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[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
無頼 陣 は ライダー に投票した。
ゲームマスター は ライダー に投票した。
監督者 ルーサー は ライダー に投票した。
メイド セリア は ライダー に投票した。
姫倉 達生 は ライダー に投票した。
望月 胡蝶 は ライダー に投票した。
ライダー は セイバー に投票した。(ランダム投票)
滝川 志乃 は ライダー に投票した。
ランサー は ライダー に投票した。
ラナ ヴラニェシュ は ライダー に投票した。
バーサーカー は ライダー に投票した。
セイバー は ライダー に投票した。
ライダー は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、姫倉 達生 が無残な姿で発見された。
P.アーチャー は立ち去りました。
現在の生存者は、無頼 陣、ゲームマスター、監督者 ルーサー、メイド セリア、望月 胡蝶、滝川 志乃、ランサー、ラナ ヴラニェシュ、バーサーカー、セイバー の 10 名。
―― 南ブロック/望月邸 ――
[早朝と呼ぶにも早い時間。
離れの寝室へと、ふらつく足どりでなんとか辿り着いた。
拙い知識で布団を敷き、そこに胡蝶を寝かせ。]
………。
[意識はない。息はある。――まだ、間に合う。
小さく呪文を口にする。柔らかな光が右掌に生まれ、それを胡蝶へとあてがう。
二度、三度…四度。我が身の至る箇所より灰がこぼれ出る。
所詮は初歩の治療術で、魔力も僅かにしかない。
どれほどの効果かは判らない。だが、繰り返しかけるうちになんとか一命は取り留めたようだ。]
………………。
[珍しく、顔に安堵の色が浮かぶ。
目蓋に浮かんだのは――全てが間に合わなかったジュリアの姿だった。]
[遠くの空が一瞬だけ光り、聖杯を経た姫倉の令呪の魔力が注がれるのは、少し後の話で。]
──…ッ
ン。
今、誰かの令呪が聖杯に捧げられ た。
分かりやすく考えれば、
ヒメクラの令呪。
これで、今しがた、戦闘で削られたばかりの
無頼の力も回復してしまう……わけだ な。
これは──セイバーを追うより
令呪を剥げる者の数を減らす事を最優先すべきか……それとも。
[聖杯から注がれる力によってバーサーカーは回復しても、マスターの魔力が回復するわけではない。胸が痛んだ。そのような力を望んだにも関わらず。
空を彷徨う指先はラナの灰銀の目元の輪郭をそっと撫でるように震えた。]
…… ル ナ。
歩ける だろうか。
[低く掠れた声で囁いた**。]
−朝・教会付近−
[イカロスの激高が収まらず暫く夜空を滑空していた。
エウロパの願いを聞いたため、少なくとも昨晩はむやみに町を破壊するつもりはなかったらしい。
その分フラストレーションは溜まっており、解消されるのに時間がかかった。
落ち着くと、すっと西地区の教会付近へと降り立つ]
−朝・教会前−
[昨晩の戦闘の後始末を終わらせたセリアが教会に戻ってくると、すぐ近くに降り立った無頼を見つけた]
・・・・・・無頼さん。
昨晩、姫倉さんという人が死んだんですの。
令呪を剥がされて。
無頼さん、もうこんな事やめて欲しいですの。聖杯戦争のルールの上では禁止されていませんの、でもこんなの良くないですの。
−安置室−
[中に入ると、他にも横に寝かされた人間がいた。
きっと彼らもマスターなのだろう。
その中で、昨日の夕方に出会った青年の姿]
・・・・・・そうか。
・・・・・・
[無言ですれ違う。でも最後に振り返って]
ひとつだけ聞いていいですの?
どうして彼を、まだ死んじゃいけないって思ったんですの?
あなたにとって、彼は倒すべき人ですの。なら、今までと同じじゃないんですの?
そうだな。
俺も斬れない。
だが、昔の俺なら斬っていたかもしれん。
・・・・・・ 彼はどうだっただろうか。
[そう言うと、花瓶に花を戻して安置室から出て行った**]
―南ブロック/望月邸―
[それは失神で、眠りと呼べるようなものではない。
何もかもが空っぽで、それなのに令呪から未だ足りぬとばかりに魔力を求められて。
――昔、向かぬ魔術の鍛錬で、死にかけたことが何度もある。背に刻印を移植した時も、生死の境を彷徨ったものだ。
その時と、同じ。
もう嫌だ。
魔術師になんてなれなくていい。
楽になりたいと。
大半はその思考で埋め尽くされるのに、それでも心のどこかで。
これが自分の役目なのだと、耐えねばならないのだと、歯を食い縛って生きたいと思っていた。
忍者は名もなき存在。それでも重ねられてきた歴史は、一筋一筋結晶となって刻印に受け継がれている。
どうして、自分の手で終わらせてしまうことができるだろう。
悲願、妄執、圧し掛かる重責に、隠匿された自我は染め上げられる。
だから、胡蝶とコードネームで呼ばれるこの身体は、どうしようもなく魔術師で、忍者であった]
[強要されたのではない、自分で選んだのだと。
それだけは誇りを以て胸を張れるはず。
だから、投げ捨てるわけにはいかない]
――ん、ぁ……。
[もうずっと、昏い暗い闇の中を歩き続けている。
けれどその先に、ほんの一条だけ。小さな光を見た]
はるか? 違う……、
…………る、な?
[震える唇が無意識に動く。
じょじょに持ち上がる目蓋、現実世界の光を網膜に取り込んで、潤み揺れた]
嗚呼……。
おぬしは治癒魔術が使えたのじゃな。助かる。
[亡いはずの者の名を口走った自覚はあったので、ばつが悪そうに顔を逸らして枕に埋めた。
けれど、その一瞬見えた、文字通りその身を灰と削りながら、燐光を繰る横顔は。
真名とかけ離れて、いっそ神々しくすらあった。
以前、彼があれでも生前は敬虔なキリスト教徒だったと告白していたのを思い出す。
皮肉なものだと、笑おうとしたが、肺から呆気なく空気が漏れるだけだった。
串刺し公にも、慈悲の心は残っていたらしい。本来なら、彼のこんな貌を見られるのは、ジュリアだったのだろうけれど]
ありがとう、楽になった。
[食い荒らされた傷は塞がったようだ。今暫く、左手で武器を持つことは難しいだろうが。
寝転がったまま両腕の具合を確かめる。
覚醒したことで、いやに生々しく思い出してしまった。
刃が肉と骨の筋の合間を滑る感触。引き千切れる繊維と、溢出す生暖かな血潮と、湿りぬめる毛並み。獣の咆哮]
……久方ぶりじゃった、な。
[生き物を殺したのは。
多分、冷静な自分だったら一般市民に被害が出ない範囲で逃げていただろうと思う。
けれど、あの時は逆上していた。突如戦場となったあの光景に、血の匂いに、絶望の甘美に、――酔って、いた。
襲いくるのは自己嫌悪。動揺と混乱で、とんでもない判断ミスをして、己がサーヴァントを逆に危険に晒してしまった。
幾らか熟してきた任務で場慣れはしているつもりだったが、所詮平和な時代のスパイごっこと、聖杯戦争は――本物の戦場は違う]
大口叩いておきながら、マスター失格じゃと、
罵倒され見捨てられても仕方なかろうに。
ああ、これじゃから英霊は……。
[肘をついて上半身を起こす。
疲労と貧血ばかりは魔術でどうなるものでもない、まだ頭がクラクラした。
あの大量の輸血用血液製剤は、どうやら自分の朝食になる運命のようだ]
もう少し、眠る。
微量でも魔力を回復しておかねば、
おぬしあちこち灰のままじゃろう。
[気力で這出るにも至らず、再び寝具に身を横たえた。
輸血の用意と、朝刊を取って来て欲しいと伝え、双眸を閉じると十秒経たぬ内に*寝息をたてていた*]
[静かに流れ込んでくる、誰かの血が、命が、動静脈を通り全身へと行き渡る。
赤と、黒と、灰。
昨晩の駅前と、固有結界での戦闘が、鮮やかにフラッシュバックした]
重いな、重い……。
[あそこで失われた命、どれ一つとして同じものはなく、みんな誰かの大切な人で。
町中が嘆きと悲しみで満たされるだろう。
新聞に踊る文字は端的で。一夜明けての写真はどれも凄惨で。
柔い胸が押し潰される心地がした。
海外でもまた、隕石により街が壊滅したとの記事もある]
同時期に、あちらでも聖杯戦争をしておるのじゃろうか。
……世界の終末のようじゃのう。
[英霊たちが乗り越えてきた修羅の道は、あの比ではなかったのだろう。
そう思うと、一人で背負い兼ねる重責に、戦力の面だけでなくサーヴァントが居て良かったと感じる]
[さすがに、誰かに手を握って欲しいなんて、子供のようなことは口にできなくて。
招き寄せた猫を撫ぜて気を紛らわせた。此方の没んだ気分を汲んでか、珍しくされるがまま。その滑らかな手触りに癒される。
異なる色彩の瞳を見詰めながら、低く擦れた声で語る言葉は、誰に聞かせるでもなく]
けれど、こうして死に損なっておる限り、儂は、
報いるために聖杯を手にせねばならぬ。
それだけが、儂を戦地に立たせ、生と勝利に執着させておる。
[戦果で言えば、昨晩は勝利のはずだ。
サーヴァントを失うこともなく、ライダーを倒すことができた。
はずなのに、到底気が晴れるはずもなく、戦意が削がれるでもなく、千々に乱れた心は未だ整理がつかないまま。
全て誰かのせいにして、怒りを押し付けてしまえれば楽だが、破壊の元凶となったライダーを憎んだところで、死者が還ってくるわけではない]
どうして、ああなってしまったのじゃろう。
エウロパがあのような凶行に走った理由が、未だ分からぬ。
[無関係な人々の命を数多犠牲にしてまで、叶えなければならない願いなのか。
一度も対面したことのない八人目のマスター、無頼陣に聞いてみたいと、思った]
残るは儂等とバーサーカーとランサーと、八組目。
……ルナとの約束は昨晩のライダー戦まで。
ランサーはまあ、言わずとも八組目とは戦うじゃろうし、
敵でも味方でもないくらいか。
[外出するというなら、さも当然のように身支度をする。
療養を、との言葉は人差し指で塞いだ]
ちょろちょろしておったら目障りじゃろうが、
バーサーカーと八組目の狙いが令呪である以上、
おぬしの側以外の安全圏がどこにあると言うのじゃ。
ついて行く。
……いや、ついて来いと謂うべきか?
正直、伏せって鬱々としておったら、
二度と立ち上がれなくなりそうじゃ。
―昨夜・噴水前>>1―
[セムルクの言葉に、一度深く呼吸をして、息を整える。
向こうは随分な手負いだった、…否、其れはこちらもだが。
それでも追えばサーヴァントを削ることは確かに出来たかも知れない。
――更にいえば、相手のマスターも。]
嗚呼、でも。
流石に、追いつけないし――仕方が無いよ。
…悔しいけどね。
[僅かに、肩をすくめる。追いつける距離だったとしても
…その時は身体が、持たなかっただろうとも脳裏でちらりと思う。
己の魔術で魔力を消費し、更に宝具の連発。サーヴァントの負傷と重なると
流石に平然としているのは酷く難しかった。 …噴水の音が、酷く煩い。]
…ヒメ クラ、?
[告げられた名、見上げるようにしてゆると視線を向けた。
バーサーカーが此処に居て、且つ令呪が剥されたのだとしたら
…、つまりはあの無頼という男達の方という事か。
一つ、安堵にも似た溜息を零して――ぎゅうと眉を寄せる。
自分達が己の手を汚さずして取る事が無くなっただけで、やっている事に変わりは無いのに。
――嗚呼、自己嫌悪しそうだ。何で少しでも、安堵なんてしたんだろう。
覚悟が足りない…否、覚悟はしている。
決めた筈なのに それでも、キツイと思うなんて。
この先、本当に繰り返していけるのかどうか。]
――ある ける。
歩けるから、 …大丈夫。
[伸ばされる指先に、灰銀を細めて――ふると、首を振った。
今まさに壁に凭れ掛かりながら、内心苦笑する。
…立っているのが必死という態なのに、我ながら随分な虚勢だと思う。
数秒、目を伏せる。…瞼の裏がちかちかとして、
ひどく疲れているのだと自覚するのは容易かった。]
――、
…けどごめん、少しだけ休ませ て。
そしたら、帰ろ。
[先程まで、混乱の最中だった場所。
暫し隅の方で座り込んで居た所で、特段怪しまれる事もないだろう。
そう思った途端、その場に立ち続けるのも億劫で、壁を背にずるずると座り込む。]
[それから、どう帰ったのか――覚えていない。
ただ、何か 何かを見た。
その事を覚えている。
思い出そうとすると、掻き消えてしまう程随分と霞む記憶。
知らない場所だった。
見た事の無い筈の場所で けれど、何故か知っている。
遠くて――近しい、 嗚呼、此処は『 』だ。
見たことが無い筈なのに 知っている。
荒涼とした風景、
何も無い――虚無が支配する、
]
―朝・拠点(南ブロック)―
――、
…、ゆめ。…?
[何かに呼び戻されるように、意識は覚醒する。
目に入ったのは、見覚えのある天井。
其れが現実だと確かめるように、ぽつりと声が漏れた。
身じろぎする。身体が重い。瞬きをするのも凄くゆっくりと。
…暫しの沈黙に、漸く耳が違和感を覚えて、首を横へと向ける。
掌程の紫トナカイが、枕元で己を呼ぶように小さく鳴いていた。
自室だ。 どうやって帰ってきたのか。
歩いて帰ってきた…ような、…あれ?
よほど疲れていたのか、記憶は欠片として残っていない。]
…おはよ、
[重い腕を上げて、トナカイを一度撫でる。
そうして、漸く寝台から身体を起こした。一つ溜息を零す。
嗚呼、どうしたものか――魔力の減りが、尋常ではない。
…しかし何だったのだろう、先の夢は。
一度起きてしまってから思い出すには随分、朧気ではあるけれど
凄く、 厭な感覚だけが残っている。
知っている場所のような気がするのに、判らない。
思い出せば思い出そうとするほど、記憶は遠のいた。]
…まぁ、いいか。
――思い出して、いい夢って訳でも…なさそーだし。
[一度首を傾ける。 ぽきりといい音がした。
背伸び身体を解して一先ず、支度を整えるべく漸く立ち上がる。
知りもしない。己のサーヴァントが――聖杯越しに見た其れと同一のものだとは。
令呪との繋がりから、僅かながら影響を受けているものとは四方や。]
―西ブロック教会・夜―
[自分の身体が動くようになった時は すべてが遅かった。
忠勝が、姫倉の骸を抱き上げ
自分が、落ちていた赤い蛇の目傘と何かの――石のようなものを拾い上げる
さほど重そうでなかった傘が、腕に、ずしりと重い。
いのちの
想いの重さだと ――思った。]
[白い布が敷かれた安置室。
そこに彼―――いいえ、彼女は横たわる。
闇に慣れた瞳に、電灯の下の白は眩し過ぎて
色が、脳裏に焼き付く。
しばらく彼女の ――何故か安らかな顔を見つめ、目を閉じた。]
……行きましょう。
[それだけ短く言うと、忠勝と共に、教会を後にした。]
―中央ブロック・ホテルグランパシフィック―
[ベッドに潜り込んだ後も眠れず、何度も寝返りをうっているうちに、気付けば朝と呼ばれる時間になっていた。
鈍くて重い頭に手を当てて、ゆるりとベッドから降りる。]
……おはようございます。
[低位置の彼にそう声をかけてから、しばし、そのまま無言で立ち尽くす。]
……傷の、手当をしませんと、ね。
[しばらくたってからそうぽつりと呟くと、救急箱を開けて、ガーゼと消毒液を取り出した。]
[気だるい身体を引き摺るようにして、シャワーを浴びる。
なかなかハッキリしない意識を無理やり起こすと、漸く身支度を始めた。
スクエアネックのチュニックに、パンツレギンス。
身体が重い分、せめてもの軽減に楽な服装を選んで着る。
手乗りのトナカイをいつものポジションの如く、ショルダーバックに入れた。
トナカイ、財布、手鏡。バッグの中身を確認するように漁る内、
奥から出てきた魔石に、眉を寄せる。
…これを渡されたのは、己を含めて二人。しかしもう一人は昨夜――。
ならば、どうなっただろう。…考えても詮無いけれど。
思考を中断させる様にして、再びカバンの奥へとしまう。]
―― 南ブロック/望月邸 ――
[体調は判る限り最悪にも関わらず、それでも出るという声に。]
いや?
それでなくては、であるよ。
[それだけの言葉を返して、先に戸口へと向かう契約主の後をつき出掛ける事に賛同した。]
―中央ブロック・ホテル―
……いや、別に良いですわ。
もう、塞がってるって話でして。
[あの英霊の宝具……、
恐らくは何かに特化して効き目を現す物だったのだろう。
英霊の宝具にしては、威力も低い上に、傷の治りも早い。
魔力さえ滞りなく流れていれば、
一晩の内に傷はほぼ再生された。
後半の攻撃は、宝具を使わずに受けたのも幸いした。
通常ならば、忠勝の耐久は今回の英霊の中でも上位。
これは、かの騎士王や英雄王にすら匹敵する程。]
この世界は まだ
終わっていない ようだ。
[夢──正確には、聖杯と繋がったサーヴァントが見た幻視は、今の町の様子とは異なる──すべてが失われた世界だった。
マスターであるラナがそれを共有した事には気付かない。ただ、彼女の柔らかなぬくもりを腕に、闇夜の月を見上げた時、幻視したあの荒涼とした地に、誰かがまだ残って立っていたような、不思議な感覚をおぼえて、息を零した。]
―南ブロック/商店街―
[一方その頃。
昨晩の騒ぎのためか、人通りの少なくなった商店街。
その表からはやや外れた辺鄙な場所の、やたらクラシックな木製ドアの前で、胡蝶は己がサーヴァントを説得していた]
サーヴァントとは召使の意であるからして、
その極意を学ぶためにこういったところに
足を運ぶも悪くはないと思うのじゃが。
[看板には「執事喫茶」と書かれている。
最近巷で一部のマニアック層に大受けらしく、一度は行ってみたいと思ってはいたのだが、悲しいかな一人で入る勇気はなく、友達もいない。
こんな時のサーヴァント! 赤信号、主従で渡ればきっと恐くない!
しかし頑に首を縦に振らないセイバー、どうやら隣の「メイドカフェ」なる店が気になって仕方無いらしい]
── 昨夜 拠点:リビング──
[拠点に戻りラナの身体を寝台に横たえさせた。
布団をかぶせてから扉を閉め、灯りの無いリビングでテレビを見る。ブラウン管の青ざめた光の向こう、先程の樹那町のニュースと、大陸の方に完全に無機物である漆黒の隕石が落下したと言うニュースが交互に報道されていた。
朝に成っても、そのニュースは続くのだろう。]
聖杯は 世界の終わりを望んでいる。
『黙示録』に書かれたような破壊と、終末を──。
その果てに 虚無 永遠の死へと辿り着く事を。
[聖杯と繋がるおのれは、何かおそろしいものの召還に失敗したのでは無いだろうか。]
[ぞくと背筋が震えた。
落ち着いてその場に座っている事が出来ず、一人床上を這い回る。]
──…ッ
コントロールを誤らねば、
この町に──黒い太陽(と言うには幻視の産物ゆえか随分と無機的、抽象的なものであった)を、落下させていたと言うのか。
まさか、 そのような
人の身を、英霊の身を越える 神の領域の力を?
[体中の体液が零れそうな不快さが全身に広がり、呻いて幾つか小さな銀杭を身体に打ち付けた。漸く、穏やかに成ったのは、夜明けすぎとうに空が白んでからだろうか。]
ええい、わからぬであるな胡蝶殿も。
完璧なる紳士たる、しかも領主たる我が輩が何故に執事の勉強などをしなくてはいけないであるか。
それよりもこちらであろう。
この国のメイドは他のどの国のものとも違う文化が出来上がっていると聖杯の知識より聞いているのだ。それをチラリとでいいから拝見したく思うのは紳士として当然の嗜みであるよ。これこそが ま さ に 至高の嗜好。ここまで来たならば行かねばならぬの何故にわからぬのだ。
[力説して反論。]
── 朝 拠点 ──
[季節外れのサンタクロースが残して行った紫トナカイが、ラナのポシェットにおさまるのが視界の片隅に入り、問うた。]
令呪を奪われたマスターが、
ヒメクラかどうかは正確に分からない。
聖杯を通じて繋がっていると言っても
彼等からなんの連絡がある訳では無いゆえ。
明確な答えが知りたければ、教会に行くか
それとも、無頼達にコンタクトを取るか……**。
[メイド服というとセリアを思い出さざるを得ない。
聖杯戦争中にわざわざ行く気にならないわけである]
……しかしまあ確かに、
あの衣装は可愛らしいのう。
[窓から覗くと、中でまめまめしく働く一見普通のウエイトレスさんは、セイバー曰く独自の文化で、やたらフリル過多なふわふわエプロン姿。
むしろ自分が着てみたい。
ちょっとぐらっときそうになる。いや、いやいやいや]
おぬし、先ほどから血眼になって何を見ておるか。
そんな危険な目をしたオッサン連れて
店に入れるわけなかろう!
不審者扱いされて叩き出されるのがオチじゃ!
[両者、一歩も譲らない]
じゃんけいほいっ あいこでしょっ しょっ しょっ しょっ しょっ しょっ…
[無限とも思えるアイコの結果。
互いの意見を折半し焼き鳥屋"アガリナシ"にてとりあえず生中となる二人がいた。]
[じゃんけん地獄の固有結界展開。
あまりにツーカーすぎる二人があいこの限界に挑戦する……!
