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人造妖精 エステル に 1人が投票した。
灰色翼人 ランス に 1人が投票した。
研究者 トロイ に 8人が投票した。
研究者 トロイ は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、司祭 ドワイト が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、毒舌家 セルマ、歌い手 ナデージュ、人造妖精 エステル、中毒 カイン、灰色翼人 ランス、小説家 エラリー、手紙狂い パース、がらくた屋さん スー の 8 名。
[わたしの左半分と、スーさんの右半分。
包帯で覆ってしまえば同じように見えるでしょう。
そういう意味で言えば、お揃いなのかもしれません。
でも、わたしは首を横に振りました。
スーさんの右半分は、赤色。
わたしの左半分は、白色。
どちらの色だって痛いけれど。
どちらの色だって辛いけれど。
けれど、決してそれは同じではありません。
だからわたしは首を横に振ります。]
……お、そろいじゃ、 なくて も
わたしは、
[うれしいです、と。
告げようとした言葉は、声にはなりませんでした。
小さくても確かに暖かいスーさんが今、此処に居る事が、嬉しいのです。
零した咳に、血の味が混ざります。
こういった出血は、灰化が広がる兆しでもあります。
わたしは唇を閉じると、尚一層強く、スーさんを抱きしめるのです。**]
[ばさりと大きく羽ばたけば、名残のようにくっついていた灰色の羽根が、すべて払われ、抜け落ちる。
視線を戻し、マイダの顔を見たならば。
彼女は、どんな表情をしているだろう**]
[猛然と、身体を起こした。
セルマが如何を尋ねる。
呆然としている男に、セルマも顔色を変えた。
容態が安定したと思っていたのだろう。
近づいてくる彼女に男はぼそりと、しかし重たく呟いた]
――亡くなられた。
[猫背の男が突然、がばりと起き上がる。
なんだい、落ち着きのない。
アンタも司祭様を見習って、
と、
軽口を叩こうとして、違和感を覚える。]
[椅子から立ち上がる。
やっと落ち着けると思った足が、何度めかの命を受けて軋みながら動いた。]
――――――。
[助けられた、と自負したのは僅かな時間だった。]
――そう、…………そうかい。
[他に、言うべきことは浮かばなかった。
新たに増えた遺体をどう処置すれば良いのか分からない。
尋ねたい相手は、今まさに息を引き取ったところだ。]
[沈黙が支配した。
現実が受け入れられなかったのかもしれない、無力感に苛まれているのかもしれない。
男はぼうと宙を見上げ、視線の先にあるステンドグラスを眺めていた。
星空の瞬きは、男にはついぞ見ることが出来なかった]
――
[目を閉じ、大きく息を吐いた。
やがて男が動き出したのは、聖堂の方だった。
セルマに問われれば、埋葬します、と短く返したことだろう。
そう、少年の亡骸もまだ、そのままだった]
[少年の亡骸を見て、男はセルマに処置が出来るか、尋ねたことだろう。
死が身近になったといえど、エンバーミングの技術を持っているのは僅かだ。知識としてあれど、技術は別だ。出来るものがいるのならそれに任される。
司祭が行なっていたことを思うと、実感として胸が重たくなるのを感じた。
エンバーミングが行えないなら今の時期なら、灰に晒すという手段もあった。
鳥葬や風葬のように、少しずつ削っていく。
けれど、男は黙々と棺を準備し、そのまま土葬の準備を行ったことだろう。
疫病を気にしていられる余裕のあるものは、この世界には最早稀少となってしまった**]
おそろい。
…うれしく、ない?
