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[選んだ場所は最奥の建物、その屋上。追跡者の目にはつかぬようと裏手より壁を駆け登る。]
さて、主はここで待っているがいいであるよ。
[返って来たのは憤慨の言葉。ジュリアも戦えますわ、との反論に戦は我が輩の仕事であるぞと呆れるも、引く様子はない。
束の間の、無言の押し問答。先に折れたのはジュリアだった。出来る事はないのか、と問う声。]
では、許されるならば………我が輩に魔力と祝福を、であるよ。
[言ってジュリアを抱き寄せ、その白く細い首筋へ接吻を施すようにやわらかく牙を立てる。
――幾分か欠けた月が、雲の裏へと隠れた。]
― 東ブロック/樹那大学 ―
[飛び往けば、見えてくるのは広い敷地を持った
由緒ありそうな建物。
胡蝶はほんの少しだけ眼を細めたようだった。]
……――此処なら問題あるまい
[風が吹き雲が流れ
銀月の光は淡い虹の色で雲を縁取る。
右眼を覆っていた包帯を解けば開ける視界。
一段高い場所、
本校舎とは別棟の屋上に降り立つ。]
[目を覚ます。眠りに落ちた時間はほんのわずか。
夢は、見ない。
どちらにしても、今夢を見たとして、自分の力になるわけではなかったから]
…忍神町かぁ。
行ってみたいっていったら、エラト反対すっかな。
[寝転がったまま眉を寄せる。
眠る前にリビングのほうから聞こえたセムの報告]
行って何がわかるってわけじゃないなら、行かないほうがいいのかね。
[ぱさぱさになってしまった髪を指で梳くと、ぽろぽろと黒が落ちる。元は赤かった色。髪を洗うのは傷に沁みそうだと思う]
― 東ブロック/樹那大学 ―
…闇に紛れたか
[――足手まといにならぬように。
いつぞやそう云ったように、胡蝶は自ら
身を隠すことを選ぶ。現代に生きる忍者にとっては
隠密活動は専門分野だ。
令呪の反応を追えるマスター同士では
効果は薄いであろうが。
街灯が頼りない影を作る。
伸ばした指は弓を握る形を作る。
まだ現界はさせない。]
−東ブロック・樹那大学−
は、破廉恥な……。
[文句を言いながら、視線を落として羞恥に頬を染める。]
……か、必ず勝ちなさいよねっ!
無事に帰ってきたら、ジュリア特製カレーライスをご馳走してあげなくもないわ。
[懐の金属砒素をコリコリと弄びながら、凛とした表情で従僕を送り出した。]
[夕飯(オムライスはふわっとろで大変美味でした)後、トナカイと戯れる試みは成功したのか否か。
一通りの事を済ませて落ち着いた頃、セムルクに声を掛けて拠点を出る事にする。
セムルクが食後に口にした内容も、少しだけ気になったから。
ユーリはどうやら休んでいるらしかったから、エラトに任せておく。
…や、私の拠点だけど、ご飯的な面でもエラトが居た方が間違いなく望ましいし
万が一襲撃があった場合も考えたら、彼以上の適任は無いだろう。
自分たちが留守の間は、家の中の物は自由に使っていいと託けて
(しかし何故か食料は残り少ない。…おかしい前にたくさん買ったのに)拠点を後にする。
もちろん、上から魔術を重ねて戸締りは厳重に。]
[敵を迎え撃つまでの僅かな時間が終わりを告げる。
別棟へと降り立つ敵の姿を確認し、ジュリアの腰にまわしていた腕をほどいた。]
ふむ、それは楽しみであるな。
[激励の言葉に背中で応え、闇よりエストックを取り出す。
そして――]
――得物はいいのか?
[問い掛ける声はアーチャーの後ろ………いや、足元。]
すでに戦いは始まっておるぞ!
[アーチャーの影より現れたそれが心臓目掛けて切っ先を突き出した。]
― 東ブロック/樹那大学 ―
[く、と握る指先に僅かに力をこめれば
中心より光に編まれ現出する手に馴染む弓。
藍と金の眼で闇の中の“それ”を追い――]
――…――!