頃にはとっぷり夕暮れ。烏の鳴き声が郷愁を誘う]
う、む。埒が明かぬな。
それで手を打とう。
執事喫茶はまたの機会に。
[そしてメイドカフェでいつかバイトするんだ]
血も足りぬことじゃしのう。レバーレバー。
[店先に堤燈のぶら下がった暖簾を潜って(胡蝶は背が届かない)焼鳥なう。意気投合してうっかり生中を頼んでしまった。お嬢様の姿は見る影もなし、完全にOYAJIである]
[まずは塩。出てきたネギマは鶏肉ではなく豚バラ肉。塩コショウが旨味を引き立てる。そしてカラリと焼きあがった鶏皮もつまみ終えてから生中をくいっとひといき。]
………ほぉぉぉぉう!
[きゅーーーーっときた!]
飲んで歌って踊って、パーっと忘れるか。
[いや、これから夜だし昨日の大惨事も忘れるわけにはいかないのだが。
キンッキンに冷やされ、ジョッキの表面に水滴を纏わせた琥珀色の液体。これが作法だと乾杯一つ、ごっきゅごっきゅ飲み干した]
ぷは〜〜〜〜
この一杯のために生きておるのじゃ〜〜〜。
[どこからどう見てもOYAJIです、ありがとうございました]
手羽先ーせせりーハツに砂ずりにーつくねとレバーレバーレバー。
なるほどなるほど、ふむふむ。なるほど。
[胡蝶より焼き鳥屋における礼儀作法を学び、そして食う。さらに飲む。
思えば遠くへ来たものだ。このように至福のひと時がよもやまさか聖杯戦争のど真ん中で行なわれようとは誰が予想したか。]
ほほう、このコリコリがまた。ふふむ。コリコリが。
[軟骨が特にお気に召した様子。そして更にジョッキが追加される。]
あー、漲るのう。染渡るのう。
おぬしもなかなかイケるクチではないか。
よし、ここは儂の奢りじゃ。じゃんじゃん飲むがいい。
[豪快に笑いながら、早いペースでジョッキを空けていく。
頬は照り返しだけでなく、既に大分赤らんでいた]
戦士には休息も必要じゃしのう。
[食べ終わったレバーの串で、セイバーの陣地の軟骨を攻撃、拉致]
ぬ、この、それは人としてあるまじき姿ではないか胡蝶殿っ
[囚われの軟骨を奪回すべく出陣………と見せかけて最後一本となっていたレバーを強奪!]
おぬしこそ、仮にも英霊が
そんなせせこましい戦略をたてるでないわ。
[串を構えて睨み合う二人。
後ろから店員さんの「追加かしわと皮とボンジリお待ちー」の声で仲直り
ふふん。この串とて貫く得物である事に変わりはないであるよ。ならば我が輩の独壇場…っ
[「追加かしわと皮とボンジリお待ちー」
一時休戦!
しかし串はよく見たら三本だったっ
ファイナルラウンド、スタート。]
ふふふ、日本の伝統武芸、串の舞に敵うと思うたか!
[胸張って勝ち誇り。英霊負かして有頂天]
うむ、いい具合に腹もこなれて解れてきたところで、
次に行ってみるのじゃー!
[千鳥足の二人が次に向かったのはカラオケのようです。
世界の終末ならぬ、週末のダメオヤジがここに]
ふぅむ、侮るなかれよ胡蝶殿。
[ハイテク機器相手では不利かと見えたワラキア公が勝ち誇る。]
このようなもの、ほれ、聖杯から得た知識をフル動員すればこのとおり………。
ぶらーっく・ろーっく・しゅーぅたー 何処へいーぃったのーぉ
[CV:若本規夫。]
こ、これは……!
24000まであがっているじゃと……まさか、
あやつの歌唱力は18000がやっとじゃった……!
聖杯の力を侮っておったようじゃな!
空気読まぬオヤジの選曲を遥かに越えた至高の……!!!!
ええい、ここは素直に負けを認めるのじゃ。
むしろ聞き手に甘んじようぞ。
[星間飛行をリクエストしてみた。キラッ☆ミまでフリつきでやってくれると信じている]
………故郷流れて幾光年。流れ流れて銀河の妖精。
涙とともに歌います。あたしの歌…お聞き。
[キラっ☆ミどころか色々あってこの有様。
繰りかえしますがCV:若本規夫。]
── 忍神町 ──
[再び忍神町に足を踏み入れる。
無頼と待ち合わせはじめて、聖杯の糸で繋がった者同士が顔を合わせた、聖杯戦争開始直後のあの日以来。町の様子は変わらない。龍脈すら枯れた気配、すべての魔力が不自然に消えた人気の無い町。
あの日と異なっているのは、バーサーカー1人ではなくラナと共に居る事。]
──…
[両手をゆるやかに広げ、目前にかざす。]
…なんてことだ。
[まだ傷は残っている。]
令呪を代償に…
魔力なんていいから、これを治してほしかった。
[ひとつ暴言を吐いておいて、溜息。]
まったく、すっきりしない。
[二度寝する気分でもない。]
よっと…。
[立ち上がり、水を呼ぶ。]
今日も頼むよ。
[水を変質させながら、身体の手入れ。]
―拠点>>52―
[鞄の中から顔だけ出したトナカイにレタスを差し出しつつ、
自分はシリアルと牛乳、という簡素な朝食を取る。
随分残り少なくなった、再冷凍アイスも食後に一つ。
…エラトが居た時の食事は、考えるとすごく豪華だった。
キッチンのカウンターに放られていたリモコンを
無造作に手にとって、テレビへと向けた。スイッチを入れる。
ブラウン管に映し出される流れる映像に、灰銀をゆるりと瞬いた。
隕石落下のニュース。…どうやら日本では無い様だ。
此処から西の、どうやら大陸の方らしかったが母国でもない。
ニュースキャスターの流暢な日本語は、少し難しくて良く判らなかったが。
――ふぅん、と まさか聖杯に繋がっている事とは思わず一つ相槌を打って
興味を失くしたか、もう一度リモコンのボタンを押した。番組が変わる。
ぽち、ぽち、とチャンネルを数秒ずつ変えていく。
子供向けらしい番組で、他のチャンネルより数秒長く留まって
最終的には、ブチン、と大きな音を立ててテレビは再び沈黙した。]
――ん。…いいよ。
…マスターの誰かが、令呪を失ったのは間違いないんでしょ?
[セムルクの言葉に、少しだけ考えて。――しかし首を振った。
確かめに行ったところで、得る情報は然したるものではない。
…精々、令呪の剥がれた痕に、罪悪感が募るだけだろうから。
――この数日で、随分現実から目を背ける事が上手くなった気がする。]
それより。…ちょっと、忍神町に行ってみようと、思って。
[遠出をするには、あまり体力に余裕がある訳は無いが。
実際に見た事がある訳ではない。
――ただ、…今朝の夢を思い出した時に、
既に荒廃したと言われる隣町を思い出した。其れだけだ。
自分の記憶の中に、その様な場所の見覚えは無い。
夢は、情報や記憶を具現化すると言うから、もしかしたらと。]
―忍神町―
[其れから数刻の後。
サーヴァントと共に、初めて足を踏み入れた場所は
思っていたよりも、荒涼としておらず、けれど想像よりも酷く寂しい場所だった。
人気と言うべき気配は、殆ど無い。
これが、前回の聖杯戦争の 傷跡。
今更ながら、胡蝶の言っていた言葉を理解した気がして、僅かに灰銀を細めた。]
…、嗚呼、けど、
[少しだけ夢の風景とは、違う気がする。
ならば、何処だったのだろう。 知っている場所の様な気がするのに。
考えてみるけれども、やはり答えは出てきそうに無かった。]
セムルクは、前も 来たんだよね。
…前も、こんな感じ?
[鏡の前。
髪を整える。
ブライはいないようだ。]
どこをほっつき歩いているんだか。
[いい加減ストレスが溜まってきている。
一度怒っておきたい。]
…。
[しばし手が止まる。
不機嫌。]
[拠点での事を少し振り返る。硬いアイスを紅い葡萄酒に浸しながら食する事で、アイス消費に貢献しつつ。テレビのチャンネルを魔法の様に次々とかえるラナにこう答えた。]
誰が令呪を失ったかは……。
敵と遭遇すれば消去法で分かるな。
令呪を剥がれた組をのぞけば、もう半分になっている。
……忍神町に行けば、
8組目と会う可能性も高いが──、
と、あの町で 最初に彼等と私は会った。
[前回戦争の舞台、前回戦争優勝者の拠点。後になってみればとても分かりやすい事実。それでも良いかと尋ね──それから。今、忍神町に居る。町の様子は「前も、こんな感じ?」と問われて、首を傾けた。]
忍神町の様子は、特に変わってない。
何か、気になる事が……。
[問いながら思い出すのは、やはり聖杯が示す夢=幻視《ヴィジョン》]
[最初にこの町を見た時の衝撃が無いのは、聖杯が見せる未来に望む景色と比べれば、まだ人が住み得る可能性を持った場所に見える所為だろう。
事実、此の町は近く封鎖解除される予定になっている。]
嗚呼、世界の終わりは
きっとこんなものでは……。
[口元を骨張った手で覆い、零れるように呟いた。]
[一通りの手入れを終え、水を仕舞う。]
ま、大丈夫かな。
[魔力は落ち着いている。
供給の揺れはほとんどなく、また、その先に別の異質な存在を感じることもない。
それはまた、やはり、ライダーがその存在を失ったのだということを表してもいたのだが。]
役に立たない。
苦労をかけた挙句――
闇に喰われ僕に哀しい思いをさせただけだ。
[不機嫌さから解放されることがない。]
――…ん、 この町が気になるって、言うか。
夢が。
[ぽつ。と。首を傾ぎながら呟く。
何が違うのか、あの夢が何を示していたのか――
己には思い当たる節もなく、結局判らずじまい。
サーヴァントの呟きにも気付くことなく、もう一度町を見渡した。
前回優勝者の、拠点。
此処に来る直前に言われた事を思い出して、自然眉が寄る。
それでも、此処に立っていても意味が無いと中央区へと足を向けた。
…あの男――無頼に逢うのは、聊か気が滅入るのは否定しないが
(如何せん、初対面の印象が宜しくない。人気の無い所で襲い掛り
声を出さないように抑え込むなど、どう考えても暴漢紛いだ。)
遅かれ早かれ相対するのは違いが無いのだし、
そう言う意味で言うならば、8組目という彼らに会うのは
昨夜の様な、下手に街中であるよりは歓迎すべきところ。]
[と、気付く。
声が聴こえる。]
…とても久しいような気がするな。
[近く、覚えのある魔力の流れ。
同質の魔力を――
昨日にも、得たばかり。]
[聖杯の力を手繰る。
こちらに近付く様子はない。]
…仕方ない。
こちらから出向くか。
[慎重に帽子をかぶる。
様々な角度から確認。]
よし、っと。
今日も僕は美しい。
[少し機嫌が直る。]
否、一見 元通りに戻りそうにみえても
龍脈が枯れてしまっていては、
人の営みの定着が難しいだろうかこの町は……。
[ラナに「夢」と言われて首を傾けた。繋がっていたと言う事には気付かず、ただ魔術師の予兆のようなものか。だが、それはそれで注目すべき事柄のような。]
──何か、気になる夢を?
んーなんか、嫌な感じの…
どんな、って言われたら
…朧げで、はっきりとは思い出せないんだ。
ちょっと似てる気はするんだけど――
[こんなの。 と指差すのはまさに今いる町。
探索するかのように、ゆっくりと町の中の方へと足を進める。
ぴくりと、令呪から伝わる気配に足を止めたのは、丁度、中央へ来た頃か。]
−西ブロック−
[青年の死を確認し、教会を後にした]
これで聖杯の所持者はあと3つ。
バーサーカーのマスターを除ければ2つ、か。
[戦争も終わりに近づいている。
今度こそ、望んだ世界を手に入れることが出来るのだろうか]
[夢=幻視《ヴィジョン》──メイアル・ユーリの令呪が聖杯を通過する事によって、ハインリヒにもたらされた能力は、当初のメイアル・ユーリが使用出来た能力を大幅に上回っていた。
メイアル・ユーリの能力が秘めていた可能性。
聖杯自身が明確に夢=幻視《ヴィジョン》を繋がった者に伝えたいと言う意思。
ハインリヒが呪われて有りバーサーカーのクラスで召還されるべくあった存在である以前、キャスターの能力資質も持った英霊で有った事(『魔女に与える鉄槌』で召還出来るものは、かなりの幅がある。)。
すべてが化合した結果が、
昨夜の空想具現化と召還の失敗における隕石落下。
バーサーカーは、それらの事実の一部しか知らない。英霊の範囲を超えてしまったルールブレイクの歪みが、如何して自身に返ってくるのかも。
ただ、マスターの夢には意味があるものかもしれないと。]
──…ッ
[ラナの言葉に周囲を見渡した。
口元を手で覆ってから、こめかみに手をやり、目に見えて驚いた様子を見せる。
動揺から、やってくるナルキッソスの気配に気付くのは少し遅いかもしれない。]
[いた。]
…ふたり。
[反射的に水の一部を霧に変える。
光を屈折させておいて、近付く。]
あれは――
[バーサーカーのマスター、だ。]
ならば、少なくとも、まだ。
[闇に喰われては、いないだろうか。]
…? どしたの、セムルク。
[明らかに、平常とは言えない様子。
浮かんだ驚愕の色に、灰銀を一度二度、と瞬く。
それ程に、おかしな事を言っただろうか――
其処まで考えて、セムルクの呼んだ名に、僅か見開いた。
令呪の伝える熱は、確かに近くに――サーヴァントの気配。
それでも、光の屈折を行使されれば、人の目に捉える事は酷く難しい。
じり、とセムルクの方へ、近寄った。
不用意に離れれば、 先日の事もある、どうなるか知れない、と。]
やあ。元気そうだね。
[挨拶。
マスターがいれば、気付かれるのは間違いない。
姿が見えずとも魔力は隠しようがない。]
さて…何をしに来たのかな。
[姿は隠したまま、問う。]
その夢 は、
──…ッ
[その衝撃を如何説明したものかと悩む間も無く、水を纏う煌めき──が近付いて来る。姿は何故か現さない為、響く声だけが届く。
サーヴァントからラナを背に庇うような形で立ち。
もしもの時は、何時でも宝具の召還が出来るよう、片手を自身の胸に当てた。]
──…やあ、
そちらもまだ残っていたか。
流石、前回優勝者…だ。
[持ち上げる口端に緊張感。]
寧ろ、此処で起きた事を知った上で、
この町に居る、そちらの気持ちを聞いてみたい。
……、
[じり、と。一歩後退して、セムルクの後ろへと回る。
姿を、此方から捉える事は出来ないのに
向こうからは見えているのだと思うと、酷く居心地が悪い。
尤も、相手の特徴は聞いているから――姿が見えない、というのは
此方からすればもしかすれば幸いなのかも知れなかったが。
(胡蝶の様に、愛が行き過ぎて『殺したい』とか
言い出す様な事になってもあまり宜しくないのは判る。)]
――何も無い所で逢うなんて、…互いに暇を持て余してるって事なんじゃない?
[勿論、冗談。 見えない相手に小さく肩を竦める。]
ただ、…興味が沸いたから、見に来ただけ。
前回の戦場にして――虚無と果てた町って聞いたから。
[夢。その言葉に興味を持ったようであれば、
今朝方見た夢が、此れを彷彿とさせる場所だったのだと言って聞かせ]
無頼、ナルキッソス。
二人は……聖杯が見せる《ヴィジョン》を、
より明確に理解する事が出来るの だろう?
[ラナの言葉に嗚呼やはりそうだったのかと耳を傾けながら、ゆっくりと確かめるような口調でナルキッソスに伝える。]
すんでのところで、なんとかね。
[肩をすくめる。
見えはしないだろうが。]
だって、僕らの拠点はここにあるからね。
何度か隣町の方に拠点を移そうかとも思ったけど…なかなかいい家を持っている人が見つからなくて。
傷付くなあ。
せっかく君の大事なマスターに害を与えないように、姿を隠しているって言うのに。
[虚無と果てた、か。]
興味、ってねえ。
虚無に興味を示すのは…
本当は危険なことだ、と思うよ。
それは闇とつながっているんだから。
聖杯が見せるヴィジョン…。
[目を瞑る。]
ブライのことは知らない。
けど、僕は、確かに、君よりも聖杯のことを感覚的に分かっているかもしれないね。
どんなイメージを見るのかな。
――そうかもね、
…あんまり安全な場所ではなさそうなのは今思い知ってるトコ。
私だって、変な夢みなきゃ来る事も無かっただろーし。
[ナルキッソスの言葉に、小さく首を竦める。
彼の言う「闇」が、真に一体何を示すのか――
いまいち、ピンとくるモノは残念ながら今の己には無い。
もし本当に虚無に対して純粋な興味で、惹かれていたのなら、
もしかしたら、理解もしていたかもしれないが。
…しかし、心配頂かなくても――
簡単に闇に引きずられる心算は、無い。
聖杯の見せる、ヴィジョン。
その言葉に、両者の顔をゆると交互に見やった。
何の話か、…二者間で通じているのであれば、
例の聖杯の恩恵を受ける者である故の会話だと、容易に想像はつくが。]
そう言えば、最初から言っていたな。
……抽象的で理解し難かったが、聖杯の事を。
[終末の世界をナルキッソスに語る。
荒涼たる大地。
煌めく星空だけが残る無人の星。
聖杯が望む世界の、夢=幻視《ヴィジョン》
──それはバーサーカーのマスターであるラナも共有してしまったもの。]
それから、
漆黒の太陽(太陽にしては無機的な)が落下する。
[黒/闇で繋がるイメージ。
落下させ得る物をバーサーカーは召還してしまった。]
「闇に飲み込まれるな」
とも言っていたなナルキッソス。
私には、結局まだよく分からない……。
それを口にする当人、それからマスター無頼が、
闇に飲み込まれる事は無いのか と。
そりゃあ…
まあ、ほら。
僕は聖杯と「同じ」だったから。
[また抽象的になる。
伝えようがないのだ、ここでは。
現出した身体に縛られた自分では。]
そのイメージは…。
[再び、沈思。]
そのイメージを、君のマスターも見たのかい。
よく正気でいられる。
[感心する。]
まず、最後の質問から答えよう。
僕らが闇に飲まれる可能性。
それは、ある。
今も、踏ん張っていないと、闇のイメージに飲まれてしまいそうだ。僕は、ブライや君よりもずっとその闇に近付いたからね。
[手をかざしても、その手は見えない。
あの絶望感だけが今も胸に残る。]
そのイメージは聖杯の望みに近いものだが、微妙に違う。それは、闇がもたらすものだ。そのイメージに喰われれば、黒い衝動だけが残る。
…すなわち、滅びを望むような。
どんな夢、って。
[興味があると言われても、と眉を寄せる。
上手い事説明が出来るのかは、正直怪しい。
所詮夢の話。起きてしまってから、随分記憶は朧気になってしまったし
曖昧なあの感覚を、 口で説明するには難しいけれど。]
――敢えて例えるなら、此処と 似てる。
でも此処よりもっと、…何も無かった。
何の生きている気配もしない、って言うの、かな。
[寂しくて、嫌な夢だった。 そう付け加える。
感嘆の言葉で、正気を称賛されても――褒められているのかいまいち判らない。
実際、今に正気を保っていられるのは、ヴィジョンを共有してしまったと言え――
きっとほんの、表面の部分にすぎなかったのかもしれない。
何せ、目が覚めてしまえば記憶も薄いような、遠い「夢」だったから。」
「僕ら」の望みは、滅びに近い。
でも、正確には違う。
生あるものが、死を望むことはない。
それは、当たり前のことだ。
誰も、本当に滅びを望んではいない。
でも、この街は、こうなってしまった。
この街を変えたのが、その闇だった。
その闇は、僕たちが生んだもので、
君たちが生んだもので、
この世界が生んだもの。
聖杯はその闇を受け止め続けてきた。
滅びを望まないはずのものの奥深くに潜む闇が凝り、溜まり、やがて噴き出せば、こうなってしまう。
そして、その闇が消えることはない。
──…
繋がっていた のか。
ルナと も 遠く。
[背中に隠したラナの語る言葉と彼女の気配に、マスターを胸の中に抱きしめたい衝動に駆られる。壊れ物を扱うのではなく、腕の中に強く。
今は日の支配する刻であると言う理由だけではなく、闇《ヴィジョン》は遠いものに感じられる。小さく重い息を吐いた。]
……と、ナルキッソス。
私には 区別が付いていないかもしれないな。
聖杯の願いそのものと、
破壊や滅亡を望む闇に侵される事の差異。
ライダーのあれは、のまれた結果か?