[首を横に振るナデージュにこてんと首を傾げて問う。>>0
今の二人が“おそろい”であるという認識は揺るがない様子。
包帯の下が赤色でも、白色でも。
今のスーには目に見える赤に染まった包帯がすべてだから]
おそろい。じゃ、なくても。
わたしは……。
[繰り返す。言葉を。
告げようとした言葉が声にならずにできた空白が、こうして埋まる>>1]
おそろいはうれしいはず。
おそろいじゃないのはうれしくない、…はず。
ちがう? ――わ。
[いっそう強く抱き締められた、それが答えである気がした。
おそろいじゃないのは、嬉しくないことばかりではない、と。
教えられた気持ちになって表情が緩む。
赤に染まった手が、ナデージュの背に回された。
抱き返そうとする動きは、ぎこちなくて弱々しかったけれど。
思いだけはしっかりと、こもっていた**]
[巨きく丈夫な血色の翼。
両翼は薄く影を作りエステルを覆う。]
……………、ランス………。
[ランスがエステルに向き直る。
さんは、意識的に付けなかった。]
[暫くの間、スーさんと身を寄せ合うように抱きしめあっていましたが、そのうちに、こうしている場合ではないと気付きます。
今、暖かなスーさんと抱きしめ会う事はとても心地よいのですが、スーさんの傷を放置していいというわけではないのです。
わたしはスーさんから少しだけ身を離せば、指をそっと、赤色の右半分に伸ばします。
スーさんの包帯を摘み上げて、緩やかに首を傾げました。
交換しますか、と、声無く問います。
確か、マスターの部屋に簡単な医療用具を詰めた箱があったはずです。
マスターが忙しい時は「勝手に持って言っていい」とまで言われていたので、
その時の記憶が確かなら、ガーゼや包帯もちゃんとありました。
わたしも赤色に染まった包帯ではあまり外を出歩けませんし、スーさんが頷くようなら、道具箱を取りにマスターの部屋まで向かったでしょうか。]
[暖かで、穏やかで、心地良い時間だった。
いつまた赤が滲み出るか、分からないのも忘れるくらい。
そんな、ぼやけた思考のまま、ナデージュがつまんでいるものを見て、
最初は同じように首をかしげていたけれど、
徐々に、すまないという気持ちを顔に出して、俯きがちになってしまう]
…だい、じょうぶ。
そんな、めずらしいことじゃないし。
ひとりで、できるし。
こわく、なんか……。
[帰ってからやる、と、たどたどしく伝えようとする言葉とは裏腹に、
小さな手はナデージュのケープの裾を掴んで離そうとしない]
………ごめん、なさい。
やっぱり、こわい。
[怖いものは色々あるけれど、
今は何よりもこの暖かさを失うのが怖くて]
おねがい。
まってるから。すぐ、もどってきて。
[――ぺこり。
軽く頭を下げる。
強情に思われた手はなだめすかさなくともするりとナデージュのケープから離れ、
代わりに自分の上着の裾を握りしめた**]
[こわい、と告げるスーさんの頭をそっと撫でます。
大丈夫、大丈夫と、落ち着かせるように。
本当はスーさんと一緒にマスターの部屋まで行ければよかったのですが、スーさんの身体を無理に動かすのはあまり良い事の様には思えませんでした。
変わりにケープを脱いで、そっとスーさんの肩にかけます。
人肌の温もりにはかないませんが、それでも、無いよりはきっとマシでしょう。
わたしは立ち上がり、マスターの部屋まで真っ直ぐに向かいます。
倒れた椅子は後回しです。
マスターの部屋の入り口近くに目的の道具箱を見つけると、すぐにカウンターの方へと戻りました。
お酒を割る為の、飲料水の瓶が何本か備蓄されているのを思い出したからです。
残りの本数も、大分心許なくなっていますが。]
[タオルを一枚、道具箱を一つ、水の瓶を一本。
量としてはそれほど多くはないのですが、今のわたしにとってそれらを運ぶのはなかなかに重労働です。
それでも、何往復するかよりは一度に運んだ方が早い、と、わたしはスーさんの元に歩んでいきます。
おまたせしました、と、声無くスーさんに告げれば、また、スーさんの傍らに膝をつきます。
飲料水の瓶を開け、中身をタオルに少しだけ含ませました。
それからまた、スーさんの包帯をつまんで軽く持ちあげて、首を傾げます。
解いてもいいですか、という、問いかけでした。]
[角と耳の引っかかりに注意し、帽子を脱ぐ。
マントを剥いで、上着のボタンに手をかける。
ばさりと無造作に脱ぎ捨てて、カインは己の身体に視線をやった。]
……
[胴には、絵の具で乱雑に塗りたくったような赤黒模様に覆われていた。
変異しかけのような、腐りかけのような、気味の悪い色。
しかしそれ自体に痛みなどを見せず、面倒くさそうに、取り出した軟膏薬を背に塗りつけて。
また手早く、着ていたものを羽織る。]
[例えば、だ。
仮に私が振り返ったとして、その後、村に戻るためにズボンを脱ぐとき、見ないでくれと頼んだとき。
彼は応じてくれるだろうか?
