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温泉の鍛冶師 ミルファーク に 1人が投票した(らしい)。
宿屋の女将 グレダ に 2人が投票した(らしい)。
エルフの戦士 エステル に 4人が投票した(らしい)。
エルフの戦士 エステル は村人達によってたかってぶち殺された。
街の野鍛冶 ソレックス は エルフの戦士 エステル との赤い糸の切断に失敗したようだ。
人狼は食い損ねてお腹が空いているようだ。
しぶとい奴は温泉の鍛冶師 ミルファーク、巨力の戦士 サイラス、劫火の鍛冶師 ギャラン、宿屋の女将 グレダ、竜王御前試合お手伝い ネジマキ の 5 人だと思っておこう。
―――せやァッ!!
[その、最後の一瞬は、半ばは意地のぶつかり合いであっただろう。
最後。
ロサに魔力の補助を加えた一撃は、エステルの魔力が集中した射陽を跳ね飛ばした]
―――ありがとう、エステル。いい戦いだったよ。
[敬意の言葉とともに、竜器の全てを失ったエステルに、ロサのその先端を突きつける。
竜巻が収まると同時に、それが、戦闘の終焉を告げたのだろう。竜王の宣告が先か、エステルの言葉が先か。試合の終わりが、告げられる]
−翌日−
[カタカタカタカタ]
竜王御前試合ノ!最終試合!
サイラス・ノーブライン対グレダ・ナクピアガ!!
決闘ノ環境ハ煉瓦の町並みトナリマス!
両名、遅レヌヨウ試合会場マデオ越シクダサイ!
両者ノ会場入リヲモッテ、試合開始ノ合図トサセテイタダキマス!!
−寸刻のあと−
…いや、強かった。
[掛け値なしの本音を込めて、そう漏らす。
最後のその一瞬まで退くことなく魔法に全霊を込めたその一撃は、押し切られたとて何の悔いもないほど。
それだけに、試合が終わったあと。
会場を出てから、エステルにもう一度、感謝を伝えたいところであったが、それは叶ったかどうか]
さ、試合もあとは明日でおしまいだ。
何はともあれ、ウチに帰ろうか。
[ミルファと、あるいはギャランとサイラスに告げて。
決勝戦の前には、少しばかり長いインターバルが設けられる。
そのことを補足して、宿への帰路についた]
おおおおおお!?
なんだあの竜巻は!!エステル殿の魔法か!!
なんと恐ろしい、あの可憐な姿からは想像も出来ん規模だ。
いや…だからこその戦士なのだろうが。
[彼女が生み出した竜巻>>4:70の軌道を目で追いながら、対する
グレダがどう出るのかを見守った。]
それでも動かぬか、グレダ殿は―――!!
[退いてどうなるわけでもないからと言って、自棄を起こして
いるわけでもない。まだあの状況を打破出来る…いや、
打破してみせるとの気迫で以って立ち向かうだろう姿が在った。]
─ 試合会場 ─
おわ……った……?
[巻き上げられていた砂の落ちる、雨のような音がする。
わたしは席にぺたんと座った]
終わった……。
[実際は短い戦いだったのだろう。
でも、わたしには丸一日くらいに感じた]
サイラス、さてどうしたものか!
俺達の決勝の対戦相手は、グレダ殿のようだぞ。
[竜巻が消える、そこで試合終了の合図が掛かった。
どちらが勝者でもおかしくないその戦いの中に、相棒は
何を見てどう感じただろうか。
男は反応を見るかのような物言いで、試合会場へと視線を
巡らせて、最後に相棒の顔を見下ろした。]
更新時間が24時間延長されました。
おっと。
そういえばそうでしたな!
うっかりしておりました、すぐ後に試合が来るのかと…。
それでは我々も一緒に戻る事にしましょう!
[相棒が男の問いにどのように答えたにせよ、今は何も返さずに
時間が出来たことを示すグレダ>>2とミルファークの後に付いて
宿へ戻ろうと歩き出す。
しかし、その際に相棒の耳に近付き囁いたのは
あまりにも緊張感に欠けた提案だった。]
サイラス、もし宿の手伝いなど何も用事が無ければ…
少し遊びに出ないか。
[時間が出来たなら、修理箇所を絞った武器の再調整も
行うべきだが、それはまた後からでも出来る。
明るい内にこの街を周り、その中でいくつか話もしたい。]
[ついでに…相棒の財布の細工もしておきたいし。**]
ほおおおおおお〜〜、すっげえ、竜のエネルギーのかたまりだ!
[エステルの放った魔法が、砂をまといながらグレダへ向かう。
グレダの姿は砂におおわれ見えなくなったが、やがて現れたのはエステルにデッキブラシの先端をつきつけるグレダの姿だった。]
年の功対決、すげー。
[悪気はない。]
どうしたものかなあ〜〜。
グレダさんにゃ世話んなってる分、精一杯がんばらねぇ失礼だよなあ〜〜。
[相棒の顔を困ったような顔をして見上げながら、情けない声で返す。
観戦中、ない頭をふりしぼって考えようとはしてたのだ。
だが結局は、でたとこ勝負でいくしかないと思って]
ここまで来たしなあ。
勝ちたいよなあ。
[気合いを入れ直すように、ぱん、と自分の頬を両手ではった。]
[みんなで連れ立って宿へ戻ろうかというときに、相棒から予期せぬ耳打ちをうける。]
お、……いいぜ!
試合始まってからはそっちばっかで、全然見てらんなかったしな!
[つられて小声になりながら、にやっと笑った。
そういえば、財布の盗難防止対策もしてもらっていないし*]
グレダ……おかえり。>>2
[まだ涙でうるうるしたまま、グレダを出迎えて。
最初の戦いと違って、なんだか、「おめでとう」は違う気がして。
考えた末に]
ありがとう。
[おかしいかな、とちょっと笑った]
インターバルがあるんだね……。
なら、少し、手直ししたいかな……。
[勝ちあがった候補を見れば、
たぶん、最終戦はサイラスさんたちだろう。
あんな大きな人を相手にするならば、それに合わせた調整をしたいと思った]
[わたしとグレダは間にカティちゃんを挟んで、手をつないで帰った。
アルゴルは、わたしとメリッサの間を、ころったした体の割には素早くついて来ている]
[なんだか平和な形だな、と思った]
―それから街に繰り出したわけで―
[一時宿に戻った後、何か宿の手伝いがあったならば
まずはそちらに専念し、時計の針が大きく回って落ち着いた頃]
ふむ、そろそろ出掛けても良い頃合か。
[積もる話もあることだし、と。
サイラスと二人並んで街へと出た。]
はっはっは、おいおい。さっきお前は言っていたが…
お世話になっていなくとも、対するからには精一杯力を
出し切って頑張らなくてはならんだろう!
そうだ、ここまで来たんだ。
俺は勝ちたいが…実際に戦うのはお前だ、サイラス。
俺は俺なりに万全を尽くす。
だからと言って、お前に絶対の勝利の約束を押し付けたりは
しないがな。
[その途中、話は第三試合終了後まで遡り>>9
あれだこれだと話す内に「グレダとどう対するか」と
繰り返していた。]
それでだ。
俺はお前に決勝に臨むにあたり、いろいろと伝えておこうと
思っていたのだが…やめた。
その辺は俺よりもお前の方が見えているだろうしな。
[見ていないようで見ている相棒の視点を思い出して、
彼の閃きの妨げになりかねない余計な事は言うまいと]
グレダ殿の戦い、ミルファーク殿が造った竜器。
お前もしかと見ていただろう?
正直言うと…直前になって法や策を講じてどうにかなるような
レベルのものではない。
だから、最後まで真っ直ぐ行けば良いと思った!
『要するにいつも通りで行こうぜという奴です。』
[スズメが一言で済ませてしまった。
苦虫を噛み潰したような顔を後ろに向け、そもそも話す事は
そちらではないと気を取り直す。]
―宿を出ての散策で―
うーん。だよなあ。
ジミーとの戦闘んときに頑張ってないとかじゃねえんだけどさ、
俺のやり方はグレダさんに見られてるわけだし、
グレダさんの戦ってるとこみて、対策を考えてみようとしたけど思いつかねえし、
そんでも泣き言いってらんねえし、精一杯やんなきゃな〜〜ってさあ〜〜。
[髪の毛をぐしゃぐしゃとかき乱しながらぐちぐちと相棒>>14に返事をして]
勝ちてえよなあ。
うん、勝つよ。
だって、俺もお前も、今まですっげえ頑張ってきたもんな。
[それは約束というよりも決意に近い。]
[やがて話が盛り上がるうちに、唐突に相棒が何かを切り出そうとしてきたが>>15]
へ?やめたあ?
