嗚呼――誰か、亡くなったの、ね……。
白……彼は、狼では、ない……。
じゃあ、彼は、何者……?
[元居た村を思い出す。
自らを占い師だと言い張り、夫を人狼と糾弾した、狂ったおんな。
彼もまた――人間に絶望し、狼に加担する人間なのだろうか。]
[お茶でも飲むようなふりをして、後ろに回る。
ナイフを抜こうとして、やめた。血だまりができると、みんながここに集まらなくなるかもしれない。情報が集まりづらくなるのは、面倒。]
……っ!
[木製のシースをつけたまま、ナイフを振り上げる。延髄に叩き込む。前に教えてもらった場所。声すら出せなくなる人間の急所。]
……じゃま、だよ。
[ちいさくちいさく、息だけで囁いて。ポケットの毒薬に指を浸した。
……たっぷりと掬ったそれを、イヴァンの口へとつっこむ。喉の奥に、粘膜に塗り込める。]
……ばいばい。
[柔らかな笑み。やがて彼の息は止まるだろう。それを見届けず、汚れた手を洗うために姿を消した。]
……ん。
[トイレで念入りに手を洗って毒を落とし、適当にコートで拭う。左手首の傷が開いて、水がしみた。]
……いたい。
[人狼にもらった傷はあんなに嬉しいのに。ふつうの傷はなんで痛いだけなんだろう。そんなことを考えながら手洗い場を出る。]
……あ。ロラン。
[食堂車に向かう彼らに丁度出くわしたか。マフラーがなくなっていることに気づくほど、青年の観察力は鋭くなくて。]
……食べられて、ないの?
[イヴァンとシャノアールの死の様子を聞けば、後者にだけひどく反応するだろう。
……わからない。占い師の組み合わせがわからない。]
……いたい……。
[これは本当に仕えるべき相手? 胸の傷が痛んで、ぎゅうとコートを押さえた。**]
……ロラン、だ。
[ローラ、その呼び名はやめてほしい、と暗に告げたのは、
大分遅れてのこと、恐らく動揺していたのだ。
涌いた疑心と……指先一つ、動かせなかった自分自身に。
いまだ苦味が残る、無意識に唇に触れながら歩いていれば、かけられた声に顔をあげた]
サーシャ……
[無事な姿に“死んだら食べてもらえる”という
彼の望みが叶っていないことに安堵すれば、ちりりと複雑な感情が涌いた。
ミハイルはサーシャにどのような視線を向けていただろう。遮るように両者の間に立てば、いたい、という呟きが聞こえた]
……また、痛い?だいじょうぶか?
[反応の偏りを怪訝に思えど、とりあえずは同行を促した*]
[人狼に対処することに慣れた人たち、一部はおののくよりも、生き生きとして動いているように彼女には見えて。それは人の生存本能のあらわれかもしれなかったが、彼女にとっては嫌な記憶を掘り起こすものでしかなかった。]
あたしも、あんな顔をしていたのかな…。
[もう、何も見たくない、聞きたくもない。他者に気遣いすらもできず、後退りをすると、気付かれないようにそこを後にした。]
―一等車両・自室―
[ぎゅ、と唇を引き結んだまま、シャノアールの部屋から自室へと戻り、ベッドの上にどすん、とトランクを置いた。
ばさばさっ、とずた袋から衣類をぶちまけ空にすると、閃光機(ストロボ)とマグネシウムの閃光粉が入った箱とを一緒に突っ込む。
が、少し思い直して旅行用石鹸のブリキ缶から中身を捨て、丁寧にぬぐった後、閃光粉を少し取り分けて、撮影器材とは別に上着のポケットに入れた。
その後、再びライカを皮ストラップで首に下げると、その他細々した物をずた袋に追加してから外に出る。
ベッドの上には、几帳面な彼にしては珍しく衣類や生活雑貨が散乱し、トランクからはいつぞやの、茶色い狼のパペットが半分、挟まれた形で飛び出している。]
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