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―雪融けのジンロウ町―
[ゆーと二人、手を繋いで。凍りついた時がふたたび動き始めたジンロウ町を歩く。
いつも帽子にしまってた髪は、ゆっくりと落ち着けるようになったいまは少しうっとうしいから、ジャスティス急便備え付けの輪ゴムで適当に縛って止めて(さて解こうかって時になって酷く後悔することになったけど、それはまだ後の話)
ジャス天号を牽きながら。やっと気兼ねなく話せるようになった、たわいもない思い出話をしながら、ゆーと二人で歩く道をちらほらと行きかう人たちは急がしそうで。
きっと、あの箱舟が壊していった町を直そうと、これからもっと忙しく慌しく賑やかになるのだろう。
でも、ジャスティス急便を預けてるいま、わたしはひとまずの休日だ。
せっかくゆーが帰ってきたのだし、今日だけはそのくらいの贅沢をしてもいいよね、と、思う。
そして。
“ジャスティス”をお休みしているいまのわたしは。あにゅーの言葉を借りていうならいわば『ニュートラル』。
なら。向かう先は]
ちぃーっす。
おっちゃんはー…
まだ戻ってない?
[顔を出したそこで。いつもどおりの注文をする前に声をかけて。応対に出てくれたアリアさんに聞いてみる。
どうやら、まだ帰ってはないらしい。でも。
アレだけ威勢良く『お任せあれ』と言い切った後輩がいるのだから。何も心配は要らないだろう。いらないはずだ。たぶん]
あ…ありがと。
いやー、なんか悪いね。
今日はもうジャスティス急便お休みだから、町の手伝いもできるわけじゃないのに。
[言いつつ。アリアさんから、復興する人たちの炊き出し用と思しきおにぎりを渡される。ゆーと一緒に二人分、受け取って。カウンターでそれを食べて。
そこから眺めるアリアさんの働きぶりときたら、てきぱきと接客をこなしながら、中立亭に集まる連中相手にきっちり応対してるその様子は、なんだか既にOKAMIの風格だった]
[そんなOKAMIさんが。どこか嬉しそうというか…楽しそう?にさえ見える様子で。
いそいそと、耐熱扉に、向かったので]
……ッ
いや代わりってわけじゃないけどさ。せめて炊き出しくらいは手伝うよ。
ほら、普段なかなか食べる人もいないのに、昨日今日になってあれだけ大盤振る舞いしたらそろそろ喫茶まろん自慢のカレーだって売り切れ間近だろうし。
ね。そうだよね。いやー、大変だなぁ。そんなカレーをまたご馳走になるわけには行かないよ。うん。
ね。そうだよね、ゆー?
[彼女がそこにたどり着く前に。視認さえ許さぬ速度で回り込み。耐熱扉の前に立ちはだかって。
矢継ぎ早に言葉を投げかける。
ゆーは、事態を把握しているかどうかは、分からないけど。
…分からない方がいいんだ。きっと。
とはいえ。ゆーが食べたいというなら。それを拒むすべは、いまのわたしには、ないのだけど]
それに…そうだ!
きっとおっちゃんたちもじきに戻ってくることだしさ、お出迎えできるように、先に準備しておこう。
メニューは…そーだなー…
うん、やっぱり、喫茶まろんで特別なときって言ったら。
[あせあせと言葉をついでいたら。なし崩しに調理を手伝うことになったけど。
ゆーも一緒に料理するなんて、いつ以来だろうと思い出すだけで気が遠くなりそうなことだし。むしろそれはとても嬉しいことだと、ひとりで納得する。
作るのは、もちろん―――]
[包丁を装備。左手には、よく洗ったジャガイモ。]
よおしっ
[29個ほど皮を剥き終わるころには、
グー:指はズタズタだった。
チョキ:包丁はズタズタだった。
パー:めっちゃいい笑顔だった。
+パー+]
─ノア内部─
[黒の魔法少女が目指すのは]
[動力炉でも、異次元ジェネレーターでもなく]
[乗船した一般人の囚われ場所]
[ヒーローの姿を見て、誰でも、自分だってヒーローになれると思える]
[そんなエンディングの為に]
待たせたわね!
[一般人の大多数は、JIGEN怪人と、GOEMON怪人が救出済み]
[しかし、その当人たちと、生命力を吸いつくされた一部の一般人は、そこに囚われて]
ふふん。だらしないわね!
起きなさい!魔法少女が、助けにきてあげたわよ!
まじかる☆のヴぁ!
[魔法少女の力で、人々をノアに繋いでいた装置が、ひーりんぐ☆りいんかねーしょんされる]
[なお、ひーりんぐ☆りいんかねーしょんについては、第100代魔法少女の話で、詳細に説明されているので、参考にして頂きたい]
[現在、再発売中]
[それはともかく]
[装置に奪われていた生命力は、人々の上へ降り注ぎ、全員が目を覚ました]
さあ。寝ぼけてる暇も、あたしに見とれている暇もないわよ!
