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[棚に並んだボトルのひとつ。]
[見覚えのある8桁の数字。]
[姉だったものと同じ年月を過ごしてきたという、証。]
[首を掴み。]
[壁に叩きつける。]
[濃緑とともに飛び散るのは。]
[紅い。]
[あの花と同じ。]
[濃い、紅。]
[祖父は云った。 あれは愛の花だと。]
[そして、哀の花だと。]
……ふふ。
[暖かな寝台の中、女の口元には、緩く笑みが浮かんでいた]
さあ、どんな返事が返ってくるものやら。
もし答えられなかったら……その時は悪食だって構うものか。
[うっとりと下腹を撫でて]
お前の糧にしてしまう、かね?
[くすくす、くすくす。
布団の中に笑みがこぼれる]
[寝台を出ると、荷物の中から新しい服を纏う。
昨晩来ていた服は、燃やしてしまったから]
……しかし、一人食う度に服を一着ずつ燃やすのは面倒だね。
ここはなんとかしないと。
[炭となった服の残骸に、ため息交じりに呟いて。
何時ものように金の髪をまとめ、スカーフを巻いた。
そうして部屋を出た女は、何も知らぬ顔をして食堂へと向かう]
[気丈な女が初めて見せる涙に、
弟分であるロランなどは驚いたかもしれない。
取り乱したりはしない。
ただ……友人を喪ってしまって悲しいと。
何かを喪失した様な空虚さを、その眸に映して。
女は静かに涙を零し続けていた]
[泣き腫らし紅くなった眸を、ハンカチで拭う。
最期に泣いたのはいつだったか。
頭の中でそんな事を考えながら、
傍目には友人を喪って悲しいと謂わんばかりに、微かに肩を震わせて]
……ナースチャ。
もうあんたには、逢えないんだねえ……。
[――否。友人は我が身に残る。この子の糧として]
あんたがせめて……そっちであの人に出会えることを
祈るよ―――
[その言葉には、嘘はなかった。
身体は我が身とすれど、その心は真に求める人の元へあれば良いと。
そして暫くは、彼女の冥福を祈る様に眸を閉じる。
ロランが話す投票の話等も聞えてはいたが、
口を出すことはなく、ただ友人の死を*悼んで*]
[床に座り込んで、どれほどそうしていたか。
ふと感じた空腹は、漂う香ばしい香りのせか]
……はは、ゲンキン。
[胃の中の物を全部ぶちまけた後だというのに。
香りに誘われる様に。
ゆたり、と食堂に向かう]
ジャラ…
[金属同士がぶつかる音]
(これはミハイルは受け取らないかも知れない。だとすればこれは彼女に渡すのが妥当だろう。だが…)
[ズボンのポケットの中にはアナスタシアから教えて貰った地下牢の鍵と共に、彼女が持っていた金緑石の首飾りがあった]
(妥当ではない、気がする)
[結局、渡さなかった]
― 食堂→地下 ―
[軽食や飲み物を用意し、寝ていた筈のミハイルが地下にいることを知れば、そちらに向かう]
ミハイル、なにを――
[地下に降りれば既に壁にボトルを叩きつけた後。一瞬、彼の凶暴性を疑った、が]
(だとして、この行動は少なくても人狼の衝動からくるものではないだろう)
[安直な判断と思いつつも、声をかけた手前、相手から反応があろうとなかろうと、言葉を続けた]
ミハイル。彼女の部屋に残されていたものだ。
もし受け取るのなら、お前が適当だと判断した。
[そう言って、ミハイルに生前彼女がずっと弄っていた金緑石の首飾りを取り出した]
一応聞いておく、受け取ってくれるか?
[首飾りの中身は見ていない。が、今までの彼女からどのような遺品であるかは予想はできる]
処分するにしろどうするにしろ、できればお前に任せたい。
[受け取らなければ、そのままポケットへと戻す。用はそれだけだと...は、食堂へと戻っていく**]
[声に振り向けば、そこには。]
[…………]
[相変わらず、名前は出てこない。]
[そのまま、黙って相手の言葉を聞く。]
…………
ああ。
[差し出されたものを、受け取る。]
[暗い地下で見るそれは。]
[以前見たときとは違う色を、していた。]
[厨房には誰もいなかったけれど。
食堂には幾らか人と、軽食が用意されていて]
……ロラン、かな。
[なんとなく、そんな気がして苦笑が漏れた]
いただきます。
[軽食を少し、取り分けて。
テーブルの間をすり抜けると、隅の方の席に両足を上げて座り込み。
話の流れを追っている]
[確か、小さい頃に。一度。]
[ここに入れられたことがある。]
[――が。]
[ぐるりと、辺りを見回し。]
……どこだったっけ、な。
[腕から指先へと伝った血が、床に落ちる。]
[首飾りを上着のポケットに突っ込むと。]
[階段を上った。]
[食堂の隅、階段のそばにいたから、地下から上がってくる人影にはすぐに気が付いて]
ミハイル……?
[いつもと変わらない表情に見えたけれど]
……手、血が。
[慌てて椅子から降りると、ポケットからハンカチを取り出した]
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