令呪を繋ぎ直したのが無頼なら、
彼女の破滅的な消滅は無頼の所為と言える気がするが。
[背中にある令呪で繋がったマスターの気配を感じながら、光の中に身を隠したままのナルキッソスに首を傾けた。]
例外が、虚無――
そこに闇はない。
闇に飲まれた時、滅びを望むのは、だからだ。
虚無には闇もない。
だから、虚無を、望んでしまう。
違うんだ。
それじゃ、ダメなんだ。
だってそこには、光もないんだから。
例えば君が、マスターを大事にするような…。
私がとどまっていられるのは、おそらく
私の魔女──マスターが居る所為だ……。
[召還されないままの宝具。自身の胸に添えたままの手のひらは、神の御前に告白をする者の仕草に似る。]
「僕ら」の――
闇の中で絶望した僕と聖杯の。
望みは、世界を作りかえること。
光が闇を照らし続けるような場所を探す長い旅に、世界を送り出すこと。
この世界に、別れを告げること。
滅びだけじゃない。
その向こうに再生があると、僕らは信じる。
[ナルキッソスの願いを示す言葉に、溜め息を漏らす。]
──嗚呼、私は確かに。
暗黒の世紀──神の手に因って粛正された清らな世界を望んだ。
退廃と淫蕩のバビロニアを滅ぼし。
そう望んで 此処まで来た はずだった。
確かに、君と私は「同質」 なのだろう。
聖杯によって糸が結ばれた理由も……腑におちよう。
──嗚呼
だが、
[首を横に振る。
そして、ナルキッソスに背を向け、背に隠していたラナを振り返りその頬に手をのばした。目隠しを解き、確かめるように真紅が覗き込むのは灰銀の瞳。
今しがたのナルキッソスの願いを如何思うか、ラナに眼差しだけで問い掛ける。]
[おとこは、唇を歪めるのではなく、笑う。
ラナが如何答えるのかは知れない。
けれども、この世界を別れを告げると言う事は、ラナを死なせると言う事に他ならない。──それは、否だった。
笑って、ナルキッソスに真紅の視線を向け、もう一度首を横に振った。その色、あかは 忌むべき狂気の色であったはず。]
──残念な事に、
その願いには、私は同意する事が出来ない。
嗚呼、
此処で、君達とはお別れだ。
一度、繋がった糸を絶つ事は出来ないのだろうが。
次に会う時は、完全に敵だと考えてくれ。
無頼にも、そう伝えてくれ。
[水の煌めきの向こう、美しい者が笑う気配。]
光を失わない事を心から願う等
奇妙な 事を言う。
此の世界を一度、
終わりに導こうと言うのに。
[ナルキッソスとの簡単な別れ、それから何も無く成ってしまった町からの撤収**。]
−西ブロック−
[少しだけ空を見上げる。
聖杯を通じて感じる気配。それは、バーサーカー達とナルキッソスの決別を伝えていた]
新しい世界が真にすばらしい世界になるとは言い切れないさ。
それでも俺は願っている。
―南ブロック―
[一生分は笑った気がする。
妙な艶と渋味を備えた紳士の歌声は、どの曲でも十二分な破壊力を発揮していた]
あーあーあー、おっかしいのう。
[酒精が齎す酩酊も相俟って、ケタケタ笑いながら何度もセイバーにぶつかりかけた。
戯れに腕を搦めたところで、水さす生真面目な声]
……は? 援助交際?
[星の瞬く時間、飲み屋街に見た目より若く見える娘と黒衣の紳士が連れ添うと、そう見えるらしい]
ちっ……違う違う違う違うぞ! 大きな間違いじゃ!
こやつは儂の……えーと何じゃろう。パパ?
いやじゃからそういう意味ではなくてじゃな!
そもそも儂は未成年ではないからして……!
[ふと、昼間の攻防が脳裏を過ぎった。ぽむ、と両手を打つ]
何を隠そう、こやつは儂の
執 事 じ ゃ ! !
[サーヴァント=召使と捕えるなら、嘘は言っていない。酔いも醒めてすっかり真顔で力説。
が納得して貰えるはずもなく、ちょっと署まで、と連行される破目に陥った]
―南ブロック/署内―
『名前と住所と電話番号、それから保護者の名前も書いて』
いや、じゃからこちとら成人じゃと何度も言っておるじゃろうが。
この免許証が目に入らぬかっ!!!!
[べしっ、と警察官の額に突きつける]
それでも信じられぬというなら、その目で確かめるとよい!
[酔った勢いで何とやら。衿に手をかけ脱ごうとしたのはさすがに止められた]
ええい、おぬしでは話にならん。署長じゃ、上の者を出せー!!!!
[そんなこんな騒ぎを聞きつけてやってきた、署長の杉原氏談]
『ええと、望月さん? あの望月さん?
ああなんだ、じゃあ帰っていいよ。お父さんにくれぐれもよろしく』
[図らずも父親のコネで無罪放免。揉消された。大人って汚い]
―西ブロック→南ブロック―
令呪・・・・・・の反応だと?
[僥倖、といえるのだろうか。
恐ろしいことに署内から気配。なんという事だ]
・・・・・・
[遠巻きに警察署を眺めている]
―中央ブロック・ホテルグランパシフィック /朝―
[手当てはいいと断る忠勝に、ふぅ、とひとつ溜息。]
…小さな傷でも、馬鹿にすると後が大変ですよ。
[言いつつ、救急箱の蓋を開けて、出した道具を仕舞い込んだ。]
……ひとつ、聞いてもいいですか?
自分が死ぬ、とわかった時、どんな事を思いました?
―南ブロック―
[とりあえず、消費された時間のおかげで、短気に拍車をかける泥酔状態は解消されたっぽい]
……こんなことをしておっても、
やっぱり忘れることなどできぬ、か。
[夜は容赦なくやってくる。聖杯戦争が終結しない限り、息抜きで誤魔化しても、現実から目を逸らしたくても]
ちと、頭が冷えたところ、で……ん?
誰かが此方を窺っておるようじゃな。
[もう、随分と数が減ってしまった参加者。
滝川かルナか、それとも――]
[出てきたのは和風な風体の女性。
どうやらサーヴァントはいない・・・・・・ようだ
だがいくら無頼といえど警察前で事を荒立てる気にはならない。
であった以上戦う為に他にいどうするか、次の行動へと集中力を高めながら相手の出方を見る]
令呪剥ぎが横行しておるのに、
サーヴァントを伴わぬとは、随分と自信家のようじゃな。
[さて、飲んだくれオヤジと化していたセイバーはちゃんと機能するだろうか。正気を取り戻させるためと内心言訳して、その腕を思い切り抓っておいた]
昨晩のような悲劇は繰返させぬ。
あちらがやる気なら、とっとと場所を変えるぞ。
[胡蝶の言葉にふむ、と頷く。]
場所をわきまえた考えをもつ者であれば我が輩は助かるであるが、ね。
[胡蝶が探る方角へと視線を向けた。]
・・・・・・まさか。
[サーヴァントが泥酔しているのか!?
付近にサーヴァントはいない、と判断したがどうも甘かったようだ。
いや、甘かったのかどうかわからない。ともかく、予想外のサーヴァントの存在に驚愕を隠し切れない]
……おぬしか。
[そこに居たのは、シスターでも銀髪の少女でもない]
八組目のマスター。無頼陣、じゃな?
お初お目にかかる。儂は望月胡蝶。
[丁寧に辞儀をするが、眼は少しも笑っていない。
瞬間、周囲の雑踏が遠のいた気がした。空気の凍りつくような緊張感]
ふふ、漸く会えたのう。色々と……嗚呼色々と。
折り入って話がある。勿論、場所さえ許せばそれ以上も。
死ぬ時、ね。
[思い出すは、自分の体が傷付いたという事実。
戦いに身を投じて以降、初めての出来事に、
そのときは不思議と、何事も無い様に受け入れた。]
別段、何も思いませんでしたな。
[悔いもなければ、思い残すこともない。
不思議な達成感と共に、自然と在るがままを受け入れた。]
こんな戦馬鹿でも、主君の天下に一役買えた。
誇りに思いこそすれ、悔いなんざねぇ人生だったもんで。
つまりは……
やりたい事が、残ってなかったんでしょうなぁ。
[徳川家家臣・本多忠勝。
その名を持って出来る事は、きっともう、無かった。]
話、か。
まあいいだろう、君達に付き合おう。
[少しだけ興味を持った。
これ程無防備なサーヴァントと、出会った瞬間にいきなり名乗るマスター。そしてその会話から漏れる”8組目への執念”。
無頼にとって、それは何故か心地よく感じる部分もあった]
[やりたい事があるなら、死ぬな。
己の言葉を逆に捉えれば―――
やりたい事がないなら、死んでも構わない。]
だからですかねぇ。
つい最後に、"もし"って思っちまった。
[そう、もしも……誰にも仕えずに、
只管強さと敵を追い求めていたなら。]
"本多平八郎忠勝"じゃなく、
只の一人の武人だったらってね。
[戦が無くなり、一騎討ちを申し込まれたことはあった。
だが、其処に己が戦装束で到着すれば、相手は戦うことなく逃げ出したのだ。
相手は殺し合いではなく、試合のつもりだった。
埋まる事のない周囲と自分の意識。
その時悟ったことは、もう己の……
戦人としての居場所は無いと言う事。]
居場所がねぇなら、消えるだけ。
俺はそれを、受け入れただけですわ。
[それは、今も同じ。
故に己には願いがないのだ。
戦い自体が、願い。
ならばその戦が終われば、己の居場所も願いも尽きる。
いや―――願いは"無かった"と、今は言うべきか。]
契約主が失礼したであるな。
このままでは色々と人目を集めそうであるし、まずは先に場所を変えようではないかね。
ああ、我が輩なら大丈夫であるよ。ほれ、酒は飲んでも飲まれるなというではないか。
[赤ら顔。酒飲みの大丈夫ほど大丈夫でないものはないが。]
手段を選ばぬ輩ではなくて安心したであるぞ?
[目つきは鋭い………はず。そのまま無頼を促すと、胡蝶の背中を押すようにして移動を始めた。]
そうとも、この愛は届くことはないと、
ナルキッソスが儂を愛することはないなどと、
一万年と二千年前から知っておるのじゃ。
じゃから愛して欲しいなどと我侭は言わぬ!
ただ愛してくれぬあやつが憎くてたまらぬから、
儂以外までも虜にするのが許せぬから、
あやつを殺して、儂も死……いや儂は死なぬ。
あれ、何の話じゃっけ。
[セイバーにつつかれながら、ともあれ警察署の前を離れた]
というか、ホイホイついて来て良いのか?
儂はノ……いやいやいやいやいや、
心置きなく戦える場所で、おぬしを倒す肚やも知れぬのに?
[眦に力をこめたまま、無頼を睨む。
ナルキッソス曰く、彼も普通のマスターだと言うが、この太々しさは何だ]
さすがに、前回の勝者は肝が据わっておるというか。
多数のサーヴァントを操る力と聖杯の恩恵とやらの前では、
儂等など恐るるに足らぬということか。
中々君は今までとは違う性質の人間のようだな。
[少し悩みながら]
まず君の寿命についての考察と、そもそもナルキッソスの存在時期を考慮するに1万2千年前というのは比喩だろうと思うがそれでいいのか?
[そうしてセイバー達についていきながら]
あと、残念だがどれだけ恨んでも彼を好きになる人間はこれからも出てくるだろう。だがそれは彼が口説きたいから口説いているわけではない。気がついたら行為をもたれているのだ。
無論君もその一人である可能性は高いが、その気持ちが確かならば、あくまで殺害という怨恨による願いの成就よりも先にもっと努力すべき事はあるだろう。
その結果を考慮してナルキッソスを殺すなら。
別に構わない。
[この一点においては正直な所無頼も困っていたことだ。1億と2千万年前ではなく3年ほど前から。少しはナルキッソスにも反省をしてもらいたい]
ついてくる理由か。
簡単だ、君達と現在の自分の戦力を考えて決して逃亡する必然性は無いと判断しているからだ。
ただし、勝てるという確信があるわけはない。あくまで結果戦いになったとしても満足した戦闘が行えるという判断だ。
たいした自信であるな。
[無頼の姿を見やりながら、素直な感想を述べる。]
その自信が慢心や驕りでない事を願うであるよ。
[言いながら、向ける足先は西へと。]
それは…
[不思議な回答だった。
悔いがない――。英霊とは言え、元は普通の人間であり、戦いの中に身を投じながら、その一生を穏やかに終える事が出来るのは、極めて稀なのではないだろうか。
多かれ少なかれ、人は迷い、悩み、飢え、悔やむもので。
人生の終場に、もう遣り残したことは無いと言える人間が、いったいどれだけいるのだろう。]
……私も、そんな風に終わりを迎えたい。
[姫倉の最後を看取り、改めて気付いた。
この戦いは、常に死と隣り合わせである事を。
もちろん、死にに行く為に参加したわけでは無い。
勝って、――生き残る。その想いは今も変わらない。けれど。]
…ひとつ、お願いしたい事があるんですが。
[そう言うと、胸元から小さな小袋を取り出した。]
[足はセイバーについて西へ。
南は住宅が密集しているし、駅は昨晩の救助復旧作業で人は絶えないだろう]
違う性質?
……それは魅了に罹り易いという意味か。
魔術師としての未熟もあるじゃろうが、
このあたりは個人の資質の範疇でどうしようもないのじゃ。
[しかし、素ボケといっていい、真面目ながら的を外した珍回答。
宝具ハリセンで後頭部を一発しばきたい。いや我慢]
美しさは罪ということじゃな。
本人が望んだものではないという時点で、成程呪いじゃ。
[だから救いたいといった類の感情は湧いてこないあたり、正しく魅了が齎すのは愛ではなく欲である。
そも、殺害してしまえば元凶である魅了の術も途切れるという点では、方法論は間違っていない]
しかしそなたも、戯れに人妻に手を出して破談させた挙句、
破壊工作を行わせるなど、危機的状況に違いないと思うがな。
・・・・・・人妻?
一体何の事だ?
[少しだけあっけにとられた顔をする。
サーヴァントを人妻扱いされるという認識がどうもしっくりこない]
残念だがそういう趣味は俺にはない。
…何度か見たと思いますが、私は自分へ向けられた攻撃を、自動で防御する事が出来ます。
それは、自分の意思で行われるものでは無く――
滝川が代々受け継いできた力、――移植された子宮の力によって、宿主である私自身が護られている。それだけの事なのです。
そして、その力の源は、……私の生命です。
強い威力のものを防御すれば、それだけ多くのエネルギーを消耗する事になります。
そしていつか生命力が枯渇した時、……「これ」が私の、滝川の党首の最期です。
[そう言って、袋の中から枯れた木の枝のような物を取り出す。]
私達一族は、子宮に生かされ、そして殺される。
[思えば聖杯戦争の開始から、変わらぬは見下ろす月ばかり。
街明かりを、愛しむように一つ一つ目に映しながら歩むと、遠く川のせせらぎが聞こえてきた。
人が生活を営む空間から離れれば離れるほど、利き手はいつでも武器に届くようにと]
エウロパのことじゃ。
昨晩彼女が何をしでかしたのか、
マスターであったおぬしは知らねばならぬし、
それは等しくおぬしの責任でもある。
……少なくとも、姫倉がマスターじゃった時、
彼女は人命を弄ぶような英霊には見えなんだ。
或いは、忍神町に比べれば
あの程度は大したことではないと?
……いまさら、それに逆らいたい訳ではない。
すべてを受け入れて、頭首になりました。――ただ
[そっと、枯木を掌でなぞる。
先代の――母の、指だったもの。]
……こんな風に、形を残されていたくないんです。
( 灰は灰に
ちりはちりに )
・・・・・・
[昨晩のエウロパと、そしてイカロスの行動は確かに行き過ぎたものではあった。
無闇な戦闘を行うのは好みではない。
だがあの段階でのセイバーへの挑発ならば、許容できないものとも言い難い]
罪は償おう。この身を持って。
死んだ頭首は、この状態のまま、台座に祭られる。
それはとてもグロテスクで……悲しい光景。
それだけが、幼いころからずっと苦しく、どうしても受け入れられない事でした。
ですから…
もし私が先に死んだら、忠勝さんの手で、塵にしてもらえませんか。
だが、それは君にも言えることだ。
こうやって令呪を所持したまま昼間から町を徘徊し、あまつさえサーヴァントはこの有様。
誰が被害を出したかではない。その状況を生み出す可能性を持った行動をしている以上、君に罪はないとは言わせない。
俺達はこの町にとって蜃気楼のようなものだ。
本来存在しない戦場を背負っている。
その蜃気楼が現実となれば、この町は日常を失うだろう。
君もまた、その可能性のひとつだ。
……そうかい。
[視線を合わせてから、微笑。]
だったら、生きなせぇ。
したい事があるなら、生きなせぇ。
死ぬ覚悟、殺す覚悟は戦において必要不可欠。
だがね、"死ぬ覚悟"と"生きる事を諦める"ってぇのは……
こりゃちぃと、違うって話で。
ただまぁ……。
―――その覚悟は、確かに受け取りましたわ。
昼に街中で生活するなと言うておるのか?
なれば聖杯戦争なぞ、人里離れた僻地でやればよかろう。
そのために、昼や人的被害の出そうな箇所での交戦を
なるべく避ける、双方その意志あらば
そもそもあんな結果になっておらぬ。
論点を擦りかえるでないわ。
状況を生み出さぬよう努力する気もない者に。
しかし、結果は変わらぬ。
あの被害は聖杯戦争に望む者が等しく背負うものじゃ。
マスターである以上、その責から逃れられるとは思うとらん。
ならおぬしは、如何にして償うのじゃ?
聖杯への願いを以ってしてか?
[踏み躙られたささやかな幸せを、取り返したいと。
それであれば自身に通じるところではあるが。
詰問からはどんどん感情と抑揚が抜けていく]
聞けば、おぬしは既に前回聖杯を手に入れておるらしい。
その結果が、今じゃ。
幾多の犠牲を払ってでも、叶えねばならぬ願いとやらが、本当にあるのか。
その点では、儂のサーヴァントとの方が話が合うやも知れぬが。
おぬしの願いは、何なのじゃ。
一体何のために、戦うのじゃ。
――儂はそれが知りたい。
[忠勝の笑みに、こちらも微笑みを返す。]
……ええ、もちろん。
[それから、自分の服の腕捲りをして、そこをぱん、と叩く。]
まずは、無頼を殴りに行かなきゃなりませんもん!
姫倉さんの分も、ね。
[胡蝶を前に、無頼を横に。いつ何がどう動こうとも対応できる状況のままに歩く。
自分が混ざる幕ではないと、会話に参加する気のない様子であたりを見渡している。
歩む道の先には――――樹那川。]
少なくともおぬし等以外のマスターは、
その蜃気楼とやらが現実を脅かすのを厭うて、
一般人に被害が出ぬよう気を払っておった。
そのために、サーヴァントを御しておった。
そういった姿勢には、儂は
同じマスターとして敬意を払う。
己が弁えぬからと言って、
他もそうであると濡れ衣を着せるのが
おぬしの話術か?
ナルキッソスは、異端と呼ばれるのはいい気がせぬだの、
仲間にいれて欲しいだの言っておったが。
おぬし等の挙動から、全くその気が感じられぬ。
殴りに、ね。
嗚呼……そりゃぁ痛快な話ですなぁ。
[ククッと笑い、顎を撫でる。
自分が目指すは、強さという山の頂点。
だからこそ、自分の力が及ばない時は
潔く他に道を譲るつもりだった。
"願いなど、他の奴にくれてやる"
あの時あの場所では、確かに嘘偽りのない言葉。
それでも、今は違う。
願わなければならない事
……兵である自分が、償わなければならない事が出来た。]
俺もちぃっと、負ける訳にはいかなくなったんでね。
いっちょ聖杯とやら、手に入れますか。
論点はすりかえていないさ。
君は誰しもマスターが善意ある存在だと勘違いしている。
一般市民への被害など考えもせず戦う輩はいくらでもいる。ならば”双方の意思あれば”などという考えは持つべきではない。
今回の参加者がどうだかは知らないが、一般市民への被害は出したくない、などというのは綺麗事だ。それを貫くだけの意思が君にあるならば、この時点で君はもう生きていないだろう。
俺にいわせて見れば、君の願いはその程度だ。
[ならば前の戦争で自分はどうだっただろうか。ふと振り返る。
不要な戦いを避けようとしても、結局は避けられなかった。
それを誰に問えと言うのだ]
聖杯戦争に限ったことではない。人間は生きていれば善意のない存在に傷つけられることもあれば、不慮の事故で失われる命もある。全てを救うことなど出来はしない。
[無頼の言葉に大袈裟に肩をすくめてみせる。
………足を止める。目の前には樹那川の土手がある。
まだ、お喋りは続くのか?といった目で二人を見た。]
勘違い?
儂が実際に会って話して確かめたことじゃ。
今回の聖杯戦争に於いての話をしておるのじゃよ。
一般市民への被害を考えもせず戦う輩は、
今回はおぬし等八組目だけじゃ。
これは断言できる。
まあ、聖杯戦争の後付けルールなぞ
知ったことない風なおぬし等に
説いても始まらぬと思うが。
綺麗事を貫いて、儂はまだ生きておるぞ?
眼前の事実は認めるものではないのか?
儂は神様でも聖人でもない故、
魔術師の枠を越えた次元での人の生死まで救おうなどと
思いあがったことは考えぬし望まぬ。
その程度と言われるまでならその程度なのじゃろう。
はて、そういうことのない世界とは、
究極的にどういうことじゃ?
人が決して死なぬ世界か。
それとも、人がそもそも存在せぬ世界か。
[腕を回す様子を見て、溜息と共に笑いが漏れる。
その後に聞かれた質問には、暫し逡巡。
そういえば、この話題について話したことはなかったか。
如何に自分が聖杯というものを眼中に入れていなかったか解るという物だ。]
俺の願いですかい?
元はね、無かったんですわ。
俺は、戦さえ出来ればそれでいい
……そう思ってたって話でして。
[だが、と。]
昨夜、人が死んじまった。
死ぬ覚悟も、殺す覚悟も"必要なかった"奴らが、ね。
ありゃぁ、いけねぇ。
君のいう今回の戦争のマスターは随分とお人よしだったんだな、と言わざるを得ない。
もし相手が君とそういう嘘の合意をし、突如街中で背中から襲撃されて命を奪われたらそれで本望だったのか。残念だが俺ならそうするし、そもそもマスターをそんな危険な状態で遊ばせるなど絶対にしない。サーヴァントとマスターが出会えば一瞬でマスターが殺されても文句は言えない。それだけの戦力差がある事を理解していないわけではあるまい。
君はどうなんだ。この戦争に参加するにあたってそんな無血戦場でいられると思っていたのか。
[少し視線を変え]
そうだろ、サーヴァント。君はきっと俺の言っていることを理解している。
別にね、奴らを救いたいとかそんなんじゃねぇんで。
だけどまぁ、戦が奪っちまったもんを返せるなら。
そりゃぁ、……責任取って返すべきですわ。
[だから、と。]
俺の願いはね。
この聖杯戦争ってぇ戦で死んじまった……。
理不尽に奪われちまった奴らの。
"道"をもっかい繋ぐ事……ってぇ話で。
君こそ矛盾しているな。自分が手を下さなければ誰がどこで死んでも構わないのか。
[少しだけ瞳が赤く染まる]
それこそがこの世界の闇だ。
我々をイレギュラーと言うならば、イレギュラーという言葉で自分達にとって都合の悪い存在をただ迫害し抹殺しようとしているだけだ。
世界は平等ではない。君のように五体満足であまつさえ戦争に参加するだけの心身を持っているものには判らないだろうが、生きることすらままならない存在はいくらでも存在する。
君たちは知らないうちに、命を天秤にかけているのだ。
[忠勝の言葉に、しばし眼を瞬く。
願いが無かった、というのも、忠勝らしいと言えば忠勝らしいのだが。]
……やっぱり、たっちんが私のサーヴァントで良かったです。
[そう、にっこりと微笑んだ。]
儂とて身の程は弁えておるから、
己がサーヴァントと離れて、他サーヴァントと行動したことなぞ、
相手を見極めた上で一度しかないぞ?