[やめられてしまった。
お前の方が見えている、という言葉にはしかめっ面を作って手を顔の前でふって「ないない」と]
ギャランの方が頭良いんだから、気づいたことがあったら教えてくれたっていいだろ?
でも、まあ……お前がそう言うんだったら、いっか。
[口を割れとせまっても受け流されるだけだろうし、相棒の判断を信じているから。
ふわあああ、と大きく伸びをして]
うん、俺は俺の出来ることをやり切るだけだ。
してねえとは思うけど、竜器もいつも通りの調整だけでいいからな。
お前の作る竜器は、いつもそのまんまで最高なんだ。
おうよ!いつも通り、まっすぐ突き進むだけだ!!
[スズメとギャランのやり取りに、あっはっは、と笑い声を飛ばしながら。]
『アミナ樹の油を使うのは?』
……でも、あれは熱に弱いよ。
シュシュ椿油の方がまだいい気がする。
『それなら、リーマン・ハンマーズの店で見たわ』
あ……確か、1回戦で戦った……。
『女将さんのこと「姉さん」って呼んでたらしいわね』
えっ?
姉さん……って、姉弟ってこと?
え、え……?
[そんな雑談をしながら、
わたしはアズゥの歪みを直し、ロサを磨く。
簡単な作業なので、宿屋の一室だ]
あのね、
最後の人は、火の竜なんでしょう。
ちょっと思うんだけど……。
[きれいになったアズゥには、早速水を溜めて、
アルゴルが浸かっている。
本人は水漏れの確認と言っていたけど、たぶん普通の水浴び。
それをつついてカティちゃんが遊んでいる]
炉がものすごく熱く燃えてる時に、
そこに水を落とすと、ぼんってなるんだよね。
火も水も火事場には必ずあるから、注意するようによく言われるの。
あれ、使ったら魔法以上にすごいことにならないかなあ。
しかも、魔力が要らないっていう。
『でも、それは相手も同じでしょう。
たとえば、溜まった水に、熱した物を入れてもそういうことになるんでしょう?』
よほど大きなものだったらね……。
『それに、女将さんは魔力があるのだもの。
わざわざそれを使うより、魔法を使った方が早いわ。
どちらかというとそれは、魔力がない戦士向けの作戦じゃないかしら』
[うーんそうか、とわたしは返す。
ブラシの、ヒゲが抜けた部分を埋め直しつつ]
……でも、
メリッサとこんな話をするようになるなんてね……。
『あら。
確かに湖の町の蜥蜴人の中では、鍛冶師はそんなに地位が高くないけれど……。
でも、私も興味がないわけじゃなかったのよ』
[でも実際のところ、戦士視点の意見というは、貴重だったりする。
わたしはメリッサには細剣しか作って来なかったけれど、
メリッサ自身は細剣だけを使ってきたわけではないのだ]
−家路−
「おかえり」
[戻って、迎えられたその言葉に、おや、と眉を上げる。
次に浮かんだのは、満面の笑み]
ん、ただいま。
[戦いの場から戻ってきた。
それを迎える言葉の、なんて嬉しいことか。
思わずくしゃりとその頭を撫で、自分も自分もとせがむカティをくしゃくしゃにしながら、頷く]
ありがとうなんて言わなくていいの。
そういう時はね。
こうすんのさ。
[カティを撫でていた手を止め、ミルファの右手を挙げさせる。
ぱちん!自分の右手をその右手に打ち合わせた]
気付いた事、な。
具体的な策など浮んでいないが、そうだなあ。
グレダ殿は決して退かん。
意地でもどうにかしてみせる、切り抜けてみせるという気迫が
遠距離からでも感じられた。
それに対していらぬ考えは持つな、と伝えておこうか。
決して見くびるな、見下ろすな。
……それはお前が良く解っている事だろうがな。
[人を馬鹿にする、それがどれだけ愚かなものかは、実際に
その身に感じた事のある相棒も良く理解出来るはず。
人を心から見下ろした時に生じる隙は大きく、空しいとも。
しかめっ面を浮かべる彼へと>>17ひとつ、それだけ。]
やったね!ってね。
そりゃ、戦ったのはアタシだけど、勝てたのはミルファの作ったロサとパラとアズゥがあってこそさ。
いいかい。
この成果はアタシたちふたりのもんだ。
この勝ちは、アンタのもんでもある。
だから、いっしょに喜べばいいんだよ。
[とはいえすぐに考えを変えるのは難しいだろう。
だから、付け加えた言葉は、『憶えとくんだよ』だ。
これから少しずつでも、変わっていけばいい。]
ああ、最後のアレ、結構派手に食らったからねぇ。
竜のブレス食らったかと…いや、大した使い手がいたもんだ。
[戦士の扱う魔法はすなわち竜の力を引き出すものでもあって、理屈の上ならば竜のブレスを再現することも不可能ではない。
けれど、実際にそれをやって見せる戦士がいるとは。
それは同時に、それだけの魔力を顕現させる鍛冶師の腕前に直結するものでもあって。
本当に。よく勝てたものだ。我ながら]
明日はいよいよ決勝だからね。
念入りに頼むよ。
[手直しを。そういうミルファに、頷きで返す。
遠慮はしない。
ミルファに仕事を頼む。そして、自らもそれに恥じぬ働きをする。
戦士と鍛冶師は、そういった間柄であればいい。そう思う]
よぉーし、今日も晩御飯は奮発しよう。
好きなもの作ってあげるよ。
メリッサ、アルゴル。
アンタたちも遠慮するんじゃないよ?
サイラス、ギャラン、アンタたちもね。
[手を繋いだカティがぶら下がるように体重をかけてじゃれついてくるのをぶらぶらと引っ張り上げながら。
連れ立って歩く者たちに振り返り、念を押した]
話したいのはもうひとつあってな。
御前試合が終わった後の事なんだが、どうしたものかと
悩んでいてな。
……お、これは良さそうな素材。
[固いめのゴムが螺旋状に巻かれた紐状の何か。
屋台通りにてそれを発見して、丁度良いと適当な長さで
購入した。]
……聞いてくれるかな?
[びよん、とゴムを伸ばしては相棒に向けて離し。
何の為の物かと問われたならば、財布の細工の為のものだと
答えるだろう。]
−ミルファの部屋−
お、やってるね。
ほら、差し入れだよ。
[風呂を沸かしている間に、カティが祭りの屋台までお使いして買って来てくれました。
太目の串にとろりとまとわりついた飴菓子を、ミルファとメリッサ、それからアルゴルの口に一本ずつ放り込んでいく]
甘いものがダメならこういうのもあるからね。
仲良く食べな。
[告げて、パンの間に甘辛く味付けをしたヌードルを挟んだ主食on主食も置いておく。
ご飯はご飯、夜食は夜食。ただし祭りの間に限る。それがナクピアガ家の流儀だ]
そんじゃ、アタシは明日の朝ご飯の下ごしらえと洗濯物の片付けやってるから。
なんかあったら言うんだよ。
[告げて、ミルファの部屋を後にする。
ミルファに対して、条件として、家族と家があることを告げたのは自分だ。
ミルファがそれを受け入れた上で自分を戦士に選んでくれた以上、自分もそのことを曲げたくはない。
例え今日の試合がで消耗していたとはいえ。例え戦士としての大一番が明日に控えているとはいえ、宿屋の女将として、ナクピアガの家の母としての仕事をおろそかにはしたくない]
ひゃあ。
[右手がぱちんといい音>>22を立てれば、
変な声を上げたが]
……分かった。
[しっかりと頷いた]
任せておいて、グレダ……!
─ ちなみにメリッサ ─
『そう。じゃあ遠慮なく。
夕食はマロマロ鳥がいいわ。
リカ実の冷製ソースをからめて、銀胡椒でピリッとさせたものね。
着け合わせはニンジンとキュウリとモシモのサラダね。
ドレッシングはタルタル醤油で。
スープはマンモス骨でダシを取って、ベーコンとオニオンを入れた物がいいわ』
……メリッサは、ちょっと遠慮した方がいいと思うよ……?
