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手のひら
「手のひらに、何が見える?」
「手のひら……」
なだらかな坂道を青年と男の子が上っていきます。
あおく冷たい空気の中で、木々も、屋根も、ふたつの体も深い青色に染まっていきます。
「手のひらに何が見える?」
「手のひらには…海」
「海の上には何がある?」
「バイオリン…」
「どんな音の?」
「青い…真珠。ネックレスの紐が千切れて、コロコロとどこまでも転がっていく。
楽譜の床を…ポンポンと飛び跳ねながら…海に溶けていくの」
「すてきだ。それから…?」
「……扉がある」
「どこに?」
「空。でも高くて届かない…」
「オレなら届くよ。腕が長いから」
「空までも届くの?」
「あぁ。空までも届く」
「わぁ、すごい。どんどん伸びる」
男の子は魔法の手のひらを持っていました。
そのカギを開けられるのは青年だけでした。二人はとても小さく、痩せていたので手のひらを潜り抜けて自由に向こう側に行くことが出来たのです。
向こう側には二人が大好きな坂道と青い空気と、無限に広がる夢想の王国がありました。
「海の中に花が咲いてる。あんなにたくさん」
「決して枯れることがない。いつまでも、詩を歌っている…」
「…お花の中に誰かいる」
「……女の子だ。とてもかわいい」
男の子には父親がいました。
父親は男の子を心配していました。男の子が向こう側に行くたびに少しずつ痩せていくのを見かねていました。
二人が向こう側に出かけることが多くなって、やがてほとんどの時間を向こう側で過ごすようになった頃、父親は男の子の名を3度呼びました。
1度目…2度目…3度目に男の子は振り向いて、こちら側に半分だけ体を出しました。
「なぁに、お父さん」
父親はすかさず男の子を引きずり出すと、魔法の手のひらを手首からばっさり切り落としてしました。
「消えろ!」
父親は手首を力いっぱい放り投げました。
それは青年を乗せたままどこまでも飛んでいき、海を越えてどこか遠い国へ落ちて見えなくなりました。
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