[相手はサンタさん、向かう先は病院だった]
そこで討ち取られたなら、それは儂の甘さと責じゃろうて。
儂がこうして生きておるのは勿論、
常にサーヴァントが居ったからじゃ。
その上で、相手が市街地でサーヴァント同士の
戦闘をする意志がなかったからじゃな。
おぬし等が居らねば、結果として無血戦場に
なっておったのではないか、とは思うし、
実際に現状はそうであるな。
[八組目の関わらぬ戦闘ではいずれも無機物破損は程度によりけりであったが、一般人が介入しない場所は選んでいた。ニュースを見る限りでは、他も恐らく]
そも、世界を創るなぞ思いあがりも甚だしい。
聖杯を得て、神様気取りか。
おぬしが勝手に、今の世界が理想通りでないと絶望して、
見捨てておるだけではないか。
自分の思い通りでない世界なら壊しても、
その上でどれだけ犠牲が築かれても構わぬと?
無力な者を切り捨てて構わぬと?
[忍神町、という単語を彼に認めさせただけで、誘には引っかかってくれたらしい]
その点ではもう、意見は真っ二つじゃな。
儂は、戦争が絶えなかろうが理不尽があろうが異端を生もうが、
それでもこの世界を悪くはないと思うておるし、
おぬしのように悲嘆しておらぬ。
そも、そんな壮大な話、儂一人の都合や聖杯で
如何してくれようなぞと考えぬ。
暴力を振り翳す者の理想より、
力持たぬ人がこつこつ積み上げてきた小さな生活を守る方が、
余程大事じゃと思うからな。
[会話の内容など興味なさげにしていたが、話を振られて首を傾けた。]
我が契約主が甘い考えをしている事は認めるしかないが。
[ひらり、と両の掌を振ってみせる。]
貴様の言葉の半分も我が輩には解らぬよ。
――平和ボケした願いであるとしか、な。
[そんな事を考える程に余裕ある時代なのだなと、くだらない事を思いながら。]
別に、褒めても何も出ませんぜ?
[コレも所詮、自分の物差しで正しいと思うだけだ。
戦に正義や悪などない事は解りきっている。
立場が違えば、見えるものも自然と違う。
そこに正義や悪を持ち出すなど愚行以外の何物でもない。
だからこそ、例え自分勝手と理解していても
己が正しいと思うことを、只管貫く。
それが"本多忠勝"の生き方なのだから。]
戦乱の時代を生き抜いた英霊らしい答えだ。
[少しため息をついて、胡蝶のほうを向き]
ならば、こうしよう。
俺はこれからこの町の住人全ての命を人質にとる。
もし殺してほしくなければ、君の令呪を俺に差し出せ。
そうすれば一般人には危害は加えないと誓おう。
[令呪が強く輝き始める]
俺ならこの状況下でこの町の住人一つ滅ぼすことも出来る。
その前にこの俺を倒すという思考を持ってそこのサーヴァントをけしかけてもいいが、この場から俺が逃げ切れば惨劇は起きるし、令呪でナルキッソスへ命じることも出来るさ。
彼ならばこの町全ての人間を魅了し、自殺を命じる事も可能だろう。
さて、君ならどうする。そういう話だ。
さて、もう傷も塞がってますわ。
[戦いには支障がない程度には癒されている。
己の目指すもの、己の願いの為。
もう、立ち止まっている暇等無い。
戦場を駆け続ける、それが己に出来る唯一の事。]
そんじゃ、行きましょうかね……戦によ。
[音も無く、ただ静かに。
天は、戦夜へと染まる*]
そうとも、儂の願いは不平等じゃ。
そんなこと、儂が一番分かっておる。
何故なら、儂は一人の魔術師でしかないからじゃ。
魔術師が一般人に被害を出すのは信条に悖るが、
それ以外は確かに、誰がどこで死んでも
それは当人たちの問題であって、
儂がしゃしゃり出る幕ではなかろうて。
そも、人を救えるなどと奢ってはおらぬよ。
自分を救えるのは自分しか居らぬし、
それこそ聖杯や他者に願うものではなかろう。
大それた理想を掲げたかと思いきや、
結局は世界を人質に取るか?
それこそ本末転倒じゃろうて。
[胡蝶の応えが何であれ。無頼の"交渉"が本気か否かも関係はなく。
セイバーの姿はすでに男の後ろにあった。]
――これだけの事よ。
[突き出される、切っ先。]
それが君の答えか。
つまり、自分が殺さなければ自分のせいで人が死のうとも構わぬ、というのだな。
ならば君はそれまでだ。
約束どおり、この町の住人全ての命を奪おう。
[次の瞬間、無頼の体は光に包まれイカロスの姿へと変わった]
儂はどうするかじゃと?
おぬし等は倒し、聖杯を手に入れる。
聖杯への願いも変わらぬ。
……そうとも、結局何も変わらぬ。
儂は君主ではないから、
その首で――令呪で、市民を救うなどとは考えぬし、
どの道おぬし等が勝ったなら、
この町以上の被害が出るのが明確じゃ。
命を賭けてでもそれは阻む。
事前に食い止めるも、儂の願いよ!!
[叫びと同時に地を蹴る。
後方に既にセイバーの姿はない]
[右手に握られた白銀の槍はセイバーのエストックを受け止め、そのままにやりと笑った]
はい、君達ゲームオーバー。
じゃあ無頼の許可も下りたことだし・・・・・・
こんな町、消しちゃうよ。
だからいったじゃない、お嬢さん。
君の言ってることは偽善なんだって。
[顔が醜く歪み、天使の輪が輪郭を見せ始める]
結局自分が可愛いだけさ。
他人に興味がないくせに、一般人を巻き込みたくないとかそんな事言われてもちゃんちゃらおかしいね。
さて、ここで終わりにしようかな。
[そのままセイバーに横蹴りを放つ]
ならば早くしろ。
[止められた事も当然といわんばかりに、すでにその身は横へと跳び、蹴りを避ける。]
――切っ先は既に穿っているぞ。
[天使の傍らで真空が渦を巻いた!]
どうあっても儂のせいにしたいらしいな。
もうその屁理屈も聞き飽きた。
おぬしのせいじゃろうに、
その責任を取る気さえないと見える!
キ○ガイに刃物とは、全くよく言ったものじゃな。
約束と恐喝の違いも分からぬとは。
つ・ば・さ。
[びゅん、と風が巻き上がるとセイバーの後ろに現れる]
あんまり肉弾戦得意じゃないんだから、無理させないでよね。
[そう言って銀の槍をセイバーへと突き出し、そのまま体当たりのように後ろから突き飛ばそうとする]
やだなあ、そんのなの判ってるにきまってるじゃない。
これは恐喝だったんだよ、最初から。
ほら、君の大好きな一般人の方々をまもってごらんよ!!!!!あはははははははははは!!!!!!!!
奇遇であるな。
[ゆらりと倒れるようにして…いや、倒れてP.ライダーの突進を避ける。]
我が輩、戦いは得意でないであるよ。
[倒れ転がる動きのままに真上を通過する影目掛けてエストックを突き出した。]
おっと、そんなに頑張ったら腰に悪いよおじいちゃん。
[槍がエストックを振り払い、そのまま滑空しての蹴り]
ああ、こうしよう。
君の目の前で一人ずつ殺していくっていうのはどうだい。
それで毎回君に聞くんだ。
[令呪を渡せばこの人を許してあげよう]
って。
きっとその人は君に許しを請うだろうね!!それでも君は同じ事を言い続けれられるかなあ?
これで一般人も君にとって他人じゃなくなるだろ?あはははは!!!!!
偽善で何が悪い?
そも、己が領分を越えた力を求めたとて、
あやつのような使い道しか考えぬよりは
マシじゃと自負しておる。
自分が可愛ければ、
そもそも命を賭けてこんな望みのために、
聖杯戦争に参戦はせぬよ。
[他人には興味を持たぬようにしてきたし、自身にもまた興味がない。
己が命の使い道は自分で決める、それが自身の信じた世界に少しでも近づくものだと信じて。
幾多の忍者が、そうして歴史の裏舞台で死んでいったように。
『音もなく、臭いもなく、知名もなく、勇名もなし、その功天地造化の如し』
そうあれたらよいと、それだけが揺らがぬ信念]
何を言われても、令呪を渡す気はない。
くっ…
[蹴り飛ばされた先へと自らふっ飛び転がる。]
なんとも小気味好く笑う小僧であるな。
では老体の意地を覚悟せよ――行くぞ。
[唱えし言葉は光の詠唱。辺り一面をまばやかな閃光が覆い尽くした。]
くっ・・・・・・
[一瞬眩しくて目を閉じるが、すぐに戻って]
でもそんな魔術じゃ効かないよ!!
[そして、槍を構えて次の一撃に備える]
[宙を睨む。
幻術程度、仮にもサーヴァント相手では目晦ましにもならぬだろうし、暗器も混戦中だと誰に当たるか分からない(そもそもサーヴァントに当てられるほどの精度もない)
結局は、大口を叩いても頼れるのはサーヴァントしかなく、それも相手はバーサーカーから釘刺された相手。
為す術はないと分かりつつも、離脱は矜持が許さず、腰の短刀の柄へ手を滑らせた]
――疾く、淡めよ。
[唱えると同時に、セイバーが閃光を纏って突進している。
其方に気が逸れたイカロス目掛けて、死角から苦無を放った。
闇色に塗られた鋼の切っ先が、夜を裂く。
その隙に、ガードレールの後へと身を隠し]
………。
[槍を構える天使へと切っ先を刺し――貫く事なくその脇を抜ける。
そのまま急激に速度を上げれば、胡蝶を抱えてその場から一気に離脱する。]
――は?
ちょっ……何をしておるのじゃ、敵はっ――!!
あやつを止めぬと……!!
[咄嗟のことに、何が起こっているやら分からない。
みるみる天使っぽい姿が遠ざかっていく。
悔し紛れに手裏剣を投げてみるが、恐らく届きすらしないだろう]
・・・・・・ちぇっ。つまんないの。
[逃げていったセイバーを睨みつけ]
ああいう生娘はいじめがいがあるね。もうちょっと意地悪してあげようかな、今度は。
[もう一般人云々に興味はないらしい]
だって、人質ってのは死んだら意味がないしね。
[あの胡蝶という潔癖な女性をどうしてくれようか、なんて想像していたら顔がにやけていた]
・・・・・・
コンソメダブルパンチ。
[疲れた体にはカルビーポテトチップス]
[あの状況下で胡蝶に被害を出さず戦う自信はない。
セイバーの下した結論は苦渋の決断。だが………。]
いまは堪えるであるよ。いまは…。
[ギリ、と歯軋りを圧し殺し。
叫ぶ胡蝶を抱えたままに駆け抜けた――*]
―西ブロック→―
[しかし、待てど暮らせど、嬉々として街を破壊し尽くすイカロスの姿はなかった]
……なんじゃハッタリじゃったのか?
おぬし分かっておって、儂を止めたのか?
[またしても挑発に乗ってしまったようだと、己が短気を呪いながら項垂れる。
最近、こうしてサーヴァントに諫められてばかりだ。
漆黒の外套を靡かせ疾駆するセイバーの顔を、ちらと窺った]
……なんじゃ。
串刺公も、無力な民への被害は許せぬのか。
[引き結んだ口元を確認すると、大きな溜息を吐いて暴れるのをやめた。
大人しく運ばれることにする]
それとも、儂の令呪のせいか?
……まあどちらでも良い。よく止めてくれた。
あのまま戦っておっても、勝てぬであろうことは分かっておったのにな。
[胡蝶の言葉には頷かない。]
何事もなく済んだ。それだけであるよ。
[相も変わらず表情は何も語らない。安全を確認し、胡蝶を下ろせば小さく肩をすくめてみせた。]
ルナには振られてしもうたし、残るはランサーと滝川か……。
共闘を持ちかけたところで、
本多の性格からすると、イカロス相手でも
サシの勝負を望みそうなのじゃよなあ。
[地に下り立つ体重は、まだ軽いまま。
緊張を解くと、未だ完治とは至らぬ上半身の節々が痛んだが、戦闘に支障を及ぼすほどではない。
空も地も黒い海のよう、波間にさざめく星と民家の明かり。
昨晩の光景を重ねると、矢張り落ち着いてなどいられなくなるが]
いや、本気でどうしようと悩み中じゃよ。
八組目の願いを成就させぬためには……ああ。
[ぽむ、と一つ手を打った]
ナルキッソスの方を狙えば良いのじゃろうか。
サーヴァントが居らぬと、聖杯で願いは叶えられぬはず……。
……はずなのじゃが、自信がない。
褒めてませんよ。
素直に思った事を口にしただけです。
ええ…行きましょう。
[少しだけ先を歩く忠勝の背中に、遅れないように早足で*歩いた*]
……何かこう、最後の手段的な
画期的な作戦や宝具は持っておらぬのか。
努力と友情で勝利できるようなものでもないしのう。
[唇を尖らせながら、物陰でさっさと衣装を忍装束に改める。
和服の足元ときたら走り難いことこの上ない]
まあ、あれば最初から使っておるじゃろうな。
聖杯の恩恵とやらに対抗するだけの魔力、
儂一人で到底賄いきれぬじゃろうし、
かといって街中の人から吸血なんて勿論却下じゃし。
それが簡単に使えるものであるならば勿論使っているであるな。
[物陰にてなにやらごそごそとしている契約主の言葉に頷く。
画期的な作戦といわれても、作戦というものは相手の戦力が解ってこそである上にヴラドが知り得る…生前に使った戦術のほとんどが活用できない。
――被害が、多方に出るものであるが故。]
まあなんとかするであるよ。
いざともなれば、手を打つであるからして。
[それだけ答えて。
帰るのか、他へ行くのか。ここからどうするのかと、衣装を替えて出てきた胡蝶を見やるのだった。]
[向けられた視線>>123に、一度灰銀を瞬いた。
真紅には、僅かながらも困ったように映ったかもしれない。
…兎に角、酷く難しい。
聖杯で繋がっている者同士だからこそ、判る事もあるかもしれない。
またはサーヴァント同士の会話だからかもしれないし
――否、自分の理解出来る以上の次元の会話だったからかも知れないが。
己のサーヴァントが、 ――彼が。
目の前の8組目と、一時でも目的を共にしていたのかが
今更とは言え…少しだけ、判った気は、した。
それと同時に、少しだけ安堵する。
勿論、セムルクの持ち続けた願いを否定する心算では無い。
それでも、8組目との決別の言葉に吐息が漏れたのは隠せなかった。
だって、 仮にもこの世界の終わりなど、望んでほしく、無い。
…自分が随分と、身勝手だと言う事は自覚しているけれども。]
[ナルキッソスの言う、望む世界の意義が判らない訳ではなかった。
視点や考え方を変えれば、きっと崇高な願いだと言われる物でもあるんだろう。
この広い世界の中には、彼らの考えに同意しうる者も、きっといる。
…きっと、多かれ少なかれ。
人は、努力などでは到底覆せない不平等な世界に憤りを感じていて
同時にその世界が変わる事を、心の底では――誰もが願っているんだろう。
嗚呼成る程、無頼という男の、言葉の意味を漸く、理解する。
その考えを否定する心算も、況してや権利も無い。]
――、けれど。
[けれど、其れを知って尚。
世界が滅ぶのを、黙って見ていられる程
己は、まだ世界に絶望していない。]
[目に捉えられぬ者が、笑む気配。
其れが酷く美しいものだと感じるのは、
彼が、魅了の能力を統べる者故か。…それとも。
意外なほど、呆気なく別れを告げる両者を一度、見やって
(片方は相変わらず視認する事は出来なかったが。)
暫しの後ようやく、何も無い、虚無と果てた町を後にする。
そうして樹那町へ戻ってくる頃には、
既に太陽は空を赤く染めて、反対側から宵闇が迫りつつあった。
僅かに、其れを見上げて――目を細める。]
……、
[一度だけ、ゆると瞬いて。その視線を傍らに立つ男の真紅へ一度向けた。
何かと問われれば、ただふるりと首を振って、答えはしないけれど。
昨晩令呪を失ったマスターが、姫倉なのかどうかを確認すべく、
帰る前に一度教会へ寄っても良いかと、サーヴァントへ問い。
その足はそのまま、西の方へと向かう。]
── 西ブロック:教会へ向かう途中 ──
[ナルキッソスと別れてから、忍神町を出て樹那町へ戻る。
数キロを離れていない移動にも関わらず、無の世界から光と闇の入り混じる雑多な世界へ還る時、不思議な感覚に襲われる。
ナルキッソスから聞いた話の所為かもしれない。異なる意思を持ってしまったサーヴァントへ、聖杯からの魔力と共に闇が注がれる時の化学反応のようなものかもしれない。
また、
夢=幻視《ヴィジョン》が
ハインリヒの元へやってくる。]
──…ッ
[こめかみが酷く疼いて、頭痛に顔を顰めた。]
── 夢=幻視《ヴィジョン》 ──
[それは月面に似た何も無い荒涼とした地に立つ、バーサーカー自身。
今にも落ちて来そうな満天の星空が、現実の星の小さい都会の窮屈な空と重なる。
隣に灰銀色の髪が揺れるラナの気配があるのは、幻覚か現実か。
煌めく蒼い惑星が見える。
惑星 だけではない。
その星に住む、すべての人々の営み、街角で出会い別れるまた別れ、生きては死ぬ──が見える。まるで神であるかのよう。喜び哀しみ全ての声が、一秒間に起きるドラマ、生と死の数までもが見えるような心地がする。そこに、樹那町の街角マンションの灯りや、公園を散歩する犬が吼える声が重なる。
そして、もうすぐ世界は滅びる。
落下する 漆黒の太陽の炎によって。
否、太陽ではない。
鳥のような視界を持って近付いてみれば、モノクロームの球形。
無機質なそれは、人類の叡智を越えた不可思議な回路によって構成されており、漆黒の表面には紅色の細い管のような何かが見え、幾何学を描いている。
──これが落ちてしまえば。]
── 西ブロック:教会付近 ──
[気が付くと、教会の近くに来ていた。
どうやって、何を話しながら此処まで来たのか、意識が定かでは無い所がある。不審な様子をマスターに見せたかもしれない。もし何かを尋ねられたら、そのままを打ち明けただろう。
途中、夕闇が迫り来る紅い光の中で、ラナが自分をじっと見ている事に何かあるのかと問うた時の事だけが、鮮明である。]
……夕闇が訪れる刻だな。
すなわち、戦闘がはじまる。
[じっと灰銀を見詰め返し微笑んだ後、戦闘に備えて、目隠しで真紅を隠す。
それはすでに儀式のようなものかもしれない。狂化で取り返しが付かない事態に陥らない様。聖杯を手に入れるまで、マスターを守り続けられる様にと言う。]
─西ブロック─
[胡蝶とセイバーと遊んでいる間にあたりは暗くなり始めていた]
こんな時間じゃコンソメパンチが買えないじゃないか。
あいつらめ、今度会ったらただじゃおかないぞ。
[何事も無く道を歩く。羽と天使の輪を消して]
・・・・・・ふうん、他にもいるんだ。
[魔力の気配。間違いなくサーヴァント・・・・・・否、そこには聖杯からの繋がりも感じている]
ちょっと挨拶でもしてあげようかな。
[魔力のあるほうへと、歩みを進める]
――うん、
[戦闘の始まる時間。隠された真紅から視線を外し、一つ頷いた。
空の赤は、直ぐにでも宵に溶けそうな程で、随分と周辺は暗くなっている。
…その上、いつも南ブロックから行く方向とは異なる故、少し見慣れないが
確かこのもう少し先へ行けば、教会だった筈だ。]
……、
[ふと、令呪から伝わる気配。少しだけ、立ち止る。
其れがサーヴァントなのは、直ぐに判った。]
…こっちに、来る。
─西ブロック・教会付近─
・・・・・・ふうん、バーサーカーか。
[少し離れたところから、バーサーカーとラナの姿を発見する。
ちょっと虫の居所も悪いし、からかってやろうか]
[この付近にはコンソメパンチを売っているコンビニが無いのだろうか。
ピンと糸が張られるような感覚。聖杯から繋がる気配。]
……無頼の だ。
[おそらく、ナルキッソスとは異なる。
イカロスか未知のサーヴァントか。
その事を身を屈めて素早くラナの耳元に囁いた。
と、明らかに天使の輪と羽根を装備した人物と遭遇するのはもう間もなくの事。]
[時代的にコンビニが普及し始めた頃?前?だから
…まだ営業時間が24時間じゃないんだろう。多分。]
――無頼、の。
[囁かれる言葉に、僅かに眉を寄せる。
ポシェットから顔を覗かせるトナカイを奥へ押し込んで、
それと引き換えに手鏡を取りだして、掌の内へと収めた。
…サーヴァントが相手では、そう太刀打ち出来るものでもないが
――持っていないよりはマシだろう。
彼の男のサーヴァントの手数は、少なくなっている筈。
ナルキッソスでも無いだろう。…イカロスならば、 酷く厄介に違いは無い。]
やあ、バーサーカー。
調子はどうだい?
[横にいるラナへと視線を向け]
君もそろそろ・・・・・・いろいろと、良くなってきた頃かなあ?
