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カロラ は クノー に投票した。
ベニ は カロラ に投票した。
クノー は カロラ に投票した。
ミナ は カロラ に投票した。
ウル は カロラ に投票した。
カロラ は村人達の手により処刑された。
今日は犠牲者がいないようだ。人狼は襲撃に失敗したのだろうか。
暗雲が去り、まぶしい光が降り注ぐ。――全ての人狼を退治したのだ!
『間もなく、終着駅、サウザンクロス、サウザンクロス』
[くぐもったアナウンスが流れ、列車が静かに停車する。
しろいしろい天の川のずうっと川下に、青や橙の光でちりばめられた十字架が、まるで一本の木のように立っていた。
その上には青じろい雲がまるい環になっているのがみえた]
―サウザンクロスに到着する直前―
[降車するために席を立つクノーの手を、もう一度握る。」
ねぇ、クノー。
ベニは、クノーに会えて、クノーに触れられて、クノーとお話出来て、嬉しかった。
[ずっと重ねていたクノーの手の温もりは、やがて直接は感じられなくなるだろう。
でも、クノーとの時間は、きっとこの先もベニの心に温かさをもたらしてくれる。
何の根拠もないけど、そんな確信があった。]
…ベニが元気になれたら、真っ先にサウザンクロスに、クノーに会いに行くね。
それに……またベニがこの列車に乗った時には、きっとここで降りるから。
その時には、いっぱいいっぱいクノーにお話しするんだから。
約束…だからね。
[今度は自分から小指をそっと差し出す。
視線を上げれば、優しい表情のクノー。その瞳をまっすぐに見つめた。]
…『またね』、クノー。
[到着のアナウンス>>#0を耳にすればゆっくりと手を離し、サウザンクロスで降車していくクノーの後姿に手を振る。
クノーの姿が車両から消え、窓から降り立ったであろうクノーにも手を振り、列車が再び走り出した頃、ベニの姿もその席から消えていた…*]
―とある病院の一室―
[ゆっくりと目を開くと、そこには少し白いものとしわが増えたような、ママの顔。]
「ベニ!…気が付いたのね!」
[眩しさに目を細めると、身体を強く抱きしめられる。
…口元にマスクもなく、胸の苦しさもない。
ただ、体が強張って痛いだけで。]
……マ……マ…?
[か細く掠れるような声で縋り付く人を呼べば、涙でぐちゃぐちゃになった顔に微笑みを浮かべていた。]
「おかえり、ベニ。
あなた、ゆっくり眠りすぎよ…?」
[頬を頭を撫でる手は、優しさに満ち溢れていて。**]
―数か月後―
[車椅子に移して貰えれば足と手で車椅子を操って移動できるまでに回復し、私は個室から4人部屋に移った。]
レイナちゃんは今日退院だよね。
[少しの間同室になったのは、移植した心臓が止まりかけて、でも戻ってきたレイナちゃん。
不思議な列車の話をしたらすごく驚かれた。
…レイナちゃんも同じところに停まった列車に乗ってて、青い森の三角標で降りたと言う。
でもそこからどの方向に進むのか迷っていたら、自分そっくりの子が「おねえちゃん」って言って近づいてきて、突き飛ばされ、気が付いたら病院にいた…と。]
「その子、私の名前知っててさ。
しかもおねえちゃんって言われてね、両親に聞いてみたんだ。
そしたら、私の心臓は別の理由で助からなかった『妹』…ニイナから貰ったものだって。
あの時、ニイナが突き飛ばしてくれなかったら…私、ここに居ないってことだよね。
妙にリアルな夢かと思ってたんだけど、ベニもあの列車を知ってるなら、やっぱり私はニイナに会えてたんだ。
…うん、決めた。
私、絶対にニイナの分まで生きて幸せになる。
ベニと、…ニイナに誓う。」
[レイナちゃんは、優しく胸に手を置いて、そう話した。*]
―その日の午後―
「元気になったら、病院の外で会おうね!」
[お互いにあの列車に乗って、持った『決意』を話せる相手。
