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…・・逝った
救われぬ あさましき 人食いの魂が
[うぉおおおおん] [怨]
[しゃがんだまま笑う男の傍に、うすあかい靄が立ち籠めた。]
影秀どの…
貴男の魂もまた、羅生門へ 向かうか?
──故・大殿の屋敷 屋根の上──
[奪ったものが、無我の胎へまた奪い戻されたのを良しとせず、再び喰らいつこうとしたが、衣を引かれて止まる]
[ニヤリと笑み浮かべたまま、己が式の失せた跡を見るとはなしに見ていたが、]
──しまった。
[チ、と舌打ち。
忌々しげに見詰めるは、羅城門の方角。]
[口元から手を離せば。
ゆっくりとした足取りで。白藤へと歩み寄る]
…惨い。
[死して尚。
動いてる様に見えるは這いずり喰らう蛇の染色。
痙攣。
穴から出てくる蛇を睨みつける]
もう…臓も…無ければ。
薬を、処せぬ…
[細い手。握り拳が白く、堅く。
ぷつり、食い込んだ爪が新たに赤を紡ぐ]
[倒れた白藤へと近づく汐を見つめて]
大殿の邸で、雇われていたから……?
それが何の怨みになるんだ。
どうして。
(どうして)
[立ち上がり、既に物言わぬ白藤の骸を見下ろし、蠢く蛇を睨み]
鬼、……。
おれが相手にしようとしていたのは、鬼なのか。
(どうやって見つけるというのか、如何にして傷つけようというのか。誰に聞けば、その方法はわかるのだろう)
[おとこは、顔を覆っていた手のひら、指を苦労して引き剥がし、立ち上がる。何時もの薄笑みは無く、暗いまなざしは何処か憂いを帯びていた。]
わたしは、ひとは嫌いだ…
・・・兄上 それに、影秀どの。
──ああ。葛木が、おのれの所業をおそれ悲しまぬが良い。
あのうつくしい銀の毛皮の沁みが あれ以上酷くならないとよいのだけれど。
[おとこは水晶の数珠をかかげ、空に向かい礼の形を取る。
瞠目。目の裏に浮かぶは──]
無我──ならば 澱みを請け負うことが出来るか。
[これほど辛いことならば、もう情を持つことはやめた方がいいのだろう。仇すらとらないほうがいいのかも知れぬ、と]
[それでも]
[許せる所業ではなく]
あの男に聞けば、判るかな。あやかしの、鬼の殺し方が。
[ふくふくと丸く太った仔猫はすまし顔して少女の姿した少年の肩に鎮座する。
式神に、猫になれるかと願ったら、彼女はわざわざこんな姿になってくれたわけだが]
……?
[微かな異変を感じ取ったらしい猫が、短く一つ鳴く]
…なにが、一体。
呪いに抗する事が出来る…
呪いを仕掛けようとする者にとっては邪魔、なのだろうよ。
[ぽつりと。聞こえてきた問いに答える]
…そう、何か。理由が、あったと。
思わせて、おくれ…
[あらかた食い終えたのか。
どんどん出てくる蛇に小さく紡ぐ]
…あの、男…?
[振り返り、桐弥の姿を見ようとすれば。
一人の男が見えて]
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