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[日が落ちるまでの縄張り、つまり一時的な居住。
しかしながら、マスターは中にいるのだろう]
うーん、焼き討ちしちゃおうかな?
[自らが操る炎の魔術を思い浮かべる。
もっとも、寺院を一人で焼けるほどの規模などはない。
しかしながら、周りは都合よく山林だった。
だったら、周りから焼いてしまえばいい話である]
……これは、失礼を。
[こほんと、小さく喉を鳴らして]
生憎と御名は存じませんが、いずこかの尊き血を引く英雄でありましょう。
私は――いまの主には、アネサンと呼ばれておりますが。
故あって、真名は名乗れぬこと、平に御許しを。
……私も真名ではありません。
[というより、真名を名乗ったのだと信じたのだろうか。あの脳は。
なんて未来に幸薄い脳]
それに、血の尊厳に興味もありません。私は悪性ですので。
ところで戦う気がないなら、私の愚痴を聞いてはくれませんか。
困ったことに、我が主は一撃必殺が望みでして。
となると、確実に一撃で殺せるような状況を作るしかないでしょう?
[ため息を吐きそうな表情。真剣に困っているようだった]
こうして敵について情報を集めながら、機会を待って一撃で殺す。それが私の出した一撃必殺なんですが、まだるっこしいことこの上ありません。
貴女のように骨と皮と贅肉しか付いていない相手なら、今すぐ真正面から戦った方が勝率は高い気がすると思いませんか?
[全く、そのとおり。挑発のつもりであるにせよ、腹など立ちはしない。
この身体は、英雄などではありはせず。
さりとて、キルケの如く自在に魔術を操るわけでもないのだから]
――……なら、試してみますか?
[微かに笑んで。抱いた槍を、頭上に構えた]
…。
[頬に手を当てたまま、右目を白布の下に隠す男を見る。
おそらくこちらがサーヴァントだろう。
隻眼だと言うのなら、戦闘上不利にはならないのだろうか。
じっと見て、それから頬に当てていた手を持ち上げる。
何かを宙に描こうとした指先は止まり
握りこめたあと、結局は問いかけの言葉になった]
…右の眼は、負傷されているのですか?
[右目隠す男に静かに投げかけた疑問。
あくまで、漠然とした疑問であった]
>>233
貴方達を真名で呼ぶことに比べたら、
私の名前なんてさしたる問題じゃ無いけど。
…念を入れて、損することは無いでしょ?
戦争なんだから。
[好きに呼べと、そう告げた真意を拾ったらしい。
周辺を触れるように泳ぐ男の手を灰銀で追いながら、
正解だとばかりに、少しだけ楽しげに僅かに口端を上げて。
しかし続いた言葉には、驚愕に似た色で一度だけ瞬いた。]
…贅沢は言う心算ないけど、処刑対象として呼ぶのだけは。ちょっと。
[流石に勘弁して頂きたい。
それが目の前の男を喚んだ代償だと言われればそれまでだが
別に自殺願望で喚んだ訳では無いのだし。]
[しかし生物学上(見た目も紛らわしいつもりはないが)女に分類している自分に
悪徳の起源とまで堂々謂わしめる男の言葉。
むしろ堂々と言ってのけた態に、一種の畏敬すら覚えた。
…好い気分には到底なれないが、怒りを通り越していっそ清々しい。]
Luna、――何だっけ、月? …随分、ご大層な名前になったね。
[緩やかな動きと共に己よりも低くなったその視線を見下ろして。
直前の言葉で、自分の眼から得た名だというのは直ぐに判った。
指先で目尻を撫でる様にして、ひとつ首を傾ぐ。
複雑な表情のその奥に潜む感覚を、悟ることは無かったが。]
いいよ、それで。 …嫌いじゃない。
[母国の物とも、この地の音でもなく。ただ神話か何かで聞き覚えが残る音。
さて、何処の言語だったか――少し思い出すには時間が要る。
まぁ然したる問題では無いし、悪い気はしない。
少しだけ意外だったが。好きに呼べば好いと、その言葉をもう一度繰り返した。]
――残念だけど、犬は飼ってないから。
っていうか呼び名とは言え、犬と同等でも好いって、
…、物好きって言われない?