押せばなんとかなる、という結論に至ったが。
見てどうなるんだろう、と。
根本的なとこに立ち返った。
衣擦れの音も止んでるから、タイミングを逃したようだと悟った。
沈黙が耳に染みる。
あと、考えてたことが実に下らないことだったから、なんとなく気恥ずかしくて]
……何か面白い話、ないかい?
[例えば。
仮に、カインがパースが隠しておきたいと思っているかもしれないものを、偶然でも何でも見てしまったとき。
多分、たった数秒の驚き以上のものは何も無い。
見たからどうなるとか、それは今のカインにとって些細なことでしか、ない。]
んー? 面白い話……?
[沈黙に耐えかねた質問に、そーだなー、とか適当な言葉を乗せて。]
……春に花が咲く理由、って、知ってるか?
[服を着終える。
角と耳の穴が開いた帽子を、キャスケットの上に被せた。]
[二人を別々の棺に収めた。
教会にあったはずの手押し車は、既に壊れてしまっているようだった。
顔を顰め、引きずる。
穴を掘るエラリーは、幾分か手馴れていたようにも見えた。
やがて手指にマメを作り、擦り切れさせながらも十字架を突き立てる。
簡易墓地も殆ど埋まりつつあり、小奇麗な墓を作れるほどの余裕も、既に失われている。
そっけない十字架を眺めて、略式に十字を切る。
幾分かそれをじっと見た後、男はメモを取り出し、何事かを書きだした]
『村の父ドワイト その子ギュルスタン ここに眠る』
[十字架に紙を貼り付けた。風雨に晒され、灰にも晒され。
長くも保たないだろう。
何かが足りないと思ったのか、感傷か、男の行為がどう見えたか、それに興味は無さそうだった]
[セルマは、男を手伝っただろうか。
例え司祭とギュルスタンについて訊かれたとしても、男は何も答えられなかっただろう。
何も、知らないのだから。
埋葬の作業に、傘を差す余裕はない。
セルマは男に傘を差し掛けただろうか、それとも、共に灰を被りながら作業を進めただろうか。
積もった灰を払うことも、あったかもしれない。
何れにしても――]
帰りますね。
[埋葬を終えて暫し、メモに何かを書き付けていたかと思うと、男はのそりと顔を上げて、呟いた]
春に花の……?
よしきた、ちょいと考えてみよう。
[煙草中毒の語りかけに首を傾け、腕を組んで]
うーん、日の光と地中の養分が充実するから、とかだろうか。
いや、そういうことではないか。
…………。
……………………。
……こーさん。教えてくれるかい?
[両手を軽く挙げ、眉をハの時にさげてカインに話を促す。]
[エステルの───マイダの体温を感じながら。
ふ、と。
脳裏に浮かぶ、世界。
この世界は、もう終わる。
それを何故か、今はとても素直に受け止められる。]
───マイダ。
[何度、その髪を撫でたろう。]
[紅い羽は、降り積もる灰の中にあって、なお鮮やかに。
明らかに、異なる姿。
なのに意識は、まだ己のまま。
それが意味するところは、まだ分からないけれど。]
マイダ。
教会に用があるんだろう?