ありがとう。
[口の中で飴>>27をころころしながら、わたしはお礼を言う。
両手がふさがっているので助かった]
あ……洗濯物はアルゴルが出来るよ……。
皆が上がったあと、お風呂に浮かべて置いたら、
アルゴルがきれいにして脱水までならしてくれるから……。
その後、わたしが干しておくね。
『全く、ミルファ君は、相棒竜をなんだと思ってるんだい?』
……やってくれるよね……?
『……今回だけだからね』
いらぬ考えなあ。
見くびりなんか、しねーよお。
お前も知ってると思うけどさあ。
[しかめっ面から力を抜きながら、相棒の言葉>>23に目を細めた。
男の大きな見た目と怪力に反比例して少ない魔力などから、
力で押切るだけの戦士だと嘲笑されたことも少なくない。
まあそー見えるよなあと思うから特に言い返しもしないし、
他人の戦い方に抱く憧れをを隠したりもしないが]
俺は戦士として誰かの上に立ったり、下にいたりすることはねえよ。
俺は戦士で、グレダさんも戦士だ。おんなじだ。
絶対に退かない。
[男にとっての事実と決意を、声に出した。]
へえ?
え、えっとおおお??
[先ほどのかっこつけた声とは一転して情けない声だ。
御前試合が終わった後のこと、という切り出し方に内心どきりとしてしまう。
飛ばされたゴムが胸元で跳ね返る。
落とす前にあわてて手でつかまえた。
懐から財布を出すと、相棒に預けて]
あ、おおおおおう!!もちろんいいぜ!!
どんどん話せ!!……うん!
[平静を装うとするが、どうしても声はどもるし視線は泳ぐ。]
うむ。そう言ってくれると思った。ならば安心だな!
何があってもお前らしいお前で在れ。
戦い方に注文は付けない。
何故ならお前は…火山そのものだから!!
『鳴動する火山は、何者にも制する事は不可能ですからね。』
[相棒の答えを聞いて心底安心したか、少しばかり大人しく
していたが、熱気再び。>>32大分本調子を取り戻したようだ。]
いやいや、注文が細かいほうが分かりやすくって助かるよ。材料も一通りは揃うしね。
[本当に遠慮のないメリッサ>>30に、思わずくつくつと笑みをこらえながら]
けど、マンモス骨の出汁はこれから取ってたら間に合わないね。
ペラアゴの乾物でいいのが入ってんだけど、魚出汁は苦手かい?
[そうしていくつか聞いているうちに、ミルファから手伝いの申し出>>31]
おや、いいのかい?
そりゃ助かるけど…
でも、まずはミルファの仕事を優先しとくれよ?
[戦いの場が仕事の場である戦士と違って、戦っていない今が、鍛冶師の仕事の場だ。それを妨げはしたくない]
…それが分かってんなら。
お言葉に甘えようかねぇ。
[おそらくその申し出は、『ウチの子』としての働きの申し出でもあっただろうから。
だから、その気持ちは有難く受け取っておく]
『なーなー。カティはー? カティもお手伝いするー!』
お、なんだいなんだい。どんな風の吹き回しだい?
『カティはミルのおねーさんだからっ!だから、ミルがおてつだいするならカティもするのっ!
おねーさんだからね!』
んー…あー…
[訂正しようかどうしようか、ちょっと迷う]
…まぁ、いいか。
[迷った末に、妥協した]
それじゃ、食堂の拭き掃除でも頼もうかねぇ。
食卓をぴっかぴかにするの。
お客さんも使う大事な机を綺麗にする大仕事だよ。
できるかい?
『まかされよー!!』
[そういうことになった]
[対して、一転して調子の狂った声を上げる相棒に>>33
笑いを堪えきれずに噴出してしまう。]
ぷっ……どうしたどうした!そんな情けない声を出して!
何、たいした事じゃない。
当初の予定では、御前試合が終わったら真っ直ぐに故郷へ
帰るという話だったな?
それをやめにして、旅に出ないかと言いたくてな。
手始めに雪を見に行ってみようかと。
[そこまでを一気に語り、受け取った財布を弄っては
ゴムを通す。後は適当な金具を造って取り付ければ良い。]
お前の力と俺の武器がどこまで通用するのかを知りたい。
故郷には無かったものがどれだけあるのかが知りたい。
ただ、これは俺の我侭だからな!
お前は無理に頷く事は無い。急な話だし、お前にとって
興味を誘うものでなければ断って構わないからな!
返事は試合が終わってからで良いぞ!
[自分自身は相棒の為に存在すると決めている。
だから彼が断れば諦めるつもりだ。]
さすがカティちゃん……。
や、カティお姉ちゃんね……。
[その様子がほほえましくて>>36、わたしはふふっと笑う。
どっちがお姉さんかは……うん、どっちでもいいや]
『ペラアゴね……。それでもいいわ。
代わりにおぼろメルティ昆布を浮かべてね』
─ そして ─
……グレダ、
試合の前に一旦全部触って見てね。
パラは少し削って軽くしたの。
最初は重くしようと思ったんだけど、サイラスさんは防御力も高そうだし、
ちょっとくらい重くなっても変わらないと思ったから……。
それならいっそ、軽くし、代わりに栓の形をシャープにして、
振り回しやすいようにしたよ……。
アズゥは逆に少しだけ厚くしたよ。
防御力は上がったはず……。
ロサは、ブラシのヒゲを増やしたよ。
前より精密に「集める」効果を使えるよ。
ん。そのくらいだったらお安い御用さ。
期待して待ってておくれよ。
[料理の腕前は、さほど悪くはないと自負している。特別得意でもないけれど。毎日自分たち家族の分と客の分、賄ってきた分だけの腕はあるつもりだ。
最後にメリッサの注文を受け取って]
そんじゃ、支度ができたら呼ぶからね。
ミルファは仕事のほう、がんばっとくれよ。
[言い置き、部屋を後にする。
決勝戦の前夜は、至って静かに更けていく]
おう!!火山だ!!
俺もお前もスズメちゃんも、火山だ!!
うおおおおおおおおお!!やるぜえええええええええ!!
[握りこぶしを空に突き出し、思いっきり吠える。]
[その勢いから反転、相棒の切り出す話をおろおろと待っていると
その様子がおかしかったらしく笑われてしまった。
続いた言葉に、体のこわばりをようやくといて]
旅かあ!!ああ、旅かあ!!
それって一緒に行くってことだろ!?
当たり前だぜ行くよ行く行く!!俺も北の方行ってみたいって行ったろ!?
ああああ〜〜〜、そっか〜〜〜、旅かあああ〜〜。
いやーてっきり
[「他人の武器も作ってみたい」などと言われるかと思った、のだが]
てっきり、あ、いや、……なんも考えてなかったわ!
バカだから!俺、バカだから!
[なんだか己の思考がてれくさくなって、あはははははと笑って誤魔化す。]
旅に出たらさ、もっといろんな奴と出会えて、戦い方とか、武器の種類とか、
どんどん知ってけるよな!!
よっしゃ行くぜ!!どんどん行くぜ!!がぜん行くぜ!!!
−それから−
ふむ。
[プラテァド・パラ、アズゥ・アセプタ、ロサ・エンクァガル。
決勝戦に向けて仕上げられた三つの竜器の、そのひとつひとつを実際に手で触れ、軽く振り回し、魔力を循環させてその感触を確かめる。
目に見える違いはさほどでもないが、それぞれがより手に馴染み、それぞれの働きに最適化されたことが、感触で分かった]
ああ、十分だ。
サイラスとギャランにゃ悪いが、負ける気がしないね。
[に、と笑みを浮かべて告げる。
元より負けるつもりなどはないが、それにも増して、これらの竜器は自信になる。
あとは、それを結果にすればいいだけだ]
明日の試合、勝つよ。
[ここまで勝ち進んできたのだから、と、思わないでもない。
勝ち進む上で、負かした者たちから、勝利を奪い取ってここまで来たのだから、と、思わないでもない。
けれど、それよりもなによりも、今は。
この竜器を仕上げたミルファの力を、皆に見せてやりたかったし、勝利の高みを、『ウチの子たち』に見せてやりたかった。
戦う理由は、それだけで十分だ。
武器と呼ぶにはいささか珍妙な竜器を背負い、明日、グレダは決勝の場に臨む]
ああ、そうだ旅だ!
……てっきり?