長くかかるかもしれないけど、ベニもきっと元気になって退院するから、その時は天の川を見に行こう…列車を降りて旅立った人達に会いに行こう。
そう約束して連絡先を交換した。
迎えに来たご両親、彼氏さんと共に病院を出るレイナちゃんに、病室の窓から精一杯手を振る。
振り返って手を振るレイナちゃんの姿はとても眩しかった。**]
『またね』、ベニ。
……行ってらっしゃい。
[その言葉と、再び頭を撫でたのが、最後。
サウザンクロスのホームへと降り立ち、歩き出して。]
……きっと、あの星を目指せば良いんだろうけど……。
[不揃いに耀く星々の傍ら、宝石箱や石炭袋が並ぶ空。
天の川の真白にあって尚、くっきりと行方を照らす、五ツ星。
……だが。
少し離れた辺りで足を止め、列車の一ヶ所を見詰めた。
ベニを見送るよう、列車が離れるまでは、その場に立ち尽くして。]
…………けれども。
貴女もボクを、見守ってくれていたんですよね。
――――“母さん”。
[歩み寄れども、最期まで交わることの無かった“もう一人の母”。
彼女に自らの死も背負わせる形になったことは、どれほど懺悔しても足りないだろうけど。
それでも。
二人の《母》の幸いを祈り、十字を切って。
……そして。
いつか、あの少女と再び出会える日を。微睡みの中で、待つように。瞼を、伏せた*]
―4年後―
[とある南の島の海辺、日も沈んだ時間。
星明かりの下、傍らにトランクケース置いて腰を下ろして空を見上げる小柄な女性の姿があった。]
やっと会いに来れたよ。クノー。
[女性の視線の先に瞬くのは、――サウザンクロス。]
私ね、この前成人式に出たんだよ。
……手術の時は11歳だったのに、目が覚めたら16歳ですって言われてすごいびっくりしちゃった。
でも、中学校に入ってきた友達が卒業していったんだから、そうだよね。
…ってあっさり納得したら、却って先生たちにビックリされちゃったよ。
[コロコロと明るく笑う。]
ここに来れるまで元気になるのに4年かかったから、私、ハタチになったんだよ。
…まだクノーのほうがお兄さんだよね。
[話を紡ぎながらトランクケースをゴソゴソと探り、中から取り出したのは2つのコップと水筒、それに小さなチョコレート。
水筒の中身を2つのコップに開けると、コーヒーの良い香りが辺りに広がった。]
――お話することは、たくさんあるんだから。
[自分の隣にもう一人居るかのようにコーヒーとチョコレートを2人分用意すると、再び夜空に瞬くサウザンクロスに向かって語りかけはじめた。
きっと瞬く星が陽の光で見えなくなる頃まで、話は尽きることなく。*]
(―――それだけの時間、ずっとそばに居てくれてた)
[あいつも、妹も。
自分が何もできなくなっても、変わらずにそばにいて助けてくれた]
[客車を出て、ホームに降り立つ。
天の川の川下、青や橙の光がちりばめられた十字架が一本の木のように立っていた。
その上には青じろい雲がまるい輪になって浮かんでいて。
さらに見上げれば煌びやかな宝石箱や、反対に真っ黒な石炭袋が
小さな星の粒や見えない野原を隠してぽっかりと浮かんでいる]
[……綺麗だな、と。
空を見上げながら、ここに来てはじめて忌憚なくそう思えた]
[ここで降りる客も多いのだろう。
自分と同じようにして降りていく乗客たち。
川下の十字架の許へ、まっすぐ歩いていく者もいれば、
しばらく駅のホームに立ち尽くす者もいて。
――自分は、後者のほうだった]
……また、『いつか』。
[列車が離れていくのを見えなくなるまで見守ってから。
誰にともなく、そんな言葉を呟いた。
小さく手を振って、去りゆく列車と、ちらと見えた名前も知らない乗客たちを見送った後、やがて線路に背を向けて歩きだした*]
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