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[もう一度長く深い息を吐いてから、手の中からゆっくりと顔を上げた。]
……気をつけて。
この屋敷には、まだ見えていない「何か」があります。
それが何かはまだわからないけど…。
(…おそらくそれは……私が見知った風…景)
[ふいに遠くを見るような目で、空を見つめる。まるでそこに何かが*存在しているように*]
ご主人、とうとう人形命宿ったようですぞ…?
[話かける先にあるのは赤い髪の人形。
ラッセルが母と呟いた、あの人形。
彼はほんの少し前、ヒューバートという美術商と共に街へと逃げた。事実しればさぞ父親を恨んでいることよ。
そしてソフィーというあの女。あの金髪であればこの赤毛に見合う人形こしらえられた。恐らく彼らの後をおって去ってしまったのだろう。何とも惜しいと呟けど]
[人形が動いた?さてはてこの屋敷は……]
[そして主人が殺されたと同時刻か少し過ぎた頃だろうか。
地下室から出、耳澄ますと二階より聞こえるけたたましい電話の音。
あの電話が鳴るのは何年ぶりかと眉をよせ、それを取りに執務部屋へと足を運ぶ]
…はい。何用でございますかな?
[電話の先は警察。厳しい声が老人の耳を襲う。
先日殺した警察官のことだろうか。
いつものように空とぼけ、がちゃり切ろうか思考めぐらし…その手を止める。老人の口元が僅か持ち上がり]
ほっほっほ、それこそ静寂好む人形がしでかしたことでございましょうの。あまりにも騒がしい御仁でございましてな。
[警察の叱咤。しかしまともに取り合わぬ。老人、何を思ったかまた信じられぬ言葉、紡ぎだす]
…実はの、今ここにお客人が参っておるのですじゃがの?
[二、三言、警察に話す内容は]
えぇ、えぇ承知しております。では…こうされるとよろしゅうございましょう。
[老人が語る。それは一体何なのか。
チンと電話切り。そのままずるり衣引きずり下へと降りる。
向かう先は厨房か]
ほっほ…。わしがこなすにはちと荷が重くての…。
[厨房にある食糧庫。ほんのわずかのその中身、全てぶちまけ粉々に。一欠けらも残しはしない]
ほっほっほ。さてお客人。飢えて死ぬか生きる為人肉を食らうか。
それか……互いに殺し合うか。
[老人が警察に申し出たのは屋敷の爆破。
期限を設け、その間に「警察官を殺した犯人」を見つけてもらう。
いや、お互いに罪をなすりつけ、でっちあげてもらおう。
この屋敷に満ちる恨みや妬み、感情は既に本物。恐らく主人もこの先長く生きれはすまい
この老人、胸中何が渦巻くか。それを知る術どこにもない。
そして、彼の予想は的中する。
今宵のメイン、主人の首と小さな人形──]
― 二階:ゲストルーム ―
[ 時は既に日も沈んだ頃だろうか。
ハーヴェイは自室を出て、各人の部屋を回り、食事をしないかと声を掛ける。ハーヴェイ自身も昨日からまともに食事を摂っていないが、皆も似たようなものだろうと考えたからだ。
食欲の涌くような状況でもないが、しかし、食わずに衰弱する訳にも行くまい。そして、一人でも多くの者がまともに動けた方が、生き延びられる公算は高いはずだ。
あの冷蔵庫はともかくとして、厨房にはまともな食材もあるだろう。
ハーヴェイの言葉に同意した者と共に、厨房へと向かう。]
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