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[願わくは、彼等の魂に安息を]
[願わくは、彼等の魂に幸いを]
[そうして、次の世が明けるのならば。
自らに、強く生きよ――と、誓いを一つ*]
[サンドラが先に集落を離れたと知ったのはいつだったか。
故郷に帰ったのではないかと、村人の暢気な推測を聞きながら、
彼女の真の目的を悟った。]
…お詫び、言いそびれた…。
[ハーブのお礼も。
でも、今から追いかけても遭難して野犬に襲われるのが関の山だ。]
…いつか必ず…。
[列車での一夜は悪夢としかいいようがなかったけれど、
また会いたいと思う人と巡り会えたのは、不幸中の幸いだったと。
そしてまた列車に乗る。列車は南へ、そしてー*]
[列車が止まる。
同時に、最期まで少女の無垢な魂が戻ると信じてその想いに殉じた青年の魂がふわり、と姿を現して。
自分を陥れ、容れ物の躰を血に染めた悪霊の気配は遠ざかった。
残った二人は、此方に来る事はないだろう。
一先ず、此方で紅茶を飲みながら結末を見護っていた人々と安堵の表情を交わす。]
――……良かった。
いえ、あの子は行ってしまったから、全てが報われた訳じゃないけど。
生きている、人が居る。
皆、わたしは無理かもしれないけれど――弔って貰える。
あの人たちも、再び悲劇を経験した訳だけれど、生きていたらまた何度でもやり直しはきくわ。
[雪に朝の光が反射して、とても美しいと思った。]
[今度は、はっきりと聞こえた。
顔を上げる。
いつの間にか、周りは眩い光に包まれていて、列車の背景すら、見えない。
眩しさによる生理的な涙と、喉を灼く程の期待の涙とを必死で拭うと、そこには。
――幼子を抱いた、夫の姿があった。
我が子は、生え始めた歯を覗かせて、笑いかける。
じたばたと足を動かして、こちらに身を乗り出して――
漸く、その手に抱いた。
記憶と同じ、11kgの重み。]
――待たせてごめんね。
[そこで、意識はぷつりと切れた。
もしかすると残留思念の見せた幻だったのかもしれない。
だが、最期に女の魂は幸せに満ちたまま昇華された。
これが、ひとりの占い師の女の最期のおはなし。]**
さて。
人として産まれ、人狼となった彼は。
人としての自分と狼としての自分を内包したまま生きた彼は。
魂となっても、なお狼であろうとした彼は。
消え去る間際に人の姿を選んだ彼は。
何処に消え、何処に行ったのだろうか。
その傍らには、もぅ1人の魂が寄り添うように…在ったことだろう。**
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