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「それって、そんなに大事なこと?
オリジナルもへちまもないわよ。
他人のこと気にしてもしょうがないでしょ?」
なんてね。
偉そうなこと言ったね、ブライ。
私だって同じだわ。
[戦いの音が聴こえる。
私は役割をこなしていただけ。
本当は戦ってなんかいない。
戦ってきたのは戦争者たちだった。
いつだって。]
無責任な神様も、神様でもないのに神様気取ってるヤツも、人間離れしたサーヴァントも、何もしちゃくれないし、私たちを助けてなんかくれないし、そんなのお門違いだしって思ってきたけど、
―――本当は、私が。
私が、戦わなきゃいけなかったよね。
…さ、て
[一段高い地から降りれば、地を駆ける。
足元にはまだ世界図が展開されたままで、
駆けて向かう先は――ブライの台座の傍。]
「管理人」さん。
…ここは戦場ですよ。
[見つけた金髪の美少女の姿。
彼女を自身の陣――地図の上に重なるようにし、守るかたち。]
[ランサーの最期の言葉を忘れたわけもないから、
素子を見つければ守らないという選択肢はない。]
…おや、…ブライジンガーとお知り合い、ですか?
[光る鎖は未だに武装したアサシンを捉え、
その動きを束縛せんとしているが、
龍脈の力なしの鎖に変わっているから、抑止力は衰える。]
ありがと。
ちょっと、私も戦いにね。
大したことはできないけど。
[ふわりと振り返り、笑う。]
私、ムカついてるの。
アイツは私の家族にひどいことしたからね。
ええ、ブライは知り合い。
古い古い、ね。
実際には最近知り合ったようなものなんだけど。
このブライは、私の知ってるブライとは本当は違うし、きっと少しずつブライも変わっていくのよね。
だって、生きてるもの。
ブライがどうやって生まれたかとか、私に何が求められてきたかとか、そんなの、私たちの知ったことじゃない。
だって、生きてるもの。
そうよね、ブライ。
きっと、「町」の人たちだって、そうだわ。
生きてるし、死にたくないし、変わることは怖いけど、それを否定したりなんかしない。
だから、綻びが出る。
だから、無限なんてない。
お仕着せの役割も革命もいらないわ。
だって、生きてるもの。
そんなの、当たり前のことだもの。
いつか私たちがいなくなっても、いつか世界が滅んでも、その「いつか」は私たちが自分で選ぶべきなのよ。
[キャスターが、
彼のマスターとの繋がりを切ったのには気づかない、気づけない。――彼が詩人の意図を理解した上で取った行動には、気づかない。
リリンの令呪が、最後の一つであったということも]
その力は、巨人が如く。
岩をも砕き、はるかに名を響かせたもう
汝が名は
ベドウィル・ベドリバント
《恐るべき膂力のベディヴィア》―――
[――>>211 その歌に、大きな力が乗る。
倍化、倍増――単純な、装置による増幅ではなく
魔術による「増殖」
吟遊詩人の物語を更に強固なものにした。]
[そっとブライの体に触れる。]
私は多分、「抗体」として作られたわ。
誰かが「塔」の持つ役割を壊してしまわないように、聖杯を壊してしまわないように、働くモノとして。
これは推測でしかないけど、そうでないと、私がループの中にいながらシェムハザと同じように連続した記憶を持っているのも、私が自由にこの「塔」を出入りできるのも、説明がつかないのよね。
外部から変な影響を受けないように私は立ち回ったし、「町」が崩壊してしまわないように私は立ち回った、そしてシェムハザが聖杯を壊そうとするのを嫌がった。
「でも、そんなの、知ったことじゃない」!
私は、私が選んで、こうするの!
[そのまま、ブライの体になけなしの魔力を送り込み、強引に「塔」を流れる魔力に干渉する。
「塔」がどうなってしまうか分からないが、シェムハザはこれで聖杯の魔力を自由には使えなくなるはずだ。]
[メルカトルの護衛のお陰でレティの元へたどり着けたようだ。]
レティ!怪我を…手当てする。
[レティの側に駆け寄ると傷口に手を当て魔力を流し込む。]
悪あがきか。
成程、龍脈を支配する宝具とはな。
この聖杯の中、君もかろうじて魔力を供給出来ているという事か。
だが、それはこの聖杯の魔力を一部借受しているのと同じ。
僕に及ぶわけがない。
君たちの敬意を表して、全力で叩き潰してあげよう。
もう二度と、何もかも繰り返さないように。
[翼がうっすらと輝く。
さらに大きな魔力が、彼に流れ込んでゆく。]
魔術理論・世界卵。
それは体内に秘めた神秘という名の心象風景を、この世界の現実と一時的に入れ替える大魔術。
現代においても魔法に限りなく近いものだ。
だが、ここはどうだい?