……ッ、
[向けられる視線に、ぐ、と一つ息を飲んだ。
もしかしてとは思っていたが――、よりによって一番厄介な相手。
じり、と一つサーヴァントの背後まで、後退する。]
…何が?
[良くなってきた、というのは、どういう意味かと。]
[視認した瞬間、一見無邪気な少年の様なイカロスの声。教会付近から、何も無い森林公園後へ移動して誘導する間も無く。]
──…
聖杯からの魔力が
増えて 来たな。
何が・・・・・・?
だって、バーサーカーと一緒に行動してるんだろ?
略奪と破壊に、自分が馴染んできたんじゃないかなっていう事だよ。
[バーサーカーに視線を移し]
そうだねえ、さすがにこれだけ令呪が集まると魔力のパスの太さが違うね。ぐっとくるよ。
――セムルクと一緒に行動してるから、何。
別に、略奪も破壊も何にも楽しくないし、馴染む心算なんて頭から無いよ。
…「バーサーカー」と一緒に行動している事が、
何の理屈にもならないと思うけど。
[イカロスの言葉に、不快だとばかり眉を寄せる。]
ふうん・・・・・・そうなんだ。
[まじまじと見つめ]
よくそれでバーサーカーと一緒にいられるね。
だって、バーサーカーがこの聖杯戦争の最中にどんなことをしてきたか、理解してるんでしょ?
[相手はバーサーカーがナルキッソスと既に決別して来た事を知らないのか、知って気にしてないのか。いずれにせよ、戦闘になると思われる。
ラナにマスターの回避の準備をと合図を送ろうとした所で、イカロスが挑発的な言葉を口にした。]
――理解、してる。
[向けられる視線から、灰銀を逸らす事無く告げる。
酷く居心地が悪い――否、]
全部判ってる。 やった事を許す心算も、無いよ。
ただ快楽の為に令呪を奪ったりしてるなら、
何をしてでも止めてた。
でも、そうじゃないなら。
…判ってた上で、全部背負うって決めたもの。
自分のサーヴァントと一緒に居るのは、何かおかしい?
[挑発だと、脳内では理解している。
…それでも口調が荒らぐのは、冷静になれていない証拠でもあるが。]
[こめかみを穿つような頭痛や、幻視が消え、徐々に愉快な気持ちになってくるのは何故だろう。
くつりと喉を鳴らして、口調を荒げるラナを後ろ手に庇った。愛おしむように触れて、それからトンと軽く指先を踊らせて後ろへ下がる準備と、人気の無い方向へ移動を目指す旨を示す。]
──…
無頼に成り変わった君の、
破壊でも戦闘でもない雑談より、
敗北して聖杯に吸収されたサーヴァントが、
無頼に協力する理由に興味がある。
ふうん・・・・・・けっこう頑張ってるんだね、バーサーカー。
でも、令呪が集まってもっともっと魔力が上がったらきっと今のままではいられないんじゃないかな。
そうなっても、君はバーサーカーと一緒にいるの?
敗北した僕が無頼に協力する理由・・・・・・ね。
[少し真顔になり]
簡単さ。彼が勝利したら僕らの願いが叶う。そう思っているからさ。
[天使の羽が光を帯びる]
バーサーカー・・・・・・リンドヴルムの願いは”愛情。”
彼は竜であるが故に父である王からは存在を隠匿され、伴侶を手に入れることが出来なかった。
無頼はその魂砕きで、過去に許婚を廃人にしてしまった。
そのせいで、無頼は自分の能力を呪い、失いたいと思っている。
ランサー・・・・・・魔槍ルーンの願いは”破壊”
純粋な願いだ、戦場にいつづける事を願った。
無頼はどうかな。
彼はその存在を高く評価してくれる場は退魔としての戦いを行っている時だけだった。
アサシン・・・・・・ハサン・サッバーハの願いは”復興”
暗殺集団の頭たる彼は、集団を自身では立て直しきれない事を理解し、さらなる力を望んだ。
知ってるかい?無頼の家系が常に破滅を歩んでいることを。
いつも人間の魂を霊視し続ければ、脳もおかしくなるさ。
彼の父親は失踪。もし無頼もそうなったら、無頼家はどうなるんだろうね。
アーチャー・・・・・・クルースニクの願いは”正義”
彼が悪とみなした存在を倒し続け、常に勝者になり続けることだ。
無頼は正義だと思う?悪だと思う?
彼は他の異能力者の家系から忌み嫌われているけど、きっと自分を正当化したいだろうね。
セイバー・・・・・・スカアハの願いは”平穏”
彼女は自分が生み出した武芸という物がこの世界に広まったせいで、戦争が終わらない事を嘆いた。だから戦いなんてものをこの世界から消したいのさ。でも彼女は矛盾している。戦う事でしか彼女は自分を維持出来ない。
じゃあ無頼は?
そして僕の願いは・・・・・・
この世界に復讐する事だ。
僕を捨てた天界、僕を利用し消耗させた人間、そしてこんな僕という不平等が生まれるような世界なんて、消えてしまえばいい。
そして、無頼が勝利し、無頼が望んだ物に、僕らは僕らの願望の可能性を感じている。
それが、この世界が一度滅ぶという結果になったとしてもね。
嫉妬、怨恨、そして破壊衝動。
人間の悩みなんて、そこに集約していくのかもしれないね。
――…ッそんな事、私がさせない!!
だから、一緒にいるんだもの!
[イカロスの言葉>>246に、咄嗟否定が口をついて出た。
その瞬間、触れる手に、ぴくりと肩が揺れる。
指先が示す其れに、視線を一度落として――
漸く、自分が随分と取り乱しているのだと理解した。
相手の黒い服の袖を一度握って、離す。了承の意と伝える様。]
…、なに それ。
[無頼という男の、成り。思わずぽつと、言葉が漏れる。
イカロスが語った全ては、酷く歪なものに聞こえた。
――全ての願いの根源は、同じ。
あの日言われた言葉の真意、そう言う事かと理解する。
ぐ、と。拳を握る。]
人の願いが、全て破壊に集約するなんて。
…喩え、其れが事実だとしても、
――私は絶対に認めない。 そんな事、望んでやらない!
[此処から一番近い――人気の無い場所。
脳内へ地図を巡らせて、其方の方へ一歩下がった。
先日の公園ならば、まだ一般人への出入りは控えられている筈。
じり、と相手から直前まで視線は外さずに。]
なんだ、無頼は何も言わなかったのか。
まあそうだよな、あいつ主張とか言い訳とか嫌いだから。
[少し表情が緩み、ラナの顔を覗く様に見つめ]
だから、ナルキッソスも無頼も”イレギュラー”って単語が嫌いなのさ。
二人の共通点だからね。
彼らは呪いにかかった魂達なんだ。
・・・・・・いや、僕らもそうかな。誰もが呪いを抱えて生きているのかもしれない。
嗚呼、幻視と、幻聴が酷くなってきている。
ライダーのように酷い有様になるのも
──時間の問題かもしれないな。
令呪を集めるのを止める、止めさせると言う選択もある。
[言ってから、自分が嗤っている事に気付く。
イカロスの語る各サーヴァントの願い。そして、暫しの沈黙。無頼の可能性について耳を傾けた。]
呪いを与えし世界への復讐 か。
[復讐はイカロスではなく無頼の、複雑な一つの側面。]
──…
その願いの為に、
この世界が一度終わる。
終わった先に、未来を創ろうと言う。
[前回戦争のサーヴァント達の願いを否定するように、首を横に振って。
戒めの銀杭が光る舌をイカロスに見せて、また嗤った。バーサーカーもまた、人の身で受け得る呪いと憎しみの檻に囚われて来た身だ。
少しだけ緩む、イカロスの表情に、如何に無頼が彼等の希望であるのかが伝わる。]
──嗚呼。
粛正された正しき世界は訪れなかったとも。
訪れぬだけではなく、 私の世界は覆され
呪われたおぞましき 血の檻に囚われ……
怨嗟の声を聴きながら 無力な時を過ごし 今に至る……。
私はキャスターのように、聖人に成る事もなく
暗黒の記憶として歴史の中に忘れさられた。
クックック
君達を見ていると、まるで
変わり果てた己自身 を、──鏡を見ているようだ。
だから、聖杯の声を聴いたのだろう。
今回の戦争の参加者のなか、ただ1人。
私だけが………。
だが、光はある。
その光も君たちと変わらぬのかもしれん。
……皮肉な事に。
英霊として召還され、
聖杯戦争で勝つと言う望みだ。
私のマスター、
私の魔女と共に。
嗚呼、
ちょうど、今しがた、
ナルキッソスにも別れを告げて来た所だ。
[あっけなく、とても簡単な別れだった。]
聖杯の糸で繋がれど、無頼とは違う道を行く。
私は……ルナの居る世界を、
簡単に終わらせる訳にはいかない。
如何なる望みであれ、彼女の願いを叶える事が望み。
ふうん・・・・・・じゃあ、君とはここまでだねきっと。
[天使の輪の輪郭がはっきりする]
そういえば、あの聖人にもお願いされていたんだっけ?
僕を倒せって。
いいのかな?聖杯に逆らってそんなことしたら。
――…な、…っ
[声が、喉の奥でつっかえて、止まる。
まるで呼吸の仕方を忘れたかのように、
は、と。短く息を零して、それきり 出て来ない。
自分の望む「其れ」に、 何処に、否定が出来る箇所があると言うのか。
無頼に誘われた時も、言い返せなかった。
ずっと、目を逸らしていた。気付かない振りを、していた。
己のずっと奥底で眠っている、 醜い感情の、全部。
けれど、認めたくない。――認められない。
世界の破滅を望んでいないのは、 揺ぎ無い事実なのだから。]
う、るさい。
私は、貴方と …貴方達と、違う!
――セムルク、森林公園に向かって。そこなら、人もいない筈!
[色濃くなる、天使の証の輪郭。其処から目を離さぬまま]
[ラナの言葉を聴き、イカロスは恍惚の表情を浮かべる]
いいよいいよ!君その顔最高だよ!!
君、今自分が吐いた言葉の意味わかってる?
”肯定”、って言うんだよ!!!!
あーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!
[羽を開き、少しずつ浮遊していく。そしてイカロスの笑い声が周囲に響き渡る]
……さあ。
逆らって
結果、如何なるだろう。
少なくとも、今回戦争の参加者である事は揺らぎもしないだろうが。
[どうでも良い事のように、軽く首を横に振るだけ。]
いいよ、君なら無条件で付き合ってあげよう。
バーサーカー、ちょっと遊ぼうか。
[ラナの言葉に促され、バーサーカー達が森林公園へと移動するならばついていく]
── 西ブロック:森林公園へ ──
[墮天使めいたイカロス恍惚の表情と笑い声に、地面に唾を吐いた。羽音が聞こえる。マスターの命令。頷く。]
その羽根がはばたくに最適な場所で遊ぼうか。
[無惨な姿を晒す森林公園。
この場所がこの姿になった日の事を思い出せば、あの時は共闘が成立したばかりのキャスターチームが居た事が浮かばぬ訳は無いが、バーサーカーがそれを口にする事は無い。]
──…
─西ブロック・森林公園─
[黄金の羽はあまり羽ばたかず、だがそれでも彼は高速で移動する。
羽を持った魔力を持つ種族にある事だが、決して羽ばたくことで飛ぶわけではなく、翼が浮遊魔術を自動的に発動する回路になっている事が多い。
本来の天使であるイカロスの翼はそうではなかったが、ダイダロスに作り直された際にその翼の機能は大きく変化していた]
本来はどこでも羽ばたけるけど、今回は特別だよ。
[天使の輪が輝きを増し、そしてイカロスの体も白銀の光を発していく]
さあ、かかってきなよ、英霊。
[イカロスへ、一瞥をくれて――森林公園へと向かうべく背を向ける。
嗚呼、あの笑い声も、言葉も。酷く耳障りだ。
ぎり、と。歯噛みする。
一番腹立たしいのは
――其れを一言も否定できない、自分自身だけれども。
漸く公園まで辿りつくと、公園の中央により近いところで漸く足を止めた。
焼け跡が未だ生々しく残る地へ、一度視線を落とす。]
…セムルク。
アイツを、地べたに 引き摺り堕としてやって。
[天使の名を頂く相手を、地に伏せるべく。]
そんなに簡単に落とせるわけないだろおお!!
[右手に銀色の槍を呼び出し、バーサーカーを睨む。
それにしても気分がいい。ラナという人間≪玩具≫の悲痛の叫びは、まるでパイプオルガンの不協和音のように心に染み渡る]
[掲げた手のひらに浮かぶは、スティグマに似た真紅の十字。]
私は、
誠実に
破滅を願いし者の、罪の赦しを願おう。
私も また限りない願いを持って。
『魔女に与える鉄槌』により召還を行う。
嗚呼、墮天使の罪の赦しを願う日来ようとは、な。
[バーサーカーの背に浮かぶのは、怨嗟のうなりをあげて回転する『拷問の車輪』。
さて、瞬間的に移動が出来る者に対して如何な攻撃が有効か。
ともあれ、ラナに頷いた。戦闘中に感情をかき乱されているマスターははじめてみるかもしれない。]
[大車輪が弧を描き、空を飛ぶ。
『鋼鉄の乙女』を三体、その車輪に乗せ、イカロスを囲い込む形に飛ばせた。
バーサーカー自身は片手に『猫の爪』を装備、拷問処刑具の後から重なる形でイカロスを狙う。]
翼よ!!
[囲まれた状況から上空に逃れ]
裁きの雷よ!!あの醜い拷問具を破壊しろ!!
[右手を前に突き出し、そこに巨大な魔方陣が現れる。
そしてその中央から特大の雷撃が車輪を飲み込むように打ち抜く]
隠れて狙うなんて、姑息だね!!
[そしてその車輪の陰から飛び出してきたバーサーカーの爪を銀色の槍で受け止めようと前に突き出す]
[『拷問の車輪』に絡み付いていた骸が焼かれてボロボロと地上に落ちる。
中央を撃ち抜かれた『拷問の車輪』は速度を緩めながら、イカロスバーサーカーが居ない場所、空を回る。『鋼鉄の乙女』達は、車輪が弾ける様に離れ、イカロスが放った雷撃の一部を吸収して、金属の冷たい皮膚の周囲に粒子を纏わせた。
爪と鎗がぶつかる音。
イカロスの鎗の一撃がランサーの様に重く無いのなら、すぐに引いて二撃目を繰り出す。]
虫取りの要領と言ってくれ。
否、君の宝具を評価しているとでも。
[すぐに打ち出された二撃目をすんでのところでかわし、代わりに槍を横になぎ払いに行く]
僕を虫呼ばわりなんて・・・・・・後悔するよ!!
[天使の輪がさらに輝きを増す。
そして、イカロスの力が英霊の能力を超え始める]
じゃあ、君には見せてあげるよ・・・・・・
エンジェル・ハイロウの力をね。
僕なりの君への評価だと受け取って欲しいな。
[”エンジェル・ハイロウ”
イカロスが所持する”イカロスの翼”とは別の、いわばイカロスにとって最も頼るべき宝具。
その天使の輪が輝くことで、イカロス本来の力は英霊の枠を超え神霊に近づいていく。
全てのステータスが限界値を超える、まさに天使へと戻る力。
そして、それをもし開放すれば・・・・・・彼の天使兵長であった時の力。天使の兵団を召還する事が出来る。
その数は、アサシンが使ったときとは桁違いのもの]
[現時点では、エンジェル・ハイロウはまだ輝きを増すだけ。
イカロスは今、キャスターを撃破した時の戦闘力へと至り、超えようとしていた]
いくよ処刑人!!
[イカロスの羽が羽ばたく。
そして彼の周囲には、いくつもの神々しい光を放つ火炎弾が出現した]
ほら、燃え尽きろ!!
[それらの火炎弾が無数にバーサーカーへと発射される]
[吸収した雷撃を返す『鋼鉄の乙女』。
おそらくそれは英霊の能力を超え始めたイカロスには、揺れるさざ波、もしくは心地良い風のようにしか感じられないだろう。]
── な に
エンジェル・ハイロウ だと?
[そして、炎を手放した後に]
さて、断罪の槍の本当の姿をみせてあげよう!!
[銀色の槍を肩の上へと掲げ上げ、そのままバーサーカーへと投擲する。
まっすぐにバーサーカーへと飛来するその槍は、強い光の魔術攻撃としてまっすぐに射抜こうと降り注ぐ]
・・・・・・そういえば反射を覚えていたね。
[投擲した後、反射された雷撃がイカロスの背中を撃つ。
イカロスの体が少し揺らぐが、だが致命傷には至らない]
[目の前で神霊化していくイカロスに全身をぞくりとした何かが駆け抜ける。
火炎弾が放たれた瞬間、乙女達は熱風に溶け、液化して地上へ鈍色の雨を降らせる事と成る。]
──…クッ!
『秩 序 の 為 の 檻』
[現れるのは、エウロパの巨人の四肢を括り上げた鎖の網。
結界をイカロスに向けて、コの字型に使用する事で、炎撃弾を和らげる。尋問の初期段階に威圧の為に使用される乙女達よりも、それは保つだろう。神の使徒に対して人が抵抗しえる範囲で、だが。
焦げ行かんとする身体。
炎上した『拷問の車輪』を不安定な足台にして上方へ飛ぼうとした所に、眩しい光と共に鎗が降り注いだ。]
くそ、さすがにしぶといなバーサーカー。
さすがは聖杯の加護を受けている英霊だ。
[だが、その少年の表情は恍惚とした狂気の表情に満ちている。
バーサーカーを睨む瞳が金色に輝く]
断罪の槍。
[右手にまた槍・・・・・・否、光の欠片を握る]
[英霊が対峙したのを見やって、じり、と。後退する。
充分に距離が離れたと、そう判断して漸く足を止めた。
此処から先は、人間の及ぶ領域では無い。
況してや、魔力も昨晩からの回復は不完全。
喩え一度、英霊の技を凌ぐ事が出来ようとも、二度は無い。
…否、あの無数の炎を、一度として凌ぐ事が出来るかどうか。
既に神々しい光と放つ、其れ。
――全ての力を取り戻した時、一体どれほどの。]
…ッ、セムルク――!
[投擲された銀を、遠目に捉え――灰銀を見開く。
咄嗟、声を上げて。 瞬間、更に魔力が減りゆく感覚。その場に膝をついた。
イカロスの右手に再び握られた光から、視線は、逸らさぬまま。]
[バーサーカーもまた、嗤っている。]
嗚呼、全智全能たる神では無い者の意思で
断罪される罪は何処にもないな。
『審 問 の 椅 子』
[鎗に対して召還されるのは、信仰心を、罪を問う為に座らされる椅子。
罪ではないと言う概念と意思の力で鎗をそのまま、イカロスに押し返す。
炎を受けて液化しながら揺れる鎖ごと、押し返して、相手を押しつぶさんと言うように。
鎖と椅子が、次なる鎗の投擲に保つのかは分からない。鎗が貫通すれば、その後ろから跳躍するバーサーカーの身体が串さされるのみ。]
なにい!?
[バーサーカーの攻撃の本質を一瞬見誤った。
これはただの物理的な攻撃手段ではない]
・・・・・・概念武装か!!
[その罪という定義が、イカロスをあろうことか補足していた。
押し返された槍は炎に溶かされるが、その刃の輝きは濁らない]
くそ・・・・・・翼よ!!
[間に合わない。何かが強くそのイカロスの背中を切りつける。
だが、その場からは脱出する事には成功し、そのまま鎌は虚空を進む]
[次の瞬間、すぐ横に姿を現したイカロス。
だが・・・・・・]
ばーさーかー、め・・・・・・
[天使は、片翼となっていた。
辺りに黄金の羽が飛び散る]
赦さない・・・・・・赦さないぞ・・・・・・・
赦さないぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
天 輪
エ ン ジ ェ ル ・ ハ イ ロ ウ
[イカロスの体の周囲に、金色の輪が11個現れ、イカロスを中心に広がっていく。
そしてバーサーカーとラナを包み込み、次の瞬間に神話の時代の風景がそこに広がっていく]
[雲。真っ白な雲。
地面は土やアスファルトではなく、ふわふわとした雲海。
そして空は青というよりも白銀色に輝き、耳にはまるでハレルヤがこびりつく様な幻聴]
そして、そこには天使兵長イカロスを中心として・・・・・・1個大隊の力天使がそこに集結する]
前の戦争では令呪1つしかなかったから5体しか召還できなかったけど・・・・・・これが本来の僕の力だ。
[右手を高らかに上げ、そして命令を下すように前に振り下ろす]
撃 ち 滅 ぼ せ 。
[翼を持たぬバーサーカーを、空中で自由に移動させる手段は、召還する拷問具を足場にする事のみ。地上戦のように離脱するイカロスを追う事は出来ず、落下して行かんとす。]
──…ッ
[一瞬で自在に姿を現す、イカロスを斜めに仰いだ。
赦される必要等、何処にも無い。ないのだが。
次に何が来るのかを待って、召還を行わなければと、後ろ手に回る。
刹那、黄金の光に周囲を囲まれていた。]
──…マスターッ
ルナ!
[ブレストプレートメイルのような鎧と兜、そして銀色の槍を持った天使達が、バーサーカーめがけて飛来する。
槍を突き出し、雷の魔術を放ち、そして蹂躙すべくバーサーカーの体に。
まさに、降り注ぐ。それは神々の聖戦に見えるような神々しくも残虐な光景]
――…ッ!? …しまっ、…!
[瞬間、周囲の風景が変わる。…あの焼跡の残る森林公園ではない。
それどころか樹那町、否、日本ですら無い風景だとはすぐに理解した。
これが固有結界の類ならば、喩え異界と結んだとしても逃げられない。
早急にこの場を解体しなければ、しかしどうすべきか――。
仰ぐように見上げた先、大隊を率いるその姿に、灰銀を見開いた。
降り注ぐ、銀翼の群。]
――セムルク!!!