[何か、引っ掛かるものがあった。>>44
何も考えていないと言う、これは確実に何かを隠した様子。
しかし、追求はしない。
今の彼の言葉、その態度が全てだからだ。]
試合が終わってからで良いと言ったのに、もう答えか!
よーし、ならばその為の準備もせねばならん!!
一回りして遊んだ後は、急ぎ戻って試合の準備に掛かるぞ!
旅の荷物の点検は任せろ、おやつは買い込むなよ!
[財布の細工、それから武器の再点検。
そして―――]
『ところで、あの重りはいつ外すんですか。』
今晩に決まっているだろう。ベルトと腕の分だけだがな。
ブーツの分は踏ん張るのに有効でもあるからな。
[今までの時間を共に過ごす中で、悪戯に付けた重りの数々。
それを夜なべをしながら外す事が、本日最後の男の仕事となる。]
−決勝戦当日・試合会場前−
[呼び出されるのを待つこともなく、ここに立っていた。
背には、ミルファとカティ、アルゴル。メリッサはどうだったろう]
さて、そんじゃ行ってくるよ。
[ちょっとそこまで、と続いてもおかしくないような気軽さで告げる。
気負う必要はない。できることを、できる限りやりきるだけだ]
―――宿屋『煙る水かき』亭の戦士、グレダ・ナクピアガ!!
今日は勝つためにここに来た!
御前試合の勝利を、竜王様と、ウチのミルファに捧げるために!
全身全霊で以って戦うことをここに誓う!!
[戦士の、ここ一番の大舞台を前にした口上を声高に告げ、そうして、試合会場へと足を踏み入れた]
―最終試合・煉瓦の町並み―
うおおおおおおお!体がすっげえ軽い!!
こんなに軽いのは何年ぶりだ!?!?
やっぱ美味しいもん食べて良く寝るとちがうなあああああああああ!!
[まさか今までさまざまな部位に重りがしこまれていたとも、そしてそれが昨晩にはずされていたともしらず。
がっしゃんがっしゃんと飛び跳ねてから、ポケットから紙を取り出し]
ええっと……
大盾は、火風、ロギ!
戦鎚は、火山鳴動、スルト!
連接棍は、溶岩流、ユミル!
[あんちょこを読み上げ、再びポケットにしまい、]
グレダさん、よろしく頼むぜ!!
うおおおおおおおおおおおおお!!やるぜえええええええええええええええ!!
[三つの竜器をたずさえて、戦いの舞台へと]
さてっ…と。
[こんこん、と、ロサの感触を確かめるように担いだ肩の上で動かしながら、辺りを見回す。
レンガの町並み。
王都の町並みとよく似ているようで、その実、王都のどことも違う家々。その配置。
ここでは、地の利は働かない。
幸いにして、井戸や水路、広場の噴水など、水場もちらちらと見え隠れしている。
特別不利、ということもなさそうだ。家々のひとつひとつには薪置き場が設けられ、火を起こすにも困らない様子を見るに、どちらが有利、不利といったものではないのではないか。そう思える]
[その日も、豪勢な夕飯の後には貸し工房に引っ込んでは
竜器の徹底的な修理に打ち込んだ。
少し重さを増やそうかと思ったりもしたが、流石にやめた。
しかし互いが修行に励んでいた頃……
「これが持てたら初めての武器はお前にやる」
と言って、悪戯で基本の戦鎚よりも89kg増したものを
渡した所、平気な顔をして持ち上げていて
「あっ、これまだまだいける」
と調子に乗ったのを思い出して、少しばかり悪戯心が
疼いたのは秘密にしておきたい所だ。]
―決勝戦・観戦席―
フ。
やはり軽いみたいだな。
『1kgとはいえ、それをいくつも付けて生活していたんですから
当然でしょう。貴方も酷い悪戯をするものです。』
何、俺達には必要なことだ。
俺だってきちんと付けているのだから。
『本当に貴方達は馬鹿ですね…あ、褒めてませんから。』
[相棒の姿を遠目に見ながら、満足そうに頷く男。
対するグレダの方も万全のようで、男の笑みは更に明るくなる。]
─ 決勝戦当日・試合会場前 ─
[思った通りの組み合わせが発表される。
グレダとサイラスさん……これで、竜王御前試合の最強の戦士と鍛冶師が決定するのだ]
グレダ……。>>49
行ってらっしゃい。
一番前で、見てるから。
[ぎゅ、とアルゴルを抱っこして、そう伝えた。
いっぱいいっぱい言いたい事はあったけど、どれも違って、
巧く言えなくて、だからシンプルなことだけ]
[カティちゃんはわたしの服を握っている。
なんかここ数日で、カティちゃんがこのポジションにいると安心するようになってしまった。
不思議な感じだ]
[メリッサは会場のどこかへ消えて行った。
タッグ解消の組み合わせが、何人かいるようで、そういう鍛冶師に声をかけてみるそうだ]
[試合開始だ。]
[初めて使ったときよりも、連接棍がよく手になじむ。
大盾も、戦鎚も、使えば使うほど体の一部のように感じる。
大盾を背に背負い、戦鎚と連接棍を構え、
たったったと駆けながら地形を把握する。
石の廃墟で戦ったように周囲のものをいたずらに壊しても、
逆に己の足場を悪くするだけか、とは思うのだが。]
よっしゃ。
暴れるぜ、スルト!!
うおおおおりゃあああああああああ!!
[移動しながら地に思い切り戦鎚を振り下ろすたび、地震が引き起こる!
その地の下に流れてたと思わしき水路から、ぷし、ぷし、と小さな水しぶきがあがっていく。]
[試合会場には、不思議な街並みがセットされていた。
どこのものでもない町。人が住んでいないのに、住んでいたような形跡だけがある町だ]
『どこかにある地形をコピーする魔法じゃないかな?
これがそうだとは断言できないけれど、
そういう魔法があるというのは聞いたことがあるよ』
……へえ。
わたしの他にも、攻撃魔法じゃないのを込める鍛冶師がいるのね……。
『何言ってるんだ。そんなの当り前だよ。
自分だけなんて思わない方がいい。
試合じゃない場所では、竜器の上限なんて決まってないだろ。
一本くらいはそんな物を打とうかって気にもなるさ。
……ましてや、竜王付きの鍛冶師ならね』
[わたしは恥じ入って尻尾を巻いた]
ふむ。
[駆けるサイラスを見やる。戦槌を振り下ろしながらの進行は、地を揺らし、水を吹き上げさせている。
意図するところは読み取れないが、無意味ではない。
そう思っておくべきだろう。
サイラスは、その機転でジミーを下したのだから]
そんじゃこっちからも…
[ずぉあ…。
手にしたロサに魔力を込めれば、さらに効率の上がった『集める』魔力によって、地から噴出した水、噴水に湛えられていた水、宙を漂っていた水、そうしたものが掻き集められ、空中に水塊を作り上げていく。
腰に下げたパラへと魔力を込める。
集めた水気が、ひとつの大きな水塊となる、その前に。
中程度の無数の水球を、空中へと形作る]
行くよっ!!
[ロサをアズゥへと持ち替え、宙に浮かべた水球たちめがけ、振り回す。
第一回戦で、アサドとの試合の初手で見せた、水塊の射出。
それと同じ要領で、今は、無数の水塊がサイラスへと打ち出されていく。
サイラスの膂力とギャランの竜器ならば、破壊も防御もたやすいだろう。
けれど、それでいい。
自らの撃ち出した水球たちのあとを追うようにして、地を揺らすサイラスの元へと、駆け込んでゆく。
揺れる足元が多少心もとないが、パラとロサの魔力があればなんとでも対処は可能だろうと。
そう信じ、今は足を進める*]
[全ての水がグレダのもとへ集められ、無数の水球がこちらへと打ち出されてくる。
水路から水も吹き上がらなくなり、新たにわき出す様子も無いことを確認して戦鎚と連接棍を背にさした。
薪と思わしき木はしめり、火をおこすには向かないだろうが
そもそも男は魔法で火をおこすことができないので気にしていない。]
うおっとっととおおおおお!!!
[大盾の湾曲した方を相手に向かって構え、そこで水塊を受け止めて行く。
直撃はさけられているものの、男の周囲はみずびたしだ。
ふんばっているとはいえ、男の背がじりじりと壁においやられていく。
グレダは集めた水球をほとんどこちらに向けているのだろう。
がん!がん!と戦鎚と壁が激しくぶつかりあう音がする。]
[だからこそ、今!]