[もし犬を飼っていた所で、仮にも英霊に同じ名をつける心算は到底無いけれど。
…どれだけマゾなの、という言葉は一寸躊躇って飲み込んだ。
――無闇に機嫌を損ねかねない事を、敢えて言う利点は全く無いし。]
…だけど、参ったな。
[一つ、唸る。男の人の名前なんて、そう思い浮かばない。
だからといって真名を呼ぶわけにもいかないだろう。
幾ら知名度が低かろうと、命取りになるのは代わり無いし。
かといって、咄嗟に偽名を付けられるほど
器用なセンスは持ちあわせていないのだけれど。
僅かに下に位置する相手の顔を見遣って、 ふと、灰銀を瞬く。
ゆると持ち上がった手は、男の真紅へと触れる寸前で止まった。]
…貴方は、真直ぐなSunce(赤)だね。
[その口調は、己の瞳を美しいと言った男のような
賞賛という訳でもなく、ただ率直な感想にも似た言葉。
その真紅が、嘗て対極の色を持っていたなど――知る由も無いけれど。]
――Sumrak.
[暫しの沈黙。僅かに言い淀んで、ぽつりと毀れるのは母国の韻。]
“セムルク”。
…不満だったら、もうちょっと考える。
[そこで言葉を区切る。とりあえずは、服装をどうにかせねばなるまい。
この家も父の拠点の一つであるから、幾らかの衣服は揃っている筈、
一先ずは其れを見繕えば良いかと一度踵を返して――
ふと、一言付け足したのは、念の為**。]
……、言っておくけど、犬の名前じゃないからね。
試すのはよろしいですが。
[つまらなそうに、右手を背中に隠す。得物を取り出し、元の位置へ。
人差し指に、銀の指輪。
そこから垂れる、きらめく金糸。
その終着には飾りも何もない、鈍色の分銅。
手首を振ればヒゥンと風を斬る音とともに、分銅が旋回し武器の威力を得る]
貴女、見たところ戦士じゃないでしょう。ならその宝具になにがしかのデタラメがあると考えます。
[有利な位置に居ながら、この相手がなぜ今まで襲って来なかったのか。それは槍を振るうタイプでは無いからだと結論づけていた。
ならば重要なのは地の利ではなく、発動条件であろう]
でも……その槍の外から攻撃できますよ。私。
[しかし過信もしない。予想は隙を産むから]
[武具を手に取る、少女の英霊に。
どうあっても、戦いを避ける見込みはないと、判断して]
ああ――……それは奇遇ね。この槍もね、飛び道具なの。
[言うが早いや。細腕を振るい、影長く曳く槍を眼下に投じる]
――えぃ。
[それは、盾をも貫く疾き一撃――では、なく。
そこらの若者が投げるのとさして変わらぬ、平凡な投擲。
卑しくも英霊たる身であれば、容易に回避できようというもの]
[ファフの言葉に笑いだしそうになる。
どうしても気に入らなかったらしい、一撃必殺が。
だけど、命令は断らないときた]
あいつ、物騒だけど馬鹿で、
そして純粋なんだなぁ。
[どうなることかと思ったけど、
巧くやれそうな気がする。
もっとも気まぐれを俺が起こさなければだけど]
…………。
[緊張感のない、槍よりはボールを投げる方が似合う掛け声。
投げられた長柄は、止まっているようにすら見える。
一歩だけ横に跳んだ。それだけで槍は避けられる。
ヒゥン、ヒゥン、と分銅の風斬り音も使い手の心情を代弁し、困惑を混じらせた]
――……む。
[呟けば。掲げた手には、直前にそこから放ったと寸分変わらぬ槍。
さもありなん。クロノスの御子ゼウスから贈られし、護身の宝。そのひとつ。決して失わぬ必中の投げ槍こそが、その正体。
もっとも、担い手ではないこの身では、必中の魔技は振るえない。
幾度も放てるだけの投げ槍は、便利ではあるけれど、当てられなければ仕様もない]
喚ばずに済ませるのは、やっぱり無理かな――……。
[分銅を放とうとして、止める。
目の前のサーヴァントは、どこから出したのか槍を持っている。
同じ物をいくつも持つのか、いつの間にか戻ったか]
……百度試されても、当たると思いませんけど。
[ヒゥン、ヒゥン、ヒゥン、と。不吉な風斬り音は凶兆のように。
一歩、見せつけるように石段を登り、間合いを詰める]
[石段を上がる歩みは、遅かれど。
少女が攻撃に移れば、次には自分が死ぬだろう。
矢雨を降らすアルテミスの如く、槍を投げ続ければと思っていたが。
少女の言葉どおり、百本投げても、当たる気がしない]
仕方ないわね――じゃ、宝具を出すわよ。
[ひとり、頷いて――ただ、優しい声を虚空に投げる]
[宝具を出す。
そのサーヴァントはそう言った。
だから、笑んだ]
……一撃、必殺。
[ヒィゥンッ、と。一際高鳴る風斬り音。その軌道は遠く、遠く、頭上へ。
限界まで糸を伸ばし、力を溜める]
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