[黒い波紋は、森林公園に球形に広がり、木々は刹那枯れて灰となる。
空想具現化は本来は、英霊には扱いきれぬ精霊、神霊クラスの力。
聖杯を経由したとは言え、二度も理をねじ曲げた事の歪みがバーサーカー自身にも降り掛かる。召還した『世界の終わりをもたらすモノ』だけでは、潰しきれない天使兵と肉弾戦を繰り広げる間に、穴だらけになって血肉を飛び散らせるだけではない、黒い染みが召還のスティグマがある右腕を覆いはじめていた。]
[召還された黒い物体が、天使を飲み込んでいく。
だが全てを飲み込めるわけではない。バーサーカーの蹂躙は免れない]
くそっ、聖杯の力でルールブレイクまで起こし始めているのか。
ここで君を倒すことが出来て、良かったと思うよ・・・・・・!
[だがその天使に与えられたダメージは少なからずイカロスへフィードバックしてくる。体がぎしぎしと悲鳴を上げているようだが、それ以上に天使を失ったことによってこの世界を維持するだけの時間が削られていく。
元々数十秒程度の時間しか維持できず、また召還した天使によって支えられている世界。バーサーカーへの攻撃はそのままで、世界が少しずつ解けていく]
[空は元に戻り、イカロスの片翼はもがれたまま]
・・・・・・反動を受けたのは僕だけじゃない、って事か。
[にやり、と微笑む]
君が憎くて憎くてしょうがないよ。この翼を奪ったのだから。
だけど、君はもう終わりだ。そのまま苦しんで肉体の崩壊を味わうがいい。
ラナ、だっけ。
その可愛いバーサーカーの最後、しっかり見取ってあげるんだね。
[そう言うと、世界が完全に消えうせた後にこの場にいたバーサーカーとラナを残し、片翼でイカロスは空へと羽ばたいていき、この場を離脱する]
──ルナァァ ッ!
[令呪の位置から、固有結界の中に居るはずのマスターの存在を必死で求める。今は何の魔力をどれだけ使ったか、固有結界解けて行く事にも思い至る余裕等何処にも無い。
『猫の爪』で天使の羽根をズタズタに裂き、爪が折れれば、腕ごと剣を奪い──、
気が付けば右腕が浮かび上がるべき、真紅の十字ごと失われてた。
身体中の穴から流出する魔力。シングルアクションで召還出来る簡単な拷問具を除いて、新しい召還が容易に行えそうに無い。]
…ッ、Govno!
あの翼、 絶対に捥いでやる…ッ!
[空の色が、地が。――宵闇へと再び変わったのを見やって
膝をついたまま、は。と、短く息を零した。空へと羽ばたく背に
短く悪態を吐いて、右手の指を、掌の内へと握り込む。
…僅かに震えていた其れを、無理やりに抑え込んで。
宝具の放出が多かった事も確かに一因だが、 今はそれより、]
――セム ルク、
[己の名を呼ぶ声が聞こえて、少しだけ安堵する。
引こう、と。短く告げる。掠れた声は小さく、しかし確りと。
あれを今追いかけても、恐らくこれ以上は自滅するだけだ。
…身体を襲い来る虚脱感に、一つ、深呼吸する。
――あんな、宝具。どう太刀打ちすればいいのか。
出てきそうにない答えを先延ばしするように。ゆるりと、灰銀を伏せた**]
―― 西ブロック ――
[行くか退くかの問い掛けに胡蝶は行くと答えた。おめおめと帰る事など、出来はしないと。
得策ではない。
バーサーカーとの戦闘で受けた傷は癒えておらず、先の戦いに於いても撤退という選択肢しか出せなかった。だが。]
ふむ、では行くとするであるかな。
[契約主の言葉に応と頷き、倒すべき敵を探るべく動く事とした。]
−北ブロック・オフィス街−
[片翼の天使となったイカロスによって、人気の無い場所まで移動する。
既に深夜になろうとしているオフィス街ではぽつぽつと明かりの消えないフロアが点在するが、暗闇も手伝い隠れるには適した区域となっていた。
片翼になりバランスを保つのが難しくはなっていたが、羽ばたくことで浮力を得ているわけではなく翼を浮遊魔術の回路としているイカロスの翼は飛翔も滑空も可能だった。だがイカロスの顔はまるで苦虫を噛み潰したようでもあり、それでいて恍惚の表情でもあり、複雑な心情を表していた]
[ビルの谷間へと静かに降り立ち、無頼の姿へと戻る]
・・・・・・余計なことを。
[失ったイカロスの翼の影響か、左肩の背中の部分が疼く。魔力も体力も酷使した結果、仲間であるはずのバーサーカーを撃退する事になってしまった。
しかも、ラナの令呪はまだ奪えていない]
くそ、イカロスをこれ程消費させられる事になるとは。
[残るはスカアハと片翼のイカロス。最終決戦は刻一刻と近づいている]
[眼。魂の形状を霊視する力。無頼家・・・いや、元々は愛染家という異能力の家系に伝わる力。
彼の愛刀である”魂砕き”もまたこの愛染家に代々伝わっていた刀であり、彼の観る魂を破壊する事に特化した礼装とも言える。
つまり、彼にとってはその眼が最大の武器であり、見えていれば素手でも魂や霊体を破壊出来る。
裏を返せば、彼の眼やそれを司る脳は常に異界を見つめ続ける結果になる。
無頼の瞳が血走り、まぶたの上から手で抑える。
体力が落ちた上に魔力が暴走している。現状でこの魂の視界を制御する事は不可能。
視界に入る生物の姿に、ぼうっとした色のついたもやが見える。
触れてしまえば傷つけてしまう。この力を抑えなければ]
[荒い息。ビルの壁面にもたれかかる。体中汗でびっしょりと濡れている。
幼少期、滝川とも交流があり一緒に遊んでいた頃を思い出す。
あの頃はまだこの眼は成熟されていなかった。
ただ世界は常に新しく感じ、全てに興味を持っていた。
だが、突然彼の眼に異変が起きた。
人間の姿ではない、何かが見えている。そう感じはじめた。
当時、無頼には許嫁が存在した。魔術師の家系で、跡継ぎではない女性。
愛染家が無頼(ブライ)へと家名を変えたように、彼もまた魔術師との婚礼を行うことによって無頼家の力を強める為に婚礼を義務付けられていた。
無頼の持つ磁力操作は、彼の先祖にあたる魔術師の家系”ブライ”の物である]
[彼もその許嫁とは仲良く暮らしていた。
決められた婚礼とはいえ、彼は幼いながらもその少女を愛していた。
だからこそ、彼は見えてしまったその魂を触れる最初の相手に、その少女を選んでしまったのだろう。
今でも手に残る、”ガリッ”という魂を傷つける感触。
彼はずっとその過去に呪われていた]
[彼女の魂は、その瞬間に死んでしまった。それを理解したのも彼だけだった。
彼女の肉体はまだ生存している。病院にいけば彼女はまだそこにいる。
だが、死んでいるのだ。誰も理解しないだろうが、死んでいる。
自分のせいで、死んでしまった]
[その先は、どれだけの霊体を、どれだけの魂を破壊したか覚えていない。
人は一生に一度しか人を殺せないと、誰かが言っていた気がする。そして人は自分を殺すのだ。そのたった一度の殺人で。
まさしくその通りだ。そのたった一度の自分を殺すはずの殺人を、代わりに少女を殺してしまった。
もう、自分を殺すことも出来ない。誰を殺しても、何も変わらない。
消えてしまいたいと、何度も思った]
―西ブロック―
なんとかする、か。
論拠も何もあったものではないが、
[ふ、と綻んだ唇の合間から笑みが漏れる。
拠点に戻らず着替えを済ませたことで、進む一択であることは伝わるだろう]
今、儂が頼れるのはおぬししか居らぬ。
信じるしかないな、公を。
[なんとかしろ、と。我ながら理不尽な命令を下したこともあった。遠い夜を想う。
少なくとも、その頃はあんな未曾有の大災害を想定はしていなかったし、二度と起こさせる気がないのは今も変わらない。
双眸が映すは未だ真円に足らぬ月。望月とは呼べぬ、欠けた月白。
隣に居るサーヴァントは、異なるけれど]
……のう、この世界はそんなに……、
[何と続けていいのか、質問していいのか、分からなくなった。軽く首を振る]
カルナは、カースト制度がないことに驚いておったな。
公よ、おぬしにはこの世界はどう映る。
血塗ろの乱世から、抜け出しきれてはおらぬ、か。
人々は武器も持たず勤勉に働いて、幸せを探しておる。
安っぽい享楽も溢れて、欲に溺れる者やどうしようもない悪党も居る。
でも大半は、理不尽や不幸があろうとめげず、頑張って生きておる。
今や世界有数の豊かで平和な国じゃが、それでも不平等で歪さがなくなるわけではない。
……けれどそれも一朝一夕では築けぬ、
一人一人のささやかな努力なくば、維持できるものではない。
こうあればよいと、願う姿に、少しでも世界は近づいておらぬじゃろうか。
聖杯など、奇跡など、なくとも。
[サーヴァントこそ、この世界に生きるわけでなし、聖杯さえ手に入れればいいだけで、何が起ころうと本来なら気にする立場ではないだろう。
分かっているのに、言ってしまってから]
……じゃから、甘いと、おぬしにも言われるんじゃろうな。
[後手を組んで歩き出した。その時。
逃げて来た方向――西の空が雷雲もないのに光っている。莫大な魔力が感じられた]
まさか、イカロス!?
いや、でもあちらは人も居らぬじゃろう、し……。
[破壊活動に走ったわけではないらしい。対策も立てぬまま、舞い戻ってどうなるものでもない。逡巡]
誰かが戦っておるのかも知れぬ。
[脳の回路が焼ききれそうになっていたが、徐々に落ち着いてくる。
いつもそうだ。そして成人になってからようやく父が失踪した理由が判った。
父は突如発狂した。自分の目の前で。
自分がそれに気がつき、父の書斎へ入るべく襖を開けた次の瞬間に視界に飛び込んできたのは、あの日の再現だった。
虚空を見つめる生きた死骸達。家の者だけでなく父を訪ねてきていた他の退魔の家系の人間までも。
そして、もはや人が発するような声ではない何かを叫びながら、父は消えた。
きっと、脳が壊れてしまったのだ。
次は自分の番だ]
[それからはずっと、苦悶の生活が続いた。
退魔の一族からは同族殺しと蔑まれ。
家族は既に無く。
そして自ら誰かをいとおしく思う事も辞めた]
[誰かを傷つけないために]
[否、自分を傷つけないために]
[自分の魂に、傷をつけた]
[もう、誰かを愛すことはない。そういう回路は失っている]
俺は、聖杯に何を願ったんだ。
[曰く、失った愛への憧れ]
[曰く、無頼という存在意義の追求]
[曰く、いずれは消滅するであろう家系の維持]
[曰く、自分という存在の正義]
[曰く、見果てぬ平穏の生活]
[曰く、自分という不幸を生んだ世界への報復]
[曰く、自分を救う手段などもはや存在しない]
[ならば、自分のような存在が生まれることのない、新たな世界を]
[新たな世界にはすべてを求めたい。
誰もが愛され。
誰もが存在する意義を持ち。
誰もが耐えぬ歴史を紡ぎ忘れ去られる事無く。
誰もが正しいと尊重され。
誰もが平穏な生活を保持し。
誰もが醜い心を持たない。
そういう世界が生まれるなら、この身などどうなってもいい。
この世界など、どうなってもいい]
[気がつけば、何年ぶりかの涙が頬を伝っていた**]
本来ならば、他の参加者の助成なぞ買って出る余裕もないのじゃが。
相手が八組目なら話は別じゃ。
これ以上、令呪を奪われぬため、
あやつらに力をつけさせぬため……!
[筋金入りの短気を咎められる心地がしたが、止めてくれるなと渋い表情で駆け出す。
いつかのように、本能的に危険を察知して、身体がそちらへ向かうのを拒否していた。湧き上がる恐怖を捻じ伏せ、音たてぬ足は全速力で。奇しくも、また公園のようだ]
………。
[胡蝶の問い掛けに、黒衣の男は答えない。
この国は確かに豊かである。だが、幸福や平和などは豊かさだけで成り立つものではない。
そうであるならば、かのオスマントルコ帝国は何故にあれほど強大な富を有してなお戦を繰り返したのか、何故さらなる領土を欲したのか。
無論、裕福であるに越した事は無い。だが幸福とは結局、個々の心の持ち様である。万人の平和など、あるべくもない。
だからこそヴラド3世は、時刻の民以外の全てを切り捨て、殺す事も辞さなかったのだ。]
………甘さを悪とは言わぬよ。
[魔力渦巻く西の空を見て、戦地へ赴くとする胡蝶に向けて呟く。]
胡蝶殿は救うと言った。奴は創り替えると言った。我が輩は、胡蝶殿についた。
甘さと思うなら、それを覚悟して飲み込めばいい。………行くであるよ。
[駆け出す契約主と共に、大地を蹴った。]
―西ブロック/公園―
なんじゃ、儂を支持しておったのか?
それは初耳じゃ……心強い。
[一国の主から見れば、噴飯モノの思想だと思っていた。
口元が自然、緩い弧を描く。悪くはない、――いや嬉しいのだ、多分。
覚悟の言葉に、行く手を見据えたまま一つ頷く。
しかし、肌を刺すほどに魔力の歪みは感じられるのに、近づいても視界には何も映らない]
固有結界か……?
[遠く、無人の公園跡。
刹那、世界のあわいから弾き出された存在が三つ。
夜に羽ばたく天使の姿は、やがて消える]
[森林公園は(幸いな事に)イカロスの固有結界があった範囲のみではあるが、バーサーカーが最後に召還したモノの所為で、世界が変質してしまっていた。
月面に似たモノクロームのクレーター。
イカロスが去った今、ラナとバーサーカーだけがその中心に居る。
身体に痛みは感じられない。痺れが酷過ぎて、感覚が麻痺してしまっている。流出していく魔力を食い止めるように、令呪の繋がりを通してラナの魔力が注ぎ込まれるのだけがリアルに分かる。
右手の指を、掌の内へ握り込んだまま、耐えているラナの元へ這うようにして移動する。イカロスが戻って来たら、あるいは新たなサーヴァントに発見されたら、危険なのはマスターである彼女だ。]
──…
天使も万能ではないはず だが。
[「引こう」と言うマスターの選択に、首を縦にも横にも振らず一度沈黙する。
追撃を行うべきタイミングは、今。だが、もう一度同じエンジェルハイロウを喰らってこちらが生き残れる可能性はとてつもなく低い。
ハインリヒは、自身の右腕──正確には右腕があった箇所を見る。
最後に召還したモノと同じ漆黒に染まった肩。二の腕から下はすでに無く、だらりと手を下ろせば手のひらがあるであろう位置に、淡い色の十字を浮かべる事が出来るのみ。『魔女に与える鉄槌』の能力が半減以下になっていると言っても良い。]
……ルナ。
[覆い被さるように背を曲げて、マスターの首筋に鼻先を近付ける。
狂化の作用が強くなっている時は、如何程魔力を消費してしまったのか、それを理解する感覚も狂っている。更に聖杯の力も使った所為で、現状が上手く把握出来ない。
墮天使とは言え、神の使徒と戦うと言う行為。
天使が下した罪を、否定する強い意思の力。
英霊と言う自身の枠組みを凌駕した能力の行使。
すべてがかなりの消耗に繋がっている事は確かだ。
右腕、すなわち──宝具が元にもどるかと言えば……。]
[何も言わず残った片腕で、ラナの髪を撫でた。
そのまま骨張った指を滑らせ、マスターの左手の親指付け根から手首付近と言う少し変わった場所にある令呪に唇を寄せる。
令呪は魔術師の生命とも言える回路につながっており。同時に、サーヴァントとの絆。その存在を確かめるように。
おとこの願いは、ラナが──生きて、そして聖杯を取る事だ。]
私の魔女。
[伏せられた灰銀を下から覗き込んから、ラナを案じるように左腕で抱き寄せた。壊れ物を扱うようにそっと。けれども堪えきれず、震える腕に力を込めて。祈りのように低く囁く声。]
[くしくも同じイカロス戦の後、消滅の間際、エラトから渡された芳膏が有る事を思い出す。けれども、抱きしめた腕を離す気にはなれず、片腕ではそれを衣服の何処かから出す事も難しく。
胸ポケットに芳膏がある事を示して、ラナに取って飲んでくれるようにと頼んだ。マスターの回復が重要であると強く言って。
ラナの細い首筋に顔を埋めたまま、隠された真紅の双眸をひそかに瞬かせる。
イカロスの回復や、無頼達の願いに一歩近付くと言うデメリットを天秤にかけても、生き残って勝つ為には他のマスターの令呪を奪うべきだろう。それが出来ない時は──と、心の中で呟きながら**。]
[かつて公園だったそこは、駆けつけた時には再度の蹂躙に異世界と化していた。
色彩が全くない。いっそ現実感がない。串刺しの固有結界の凄惨さとはむしろ逆の、無。不毛。一縷の生命の存在も許さぬかの如く]
イカロスも消滅に至らず……、
まともに戦って死んでおらぬとは。
さすが聖杯の恩恵を分けた者同士じゃな。
[瀕死の態を晒している二つの反応。
昨晩刃を交えたばかりの相手を見下ろし、溜息。
荒涼とした風が、並ぶ二つの黒装束のシルエットを夜に踊らせる]
ついに仲間割れか。
―中央ブロック・ホテル前―
[赤い蛇の目傘を、そっと開く。
スムーズに、音もなく開いたそれからは、ふわりと漆の匂いがして、手入れの良さを伺わせた。
ちらりと建物のガラス窓に移った自分の姿を見て、思わず笑ってしまう。
修道服と蛇の目傘。
これほどミスマッチなものはあるまい。
新たな発見とばかりに自身の格好に気を取られていたからか、足元の段差に気付かず、がくりと体勢が崩れた。]
ひゃっ。。
[とっさに傘は庇ったものの、自身の体制は立て直す事が出来ずに、間抜けな音を立ててアスファルトに突っ込む。]
――ぴぎゅっ
[カエルが潰された時のような、妙な悲鳴が聞こえた。]
[ふむ、と飛び去るイカロスの姿を見送る。バーサーカーとの戦いで幾らかの被害を受けたのだろうか、その背中にはばたくは片翼のみ。
だが…。]
まずはあちらからであるかな。
[見やるは、その場に残された目隠しの英霊。]
あーあ、ったく。
何、間の抜けた声を出してるんですかい。
[振り返れば、地面に潰れている姿。
小さく溜息をついてから、やれやれと手を差し伸べる。]
ほれ、立てますかい?
……。
[表現するならば、大の字のお手本のような格好で地面に平伏していたわけだが、むくりと顔だけ上げると、差し出された手に瞬いた。]
…ありがとう、ございます。
[地面に片膝をついて、その手に触れると、その感触を確かめるように、ぎゅう、と握った。]
……ふふ。
[にこりと、満面の笑み。]
そうじゃな、昨晩の雪辱もあることじゃし。
消耗しておると言えど、逃す理由にはならぬ。
[弱い者苛めをゴネない英霊で幸い。
むしろ此方も昨晩痛み分けで被害は蒙っている。
サーヴァントの相手はサーヴァントに。
ならば昏い柘榴石の瞳が映すのは、]
……何か、言いたいことでもあるか?