行くぜロギイイイイイイイイイイイ!!
思いっきり吹き飛ばしちまえええええええええ!!
[大盾の術『ロギの嚔』を発動すれば、
強烈な熱風は瓦礫を吹き飛ばすと同時に、一瞬で水を乾かしていった!*]
……サイラス!!
『口出ししないのでは無かったのですか。』
うむ、口出しはしない!!
だが名を呼ぶくらいは許せ!!
[相棒が戦鎚で地面を叩く度に吹き上がる水しぶき。>>57
一体何を思ってそうしているのか、全く想像が付かないが
男は信じる。
決してそれが無駄ではないことだと。]
やはりグレダ殿は何ものにも臆する事無く向かい来る!
そしてそういう時は…次の一手を既に行おうとしている。
頑張れよ、サイラス…!
[足場が不安定な中であっても止まらずに駆けるグレダに
追撃に対する防御をと願ったが]
『大丈夫ですよ、ほら。』
[スズメはあくまでも冷静に熱い。
嘴の示す先、起こった熱風の及ぼした影響に男は目を見張る。
そして同時に、例えようも無い嬉しさがこみ上げて来て
ほんの少し目頭が熱くなった。]
その手はもう見せてもらったからね。
[複数の水球に対する対処として、『ロギの嚔』は十分に想像できる範囲。
むしろ、それを誘うために水球を無数に分けたと言ってもいい。
水は、熱されて乾く。わずかばかりの水ならばそれで終わっていただろう。
けれど、サイラスに向かっていたのは無数の水球。
熱され、蒸発し、気体となった水は行き場を失い水蒸気となってあたりに充満する。
と同時に、水の気化熱はロギの熱量を大きく減衰する]
パラ、頼むよ!
[水気、湯気を留めるのがパラに込められた魔法。
殺到する熱風は水気に熱量を奪われ、空中に圧し留められた水蒸気が壁となってふわりとした温風へと有り様を変える。
とはいえ、吹き飛ばされてくる瓦礫を推し留める効果までは、水と水蒸気の壁に期待できない。
アズゥで防ぐか?
否。足を止めての打ち合いでは余りにも不利。
回避する?
否。水蒸気が視界を塞ぎ、飛来する瓦礫を見つけることは困難だ。
ゆえに、避けるのではなく、逃れる。
瓦礫が飛ばされることの予想できる範囲の、そのさらに上方まで。
『ロギの嚔』の、その発動に気がついたその瞬間に、最初の跳躍は始まっていた。
足場は、水だ。
エステルとの試合でその頭上を取ったときと同様にして、水かきの足でロサが作り、パラが留めた水塊を足場に、跳躍を繰り返す]
ッ!
[その途中。宙へと逃れようとする肩めがけ、瓦礫のひとつが飛来する。
けれどそれは予想できた痛みだ。
声を上げずにこらえ、跳躍のためにからだを動かすなかで損傷を確認する。
よし。
痛みはするが、動かないわけではない。肉と、あるいは血管を痛めはしただろうが、筋と骨はしっかりと動く。
そのはずだ。
サイラスは、地面を揺らしこそすれ、破壊によって重量のある瓦礫を作り出しはしなかった。
今飛来するのは、街中に雑然と置かれた、比較的小さく軽い有象無象。それを知ってこそ、『ロギの嚔』を誘ったのだから]
お返し、させてもらうよっ!
[降らせる声は頭上から。
ロサの魔力に呼応して、水蒸気となって散った水気が集められ、サイラスの頭上で再び水塊を為す。
そのことは、視界が晴れていったことでサイラスにもすぐに知れただろう。
だから、隠すこともせず、声を降らせた上で。
熱風に熱され、熱を帯びた水、否、湯が、今度は一塊の巨大な水球となって、頭上からサイラスめがけて叩きつけられた**]
どおりゃ!!
[戦鎚が壁と打ち付けられてひびが入っていたから、男が肘鉄を入れればぼろりと崩れた。
ぐるりと後転してその場を逃れる。]
ちぇー、全部は乾かせなかったかあ〜〜。
[それでも、最初の頃よりは水は減っている。
水蒸気となり会場中に満ちてはいるが、全てを再び水に戻すには会場の外から全体を冷やせばならないだろう、……と、思うのだが。さて。
温まった空気にふう、と息をつく。暑い場所での戦闘は慣れたことだ、むしろ体があたたまって動きやすい。]
[グレダの声は頭上から聞こえる。
巨大な水球は、右方のドアから空き家の中に入ることで難を逃れる。]
[ドアを締める際に足にお湯がひっかかった。まったく凍り付いたり何だり忙しい足である。
が、動きは止めず、空き家の階段を上り、窓から屋根の上へ。
位置はちょうどグレダの真横か。
連接棍を手に取り、真横になぐように打撃部を繰り出す。]
ふむ。
[壁に穴が空くのは見えた。サイラスは屋内へと逃れようとしている。
見えたのはそこまでだ。
集めた水が間に挟まり、サイラスの姿は見えなくなったし、そうして集めた水は、今から止めるわけにも行かない。
叩きつける。
そこにサイラスの姿はない。
分かっていたから耳を澄ませた。
獣の耳が、金属の鎧がぶつかり合う音、背に負ったスルトが鎧にぶつかる音、ユミルの関節となった鎖が立てる音を捉える。
登ってきている。家の中を、だ]
がんばるねぇ。
[見ていたところ、サイラスの足の速さは常人の域を出ない、といったところであったように思う。
そのサイラスが、こちらの滞空時間のうちに家の中を登ってこようとするのは生半のことではないだろう。
ならばこちらも、手をこまねいているわけにはいかない。
サイラスの到達までの間に、ロサをくるくると回し、可能な限り、空中に散った水気を集める。
とはいえ、サイラスの推測は正しい。
一気に拡散した水蒸気を掻き集めるには時間がかかるし、こちらもすでに大技を二つ使ったあと。
質量を武器にできるほどの水は、集められない。
しかしまぁ、それと引き換えにロギの熱風をやり過ごすことができたのだから御の字だろう]
うむ、出迎えご苦労。
[落下する時間の中、横合いからユミルを繰り出すサイラスに、大真面目な顔をして軽口を叩く。
繰り出される棍棒の唸りは凶暴なほどの重量を示し、一撃加えられれば致命的なのだと否応なしに示している。
受けるわけにはいかない。
連接棍の間接は、こちらが受けに回れば、その防御の手をたやすくかいくぐる。
空中で体を捻り、反転して頭を下に。サイラスが上ってくるまでの間に集めた水の一部を足元、つまりは上方に集め、パラで留める。
ぱしゃんっと蹴って落下の速度を増し、横なぎに振るわれるユミルを下方にかいくぐる]
ふッ!!
[たった今くるりと反転した勢いをそのままに、自らの上方を抜けていくユミルの先端へ、内部に水を溜め込んだロサをぶつけ、加速させる。
連接棍の扱いが難しいとされるのは、ひとえにその関節の挙動に難儀するからだ。
攻撃のために振るった先端を、さらに叩いて加速させれば、その勢いを止めるのは使用者であるサイラス自身にとっても難しいだろう。
追撃はあったか否か。
いつでも空中で跳躍できるようロサとパラに意識を集中させて、サイラスの挙動に集中する。
そして、かなうならば加速した落下の勢いそのままに、地上へ。
自らの着地には、先刻叩きつけた水を集め、クッションにすれば問題ないだろう。
問題は、サイラスがどう追いついてくるか。
屋上から跳躍して追って来たならば、着込んだ金属鎧、背負った重量武具、そして巨漢である自身の体重が生み出す衝撃を支えきれず、先刻スルトに叩かれ、ひび割れた地面は崩落を引き起こすだろう。
階段を走って追ってくるならばその間に再び、多少なりと水を集めておくことができる。
さて、サイラスはどうするか。そこに、意識を集中させた**]
[男の持つ竜器は、さきほど起こした爆風で熱され、高温になっている。
あの爆風は水を吹き飛ばすことも目的だったが、竜器に熱を孕ますためでもあった。
そうでなければ術を発動させても威力が半減する。
ジミーとの戦いの時には大盾をあたためる準備ができたのだが、今回はてっとりばやく爆風ですませた。]
ひひっ。
[こちらに気づいて声をかけてくるグレダ>>73に得意げに笑みを返すが、連接棍をふるう手によどみはない。
反転してよけたグレダは、連接棍の先端である打撃部をねらってデッキブラシで叩くが、その瞬間を狙って術を発動させる。]
『ユミルの』……『癇癪』っ!
