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―お前、言葉の意味でも勉強して、もうちょっと言葉を使う努力をしたほうがいいぜ。
[そうだね。と曖昧に返事をしたのだが、兄による言語学講習会はその後度々行われた。
いつの間にかナギは、大学で言語学を専修していた。
ナギは絵を描くのが好きだった。山や鳥、川や魚などの自然を描く事が。
誰にも言う事が出来ないまま、実現する機会を失った夢の片鱗を兄に見つけられた時]
…勝手に人の部屋入らないでよ。それはただの趣味なんだし…見られたくなかったな。
[兄に対して今更怒りが沸くでもなく、そっけなく言ったのだが、今思えばナギの瞳は失望の色をしていたのかもしれない。兄は
―へえ、案外うまいもんだな。
と言っただけで絵を置いて部屋から出て行った。
兄が言語学へと転向したのはそれから間もなくの事だった。
兄が時折、出先から美しい自然の風景付のメールを送りつけて来るようになったのはそれからだった。]―回想・了―
[窓の外からの光が目にさして、ベッドから上身を起こして辺りを見回した。]
あっ…いけね、夕べはそのまま寝ちゃったのか…
[夕べはつもりでそのまま寝てしまったようだった。気がつくと、目が潤んでいる。懐かしい夢のせいだろうか。ナギは袖の淵で目をこすり]
みんなは徹夜で作業とか…してたのかな。
[またリーダーらしくない事をしてしまったな、とため息混じりに呟く。]
…恨めるよ、兄さん。俺を後釜にしたのは今までで最大の迷惑だ。
[ナギはつい持ってきてしまった兄からの最後の贈り物の本を、そっとゴミ箱に入れた。]
せめて食事の準備でもしておくかな。
[資料を開いたままナギは自室を出、食堂の奥にある厨房に足を運んだ。
食事の準備と言ってもプログラム済みのメニューを機械が準備してくれるので、作業としては並べるだけですむのだが。
オー=ス=ティンさんの食事は、キィ=キョウさんに聞いてからにしよう。
…今日はオー=ス=ティンさんの様子を見に行く事は出来るだろうか。
そんな事を考えながらセッティングしていると、医務室から変な物音が聞こえてきた。
不審に思って回線をまわすと、ローズが作業をしているとの事だった。>>10
事情を聞くのと手伝うのとで、ナギも医務室に向かった。]**
―自室―
――ティンが、死んだ?
[シ=オンが注射器と共にもたらしてきた凶報>>3に、思わず言葉を失った]
……いくらなんでも、早すぎる。
奴だって、赴任して、あの一件が起こる前はピンピンしてたじゃないか。そのウィルスとやらが発病して…、もう、命を落としたってのか。
[ギリッ、と音がするほどに、強く歯噛みしてから]
よかろう。こいつ(と注射器をつまみ上げて)で、採血して検査すればいいんだな。すぐに医務室へ行くぞ。
サフラー、お前も薬の手立てがついたんだな。一緒に行こう。
[足早に医務室へ向かう。そしてローズの作業を目にして、無言のままに手を貸した >>10]
―医務室―
[睡眠カプセルに移されたオー=ス=ティンの死に顔は、目は閉じられていたが、それでも苦悶に歪んだ名残は見て取れた]
(こいつが、なにをした…)
(こいつが、こんな死に方をしなきゃいけない、なにをしたというんだ…)
[オー=ス=ティンと初めて会った時の事を思い出す。サフラーを見て「可愛い奥さんですねー」などと似合わない世辞を言いつつ、「でも僕もね、任務を終えて戻ったら結婚するんですよ!」と照れたように笑っていた…]
[ショウから声をかけられる。>>18]
あ、はい。お薬の手立てはつきましたが……。
[ショウから、オー=ス=ティンが既に亡くなった事を知らされ、表情が暗くなる。せっかく薬草の手はずが整ったのに間に合わなかった事に無力さを感じている]
もう少し早ければ……。オー=ス=ティンさんを救えたのでしょうか……。
>>15>>21
[無言で手伝う二人を、またこちらも無言で迎える。
ショウが拳を握りしめ、震えているのは、KK-102降下に反対した自分に対する怒りもあるのかも知れないと、心の中で感じていた]
[作業を終えると、一旦医務室を出て、喫茶室に向かった。落ち着くために、少し温かいお茶を飲むことにした]
不思議…。
[お茶を入れながら、呟く]
みんなのように、涙も怒りも出てこないなんて…。
[母星には、確かに世話になったリアンや仲間のキチェスがいた。多分、皆…。
しかし、出来損ないのキチェスである、自分に対する彼らから逃げたかったのは自分であり、そういう意味ではある意味清々していたのかも知れない。
いや、キィ=キョウがここに一緒にいてくれたこと、ただそれだけがローズの心の支えであったとも言える]
[とはいえ、嫌いだった楽園も、いまはもうない。
他のリアンや自分をいじめてきたキチェス達ももういない。
そう思うと、心のどこかに空白ができたような気もしていた。
椅子に座って、ひとり、ぼーっと、お茶を飲んでいた**]
[『もう少し早ければ……』サフラーの声に、強くかぶりを振った>>22]
そんな事はない。ティンは間に合わなかったが…、これで終わりとは限らん。こういう事は、予防措置が肝心のはずだ。お前がしたことは、決して無駄なんかじゃない。
[そして、キィ=キョウを振り返り]
ウィルスの発生や感染ルートが分からん、と言っていたな。治療方法もまだ何とも言えんだろう。…こいつにも手伝わせてくれ。薬剤とかに関しては、お前の手助けになるはずだ。
[喫茶室で、前任者が置いていった、KK-102のテレビ番組をぼーと見ていた。字幕までついている、気合いの入ったビデオだった。自動翻訳してあるらしい。
KK-102の自然風景を取り扱っているビデオで、花々が咲き誇る場面を映し出していた]
綺麗…。
[一瞬、自分の名前が呼ばれた気がした。はっとなって、巻き戻すと、ある花の名前の発音と、自分の名前が同じだったのだ…]
へぇ…。
俺は…、お前たちの作業に目処が立った時に備え、KK降下のための降下地点候補を検討しておくぞ。
原住民を制するだと。正当防衛だと。そんなもん、していらんわ。寒冷地、乾燥地、高地…、原住民では手の出しようがない、だがこの衛星基地よりもはるかにマシな環境はいくらでもあるさ。
「サージャリムさま」でもグウの音も出んほど好条件な候補を出してやる。
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