既にこの空間という現実は、消えたサーヴァントの心象風景に閉じ込められている。
神秘が介在しない現実での実現は困難を極めるが、ここは違う。
この聖杯へと注がれたサーヴァントによって、その下地は作られている。
そして、最後。
この聖杯が具現化する心象風景は、僕のものだ。
[そう告げると、その空間は徐々に風景を変えてゆく。
それは、聖地。
新約聖書の中でキリストが旅し、教えを受けた物は宗教儀礼として訪れる。
そして、ここがシェムハザの墜落した土地。人と監視者が交わりし山。
一面の雪景色。白き山、ヘルモン山。]
[シェムハザの復讐はここから始まった。
人に知恵を与え、愛を与え、そして監視者は貪った。
シェムハザはそれに同調した訳ではなかった。
だが、彼は監視者=グリゴリの代表とされ、ミカエルに幽閉され、そして罰を受けた。
彼は罪を犯してはいない筈だった。]
この山にいる堕天使はね、僕を売ったんだ。
自分たちの極刑を免れるためにね。
まさに腸煮えくり返る思いだよ。
出来る事なら、滅ぼしてしまいたい。
だが、彼らにとって僕は仮にも首領でね。
僕の命令には、絶対なんだ。
……すばらしい……
これで もっと遠くまで、歌を届けられる!
[眸を輝かせて
僅かながらも頬を紅潮させるのは喜びに。
詩人の性だ、逃れ得ない。
両の手を差し伸べて、
劇場の中心で歌い上げるように広げた。
ビスケットクラップ――リリンの力に乗って。]
「――参る!!」
[隻腕の騎士が、そして魔力を得たことで再び立ち上がったペルスヴァル、イヴァン、そして――切り結ばんとするランスロット、歴戦の騎士たちが次々とその姿をはっきりと結ぶ。キャスターの力があってこそ出来ること。]
戦いは、数、……でしたか―――
[ふと、セイバーの言葉を思い出して呟く。嗚呼、誇りこそと言ったけれど――強がりも、言ってはいられないか]
[右手を、すっと空へと挙げる。
何処からか、シェムハザの上空には3桁にもなろうという数の黒翼の天使が浮かび上がっていた。]
シェムハザの名をもって命ずる。
・・・・・・処刑しろ。
[挙げた手を、前方へと振り下ろす。
その言葉を切欠に、数百の天使はトルバドールとキャスターへと襲い掛かる。
ある者は魔術を行使し、ある者は槍や剣をもって彼らの頭上に飛来し、襲い掛かってゆく。]
……っ、 ヒイラギ!?
近づいてきては危ないと……!
[>>224視線をそらすは僅かの間。
傷が治っていくのを感じながら。
差し伸べた手の先を取る一人の騎士に命じるは]
――わが主を守っておくれ。ガラハッド。
汚れなき騎士、聖杯にたどり着いた3人の内の一人として。
[12人の内の一人を割いて、
守りを任すは理由がある。
舞う軍団、グリゴリの群れ。罪深き欲望の成れの果て。]
――堕天使の軍団か。
かの天才芸術家が見れば驚き喜んだだろう。
しかし、夢想していたより、
ずうっと禍々しいものだな…!
[それでも、物語を欲する詩人は、薄く笑みを浮かべたのだった。]
[咽喉元に片手を、
もう片方の手は空に向けて差し伸べて
円卓の騎士たちに討つべき相手を教えるよう。
既にその手に楽器はなく、
その身、その声、その姿こそが奏で、束ねるものである]
――汝らが名は誉れと共に在り。
[叶わぬ理想を、詩歌にした。
白きヘルモンの山に吹き抜けるは薫風。]
Dont Tristan fu enpoisonnez ;
飲薬(あきらめ)を私は決して口にしなかった;
Mes plus me fet amer que lui
誠の心と誠の意志が
Fins cuers et bone volentez.
トリスタン以上に私を愛(ものがたり)へと向かわせる。
円卓の騎士たちよ、
――“私の物語を奏でておくれ”
[キャスターから受け渡された宝石。
差し伸べた手の先にはそれがあった。
びしり――と罅割れ、砕けて断面がずれた姿は花のようだ。
込められた魔力の放出。
――騎士たちに力が満ちる。
トリスタンは矢を放ち、その間隙を縫ってペルスヴァルの投槍が風を割いた。鳥撃ちが如く確かに堕天使の羽を射抜くも、グリゴリは命ぜられるがまま怯まない。
ランスロットが大きく跳躍し、グリゴリの一人を踏み台にした。]
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