[十分に熱せられた連接棍は“溶岩流”の名にふさわしく、打撃部と鎖部分がどろりと赤く溶けた。
あやしく揺らめくマグマは、とたん、どっ!と勢い良く噴いてリーチをのばす。
その勢いは、かんしゃくを起こしてわめき叫ぶ巨人族のよう。
ちょうど接していたデッキブラシはマグマにからめとられ、内部の水をあっというまに熱す。
金属製であるならば、あっというまにデッキブラシ全体もマグマと同じ温度に至るだろう。
そして、ぐんにゃりと溶けるだろうか。薄ければ薄いほど元の形を保てない。
男の魔法の有効時間は、例によって一瞬である。
打撃部にデッキブラシを接合させたまま、鎖はもとの長さへ。]
うおおおおおっ!
[それでも連接棍の軌道は変わり、男はつられてバランスを崩す。
屋根の上から、先ほど自分でひびを入れた地面の上へ。]
ぶっこわれちまえええええっ!
[落ちざま、連接棍をぐいとつりあげるように動かし、
打撃部と、くっついたままのデッキブラシを背後の家の壁にたたきつけた。
いまだグレダがデッキブラシを握っていたままでも、手加減をせずに彼女ごと。
男が落ちる勢いはとまらず、背中から地面へと落ちる。]
[だが、先ほど地を叩いて分かったことがある。
ここには地下道があるのだ。]
うおってって……寝てる暇はねえっ!
[背中から地下道へ落ちるが、痛みも無視して立ち上がり、大盾を構えて連接棍を引き戻す。
天上は男の頭すれすれの高さだ。
おそらくは大きな町の再現なのだろう、侵略者から民を守るために、煉瓦づくりの頑丈な家が並んでいるのだ。
そしてこの地下道は、水路をひくための工事に使ったり、いざという時の逃げ道にもなる。
相手は耳が良いのだ、さんざん叫んでうるさがられたから分かっている。
おちてきた瓦礫を拾って投げながら地下道を移動すれば、硬質な音が会場中に響き渡る。]
[っっっぱぁん!!]
[音にしてしまえば軽いもの。けれど、その内実は、赤熱して溶けたロサが弾け飛んだ音だ。
水蒸気爆発>>70>>65>>20。
金属さえ急激に溶解するほどの高温にさらされた水は、爆発的に気体となって衝撃を巻き起こす。
しかも、先刻の抑えるものがなにもなかった、広い空間での爆発とは訳が違う。
ロサの内部で限界まで高められた内圧が、ロサの溶解とともに一気に弾け飛ぶ。
その衝撃は同時に溶解していたユミルをも巻き込んだものとなっただろうし、さらに同時に、溶解したロサの、溶けたその破片が散弾のように高温の蒸気とともに周囲へと襲い掛かることにも繋がった]
……っぅっ!!
[気づいた瞬間に手を離し、距離を置くことに専念すればよかったのかもしれない。
けれど、できなかった。ほとんど無意識の働きといっていい。言葉にしてしまえば、たった一言。
ロサを手放すのが、惜しかったのだ]
うっ…くっ…つぅっ…!
[サイラスとユミルの確認まではできなかった。とっさに自らの急所を爆発から守っただけで精一杯。
ロサが比較的薄く作られていたために、散弾となって飛び散った破片が小さくて済んだことが不幸中の幸いだったと言えるだろう。
体中あちこちに裂傷を作り、ロサを握っていた両の手の平にやけどを作りながら、それでもまだ体は動く。戦いは続けられる]
…くッ!!
[ガツンと拳が叩いたのは、密に詰まった石の壁。
辺りを見回してみれば、先刻のレンガの町並みからは景色が一変している。サイラスの姿も見えない。
サイラスの起こした崩落に巻き込まれた結果、地下道へと落ち込んだらしい]
なに、やってんだいアタシは…!
[どのような攻撃であっても対応できる。その自負は確信めいたものだったはずなのに、蓋を開けてみれば慢心に相違なかった。
その結果、ロサを失い、サイラスまでをも危険に晒した。ほんとうにまったく、なんてザマ]
[ごっ!]
[腰からパラを引き抜き、自らの額にぶつけるようにして、合わせる。
留める力を持つパラが、逆立った今の気持ちを静めるように。
分かっている。パラの魔力はそうした効用のあるものではない。まじないのようなものだ。けれど、それは同時にミルファークの作った竜器でもある。
背で待つ者、この場に立たせてくれた者を思い出す。
今はなにに縋ってでも冷静さを取り戻さなくてはならない。
これ以上の無様を、見せるわけにはいかないのだから]
…ッし、まだまだ。こっから取り返すよ。
[言葉にしてみれば、同時に熱を持っていた頭が冷めていく。
手の平と、全身の裂傷が痛む。
甘んじて受け入れなくてはならない。それは、ロサを失った痛みだ。 無駄にしないためにも、負けるわけにはいかない]
…どうする?
[考える。先刻のサイラスの笑み。
手の内も分からないままに手を出した迂闊。
それは間違いないが、同時に、サイラスはそれを読んでいたともいえる。だからこその『自信』、だったのだろう。
『受けた上で返す』呼吸は、すでに読まれていると見たほうがいいのだろう。
やりようを変えなくてはならない]
………。
[考える。その耳に、サイラスの立てる瓦礫の騒音が響いてくる>>78。
居場所を知らせているのか、その逆にかく乱しているのか、あるいはもっと別の、次への布石か。
獣の耳を伏せる。
彼らの大声に耳を畳み、ミルファが怖がっていることに釘を刺しこそしたものの、うるさがったことはないのだ]
……。
[静かに佇み、瓦礫の立てる音の中に異変が混ざらないかどうかに畳んだ耳の内で神経を集中させる。
そして同時に、パラへと魔力を込めた。
ここは、地下道。そして、地下水路。
第一試合の滝壺において、流れ落ちるその水が尽きることがなかったように、流れる水は一定の流量を保ち、地下で流れていたらしい。
地表に現れたその一部が火山の爆風に吹き飛ばされても、地下にはまだ水が流れている。
その水を、塞き止める。
ロサを使って器用に集めるようにはいかない。
けれど、元来がその目的で作り上げられたパラは、直径にして5m程度の水を塞き止める魔力の力場ならば、たやすく作って見せる。
狭い地下水路を塞き止めるには、十分に過ぎた。
サイラスが、次の手を打つ音を聞くのが先か。
そのサイラスと直接出くわすのが先か。
あるいは、通路の一面が水に満たされるのが先か。
今はただ、水を留め、溜め込みながら、耳を澄ませる**]
ふぅ。
『グレダ殿は思った以上の、歴戦の戦士と見ました。
その彼女に対し力と本能、そして僅かな経験で立ち向かえる
サイラスもまた、立派な戦士です。』
うむ!
なにより…あれから一度も縮こまっていない。
どれだけ不利な形勢になろうとも、だ!
今姿が見えなくなったが、それでもあいつは
笑っているのだろう。
嬉しい事であり、有難い事ではないか!
[有難い。それは対戦相手のグレダに、ジミーに。
そして、それぞれの鍛冶師達に。
巨大な水球の襲来>>67そ寸での所で避け、ひと時姿を消した
相棒の動向を思いながらも、上空に跳ぶグレダの様子にも
注視する。]
『早い。』
階段を一段抜かしで走ったか?それとも…重りを外した効果か?
『ありえない話ではありませんね、彼なら。
気合で駆け上がってきた、を追加して下さい。』
[グレダの滞空する間に階下から一気に駆け上がったか、
相棒の姿が上から見え、>>69身を乗り出さん勢いで覗き込む。]
―――…そうだな。
もしやすると、どれも正解かも知れん。
『しかし、貴方も本当に意地悪ですよね。
扱い難いだろう連接棍を敢えて持たせるなど。』
言うな、スズメとて解っているのだろう?