偽の救世主に躍らされて、ノアごと吹き飛びたいのでなければ、さっさとここから降りなさい!
どこから、ですって?……ここからよ!!
[キラン☆バキバキドカン☆、という効果音とともに、その場所から地上への直通路を力付くで開通]
― ノア内部 ―
それでは私は中に“忘れ物”を探しに行って来ます〜。
グラジィちゃん、ホムちゃんズをよろしくなのです。
[外でドンパチやりながら道を作る中で、何か忘れちゃいませんかと別行動で箱舟内に進入。
そんな少女は諜報員 ――いわゆるスパイ、陰の役割。
どこぞのジャスティス急便さんみたいに慣性を無視する様な能力も無ければ、
どこぞの道具屋さんのように、ただの怪人から正義のヒーローへと華麗な転身を遂げる訳でもなければ、
どこぞの謎の少女さんのように、一貫した悪で町全体を巻き込むようなド派手な悪事を働く訳でもなければ、
(キリが無いので略)]
迷子になったりしてませんよねぇ…。
[野球っだって4番打者ばかり集めても強力打線が出来る訳ではないのです。
ドンパチは得意な皆様に任せて、非戦闘員はお膳立てに回りましょう、と言う訳で
探している相手は、箱舟転送の立役者。
派手にドッカーン☆と吹き飛ばすクライマックスは、この方が居なければ始まりません。]
ド〜ンファ〜んさぁ〜ん!!
―箱舟・甲板―
シャルロット、1人で何処へ行く!
ホムンクルス達を連れて行かんか……!
[ホムンクルスを自分に預けて箱舟の内部へと進入して行くシャルロットを追おうとし、大鎌で周辺の足場・外壁を斬り回り、破壊した。しかし彼女の姿は既に奥へと向かった後]
無理をするなと私に言っておきながら…このたわけが。
[身を翻して再び壁に突撃しようとしたそこへ、「キラン☆バキバキドカン☆」と星付きの効果音と共に箱舟の外壁の一部が吹き飛んで行った]
な……これは月下美人の魔法か…?
音だけは可憐だというのになんという破壊力なんだ…。
まあ良い。お前達、あの連中を追い回せ。未だ目が覚めきっておらんようだし、ここは1つ脱出の手伝いをしてやろうではないか。
[壁の中からは囚われていた人々が現状を把握し切れていないままのろのろと移動を開始した所。
シャルロットから預かったホムンクルス達と共にその後ろに付いて…大鎌で以って追い掛け回し、箱舟の外へと追い出して行った]
こいつらを全員引きずり出したら一気に奥まで行くぞ。
良いなお前達。
[早くシャルロットの後を追わなければと焦る気持ちが大鎌を振り回す手に力を込めさせた]
―少し前―
―花見空間上空・ノア内部・異次元ジェネレーター前―
オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
[時空間移動は成功したものの、ノアを凍りつかせていた青薔薇の魔法は解け―――異次元ジェネレーターは暴走を始めていた。このままでは箱舟そのものが次元を破壊する爆弾となり全てが消滅してしまうだろう。]
[...は暴走ジェネレーターを次元の力で押さえつけているが・・・]
っぐぅぅぅ・・・・・・このままではマズイッ!!
力が・・・爆発的な力があればっ・・・!
ここまできて、諦めて・・・たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ・・・む、これは?
[外部からの激しい衝撃がノア内部まで伝わり、箱舟全体に張り巡らされた次元の力が少しだけ弱まる]
[それは魔法少女二人の攻撃であり、ホムンクルスを操る諜報員の攻撃であり、花の子と花の王の攻撃でもあり・・・花見空間にいる全ての者達の援護であった]
皆の攻撃が始まったか・・・これで百人力よっ!!
反撃の目処は立った・・・! あとは死力を尽くすのみっ!
ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォ!!!
<< 次 元 制 御 >>
<< 時 空 固 定 >>
[次元の力を操り、ジェネレーターの周りを一時的に空間固定する。 時間稼ぎ程度だが、これで暴走するまでの猶予ができるはずだ]
これで少しは持つだろう・・・あとは脱出するのみっ!
む、あの声は!?
[遠くから聞こえてくるのはピンク色の少女の声。]
[やがて見えてくるウサ耳帽子、少女は息を切らしてこちらに駆けてくる。この土壇場にあってなお、自らの職務を果たしているかのような充実感のある表情をしているかのように見受けられる]
シャルロット殿!!
俺を探しに来てくれたのか・・・かたじけないっ!
それでは脱出までの道案内を頼みますぞっ!
御免!
[軽いシャルロットの体を一瞬で肩に担ぎ上げ、少女が指し示す方向へと駆け出す。 ノアを揺るがす振動があちらこちらから聞こえてくる、特にキラン☆バキバキドカン☆という音は激しい。]
皆派手にやっておるようだな!
さぁ、我等も外に出て加わりましょうぞ!
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