[さも大切なものであるようにサーヴァントに抱かれた、少女の銀灰]
小さい頃に…
[手をぎゅっと握ったまま、少しだけ遠くを見るような目になる。]
人が転んだどさくさに紛れて、私を置いていったロクデナシが居たことを思い出したんです。
[口調とは裏腹に、顔には微かな微笑みが浮かぶ。]
――無頼、陣って名前なんですけど。
……嗚呼、あの兄さんかい。
[英霊へと身を変ずる男。
あのナルキッソスのマスター。
そして恐らくは、ライダーの第二のマスターだった男。]
知り合い……ってぇ、話でしたな。
…今なら、わかるんですけどね。
無頼家は、私達異能力者の仲間内から疎まれていて……子供だったから、大人同士のそんないざこざはわからなかったけれど、周りで見ていた人達が、私達が仲良く接している事を、良くは思っていなかった。
――陣さんは、私より大人だったから、きっとそんな周囲の視線に逸早く気付いて、……自分から離れて行ったんでしょう。
私に、つらい思いをさせないために。。
けれど…
[握っていた手に、力を込める。]
あの時の私に取っては、他のどんなことよりも、陣さんに置いていかれた事が悲しくて、つらかった。
いいえ、今も――
[言葉を区切り、息を一つ吐く]
……勝手です。
そんな優しさなんて、欲しくない。
男ってのはね、いつの世も勝手な生き物って話で。
[クク、と。
志乃の言い分に、つい笑ってしまう。
生前自分も、随分と言われたものだ。
それを思えば、つい懐かしくなると言う物。]
……ま、女にとっちゃ迷惑な話でしょうがね。
[忠勝の言葉に、肩を竦める。]
男の人は…勝手です。
自分だけが傷つけば、それで良いと思ってる。
……そんなことをされて、嬉しい筈が無いのに。
――だから。。
[繋いでいない方の手で握っていた蛇の目を、くるりと回す。]
一発殴って、文句言ってから、……もう、何も心配はいらないから帰ろうって。
言います。
その為に、頭主になったんです。
嗚呼……、そりゃぁ良い。
あの兄さん、ちぃっと気に喰わねぇが……腐っちゃいねぇ。
そういう眼じゃねぇ。
ありゃ背負いすぎちまった奴の眼ですわ。
[己が作り出した重荷に、
他でもない己が潰される。
そんな馬鹿は、何時の時代も居る物。]
そういう奴には、他でもねぇ。
一発キツいのをお見舞いすりゃ、眼も覚まそうってもんで。
── 余談 ──
[イカロスもバーサーカーに向けて「処刑人」>>287と言っていたが、実際は異端審問官と処刑人や拷問官はまったく別物である。現代日本においてはその三つはごっちゃにされて、おどろしいイメージで見られている事が多いであろう。その点ハインリヒ・クラマーもヴラド3世と似た部分があるのかもしれない。
審問官が実際に拷問や処刑を行うことはなく(初期においては実際に行った場合は、審問官の資格を剥奪された)。また、処刑人はあくまで処刑を執行する者であり、拷問を行う事は無い。
拷問官は穢れ負う特殊な仕事であるため、その実体における記録はあまり残されてないが、生体に関する知識を必要とした為、医療相談を受ける事が有ったと言う。また、処刑執行人は一般人から忌避されていたため、結婚は組合内で行われた。女性犯罪者に対して、処刑執行人と結婚をすれば罪が免除される制度もあったようだが、死を選択する女性が多かったようだ。]
[故にあくまで拷問処刑具は『魔女に与える鉄槌』と言う書物を媒体に、魔術で召還される道具だ。自ら、拷問官のごとく振る舞うのは、狂戦士の特質の一部と言って良いかもしれない。]
殴る時は、たっちんがしっかり押さえといてくださいね。
なんせ、姫倉さんの分もありますから。
[そう言って、赤い蛇の目を見る。]
…少しでも、一緒に重荷を背負えればいい。
人は一人で生きているんじゃないんですから、…ね。
ま、なるべく気張りましょうかね。
[姫倉、と聞けば少し目を瞑り。]
嬢がそれをアイツに教えてやりてぇなら、嬢も気張りなせぇ。
俺は精々、道を作ってやる事しかできませんわ。
そっから先歩いていくのは、嬢って話で。
−北ブロック→東ブロック−
[喉の乾きが酷い。息もまだ荒いまま。
足取りも重いまま、無頼の拠点があるほうへ歩いていく。
行く先も定まらないまま、迷い子のように]
それで、充分です。
[忠勝の言葉にこくりと頷いてから、夜の闇を見つめる。
ふと、気付いたように懐から布袋を取り出す。]
そういえば、姫倉さんが持っていたこの石ですが…何か、膨大な魔力を感じるんです。
もしかしたら、何かの役にたつかもしれませんから、たっちんが持っていて下さい。
[そう言って、布袋ごと手渡す。]
姫倉さんの……ね。
[布袋を受け取れば、暫く見てからポケットへ。]
ま、俺に役立てられるかは解りませんが。
お守りがわりってことで。
[二人で夜道を歩く。
足は自然と、東の方へ。]
[呼ばれる名と共に、近付く顔。
己の魔力を探ろうとしているのだとは、直ぐに判った。
まだ、サーヴァントを留めるだけの魔力は、残っている。
しかし――幾らか己が魔術を行使すれば、それも直ぐに枯渇するだろう。
況してや、大きな魔術を紡ごうとすれば、尚更。
今、襲われれば 太刀打ちする術等、ほぼ無いに等しい。
撫ぜる腕。 髪に梳く様に触れるその感触に
灰銀をゆると伏せた。その視線の先、右腕――否、だったものが映る。
感覚も、況してや痛覚など残っているのか。
手を伸ばす。 衣服越しに、そぅと、触れた。]
――…、
[腕に籠る力が、少しだけ痛いと思えども、
其れに抗う事も口に出す事もしなかった。ただ、そのままに。
己が、迷わずにいられたら。もっと強ければ。
彼が こんな目に逢う事などなかったのだろうか――、]
[芳膏の言葉に、一度灰銀を瞬いて。
僅かに身体を離す。 見えない真紅を見やって、ふると首を振った。]
…ッ、いら ない。
セムルクの方が必要だって事ぐらい 私にだって判るよ…!
[外傷を酷く負っているのは、どう見ても男の方だ。
自分には要らない、とは言い張るものの、
重ねて強く言われた言葉に、其れ以上反論を紡げなかった。
おず、と手を伸ばして胸ポケットの辺りを探る。
衣服越しに固い容器に触れたのを見つけて、
一度躊躇って、 其れでも漸く芳膏を取り出した。
其れでも、直ぐに蓋を開ける気にはならなくて、手の内で握りしめる。]
――…、
[ぴくりと肩が揺れるのは、令呪越しに伝わる二つの気配。
イカロスでは、無い。ただ、相手がだれであろうと、最早大差無いのも事実。
此方を見下ろす一つの影を、サーヴァントの腕の中で、ゆると、見上げた。]
言いたい事って、…おねーさんに?
――別に、何も。 まだ、最後じゃないもん。
[サーヴァントは、消えてない。
令呪も、残ってる。 限りなく、絶望的ではあるけれども。
其れに、これで例えば敗退したとして――
恨み辛みを相手に吐く心算は無いし、そもそも筋違いだ。
…其れ位、ちゃんと弁えている。]
…、一つ言うとしたら――仲間割れとはちょっと違うよ。
昼間に、袂分ってきたから。
[仲間割れか、と。呟いた言葉に、少しだけ訂正を唱える。
ナルキッソスにしか伝えていないとはいえ、
既に敵だと言った後であったし
元々、――仲間と言うには随分と薄っぺらい間柄だった。]
―東ブロック・高校正門前―
[人気の無い道を選んで歩いていると、急に目の前が開けて、広いグラウンドが見える。
グラウンドの向こうには、月明かりに照らされて、妙に白々しく冷たい色の校舎が聳え立っていた。
人の気配の無い校舎は、昼間の賑やかさからの対比なのか、その静けさが耳に痛いようで―。]
―――っ!
(どくん)
[その静寂を最初に破ったのは、他でもない、自分の肉が軋む音。
―令呪が 疼く]
……待ち人、現れる、でしょうか。
── 西ブロック:森林公園 ──
[近くに聖杯を通じて繋がっている者とは異なるサーヴァントの気配が有る。ライダーが脱落した今、残っているのは──と、相手を選んで襲撃か撤退かを選択する間も無く、戦闘は開始する。
大人しく狩られたり、降伏して介錯を求めるは心算は特に無い。戦闘を行うならば、イカロスや無頼に魔力が分配されるとしても、相手マスターの令呪を奪って延命と言う目的を果たすのみ。]
──…
選択肢は一つしかない。
[くつと喉を鳴らす。
ラナの手に指を絡め、無言で芳膏の蓋を開ける。蓋が地面に転がる音。]
[セイバーのエストックに対して、半ば機能を失った宝具で、召還出来る拷問具は限られている。]
『 針 』
『鋏(ハサミ)』
[『針』を螺旋状に空に並べ浮かべる。
『鋏(ハサミ)』もまだ、左手には握られて居らず、針と並んで淡い十字が透ける右手付近に浮遊させている。]
―東ブロック・高校正門前―
[令呪が疼く]
・・・・・・
[目を凝らせば、そこには見知った影。
まだ生きていたという安堵か。
それとも、これから起きる戦いへの絶望か]
・・・・・・志乃。
イカロスには逃げられたようじゃが、
儂等の力を借りる気はないか、と。
対策なしで対峙しても勝てぬ相手じゃと、
教えてくれたのはセムルクだったように思うが。
[八組目とは一筋縄ではなかったようだと、片眉を少し上げて。
その意志の消えぬ瞳に、相手に不足なしと頬笑みすら浮かべた]
……昨晩の決着もつけねばなるまい。
卑怯と謂うてくれるな、せめて全力で
相手をするのが礼儀じゃろう。
[エストックを手にしたセイバーの隣で、忍者刀を低く構える]
…陣さん、いいえ、――無頼。
[視線で、グラウンドへと誘導する。]
……今更、何を言っても聞かないでしょう?私も、貴方を非難する気はありません。
貴方のやっている事が、正しいか正しくないか。
それは勝者が決める事です。
『戦争』に、悪なんて存在しない。
勝った者が、正義で、法律です。
ですから私は
――貴方に、勝つ。
そして貴方を連れ帰る。
準備の上で対峙出来たなら、まだ良かったかもだけど。
――イカロスと会っちゃったのは、偶然だしね。
[無言で開けられた芳膏の蓋。僅かに鼻へと届く、甘い匂い。
…地へと転がる硬質の音に、ゆると視線を一度落とす。
一度、セムルクへと視線を向ける。灰銀を、ゆるりと伏せて。
膝に手をついて、僅かによろけながらもゆっくりと立ち上がった。]
まさか。…卑怯なんていう心算 無いよ。
…むしろ、これでおねーさんに勝っちゃったら
私がすごいって、証明出来ちゃうしね?
[器の中身を一気に飲み干して、空になった其れを放り投げる。
喉の奥、濃い甘さが染みわたる感覚――随分と楽になった。
…それでも、全快とは程遠い。目の前の相手に勝てる手は、思い浮かばない。
けれど、諦める訳には、いかないのだ。
生きる事も、聖杯も、 ――嗚呼、それ以上に。
ゆると、手鏡を掌へと握り締める。]
生き残っていたのか。
[黙ってその誘導に従う]
強くなったな、志乃。
[だが、帰る場所など、既に無いのかもしれない]
ならば、全力で当たらせてもらう。
そしてそれが滝川家党首への敬意だ。
[目を閉じて、少し俯く。
受け止めろ、現実を。そう言い聞かせる。
このような苦しみを、あと何回繰り返せば開放されるのだろうか。
せめて、志乃という存在を完全にこの世界から消さないような決着をつけたい。それだけの力が欲しい。
そう高望みをする]
[志乃の言葉に、解ってるじゃないかと笑みを。
掲げられる傘に呼応するが如く、槍を構える。]
さて、と。
そんじゃ戦いは英霊の領分だ。
―――殺り合いましょうかい、大将。
よい心がけじゃな。
ふふ、あのいけ好かぬ八組目に比べて何とも清々しい。
[賽は投げられた。半ば灰と化した地に落ちる空の容器の音。
跳ぶ足はセイバーからは遅れる]
サーヴァントをマスターから剥がすのじゃ。
[クレーターの中心地に、風を切り落下しながら。
完全に癒らぬ左手での投擲は期待できない]
――ふ っ!
[微細な麻酔針を含んだ吹矢。
標的はサーヴァントでなく、両の足で気丈に立つ少女]
嗚呼、追撃にも行かねばならん。
イカロスの羽根を捥ぎに。
[片腕が欠けて軽くなった肩を竦めた。
元々薄い身体がゆらりと揺れ、絡まった指先はするりと離れた。
立ち上がるラナに薄く笑う。
ラナが芳膏を飲み干したのに合わせるよう。
空を舞い、バーサーカーの左手におさまる『鋏(ハサミ)』。それは『スペインの蜘蛛』ほどの大きさは無いが、ギリギリ人間の腕を切断出来る程度の切っ先の大きさ。ただし、威力は刃物の付いた武器よりは落ちる。
と、マスターの令呪を直接奪うには、当然邪魔な位置にセイバーが居る。
地を蹴り、螺旋を描く『針』ごと、セイバーの元へ飛び込んで行く。まずは鋏の切っ先で左を狙う。]
──…ッ
行くぞ。
…ありがとうございます。
ならばこちらも全力で。
[くるりと、空間を掠め取るように、閉じた傘の先を虚空に回す。
一回転、二回転――
回す度に、徐々に重く、抵抗を感じるようになる。]
(…力を、貸して)
[ぐりっと、最後の一巻きを終えると、蛇の目を一気に開いた。]
――『螺旋の風刃』
[限界まで捻られた空間が、一気に押し出され、渦を巻いて無頼に襲いかかる。]
[光が散ると、スカアハの姿が現れた]
どうやら生き残っているようだな、忠勝。
今回はあの時とは違うぞ。存分に死合おう。
[腰に下げたカリバーンの鞘が、台風のような光の魔力に包まれていく]
[滝川からの魔術がセイバーへと襲い掛かる。だが]
甘い。
[わざとだろうか、刀身を見せるようにゆっくりと剣を抜き、その風の刃を丁寧に打ち落とす]
無粋な事はやめろ。
元より人間の魔術で怯む私ではないが、もし忠勝の勝利を願うならば手を出すべきではないぞ。
そんな勝利望んでいないだろう。
なあ、忠勝。
[令呪を奪うという英霊。それをさせる訳にはいかぬと真っ直ぐに跳び、迎え撃つ。]
――――来るがいいっ
[バーサーカーの傍に浮かぶ針はまだ飛ばず。左身を狙い繰り出されたハサミをくるりまわって避けてそのままの勢いで左の裏拳を相手に叩きこまんとした。]
[光と共に現れるは、あの日相見えた女騎士。]
スカアハ、アンタが俺の相手かい。
[志乃の魔術が、いとも容易く無効化される。
そうだ、コレは英霊同士の戦。
そこに人の身で入る余地など、あるわけがない。
下がっていな、と志乃に呟き、一歩を踏み出す。]
相手に取って不足はねぇが……
―――余剰もねぇ………!
[構えた槍と共に、先手必勝と突撃する。]
[風の刃を切られ、風圧が自身の服を靡かせた。]
…邪魔をする気はありません。
変わるのが早すぎるんですよ。
[英霊に変化した姿に、額に汗が滲む。
わかっていたが、力の差がありすぎる。
おそらく、例え防御壁が発動しても、――耐えられるとは思えない。]
ああ、この感覚だ。
風を感じるぞ忠勝。お前という風をな!
[一騎打ちを楽しんでいる表情を浮かべ、抜き身のまま虚空を一閃する。
鞘に貯められていた魔力はそのまま刀身を取り巻いていたが、その一撃によって光の竜巻となって忠勝に襲い掛かる。
そして、スカアハは鞘に剣を収めると同時に、その光の渦の後につけて、奇襲となる2撃目の準備を整える]
そうかい?
だがね、その風は……稲光を纏うって話ですわ!
[忠勝の体は、雷の化身へと。
一筋の光となって、向かい来る光の奔流を擦り抜ける。
そのまま間合いに捕らえれば、
槍の一撃を見舞うべく横薙ぎの斬撃を。]
[飛んでくる裏拳に対する回避を僅かに身を捻る程度で、ほぼ行わない。
拳が叩きつけられる瞬間を狙って、引きつけた相手の顔面と、エストックを握った利き腕の二カ所を狙って、一斉に針を放つ。]
ハッ
[拳でくの字に曲がる身体は、何時もより軽く後方へ飛んでしまう。針の上から、鋏を鈍器で殴るように叩き付ける間合いが、少し遠くなった事に舌打ち。
胡蝶が何かを放ったのが視界の隅に映ったが、不思議と防衛のためにラナに張り付くと言う選択肢は無かった。]
――“Napominjemo” “A pravi zabluda. Za razliku od istog.”
虚像にして実在 対極にして同一
[僅かしか残らない魔力を動かすべく、合図を紡ぐ。
流したままの灰銀の隙間から、風を切り頭上から迫りくる相手を見据え。
相対するように、其方へと掌の手鏡を向ける。
向けられる矢先。 …手の内のカードは、2枚。
其れに何が仕込まれているか知れない、大人しく食らう心算も無いが
――しかし、落下中の相手こそ此方としては好機。]
――“Jedan” “Puštanje”
一番 反射
[一歩、引く。身体を狙っただろう其れは、鏡を構えた腕に僅か掠める。
奔る痛みに厭わず、随分と前に『映』した其れを、詠唱を合図に解放した。
瞬間、足元から――壁にも似た火柱が、上から迫る相手を迎え撃つよう立ち上る。
――例えば彼女が、オルグロスと手を合わせた事があるのであれば
其れが、彼の扱っていた火柱と酷似していると気付くだろうが。]
……っ!
[魔力を吸い上げられる感覚に、万が一膝をついても邪魔にならない位置にまで下がる。
二人の英霊が激突する余波で、空間までが震動し、ここまで伝わってくるようだった。]
[雷神となった忠勝の速度を捕らえるのは至難の業だが]
確かに速い。だが忠勝、君の最大の武器はやはりその長槍だ!
以前は見極めが甘かったが、その槍の最大の秘密は見切らせて貰ったぞ!!
[蜻蛉切、その切っ先は目に見える刃だけではない。
その周辺には、刃を直接受けるのと同等のオーラのようなものがあった。
最初の戦闘ではそれを見切れず、寸での所でかわしたつもりが傷を負ったが、もはやスカアハにはその間合いすら見切れている]
そして、速いならばお前の周囲ごと斬ればいい!!
[カリバーンを鞘から抜いた瞬間、スカアハの視界が横一線に切断されたような幻覚を覚える。
そしてその線は、実際に光の斬撃として雷神を切り裂こうと、まさに光の速さで直進した]
[見えている手段に対し、対応策を練らぬ訳もなく。]
――Impactul.
[呟いた呪文が生み出すは衝撃波。飛び繰る針を薙ぎ払う。
針の後に続いたハサミ目掛けて蹴りを繰り出せば、続け様にエストックで目隠しの向こうの目蓋を狙う。]
天下三槍、舐めてもらっちゃぁ困りますな!
―――起きな、『蜻蛉切』!
[叫びと同時、槍は二つに分かれる。
相手を斬りさくべく振られた槍はそのままに。
左手へと持たれた柄は、相手の居合いを受け止めようと。]
こちらも世に名を轟かせし聖剣だぞ!
[だが、その一撃は槍の柄によって防がれる。
斬撃の全てを防いだわけではないだろうが、槍の柄を切断出来ていないという事実に驚愕した。
だが忠勝の槍の一撃はそのリーチを縮めた為、スカアハの髪の毛の一部を切裂くに留まる]
・・・・・・さすがだな。
ならば、もっと斬り合おう。
[一気に間合いをつめ、いつしかその構えは居合いではなくフェンシングスタイルへと移行していた。
肩の前に突き出すように構えたカリバーンが、一条の光として何度も忠勝を貫こうと発射される]
[『鋏(ハサミ)』を蹴り上げる反動に合わせて、軽く成った身体を後転回避。眼球を突かれる寸前、目元を掠ったエストックが風圧で目隠しを切り落とした。]
嗚呼、存外に肉体派だな。
……セイバーで良いのか。
串刺しの丘を築く者の名を聞いてみたい。
[あらわになる双眸は真紅。
薄く切れた皮膚から一筋の血が滴り、紅い雫を飛散させる。
さて、こちらから出せる手はそう多く無い。
右腕の欠けた虚空に浮かぶ十字で、実のあるものを召還出来るのは、実質一度切りだろう。]
流石ですな……ッ。
[繰り出される、幾重もの鋭い突き。
全て避けるには後方しか道はない、が。]
無傷でなんて、ムシのいい話ですわ!
[致命傷のみ避けることを考え、前へと踏み込む。
その手には、再び最大の斬撃を見舞おうと一つに戻った長槍。]
死地の向こう側にこそ、道があるってもんで!
──…
私の名は異端審問官ハインリヒ・クラマー。
[戒めの銀杭の光る舌先で、自らの血を舐める。
吸血鬼と対峙しながら、甘味を味わうごとく淫蕩な仕草。]
ほう、火術使いが二人目か。
[着地点に見定めていた位置から立ち上る炎。
いつだったかのオルグロスを髣髴とさせる。
けれど、前進の勢いを止めることはできず。
前髪がちりと焦げる距離まで迫った瞬間]
はぁ!
[忍者刀を一閃。
――炎を"斬った"
一瞬途切れる空間を、火の輪潜りの要領で突っ切る。
服の燻ぶる臭いを物ともせず、接近戦の間合いへと、一気に距離を詰めようと]
同意だ!!
[速度だけなら捕らえ続けるのは困難。
ならばと、長槍のダメージを覚悟でカウンターの挙動へと入る。
突き出される槍の切っ先の奇跡を予想し、かろうじてすり抜けるように上体のみ大きく横にスライドさせる。
蜻蛉切のレンジを完全によけることは出来ず、左肩口が切裂かれる。
だがそのまま、雷神の横っ腹を光を纏ったカリバーンが横なぎを一閃させる]
[切っ先をかわし、少し離れた場所に降りる紅眼の英霊。問い掛けにニヤリと笑みを浮かべるも、次の詠唱はすでにはじめている。
いいだろう、ならば聞け我が名を――]
―――― ahan on os "Tepes"
[2騎の英霊の狭間に荒地が滲み出ればその大地より幾多の黒杭が断続的にバーサーカーへと襲い掛かった。]
[二度目三度目の斬撃。
この相手に素直に通じるとは考えられない。
恐らくは、蜻蛉切の不可視の刃すらも完全に読まれている。
紙一重での回避と共に、反撃を放つだろう。
だったら。]
更に死地へと一歩踏み込みゃ、その分届くって話で!
[相手の横薙ぎの斬撃、それと同時に人の身へと戻る。
食らうのは覚悟の上。
その分、さらに一歩を踏み出せるならば。
来ると解っていれば
一撃ぐらい気合いで耐えられる……!]
雷神ではなくなったか!!
[雷神の上体では防御力が下がると判断した、魔力重視の攻撃。
その光は忠勝を襲ったが、斬撃は忠勝の鎧を切裂くには至らない]
ならば!
[魔力を重視した攻撃ではなく、物理的な攻撃を。
セイバーは突如、その鞘を腰から外し忠勝の顔を横殴りする。
そして捻った上体を戻すモーションで、右手のカリバーンを忠勝の顔面めがけて横凪ぐ]
――。
[最早、目で追う事すら困難な、神の領域の戦い。
体の奥底が震えるのが、自分でわかる。
ふぅ、と息を一つ吐く。]
…『ホワイトインプリズン』
[虚空を掴み、紡ぐイメージ。
戦いに水を差すような真似はしない。
それは、忠勝の望むことではない。]
……。
…ッな、…!
[確かに、オリジナルからは1ランク下がる。
其れと比べれば威力が落ちるとは言え…
相当の威力を誇る炎の壁を、斬った。
銃弾さえ斬ると訊く、日本の刀。
使い手の技もあるとは言え、甘く見ていた。
炎を越えて地へと降り立った相手へ、小さく舌打ちする。
しかし、己の魔術は元々がカウンター型。
近距離の間合いに持ち込まれては、対抗する術は持たない――
咄嗟にその距離を離そうと一歩、地を蹴ろうと。 して。]
――な、
[ふら、と。確かに少ない魔力と体力も要因だろうが――
それとは異なる、違和感のある睡魔。
先程の針に、麻酔が仕込まれていたと気付くに時間はかからない。]
[斬撃は、鎧で防ぎきるも衝撃は内側に。
それにより、反応が一瞬遅れる。]
―――グッ。
[胴の次は、顔面への衝撃。
視界がグラつき、白く染まる。
だがそれでも、古強者の勘か。
即座に右手に持つ槍を上げ、カリバーンの横薙ぎを防ぐ。]
チッ、頭がぐらぐらしやがる……!