扱い難くとも、扱いきれないものではない事くらい。
だからお前も不定形な溶岩流の性質を与えたのだろうに。
[グレダがその扱い難さを突いたか、連接棍の先端を叩いたのを
認め>>74ゆっくりと男は頷く。
慌てたり落ち着いたりと、こちらはこちらで忙しい。]
『まぁね。あっさりと扱いこなせるものよりも、苦悩しつつも
自分なりの使い方を見出してもらえるものを与える方が
私としては燃えますから。
まあ…ここまで扱うタイミングを計っているとは予想外
でしたけれど。』
[視線の先では、相棒の追撃。>>76二つめの魔法を発動させて
連接棍の長さを変えていた。]
[男は笑っていた。
デッキブラシが弾けとんで壊れ、男のふるった連接棍は家の壁を壊し、男の落ちた穴をふさいだ。
見えたのはそこまでだ。
グレダはどうなったのかは分からないが……
確信している。無事であると。]
─ 観戦席 ─
グレダ!
行って! そこ!
きゃあ! 避けて!
[届かないと分かっていても、叫ばずにいられなくて]
あっ、あっ!
[駆けまわる二人の戦士が、遠くなる。
障害物の多い地形は、戦いづらいだろうが、
観戦しづらくもあって]
[男は対人戦闘の経験が極端に少ない。
それはこの巨体と怪力のせいで、故郷の仲間たちから手合わせを避けられ続けたからだ。
「力だけのバカと戦っても仕方ない」―そう言われ続けた。
そうか、そりゃそうだよなあ、と。そう返事をするしか無かった。
それに男だって、邪竜以外のものに全力をふるう気にはなれなかった。
壊してしまうのでは、取り返しのつかないことになるのでは、と、無意識に恐れていたからだ。]
[だが、ジミーとの戦闘を経て理解した。
全力を出さないとこっちがやられる。本物の戦士は強い。手加減は不要。
それは男にとって、すごくうれしかったことだった。]
[グレダは戦士だ。強い。
見くびらず、見下さず。男は相手の強さを信じている。
だからこそ得意げに笑ってしまう。誇らしくて。
信じられる相手と戦える。こんなにうれしいことはない。]
[防具に覆われていない頬や耳に細い傷がいくつも出来て、そこから血がしたたっても。
痛くないのは強がりではない。持ち前の鈍感力もあるし、戦闘の楽しさが優先されるから、
痛みになどかまってられない。]
!
[先ほどの場所から離れて暫く、真っ暗な道に頭上から光が差し込む。
地下道に水がたまりつつあることにそこで気づく。]
まだそんな魔力あったのかよ〜〜、ちぇー!
[グレダの仕業だろう。やはり無事だった。
その水にのみこまれる前に、地上へと向かう。
井戸の中にとりつけられた足場をよじのぼって。]
[気づかぬ間に相棒に仕込まれ続けた重りは今はなく、男の脳内認識よりも速く体が動く。
が、水はもっと速く満ちてくるか。
あわてて水に大盾をむけ、水の勢いを借りて井戸から地上へと脱出する。
せっかく熱を持たせた竜器は冷えた。この状態で術を解放しても威力は半減するだろう。
大盾と戦鎚を構え、グレダを探して駆ける。]
[サイラスの姿が建物の中に消えた……と思うや、
宙を行くグレダと窓の間でやりとりがあり、
そして]
きゃあー!
[ロサが爆発した。
何を言っているか分らないと思うが、
そうとしか言えないような事が起こった]
いや……グレダー!!
[わたしは見て居られずに顔を覆ってしゃがみこんだ]
もうだめ……!
わたしの道具なんてやっぱり不良品だったんだ!
グレダが……、
グレダが死んじゃった!
せっかく見つかったのに……私の道具を使ってくれる相棒だったのに!
サイラスも死んじゃった!
御前試合で人死にを出してしまうなんて!
わたしは鍛冶師失格だ!
……資格を取り上げられて、町に戻されて、
誰の役にも立たない子として一生過ごすんだー!
[わたしが傍目も憚らずに泣いていると、
アルゴルがちょいちょいとわたしの足をつついた]
『あー、ミルファ君。
お取り込み中悪いんだけど。
……まだ誰も死んでないからね?』
サイラス!!グレダ殿!!
[軽い、何かが弾けるような音>>80は小さくとも良く響き、
男達の居る観戦席まで届いた。
その軽さか大した事はないのだろうと思っていたのだが]
…む、むぅ…サイラスはちょっとくらい高い所から
突き落としても平気だが……。
『グレダ殿もご無事だと思われますが…
ただ、負傷は免れないかと。』
[大会運営の方では、姿の見えなくなった二人の様子を写すべく即座に対処が取られている。
じきに地下の様子も見える事だろう。]
というか、ミルファーク殿!!
勝手に相棒を殺すんじゃありませんぞ!?
グレダ殿もそうそう殺して死ぬようなお人ではありますまい!!
[離れた所から聞こえた嘆き>>95に首だけを向けて必死の抗議。
なんというか、相棒とはまた違う方面のネガティブ思考の
持ち主のようだ。]
ふえ……?
[アルゴルに言われ、遠くのギャラン>>98にも言われて、
わたしは耳を動かす]
[観客に耳裏を向けて、会場に耳を澄ます。
グレダがいつも代わりに気を使ってくれたように、
わたしの耳はとても良くて……、地下からの物音を拾う事が出来た]
ほ……ほんとだぁ……、
よか……よかった……、
うわぁぁぁん!
むっ?
ミルファーク殿は二人の様子が分かるのか!
元気で居ると良いのだが、もしも分かるのなら
教えてもらえませぬか!!どんな小さな事でも構わない!
[一方、スズメは信じきっているからかどうかは
わからないが、先日サイラスから貰ったアイスキャンデーが
いたく気に入ったようで、自ら歩き売りを引き止めては
購入していた。]
きゃあ?!
ギャランさん声が大きいです……。
[わたしはしゃがんだまま、耳をぺたんとする。
地下の音は一度途切れた]
[すると……]
[ぱぱっと上空が光ったかと思うと、
何かが浮かび上がってきた。
一瞬鏡かと思ったが違った。
……それぞれ別の地下水路らしき場所にいるのは、
グレダとサイラス]
……あ……!
あれ!
(ふむ。来ない、か)
[水で満ち満ちた地下水路の中。水圧は上がり、パラで支えるのにも限界が近かった。
アズゥの魔力で水を弾き、確保した空気で息継ぎをしながら、最低限の魔力で水を塞き止める。
元来水中に潜ることには適した体だ。全身が水に浸かったところで問題はない]
できりゃあこの場で…ま、そりゃ贅沢ってもんか。
[ロサを失い、水を自在に呼ぶことができなくなった以上、水に満ちた場でやりあうことができれば理想的、ではあったのだが。
地下水路が水で満ち、瓦礫の音が聞こえなくなって幾許かの時間が流れている。
今頃、井戸や噴水、地表の水路、そういった場所から水が溢れ出している頃合だろう。
まさか、サイラスが溺れているなどとは欠片も思わない。
サイラスは賢い男だ。
ここまで戦えば、その事実はほとんど確信に近い]
…っ…ぁー…あとちょっとだけ、保て。
[アタシの体。アタシの魔力。
水に浸かっても、泳ぎに困らない。息継ぎに困らない。けれど、全身の裂傷から血液は流れ出る。
パラの魔力で流血を押さえ込んではいるが、水を塞き止めるのと平行しては完全とは行かない。
限界が、近い。
水はすでに満ちている。仕掛けるならば、今]
頼んだよ。アズゥ。
[最後に残したなけなしの魔力をために溜めてアズゥに込める。
溜め込み、引き絞り、一気に放出する。
アズゥの魔力が水を弾く。
狭い空間に満たされた水は、一気に弾かれたことで圧力の逃げ場を求めて急速にその衝撃を伝播させる。
風呂の配管でたびたび起こり、配管をダメにしてしまう厄介な現象で、名を、ウォーターハンマーという。
その伝播する衝撃を追うようにして、グレダもまた水中を泳ぐ]
[町並みのあちこちで、ウォーターハンマーに叩かれ、井戸や噴水など、小さな出口から打ち上げ花火のように水柱が噴きあがった。
その柱のひとつに、グレダの姿があった。
上空から見渡し、見つける。街中を駆ける赤い男の姿]
さぁ。
[魔力はもはやすっからかん。水柱のかく乱もどれだけの効果があるものやら。
けれどそれで負けると言う気はしない。
あとは、パラとアズゥ、そして自分の腕と足を信じるばかり]
行こうか!