[矢を放ったのは“足元に目掛け”
矢とは反対に飛び退り、着地。
光の矢を番え――闇色の男を見据えた。]
[突き出された切っ先は僅かに服を裂く。
咄嗟に足元へ放った矢は精密さに少々欠けたか。]
貴殿、先日ぶりだな。
…闇か。成る程、「神の家」を苦手とするわけだ。
[呟き、弓を引く。]
[咄嗟に放たれた一矢。
それは黒衣の剣騎を貫いた――かに、見えたが。]
ふむ、ただの腑抜けではなかったか。安心したぞ。
[ゆらりと落ちるつば広の帽子。放たれた矢を避けたものの、おかげで攻め損ねた。]
此度は無様を曝すなよ。――参る。
[身を低くし………奔った。]
―東ブロック/樹那大学―
[鍔広の帽子は夜へ舞う。
闇から闇へ渡るらしき男の動きは読むに困難か。]
無論。
[言葉紡ぐ闇を見る眼は鋭い。
きり、と微かに弦が鳴る。
翻る髪の先は金に変わり]
…――参る。
[言葉少なに応え、放つ光矢は数えて3つ。
急所を狙いすますもの、威嚇と撹乱。
矢を追うように反対側へ飛び、もう1矢。――風を切る音。]
ん? えっと、忍神町っていうんだっけ?
気になったから、見ておくのも損は無いかなって。
[何処へ行くのかと問われれば、返すのはそんな答え。
奇しくも、家に置いてきた負傷者と同じ思考に至っていたらしい。
怪我もなく、魔力も回復している身分故に実際に行動に起こしたという、其れだけの違いだ。]
んーと、
[かと言って隣町まで出た事は流石に無い。
何だか頼るのも悔しかったので、ムキになって一人突き進んだら、
結局はウロウロした挙句、見兼ねたセムルクに道案内を任せる形になってしまった。
しかも結構回り道したらしい。 心底申し訳ない。]
…、?
[西ブロックに差し掛かった辺り、ふと令呪から感じる気配に視線をあげる。
何かの寺院か、石の階段の上から感じる其れ。
ゆると、首を傾いだ。]
― 西ブロック / 霊光院 ―
[ライダーが槍を振るうをじっと観察する。
肉体面の増強は、長年の基礎が積み重なって出来上がるものだ。一朝一夕でどうにかなるものではない。
ならば彼女に必要なのは、「槍に慣れる」こと。
強くなる、というのは何もムキムキになったり雷獣のように走り回ったり、泉のごとく魔力を垂れ流すことでもない。
生憎と、あの的はそう易しく出来ていない。
上の空間から見えない紐で吊るしてあるだけだから、風にも揺れるし、威力が弱ければ刺さらない。
それにどう対応するのか――彼女が唯一、鍛えられるとすれば戦闘勘であり、槍をどこでどう使うべきかの判断力。
彼女の、白兵戦でのステータスは確かに低いが、それを補えるだけのものを身に着ける修行をすればいい。]
……まあ、もっと効率的な方法もあるかもしれんけど。
[自分にはこれしか思い浮かばなかった――と眺めながら独り苦笑していると、令呪の疼く気配がした。]
……。ライダー。どうやらお客さんらしい。
[組んだ腕を解き、傘を握り直し、入り口へ向き直る。]
[ドアの開く音。誰かが出て行ったらしい。
顔を見せたエラトをみて、ルナとセムの二人が出て行ったのだと知る]
二人、出てったんだ。
アタシが動けないからだろうけど、ずいぶんと信頼されたものだね。
拠点に残していって、何かするかもしれないのに。
…何もしないけど。
薬、ありがと。たぶん効いてる。骨まではわかんないけど。
[包帯の巻かれた腹部に手を当てた]
[余計な動きは最低限に、放たれた3つの矢を弾き、避け走るもすでに敵は跳んだ後。咄嗟に跳べば風切り音と共に元いた場所へと矢が抜ける。]
疾っ
[アーチャーを補足し、空中で切っ先を突き出せば真空が螺旋を生み出し真っ直ぐに伸びた。
そしてセイバーはそのまま大学の中庭へと降りていく――]
―東ブロック/樹那大学―
[弾かれる矢に眼を細め
螺旋の疾風へ身を翻す。
抉る――千切れたのは風に踊る和装の袖。
コンクリートが穿たれ悲鳴を上げた。]
―― ッ!!
[屋上の手摺の上へ音なく着地し
中庭へ降りていくセイバーを追うように矢が降る。
影を縫うが如く地に突き立ったそれはこの世のものならぬ光を帯びている。
――太陽神の血族の片鱗。]
…腕…
[視線はセイバーの腕をちらと見た。
捕捉できる位置へ。追う。]
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