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[ダンボールの中から何か見えた。
そして、届いた声は聞き覚えがある。]
それ、ひょっとして鶯谷くん…?
でも今の顔は。
ううん仮想チェスって何。
か、顔なんてなかったよ。気のせいじゃないかな。
砂漠が近いから、蜃気楼という可能性もあるかもしれない。
[ハイスペックな混乱で訳の分からないことを口にした。]
チェスは、盤の上で駒を動かしてゲームをするものだよね。
その駒が無い時、適当な紙に線を引いて盤目を作るんだ。
[別のダンボールを取り出し、チェスの盤目を再現する。
a〜hの横列、1〜8の横列。計64マス。
そこに、ポーンならP、キングならK、クイーンならQといった風に文字を書き加えていく。
そして、ダンボールから腕だけ出して、碓氷に差し出した。]
ポーンを動かしたいなら、Pを消しゴムか何かで消して、別のマスにPと書き加えるんだ。敵の駒を取った時は相手のコマを消して、その上から上書きする。
尤も、鉛筆で書くなら自分の駒がどこに配置されていたか、したのか覚えてないといけない。同じ黒色だからね。
ふうん?
[じーっと二人を見た。見た。見た。]
いいけど。
でも顔なんてなかったって、変だよ。鶯谷訓の声はするんだから、鶯谷君の顔が見えたって不思議じゃないし。
でもずいぶん可愛い顔だった気がする。
[実は精霊さんとしてあったことがなかった。気がする。ので鶯谷の顔だといわれればそれで納得するはず。]
僕がかわいいなんてあるわけないじゃないか。嫌だなあ。
[声はとてもすごく棒読みだった。
動揺が見えて隠れてヨヨイノヨイ。
視線で矢口に助けを求めた。たすけて知恵子せんせい。
とか言ってたらすごくノーコメントだった。]
うう。これはひどい。
[犬がにんまりと笑っている気がした。なんということだ。]
ただいま矢口さん。
お昼の準備しとくね。双海さんまだ起きてこないみたいだし。
[そういってキッチンへと入る。
冷蔵庫を空けて何がいいのかなぁと思案。
なんとなく麺類が食べたくなった。]
パスタ茹でよっか。
トマト缶まだあったし。
[パスタを取り出してお湯を沸かし始めた。
20分後くらいには人数分のトマトソースのパスタが出来てる*予定*]
―食堂―
[冷蔵庫から取り出してきたコーヒースカッシュのプルタブをぷしっ
・・・・・・うん、後味が芳ばしい。
朝食の時に作りすぎたサンドイッチがあるし昼食もこのままでいいかなと思っていたら碓氷がパスタを茹で始めた。それはそれで。
矢口と鶯谷がなんだか仲良しだな、とちら見しながら伏せられたダンボールを開いて見る。
・・・・・・。
夜にでも話をしてみようか。そんなことを考え…階段下の惨劇ってそいえばどうなったっ!?]
[戻ってきた結城は、どうやらそれ以上話すつもりはないらしい。
矢口のことといい、何だか空回りばかりな気がする。]
………ふー。
[溜め息が出た。
でも、矢口が城を追っかけているなら、それはそれで成就して欲しいという気にもなる。しかし……。]
(分かってるんだか、分かってないんだか。)
[日恋は、当然分かってやっているんだろう。
成就する恋もあれば、そうでないものも当然ある。
そんなに都合よく1対1の恋愛ばかりが発生するわけではないし、ならば失恋した人はどうなるのか。
さっさと忘れて次の恋を探せ。見つけられなければ時間切れ。特別プログラムへ。
とてもすごく随分と愉快な話だ。
どうやら日恋には恋愛のエキスパートが揃っているらしい。
――ああ、考えていたらまた腹が立ってきた。]
…………。
[何となく。本当に何となく。
新たなダンボールの切れ端を取り出し、書き加え……ようとして。止めた。
こういうのを文で聞くのは、卑怯だ。]
矢口さん。
[碓氷がキッチンにいることを確認し、顔を出す。
そして、ちゃんと矢口を正視しながら言った。
かつては憧れていた人を正面から見つめるという性質上、ほんの少し赤くなっていたかもしれないが気にしない。]
最初の時のこと、覚えてますか?
[盗聴されていても差し障りのない範囲で言葉にする。]
(キャストオフ) あたろーは、矢口 恵子から覚えていると答が返ってきたなら、今は(脱出したいのかどうか)どう思っているのか*聞くつもりだ*。
―2階廊下―
[次元を越えたわけではなく。
長風呂の間に、階段での騒ぎは終息していたに違いない。たぶんきっと。
肩にタオルをかけ、205号室に戻ろうとドアノブに触れる。]
……。
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