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この人に頂きましたの。
[この森で手に入れたのではなく、彼が望んで出してきたものだと説明]
フフ、ブーケトスみたいだわ…
[少し浮かれていたのかも知れず、不用意にそんなことを口に出す。白い――だけが共通していただけのそれを]
お礼を言った後あたりから、急に…
目を覚ましてくれればいいんだけど…
[覚ます事がいいことなのか、それは今でもわからない]
[未だに私がここにいる理由はわからない。
望んでいたのか、
巻き込まれたのか、
そもそも、やっぱり私という者はここにもいないのかも知れない状況は変わりない。それでも]
ここは嫌い。
けれど――
[嫌いで終わらせないでくれた、そんな事に今更ながらに気付かせてくれていたここは]
嫌いというだけじゃ、ないのよね。
[ジャラリと鳴る鎖の音すら、今は遠く]
気絶も森の意思かな…[マーブノレに目をやり、すぐ視線を戻す]
ブーケか…、そうえばおいら、結婚式の仕事が入ってたんだよなあ…
[それが死者へ送る花だと告げずに]
(森は人を変えるのかな…、単に異常な状況のせいなのか、好き嫌いは関係なく)
−回想?−
[誰かが近くにきた気配がした。
ピクリと身じろぎしたけれど、誰かは何も言わずに離れていった。
顔を上げ、そちらの方を振り向くと、小さくなっていくテッドの後ろ姿がみえた。
ゆっくりと立ち上がって、]
あなたは、ここで一体何をする気なの?
…の、森で…。
[小さな小さな声だったので、テッドには届かなかっただろう。]
[立ち上がった時に枕を落としてしまっていたが、拾おうとせずに。
テッドがサユラへと近づいていくのを、ただじっと見つめていた。
マーブノレが倒れているのには気づかなかったかもしれない*]
仕事ねぇ…
[あの日も仕事帰りだった。だからこそあの白い景色は殊更忌々しく感じていた]
(戻るときは――あの時に戻るのかしら?)
[だとすればこの白い花など、なかったことになるのか。
いやいや、記憶すらなくなっているのか。]
(ふふ、馬鹿みたい。戻れる――なんて保障もないのに)
[消えると言う事がどういう事なのかすらわからない。
そうなってみないことには。**]
―――――――――――――――――――――
私、カサブランカが大好きよ。
だって聖母マリア様に捧げる花でしょ?
まっ白で凛として気品があって、飾らないのに美しくて…。
(ああそうか、あれは彼女がいつも言っていた節回しだったっけ。)
教会に行くとね、聖母マリア様に天子さまが百合を差し出している絵があってね。
すっごく素敵なの!だからね、私の結婚式には百合の花を使ってね。
駄目?…あなたもお葬式みたいだって思う?
(わかったよ、君の望むとおりに。花はいつだって美しくそこにあるだけだ。どんな事に使うかは人次第なんだ。
うんと艶やかに華やかに気品あふれる花束を作ってあげるよ。俺の最高傑作だ!)
ありがとう!ああ、楽しみね。ゲホッゲホッ…。
ん、やだ大丈夫よ、ちょっと咳が出ただけよ…。
[ああそうだ、それで俺は花束を届ける為に式の朝、あの丘の上の白い教会に向かったんだ。飾り付ける為の沢山の花を積んだ車で―――]
…いってぇ…なんだ?眉間がいてぇ。
[頭を振って目を覚ますと、おでこをさすさす撫でながらむくりと起き上がった]
あれ、濡れタオル。
[起き上った拍子に、ぽてっと膝に落ちたタオルを拾うと]
サユラ?これ君がやってくれたの?ありがとう、優しいんだな。
[何故か眉間が痛むのが不思議だったが、そばについててくれただろう少女にお礼を言った]
[白い花が洋服のように胸元を覆っている姿に何かを思い出す。あれは…彼女の病室?]
少し、ここに来る前の事思い出したんだよ。
なんだか、君に前にもあった事があるような気がするんだよね。あの病院で…。
ううん、君って言うか君に似た人?君、看護婦さんとかお医者さんのお姉さんなんて…いる?
[混乱した記憶で誤認したのかも解らないが、一応サユラに聞いてみた]
そう…病院。
[仕事続きの毎日で、私は――を見舞う事もろくになく]
看護婦や医者に知り合いはいなかったかしら。
今、覚えている限りは、ですけどね。
[最後に行ったのはそう、あの日…**]
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