やるな!
[横凪ぎを防がれ、力比べの段になるがさすがに忠勝と競り合うのは不利。忠勝を蹴り、そのまま後ろに飛んで体制を整える]
お前と斬りあうのは楽しいな。
時間を忘れてしまいそうだ。
だが、この私に残された魔力も時間もそれほど多いわけではない。
[剣を鞘にしまい]
遊びはここまでだ。これで終わりにしよう。
我が最大の一撃、受けて見ろ。
私は、
誠実に
罪の赦しを願おう。
私も また限りない願いを持って。
[詠唱する薄い唇はわらっている。
召還するものは、また 夢=幻視《ヴィジョン》の中で見た“モノ”。
同じアイテムの召還は一度しか出来ない故に。
夢=幻視《ヴィジョン》の中、漆黒の太陽が落下する直前、地球上の有りとあらゆる場所にあった硝子のビル群、銀色の道、兵器、俯瞰する視点で神のごとく網膜に納めた あらゆる灰銀色の無機物を、──迫り来る黒杭の上に降り注がせる。
今持てる最大の魔力で、固有結界を破壊する。
セイバーを巻き込んで。銀色の嵐が吹き荒れた。]
──…ッ
[通常であれば、速攻でセイバー本体へ向けて追撃を行うところだ が。
身体は動かない。それだけではなく、令呪から伝わるラナの魔力のうねりに違和感を感じた。]
[スカアハの正面に光が集まる。そしてそれが細い柱のような形状をとっていく]
これが、世に名を広めしもう一つの宝具。
まあ、どっかの駄犬のせいで、こいつが槍だと思われているようだがな。
[そして、その光は槍・・・・・・というには、時計の長針のような形状となる]
ゲイ・ボルグ
絶対運命羅針盤乃針
[針のようなそれは、真の名を呼ばれた次の瞬間、空に舞い、スカアハと本多忠勝の頭上で高速回転を始める。
やがてその回転の影は、巨大なジャイロコンパスのような形を作り上げる]
ゲイ・ボルグの真の姿だ。
元々は平行未来の可能性を刈り取り、この私が望んだ未来を迎える宝具。
宣言しよう。私は次の一撃で、カリバーンの真名を開放する。
[そして、周囲にヴィジョンがあふれ出す。
忠勝がよける未来。武器が破壊される未来。
小さな可能性から確実であろう未来までが、次々と三人の脳裏にフラッシュバックされる]
私はお前が滅ぶ未来を、このゲイボルグで打ち抜く!!
[そして、ジャイロコンパスの中からゲイボルグの針が射出され、幻のようなヴィジョンを射抜いた。
それこそが、忠勝が次の一撃で塵と消える運命]
[の、はずだった]
隙あり、じゃ!
[低く低く、相手の懐に飛び込む。
刀を構えてはいるものの、魔術には無防備。背後では再び燃え盛る業火。
ぐらつくルナの身体を地に押し伏せるべく、渾身の体当たり]
因果改変の宝具……!
[因果改変の力に対抗しうるには、同様の因果改変。
もしくは、それを上回るほどの幸運が必要となる。
前者は勿論の事、後者に自信が持てるほど自信かでもない。
ならば発動前に潰すか?……否。
先程の衝撃故の、一瞬の反応の遅れ。
その僅か"一瞬"が、絶望的なほど大きすぎる。]
――――――ッ!
魔術師らしからぬ泥試合で面目が立たぬな。
他に戦い方を知らぬ故。
眠っておる間に終わらせてやろう。
おぬしの令呪はどこじゃ?
[令呪剥ぎのサーヴァント持つマスターの、令呪を狙う皮肉。
これ以上八組目を強化させぬために。
切り離せぬ位置なら命ごと奪うしかない。
魔術的な処置は心得もなく、ただ物理的に。
衣服の下であるなら、破いてでも探す気満々である]
[黒紅の禍々しい固有結界が銀色の煌めきと共に剥落する鏡部屋のごとく、破壊される。黒杭は折れて裂け、四方へ飛び散る。
左手の指先が、また英霊の領分を越えた能力の行使に漆黒に染まる。
『鋏(ハサミ)』が消失する。
そして、セイバーの一閃。
鋭い切っ先が、バーサーカーの胸を貫く。
動かぬ身体。
動かぬ身体。
すでに存在しない右腕の先を、
意思の力だけで。
消え行く真紅の十字『魔女に与える鉄槌』と言う宝具を、セイバーの身体に聖炎の烙印を押すごとく──押し付けた。]
[空に、巨大な針が渦巻き、背中がぞくりと震える。
何という、力の塊]
―― た
[その名を呼ぶよりも早く、不可視の投網を忠勝の足元に投げ絡め、急速にその存在を圧縮させる。
自分の身体が投網の収縮に引っ張られ、忠勝とスカアハの間の宙に投げ出された。]
―死ぬのは 許さない!!
[叫びと同時に、下腹部の令呪が光る。]
・・・・・・ばかな!くそっ。
[カリバーンを包み込む魔力が増幅し、周囲を飲み込むような嵐と化す。
そして、スカアハはそのカリバーンを一閃させる]
カ リ バ ー ン
勝 利 す べ き 黄 金 の 剣 !
[まばゆいばかりの光が、忠勝を飲み込んだ]
な、
[意識の混濁から踏み止まろうとすると同時、相手への注意が僅かに散漫する。
その隙を縫うようにして、下方から繰り出される衝撃に呆気なく倒れ込んだ。
強かに身体を打ちつけて、僅かに咳き込む。]
令呪は、 絶対に、渡さ、な…!
ちょ、やめ。離 ――!ッ …、
[己の令呪を狙っているのだと、その言葉で理解した。
ならば朦朧とした意識を意地でも手放すまいと、ぎりと歯噛みする。
手放すわけには、いかない。此れは証だ――己と彼が繋がっている、唯一の。
…其れを差し置いても、このままでは本気で身包み一式を剥がされそうだ。
困る。其れは 流石に困る。
流石に夜間とは言え、野外で裸という状況になるのは勘弁して頂きたい。
運悪く一般人が通りかかった暁には、大変な誤解をされる事請け合いである。
咄嗟、手の内に握った手鏡を相手へと向けて。――その手は、止まる。
令呪の先から伝わる、 其れ。灰銀を見開いた。]
――――…。
[左の肩口に何かが押し当てられたような感覚。しかし。]
[貫いた切っ先を引き抜く。崩れ落ちる一人の英霊。
かける言葉はない。そのまま振り返る事なく――]
―――っ!!
[身体が光に飲み込まれそうになる瞬間
バシュッ、という音と共に、夜空に光が散開する。
それと同時に、自身は地面に叩きつけられた。]
ぐ……っ!!
[一度大きくバウンドしてから、再度地面に投げ出される。]
あ……。
今迄マスターの令呪を集めておいて、
自分は嫌じゃとは勝手じゃな。
[体格はこちらの方が小さいくらい、体重も軽くなっているため後は勢いだけだ。
ほぼ無防備なルナの身体を突き飛ばす。馬乗りになって、刀を振り下ろすはぎりぎり首筋の数ミリ脇。切れた銀糸が舞う。
――これで自分の性別が異なれば、丸っきり強姦魔ではないか。などとちょっと罪悪感が掠めた]
令呪がどこか謂わぬなら……、
[浮いた華奢な鎖骨に、白い柔肌に鋭い視線を走らせる。
決して疾しい気持ちではなく、令呪を探して、である。
胸倉の布を掴むと、びり、と小さく裂ける悲鳴が聞こえた]
何って、敗北したマスターの末路なぞ、
散々嬲られて令呪を奪われて、がお約束じゃろう。
[「あーれーお代官さまーくるくる」を真顔でやる気。
格闘ゲームだって、負けた女子は何故か服がびりびりにならなければならないといけないという、暗黙の了解があるのである]
っていうか、ドサクサに紛れて、……お前は見るでない。
[元より、薄められた体重でこの体勢を維持するのは、相手が正気を取り戻せば無理であろうし、セイバーの横槍に気が逸れた一瞬]
[どくん、どくんと、心臓の音がやけに五月蝿い。
つ…、と、目の前の地面に赤い色が広がっていくのが見える。
それが自身の口から流れているものだと、気づくのに大分遅れた。]
(命が――)
[理解する。自身の終盤を。]
(―――尽きる。)
馬鹿……野郎ッ!
[意識は瞬時に覚醒。
地面へと投げ出された志乃へと駆け寄る。
其処に在るのは
あの見慣れた志乃の顔ではなく……。]
嬢……アンタ……。
[思い出すのは、枯木の様な、あの指。]
――…、セム 、
[ぽつ、と。零れる名は無意識の内。 頭の中が真っ白になった。
投げられる声も、上手い事脳が理解をしてくれない。
首筋付近に振り降ろされたモノが、何かと理解するまでに数秒を要した。
馬乗りされてるってどういうことだこれ傍から見たらヤバいんじゃ、とか
何か破られた音がしたんだけど、ちょ、待…とか、
お気に入りの服だったのにとか、 ――そんな事は最早どうでも良くって。]
…ッ、
[胡蝶の背後に現れた人影に、一度視線を向けて
(「おじさん、たすけてください」的な視線では、多分ない。)
令呪越しに感じた其れが、 違いないのだと確信する。
胡蝶の動きが止まった僅かの隙に、首筋の近くの刀へと手探りで触れる。
指先に触れた柄を握って、一気に引き抜いた。…扱い切れるとは思っていない。
その切っ先を相手に向けて、牽制と同時、力任せに相手を押しのけようと、]
・・・・・不本意だ。
[ゲイボルグが射抜いた未来。
それは、滝川が代わりに命を落とすという未来だった。
現れたいくつものヴィジョンの中には、忠勝が滅びる未来は無かった。ゲイ・ボルグは忠勝を撃破する未来を作ることが出来なかった。
だが、その結果ゲイ・ボルグが選んだ未来は・・・・・・果たして、正しかったのだろうか]
[苦虫を噛み潰したような後味の悪さ。
第三者の介入を赦し、そしてその第三者のみ斬ってしまった。
何もかも、不本意]
・・・・・・仕切りなおそう。さらばだ。
[スカアハは、そのまま忍神町へと去っていった**]
……っち!
[手間取っている間に余計な邪魔が入った。
鼻先に突きつけられた刃の先端を躱そうと、身を起こす。手はルナの衣服の胸元を握ったまま。
びり――、と。
不吉な音がした気がした]
もう終わったのだよ。戻るであるぞ。
[ラナに押された胡蝶をそのまま首根っこ引っ掴む。]
………無礼を、すまぬであるな。
[それだけ告げて、胡蝶を連れて立ち去ることとした。]
[押された力は大したものではないが、何せ刃物つき。
後転してルナの上から退いた。
忍者刀は特に魔術由縁の品ではない、誰が握っても兇器は兇器。
ちらと目端に映った鏡を手刀で叩き落そうとするも適わず]
[忠勝の声が聞こえる。
何とか声を紡ぎだそうとするも、すでに唇もうまく動かない。
けれど――]
……きょ……うかい………へ…
[自分には、まだやることがある。
やっとの思いで捻り出した声は、まるでしゃがれていて、他人が喋っているようだと段々と遠くなっていく意識の中で思った。]
た……だ…か…
(生きて)
[音を成さずに、唇だけがそう形作った。]
……バーサーカーを、倒したか?
[漸くこの段になって、セイバーの余裕と離れた箇所で倒れ伏す、最早限界を留めるも時間の問題な人影を見やる]
マスターを放置しておると、
八組目に令呪を奪われるぞ。
それは阻止……せねばっ……、 こら!
[妙なところで紳士的なセイバーに引きずられて行く。
知らず使われた宝具の魔力消費で脱力していなければ、もっと抗っただろうが]
[動かない身体が、軽くなる。
かと言って回復するわけではなく、英霊の身体を構成するエーテルを保つのが徐々に困難になりつつあると言う事実を示しているに過ぎない。視線だけを動かして、ラナを見た。
マスターはまだ、生きている。
自分が彼女の魔力を使い切ったわけではないらしい。その事にまず、安堵した。]
教、会……?
[掠れた声で、途切れ途切れに聞える声。
それを静かに聞きとれば、内容を聞き返した。
恐らく、志乃にはしなければいけない事がある。
そして、その為には其処に辿り着かなければいけない。
そう理解して、その体を抱き上げる。
……その軽過ぎる体は、いま目に映っている志乃の様子を
これ以上ないほどの真実味を持って伝えてきた。]
仔細はない。
[胡蝶を掴む手を緩めぬままにちら、と倒れ伏したバーサーカーの姿を見る。
仔細はない。敵がどのようになろうとも。]
――ヴラドの名に賭けて、倒すのみよ。
[聞こえぬ声で、呟いた。*]
[途中で聞えなくなる声と、口の動き。
それは確かに忠勝に伝わって。
言いたい事が、どうしても言葉にならない。
やっと言葉に出来たのは、相手への文句。]
嬢、アンタはまだ……ッ!
まだ、アイツを……!
殴って……ないでしょうが……っ!
[叫びと共に、教会へと、駆ける。
スカアハの姿が消えていた事には、気付く事無く。
夜を、駆ける。]
―――、
[不吉過ぎる 音。
先程から見開いていた灰銀が、別の要因に更に見開いた。
明確に述べるとするのならば。
()と、゚を二つとДで構成される顔文字の気分である。
どうしてこうなった。…いや、令呪を探していた故だとは、理解しているが。
首根っこを掴かまれて去っていく相手を、呆然と見送って
座り込んだまま、ゆると。刀を握ったままの手に視線を落とす。
令呪から伝わる違和感―― 否、喪失感は、 消えない。
先程まで齎されていた麻酔の効果は、 驚愕に吹き飛んでいた。]
…セム、 ルク?
[向ける視線は、酷く、ゆっくりと。
呼ぶ声は、喉の奥に引っかかって、掠れていた。]
(ごめんなさい)
[心の中で、謝罪の言葉を。
果たして、死にゆくマスターの令呪の命令など、効果があるのだろうか。
けれど、言わずにはいられなかった。
生きて。
どんな事をしてでも、その命を繋いで。
――願いを、叶えて。]
村の設定が変更されました。
──…
ル ナ。
[視界に入るのは灰銀ではなく、はだけた眩しい白い肌。
恐らく此処で多くの動作を叶えようとするならば、消失が早くなる故。
転がったまま慎重に片手で黒い上着──元々はラナの父親のものだを脱ぐ。溜め息を付くようにして、それを差し出した。]
・・・・・・どうしたんですの!?
[志乃を抱えているランサーがそこにはいた。
セリアから見ても判る。彼女の命は消えようとしている]
沖田 敬一郎 が見物しにやってきました。
[セリアがあたふたしているその頃、教会の前には彼の姿があった]
さて、ルーサーからの連絡で戻ってきて見たけど・・・・・・大変なことになっているようだね。
[聖堂教会の中で、魔術回路の霊的手術を受け持つために留学を繰り返していた沖田。
もう暫くはここには帰って来れないと思っていたが、思いのほか再会は早かったようだ]
−教会−
っと、早速仕事か。人使いが荒いね全く。
[滝川に近寄り、状況を確認すると大きなスーツケースを開き儀式と手術の準備を始める]
ほらセリア、ぼうっと突っ立ってないで。手伝って。
呼ばれたんだよ。君に電話をもらった時からなんとなく予感はしてたんだけど。
とりあえず、指示はされている。
[滝川志乃。彼女は滝川家の党首。
となれば跡継ぎへの儀式は一つ]
・・・・・・子宮を摘出し、保管する。
[礼拝堂が凛とした空気に変わる。
沖田の施術が始まり、魔術回路の切断から実際の執刀までを、手順よく行っていく]
これが、滝川家の子宮か。
[あたりに血が飛び散るが、その子宮は神秘的な輝きを放っていた。
そして、その中央には令呪が輝いている]
[傍に置いてあったクーラーボックスのような容器にその子宮は収められ、沖田は大きく息を吐いた]
これで、彼女の願いは適ったかな。
……、
[呼ばれる名に、沈黙する。
胸元を掻き寄せたまま、離れている場所に伏した陰へと、近寄った。
…念の為言っておくが、自分とて好きでこうなった訳では。
差し出された黒を、少しだけ躊躇って。
しかしそのままで居られる訳も無く、結局は受け取った。
そのまま腕を通す訳でも無く。傍らに座りこむ。]
――セムルク、
…帰ろう。
[無理だと、 判っている。]
これが、彼女の願いだ。
[ランサーのほうへ向き]
君。マスターを失った君が体を維持出来る時間は短い。
彼女のもう一つの願い、かなえてあげな。
[教会へは、どうやら事前に話をしていたようだ。
最初から志乃は、この終わりを覚悟していたのだろう。
手術を行った男、沖田へと静かに頷き、傍へと。]
よぉ、嬢。
覚悟は……いいんですかい?
[視界の隅に、男の姿が垣間見え、無機質な金属音が微かに聞こえた。
教会が、要望を受け入れてくれた事を理解し、安堵の息を漏らす。]
………。
[忠勝の声に答えるように、そっと瞼を*閉じた*]
[瞳を閉じたのを見て、悟る。
きっと……全てを受け入れていたのだろう。
それに小さく頷き、志乃の体を抱き上げた。
生きろ、との令呪の効果だろう。
魔力は体に満ちている。]
解りやした。
嬢の道は……俺が、紡ぎます。
[体が、静かに稲妻に。
そのまま……志乃の体を包んでいく。]
[暫く、先程まで体があった場所を見詰める。
今はもう、何もない。]
――――ッ。
[小さく、息を呑み込んでから。
セリアと沖田に頭を下げ、
忠勝は、教会から去って行った。]
・・・・・・
[ランサーが去ってすぐ、悪寒が走る]
セリア。悪いけど本部にひとっ走りしてきてくれないかな。
令呪を剥がされた人たちの手術をするには道具が足りないんだ。
[悪寒を背中に感じながらも、背後に話しかける]
もう誰もいないよ。出てきたらどうだ。
大丈夫、僕は無抵抗だ。戦って勝ち目があるとは思えない。
[ラナが座り込んだのを見て、左手を彼女の首筋に向けてのばした。
消え行かんとする以前に、黒化した指先が白い肌の輪郭をなぞるよう鎖骨に触れる手前で止まる。]
──…
最後に誘惑されるのは、悪く無い。
私の魔女……ルナ。
………ラナ ヴラニェシュ。
[上着を差し出した時の溜め息は、無念さを歯噛みする渋面に、それからサラリと揺れる灰銀の髪に視線を移して、薄い微笑に変わる。
「帰ろう」と言う言葉を否定するように首を小さく横に振り、]
否、 君は教会へ。
行って、 どうにか生き延びて くれ。
[教会でもナルキッソスがルーサーを魅了している以上、安全とは言い切れないのだが。視線が移るのは、令呪のある箇所。胡蝶に奪われずに済んだらしき左手親指付け根から手首付近にある印。]
消え行くものが、独占する事は出来ない からな。
もし、奇跡的に落ちているサーヴァントでも居れば、
或いは、奪う事が出来れば…… 躊躇わず 再契約を──。
[無頼はそのまま礼拝堂へと入っていき、次の瞬間、アタッシュケースを持った片翼の天使が空へと消えていった。
聖杯は、3年ぶりに*目覚めようとしていた*]
―教会から少し離れた場所―
[魔力は、刻一刻と消費されている。
令呪による魔力の余裕も、
先程の宝具の使用によりほぼ無くなっていた。
鎧は既に無く。
ポケットから、志乃に渡された姫倉の石を取り出す。]
お守り代わり……ね。
俺に渡してアンタが死んじゃ、意味無いでしょうに。
[姫倉、そして志乃。
戦には確かに、犠牲はある。
戦に参加した兵ならば誰しもが、死と隣合わせだ。
それでも、思わずには、いられない。]
…あはは。 相手が子供じゃ――物足りないでしょ。
[伸ばされる黒。
手前で止まる指先に、遠慮がちに持ち上げた手で、そうと触れる。
既に、その輪郭も朧気で 消えてしまうのが、怖い。]
――…、
[教会へ。 その言葉に、触れた手に僅か力が籠る。
一緒に行こう。 そう言った所で無意味だと、判っている。
わかっているけれども。…口に出したいのを、必死に飲み込む。
喉が痛い。引きつって、肝心な言葉は欠片として出て来そうにない。]
…やくそく。
まもれなくて、ごめん。
――死なせないって、言ったのに。
[まだ喚んだばかりの時交わした、約束にも満たない言葉。
それでも、 消えて欲しくなかったのは、ずっと。]
[触れあう指先の感覚は遠く、遠く。]
私に出来る事は此処まで だ。
ルナの 願いを 願いを
叶えたかったが……。
後は、君が自力で掴めるものを掴むしかない。
[首を振ったのは何についてか。]
[暗闇を照らす一筋の光。銀月の煌めき。
額を合わせる様にして灰銀の瞳を覗き込む。]
嗚呼、
願わくば、
もう少し──近く で
……を 、
愛している。
[戦慄く唇を自嘲するように歪めるポーズを取る事はなく。閉ざされる目蓋。消える真紅。バーサーカーとして召還された英霊は、光の渦となって消える**。]
―――、
[覗き込まれる。 酷く近い。呼吸すら 触れそうな程の。
耳に届く、最後の声に。
真紅に映った灰銀が僅かに、見開いた。]
――セム ルク、
[嫌だ、と。
声にならないまま、口唇が動く。
薄れゆくのを拒むかの様に、捕まえる様に。
強く握ろうとした指先から、
光の渦は、するりと溶けて、*消えた*]
[1]
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