1763 【新春ネタ村】あたまのゆるい新年書き出し小説大賞
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ペロッ、これは… ぐれごりー
Tシャツに棲みつくのは、何もカエルばかりではないらしい。
あの時なぜ、もう少し足元に注意しなかったのか。悔やんでも悔やみきれない。
ペロッ、これは… ぐれごりー
真っ白だったＴシャツが、いつの間にか黄ばんでいる。
ちょっとずつ、ちょっとずつ。一度では気づかない程僅か、でも、確実に劣化して来たのだろう。
私の想いも、そうなのだろうか。
ペロッ、これは… ぐれごりー
電車に揺られながら、床を転がる空き缶を見るともなしに眺めている。
皆、それを多少なりと目障りに思っているだろうが、一人として拾って片づけようとする者はなく、ただ鬱陶しそうにしている。俺と同じように。
ペロッ、これは… ぐれごりー
太陽と海は、全てを受け止めてくれる。そう思わせるような海の色を、私は今でも覚えてる。
隣に立って眺めていた、あの人の顔はうまく思い出せないっていうのにね。
ペロッ、これは… ぐれごりー
少年が行方不明になった二日後、彼の身につけていたＴシャツだけが自宅の門に引っかかっているのが見つかった。
奇妙なことに、シャツは長い年月を経たような色褪せてぼろぼろの状態だった。
まとりょーしか ふぃぐねりあ
雨宿りに招いた自室。
MサイズのTシャツがワンピースのようになってしまう。
履けるものがないからと晒された大腿を見ないように俯いていると、
己の呼吸と心臓の音がやけに鼓膜に響く。
まとりょーしか ふぃぐねりあ
彼の夏服姿には違和感があった。
誰もが半袖シャツの下にはTシャツを着ていたのに、
彼だけは素肌の上にシャツを着ていただけだったからだ。
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