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― 回想・Bar"Blue Moon" ―
[マスターにフードを頼んで、近くのテーブルへと移動しようとするが、胡椒が多めのオニオンスープには満足をしたのかカウンターへと向かいおかわりを要求した。]
おかわりー。
マスター、おいしいよー、オニオンスープッ!!
仄かに香る、たまねぎハーモニ〜♪
[受け取ったおかわりのオニオンスープ片手に今度こそテーブルに移動しようとすればケビンの詰め寄りに合い、ほんの少し涙目になる。]
うぅ〜っ。ちゃんと学校……行ってないかも…あれ?
あたしはケビン先輩よりずーっと真面目だもーんっ。
とにかく、メディ先輩に話を聞けばいいもんね。
[テーブルには注文したナポリタン、ピーマン抜きが届けられた。
いただきまーすっという言葉と共にフォークを握った。]
[フォークでくるくると巻き取りながら、パスタを口えへと運んでいく。
Barと呼ばれるところで、がっつり食事をするものなのか周りを見回してはみるが、分からなかったので考えることをやめてみた。
誰もそんなことをしないなら、自分が最初でいいではないかと、という結論に至る。]
むー……。
今日は家に帰れるかなぁ……。
[またもぼんやりと考えながら、ナポリタンは減っていく。
気が付けば、アリシアがいなくなっており、ケビンも店を出ていくところだった。]
マスター、ご馳走さまぁっ!!
また、来るねーっ。
[マスターはどんな思いでこの言葉を聞いたのか。
Barには似つかわしくない客は店を後にした。]
―→自宅方面
― 自宅前 ―
[こそりと自宅の様子を伺う。
自分を銃撃してきた男たちの様子を探るためだ。
ぱっと見たところ、誰もいないように見えた。]
……大丈夫だよねっ、多分。
お風呂入りたーい、携帯も持ってかないとダメだし。
[こっそり隠れるかのうようにして、自分の部屋へと。]
―→自宅
― 自宅 ―
[若干荒らされた様子があるが、気にしない。
携帯端末をチェックすれば、アンサンブルのメンバーから連絡があったようだった。]
あー……なんだったんだろ?
あ、メールで入ってる。
[それは暫く練習は休みにしようというもの。]
えっ、えぇっ?!なんでっ、なんでっ??
[理由は、自身が銃撃された噂がメンバーの耳に入ったことだったが。それに気付くことは、できずにいる。]
…ふーん、べ、べつに、いいもんねーっ。
あたし、1人だってべつに。
[気分を紛らわすかのよう、シャワーを浴び。
布団に飛び込んだ。]
― 回想終了 ―
― 早朝・自宅 ―
[今朝は何故か自然に目が覚めた。
昨日戻ってきたことを男たちが気付いているかもしれない。
この間は助かったが今度は銃弾に倒れることも十分に考えられる。]
早めに家を出たほうがよさそう…。
忘れ物ないようにしないとなー…。
あ、パパのも持って行っとこう。
[小さなケースと携帯端末。
それから、いろいろな音楽データをカバンに詰め込む。]
あ、リーンにも後でメールしなきゃなーっ。
確か楽器ケースに入れといたはずだし。
[そろっと家を出て行く。]
― 路地裏 ―
[家からこそこそ、隠れるようにして出かける。
何も悪いこともしていないのに、何故追いかけられなければならないのか。
全く納得がいかなかった。]
今日は学校行こうかなーっ。
でも行っても、センセに怒られるだけかも。
じゃあ、街でサックス吹いてるほうがいいかなっ!
[走り抜けようとした路地裏。
己の足を引っ掛けようとしているのか、足が伸びている。]
なぬっ!そんな罠には引っ掛からないもんねーっ!!
[けれど、明らかな異臭には気付いていた。
鼻が曲がりそうな臭い。]
くっさー……何、なんの…にお…。
[伸びた足の持ち主を確認するかのよう、足を飛び越える前に立ち止まって持ち主を確認した。
ゴミ箱の陰に男の姿は隠れており、近付いて初めて確認ができた。
上空には、黒い鳥が鳴いていた気がする。]
えー……ええっ……!
[思わず、1歩後ずさる。
けれど、壁のある方向に後ずさってしまったのですぐにぶつかってしまった。]
役所のおじちゃん……?
……、え、え、これって、『Masquerade』?
[何度もストリートで怒られた。
男にとの時の面影はなく、右肩から右の二の腕の辺りが腐ったのか、ボトリと落ちている。
首筋には何か奇妙な痣みたいなものが見えた。]
ハハ…アハハ……。
やっばい、生で見ちゃった……。
これ、記憶に焼き付けて、作曲に活かさないと……。
[言いながらも、微かな震えが止まることはなく。
視線も上手に定まらない。
周囲に漂う、腐臭がさらに意識を遠のかせた。]
……ハハ……、アハハ……。
あたしも、あたしも月に還るの、かな……?
[震える声で呟いた。
死体の前、ぼんやりそれを見つめたまま。
時間が経てば、その場に*座り込んでいるかもしれない。*]
ー路地裏/早朝ー
[まだ朝のうちに、ホテルを出る。
川沿いの道を抜け、人気のない路地裏へ。
どこかで鴉のなく声が騒がしい。]
[鼻を突く臭いが路地に入る前から異変を伝えていた。
生ゴミとは違う臭い。少し薬品の混じったような、腐臭。
普段なら避けて通るだろう道を進んだのは、どこか尋常でない笑い声が聞こえたから。
見覚えのあるミントグリーンの髪がゆらゆらと揺れる。
彼女がサックスを吹いている時も、同じように揺れていた。
でも、笑い声はあの時とまったく違う。少しも楽しそうじゃない。空気の漏れる音。]
どうしたの?
[がくがくと震える少女に歩み寄り、その見つめる先を確認する。]
─早朝・自宅─
[通信端末は、いつもと違う着信音。
寝起きの身体は、すぐさまソレに反応して。
音声通信を受信。
現況を知らせる声は、真剣みを通り越して悲痛なほどで。
非常事態宣言。地区ごとの分割封鎖の話。
…そして、手が足りないとも。]
…復帰、か。
構わないけど…、新しい相方は必要無いから。
[枕元に飾ったままのフォトフレーム。
そこに架けてある二本の鎖を手に取った。
写真の中、寄り添う姿は未だ鮮やかな色。]
…検体が届いてない?
[もたらされた知らせに、思わず問い返す。
輸送していたはずの担当者が行方不明と。
該当地区は、この周辺のようで。]
判った、何か見つけたら知らせる。
[ジャケットを羽織り、部屋を飛び出した。]
……Masquerade。
[その犠牲者を見るのは初めてだった。
なのにそれと分かったのは、その腐敗と首に広がる痣。
Masqueradeは空気では感染しない。分かってはいたけれど、思わず口を押さえた。ごくりと喉が鳴る。]
やだ……。警察に、連絡……。
[振り返って、少女がぶつぶつ呟いているのに気づいた。]
ちょっと!? 大丈夫?
[ぼんやりとした様子の少女の肩を揺さぶり、次の瞬間その手を離した。]
[思い出したのは街で聞いた噂。
『なりたて』はぼおっとしている。
思わず少女から一歩退き、身を守るように腕を上げた。]
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