[アズゥを上空へと放り上げる。
手に持つのは、パラの鎖、その一本だけ。
水柱の水を蹴り、頭上からサイラス目がけ、落下する。
反撃は当然あるものとして警戒しながらも、狙うは武器を握るその手。
竜器自体の破壊が困難であるならば、叩き落して戦闘力を奪う]
お、おぉ。これは失礼。
二人の身を案じるあまり、ついつい!
[少し声の調子を落とし、ミルファークを宥め。
少しばかり下を向いていたその間に、観戦席より僅かに
見上げる所に何かの姿が浮かび上がった。>>101]
……あれは。
[ミルファークの示す先を見ると、まだ目が慣れていない為
二つの影が動いているのは確認出来た。恐らく、あれは相棒と
グレダなのだろう。]
『ひとまずは無事だという事が分かりましたね。』
うむ。
ミルファーク殿も一安心というわけだ。
[さて、試合はこれからだ。]
おっ!?
[突然、あちこちから水柱が吹き上がる。
大盾を持つ腕を伸ばして水をはじいていると、頭上に大きな影が。
タライが振ってくる!]
どうりゃっ!
[大盾でぱん、とタライを払うやいなや、チェーンが大盾を握る左手首に巻き付いてくる。
グレダの風呂栓だ。
タライの影にかくれて、グレダが頭上から振ってきたのだ。]
綱引きだったら負けねえぜええええええ!!
[手首をぎちぎちと締め付けられ、痛くないわけが無い。
眉根をよせるが、笑みは崩さぬまま。
大盾を足下に落とし、チェーンをにぎって思い切り引き寄せる。]
[ギャランさんのおかげで、いつの間にか泣く事を忘れていた。
わたしはアルゴルに手を着いて立ちあがり、
空の映像に見入る]
グレダ……何してるんだろう……。
危ない事じゃないよね……??
[溜められた水が噴き出す。
井戸や亀裂から噴き出す水柱は、すでに肉眼でも見える]
あ……!
[そして再び接近するふたつの影]
[ロサはもうない。
3つの竜器が、複合でお互いをお互いを高める美しい三角形はもうない。
でも……]
それでも、
グレダは負けないんだから……!
そうかい。
いや、あたしは負けるよ。
[思い切り引き寄せられたならば引かれるままに、跳ぶ。
腕力で勝負ができるなどと思ってはいない。
けれど、思い切り肉薄し、鎖をもう一方のサイラスの腕に絡みつかせることを試みるくらいはできるだろうし、困難であればすぐさま跳び退るくらいのこともできるだろう。
戦士としての自らの資質のうちで、最も優れた箇所は足であろうと自負しているから。
跳び退った先にあるのは、先刻弾かれたばかりのアズゥ。
握りこめば手の平でやけどが痛む。
けれど、振り回す分には支障ない。
大盾を手放したサイラス目がけて、横なぎに振りぬく]
『しかし、試合開始から随分と大きな事象が起こっています。
そんな事は無いと信じていますが』
縮む、か。
そんな事もあるかも知れない。
しかしだ、あったとしても……俺達は竜器と共に
あいつの傍に在り続ける。
あいつは…一人なんかじゃないんだよ!!
だから、きっと。
[大丈夫だ、折れる事など決して無い。
根拠も何もあったものではないが、それが励みになれば良いと
腕を組んで試合の様子をじっと見守っていた。]
[パラが跳ね、アズゥが薙がれる。
その動きが]
……グレダ、怪我してるの……?
[最強の戦士を決める、最終決戦だ。
苦戦するのも当然だろう。
わたしは指を強く握った]
……グレダ……!
うひゃ!?
[跳び退いたグレダがタライを握り、こちらへと振りぬく。
男も一歩さがり、足下の大盾の下辺を思い切り踏んづけた。
湾曲している大盾は、踏みつけられた勢いで直立し、タライを防ぐか。
右手に握った戦鎚で左手をぶんなぐれば風呂栓を壊せるだろうが、さすがにそれは痛いでは済まない。
だから後ろ足で踏ん張り、チェーンをグレダごと振り回す。]
っと。
[大盾が立ち上がり、アズゥの一撃をしのぐ。けれどそれは、手で持って支えられたものとは違う。
しのがれ、弾かれた勢いでもってくるりと回り、上辺を蹴り飛ばせば転がっていってしまいそうなものだ。
あるいは踏み留められたままだったか?
今は、それを確かめている余裕はない]
っとと。
[パラの鎖ごと、振り回されようとしているのだから]
っと。
[その力に、逆らわない。小さな体で飛び回り、棒を振り回し、空中で反転することは、もはや体に染み付いている。
振り回されるままに身を委ね、叩きつけられる前にその力をそらす。
振り回されれば振り回されるほどに、サイラスの腕に鎖が食い込む道理だ]
私の最強の竜器は……、
貴女だよ、グレダ!
貴女が居なくなったら、わたしは悲しい!
……だから怪我しないで!
無理しないで!
[大盾からは足を離せば、ふたたびどしりと地面に横たわっている。
大盾を踏み続けている余裕は無い。
相手はタライを握ったまま、なすがままに振り回されている。チェーンを離してこない。]
そんじゃー……よっ!!
[気を取り直してチェーンを握り、そこに戦鎚の鎚状になっている方の先端をつけ、
すりつぶすように壁へと押し付け殴った。
はたして程度の強度があるのか分からないが、どのみち壁は破壊される。]
……。
『頑固ですね、応援したいでしょうに。』
俺の声は響くからな!
二人の戦いの妨げになってしまう可能性は大いに考えられる。
俺が口にして良いのは、あいつの名だけだろう。
[しかし、それも今は言う時ではないと
双方の攻防戦を目を細めて見ている。]
しかし、見つめるしか出来ないのは結構辛いな。
『だから言っているのに。』
…ははっ
[振り回されながら、その耳に、観客席からの声が届く。
もういい、と、ミルファは言った。
怪我をするな、無理をするな、と。ミルファは叫んでいた。
けれど、その前に、ミルファの最強の竜器は、自分だと、そう聞こえた。
…まぁ、見てなって。
気を抜けばすぐにも霞みそうな頭の端で思考する。
アンタの最強の竜器は、そりゃあ最強なんだから、負けはしないのだ、と。
いなくなったりなどはしないのだ、と。怪我なんてしたところで、それはちっとも無理なんかではないのだ。と。
信じろ。と。
それを、戦いの姿で以って示そうと。そう思う]
おや、連れないじゃないか。
アタシをほっといていいのかい?
[サイラスが狙いをパラのチェーンに絞ったのを見て取って、握っていたその鎖を離した。
単純な形状であると同時に、ミルファが作り上げた合金の輪だ。
余分な負荷がかかりさえしなければ、竜器はともかくレンガの壁などに負けはしない。そう信じる]
脳震盪くらいは覚悟しなっ
[その声とともに、握ったままだったアズゥを振るい、チェーンを狙わんと壁を砕く、サイラスのこめかみに狙いを絞った]
――――サイラスッ!!
[グレダの盥が相棒のこめかみを狙った、その時。
男の大きく、鋭い声が飛んだ。
悲観などしていない。
しかしその呼びかけの意味する所は危険を報せるもの。
決して折れない、彼は勝ち笑うのだと信じているにも
関わらずだ。]
[さすがに体力は限界だ。
強がりで笑い続けるが、本音を言えばもう一歩も動きたくない。]
……サイラスっ!てめーもちったぁ応援しろよお!!!
[だから今、いつもの相棒の激がいちばん聞きたい。]
[出来た隙をグレダが狙わないわけが無い。
彼女が、そのタライをふるわないわけが無い。
ひゅ、と風の音が耳に入る。
戦鎚の先端、チェーンを叩いていない方はピック状になっている。
頭をうつむけ、そこに全ての意識と、最後の魔力を向かわせる。
相棒が、製作を一番得意とする鎚。]
『スルトの』
[邪竜を相手に使えば、生命エネルギーを吹き飛ばす魔法。
それ以外のものに使えば]
……『咆哮!!』
[噴火時の衝撃波を模したそれは、無機物を通り抜け、肉体に強烈なしびれを起こし、麻痺させる魔法。
それは、巨人族に耳元で怒鳴られるかのような。]
ばかやろう!!
試合の邪魔したくないから黙ってんだよ!!!
それに、俺はお前の傍に居るだろうがあああああああ!!
[吠えた。
応援しろと言われたら、叫ばないわけには行かない。
例え、どのような結果となるにしても。]
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