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空の聖杯を欲する理があるならば、だな。
[呼び出された英霊はまだ一人として倒されてはいない様子である。ならば聖杯に満たされるべきものは何もない。]
うむ。それでは少し早めなれど晩餐としようか。
先日に好き芳りを嗅がせる店があった。リクエストがなければ、そちらにしたいと思うが如何かね?
[つい、と人差し指で指し示すは、駅前の方角。
すでに教会にいるはずの曲者には興味がないといった風体で、主を急かし歩き始めた。]
[ふと、青年と話していると母親が思い浮かぶ。
今頃、実家でどうしているだろうか。向こうの黒服に「母さんの言うことは俺の命令と同じ」と告げておいたのだが。]
兄さんが…なんかせえへんかったら、まともにダメージ与えられたかも分からんしなあ。
つもりがあったにせよなかったにせよ、あれを離脱したんはやっぱり兄さんらのお力、と思っとったんやけど。
[青年が問うているのは、心構えの話。
姫倉は腕を組み、虚空を眺めやる。]
うーん……。
咄嗟、やったからなあ…。
姐さんがいたから、俺も生きてるみたいなもんやし。
[正直、ライダーがいなかったら、あのブレスに凍らされて死んでいただろう。咄嗟であるにせよないにせよ、お節介は死への近道。
染み付いた性分なのでどうにもなりはしないのだが。]
直視せねば効かぬ、というなら
あの目隠しサーヴァントなら有利に戦えそうじゃのう。
[此方の手札はアーチャー。
魅了効果範囲外からの長距離狙撃も可能だろうか。
射程がどれほどかは知らないが、サーヴァントやマスターが複数居るここで口に出す気はさらさらない]
最後の一騎――聖杯戦争の勝者になるまでは、
聖杯は所詮ただの殻じゃがな。
[黒衣の紳士の言葉に「異論はない」と頷き、先導を任せ後に続く。
アーチャーの顔を見ていたら、何となくカレーが食べたくなってきたが、それはまた後日としよう]
さて、本気で雲行きが怪しくなってきたのう。
一等賞の賞品も危ういとあっては……。
―→中央ブロックへ―
…そうでしたか。
ではお互いにお互いへの感謝、ということにしておきましょう。
このままでは堂々巡りになってしまいそうですからね。
[まさか母親だなんて思われているとはいざ知らず
小さく笑って、それで場を収めることにした]
そう言えば、あれからそちらは何か目立ったことはありましたか?
たいして時間もたっていませんが…。
[尋ねるように首を傾げる]
そやね。
[過ぎた謙遜は人を不快にさせるという。
それとは話が違うが、延々と感謝のし合いをしているというのも微妙な話だ。この場にいるのは自分達だけではないのだから。
小さく笑い返し、傘を握り直す。]
んー…。
――――あ。
[一つ、思い出す。それは、そう。
――今もまだ、足に生々しい感触が残っている。
盛大に苦笑いをした。]
や。そ、そうやね…強いて言うなら。
姉さんにはもう言うたと思うけど、あの夜に出てきた、羽の生えた男。あいつのクラスが…どうも姐さんのクラスと同じらしいことと。
姐さんが、ダ………。
[名前が頭に引っかかって出てこない。視線を彷徨わせた。]
ダ……ダルグロスの息子、とか言うとった。
…ちゃうかもしれん。
[誰かの名前とかぶった。]
後。……。
どっちか言うと「あれから」より「あの前」になるけど。
どうも、病院がクサいな。
[物理的な意味の臭気ではない。
他は、教会の方から雷らしき音が聞こえたことを付け加えた。]
……?
[何やら上がった声に首を傾げたが、そのまま聞く体制を維持する。
クラスが一緒。推測から確信へ。英霊の頭の中ではいくつかの図が出来上がる]
ダルグロス、ですか。
似たような名前は何処かで聞いたことがあるような気がしますけれど…
[心当たりは、少なくとも自分にはない。
ルナとセムルクを見て、尋ねるように視線を向けたあと
考え込むような表情へと変わる。
正確には、自分は件の羽持つ青年の宝具の名前を聞いた形だと今更思い当った。
と、すれば商店街であった二人にはもしかしたら嘘を教えてしまったかもしれない。
…まあ、嘘から出た真になってくれることを信じるだけである]
病院?…東にあるのでしたっけ。
前、とはどういう…。
いつやったかなあ…。えーと…。
[空を見上げる。朱に染まりかけている雲。]
ちょいと、同じ東にある建物で調べ物しとったんやけど。
そこから南の住宅街に行こうとすると、どうしても病院の近くを通るんよ。ほんで…まあ。
その時に、似たような気配を感じた。
…つい迂回してしもたから、同じかどうかは確かめとらんけど。
[視線を青年に戻す。暫しの沈黙。]
…。あと。姐さんがちょいと調べてくれはってんけど。
やっぱり、東に一騎おるらしい、と言っとった。
…けど…。
あの夜、兄さんらのとこに行く寸前にも姐さんが調べてくれはってんけど、どうもその時にも同じ位置におったみたいやから、別の個体かもしれん。
それに…。
兄さんと対峙しとった奴らが「増える」以前に、一騎余分におった…と姐さんは言っとった。
こいつらが繋がっとんのか、ちゃうんかは、正直はっきりせん。
―中央ブロック―
……。
[無言で、ランサーの少し後ろを歩く。
魔力を多大に消費した身体は、まるで水から陸に上がった時のように気だるく、重い。
小さく息を吐くと、そっと胸元に手を当てる。
十字架のペンダントのある部分、その下の服の内側に下げてある小さな小袋。
――枯木と化した 母親の指
そして、それは、遠くない未来の自分の姿。]
(恐怖も、後悔も、無い)
[幼い頃から、そう生きる道しかなかった。
そんな自分を不幸だと思った事など無い。
むしろ、正当な魔術師達からは異形の者とされ、迫害される宿命を背負った家系――
一族を、自分の手で護るのだと、自分の役割に誇りを感じていた。
そして――]
………陣さん…。
[幼い頃に呼んだように、そっと呟く。
迫害された異能力者達は、自分達で独自のコミューンを作り上げたが、悲しいかな、その内部でも小競り合いが無い日は無かった。
迫害されたものが、更に弱い立場を迫害する。
幼い頃には気付けなかったそんな構図を、徐々に知る事になった頃、無頼家はその姿を消した。]
…そうですか。病院に潜伏でもしているのでしょうか、誰か。
けれど、病院を根城に出来る様な英霊、若しくはマスター…。
[うーん、と短く唸る声が風に乗る。
再び、何か心当たりがあるかどうか残りの二人に視線を向ける]
順当に考えれば、医療関係者か…入院患者、その関係者。
ということになりますね、それは。
[自分達と合う前、ということは自分達が戦闘に入った頃にはもう一騎
何処かに潜んでいたということになる]
計算上は九、ですね。
…彼女が感知できるのは私達同様英霊だけなのでしょうか。
私は、お二人が離脱された後、
…自分と同じクラスと思われるサーヴァントを更に見ています。
[これまでの会話で、ルナとセムルクには自分のクラスを
伝えてしまったようなものだと思う]
―― 中央/駅前 ――
おう。ここだここだ。
[辿り着いたは、うなぎや。看板には"ながしの"とある。]
どのような料理が出るかは知らぬがな。
だが、かように好き芳るものであれば、必ずや美味であろうぞ。
[なにやら妙に瞳を輝かせば、からからと音を立て扉を開けた。]
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