……行こう。
[もう一度、額に緩く口付けて。
指先で涙を拭ってやってから。
肩を抱き寄せ、教会の中へ促すように歩き出す。]
さーね、俺も知りたい。
[降参したパースの頭を帽子越しに撫で、答えを用意しなかった男はへらりと笑う。
もしさっき、服を脱いでいたときに。
カインの気付かぬままこちらに手紙狂いの視線が向いていたとしても、何も言われなければ、何も変わらない。]
ただ……
星が、咲かせてくれるから、かもな。
[曖昧な言葉を落とし、パースから離れる。
軽く腰と背中を捻って、薬の効きと具合を確かめた。]
『───マイダ。』
[その名前で呼ばれると違和感はあった。
けれども、もどかしさも感じて。
撫でられる度に涙はかなしさではなくあたたかさで零れて。]
あなたに、会いたかったの。
[教会が目的ではないのは伝えたけれど。
再び額に口付けられれば、 あっ… と小さく吐息を零した。
涙の痕はあったけれど、目元はもう濡れてはいない。
肩を抱き寄せられあたたかさに包まれながら歩む。]
[死体の保存について、知識はないでもなかった。
だが、この環境でどれだけそれが意味を持つだろう。
灰を避けるために頭にタオルをかけて、男を手伝う。
虚しさの前には、灰も土も、違いなどなくて。]
[返ってきた答えに、憮然とした表情を作り]
…………。
おい、君、それって。
[頭を撫でた相手を避難するように、そこで振り返り、へらりと笑う鹿をにらむ。
が、次の言葉には目を丸くし]
星……?
それって、どういう……?
[言葉の意図を追いたくて、体の調子を確認している彼を目で追った。]
[質問の意図が分からなかったのか、男は僅かに首を傾げた。
先と、まるで変わりのない透徹な瞳で、セルマを見返す]
……自宅に。
[ぼそりと、掠れた声で呟いた]
[お帰りと言ってくれるひとは、彼にも自分にもない。
出迎えて、ようこそと言ってくれるひとも、今ふたり失ったばかりだ。
こんな、夕食の買い出しに来てたまたま会ったような声の色なんて。
また明日、何事もなく会えると信じているような。
何の揺らぎもないような声が、どことなく恨めしかった。]
……星が無ければ、花が咲く場所を持たない当然だろ?
[意図を問うパースに、随分と大きな括りを口にした。
多少の違和感は残っても、普段のように動く分には支障ない事を確かめる。]
もっと言うなら、世界があるから、か?
……ま、世界がもう、花を咲かせることを"諦めてる"けどさ。
[マイダの肩を抱いたまま、教会の中へ足を踏み入れれば、そこは、静寂に満ちていた。
そして、友は静かに、永遠の眠りについていた。]
エラリー、セルマ……。
───ドワイト、は……?
[マイダの肩に掛けていた手に、力が籠もる。]
――――、
[男との語らいは、別の男女が訪れたことで中断される。
時間的に、女が答えることはなかった。]
……アンタ達、――――。
[やけに親しい様子のふたりになにか言ってやろうと思い、やめる。
誰も悪くない。
八つ当たりのための毒舌を持ち合わせるつもりなど、女にはないのだ。]
[自嘲気味に嗤うセルマを、男は、なんの色も見せずに見返した。
セルマがどんな事情でこの村に来たか、くらいは"知識として"知っている。
そう大きくもない村、それがどんな理由か、正しいかに関係なく何かで情報は伝わってくる]
誰もいないのに。
[鸚鵡返しに、男は頷き返した。
今のセルマの事情を鑑みたのか、推察出来るかもわからないほど揺るぎない。
事実として受け止めているのか、それともそこに関心がないようにも見えるのか――
そこに、新たな顔がふたつ、現れた>>46
身長差に、上と、下と視線が動く]
――亡くなられたよ。
埋葬は、済ませた。
[簡潔に一言二言、返した]
……死んだよ。
手当てしたけど、駄目だった。
[表情を消して告げる。
真面目なときにこそ偽ってきたそれを使わない。
少女だった頃のように、真摯に、事実を伝えた。]
[男の説明が簡潔なもので、切なさよりも乾いた土のような気持ちが際立つ。
その土を割って、花は咲くのだろうか。
希望が、水が欲しかった。]
……そうか。
[既に埋葬は済んだとの言葉に、頭を垂れる。]
ありがとう。
……なぁ。
ドワイトは、人間のままで、逝けたのか?
ギュルスタンのように……
おれのようには……なっていなかったか?
[話しながら、羽を大きく開いてみせる。
まるで、血に染まったかのような、紅い羽。]
星が無ければ、咲く場所を持たない……?
[いっそ乱暴ともいえるその説明に、眉間にしわを寄せる。
続く言葉に唸り声。
まるで理解のできない話をされている、と感じた。
カインはパースの知らない知識を持っているのだろう。
思考の始まる地点にそもそものずれがあるようだ。]
世界が……諦めてる、だって?
ふん、そんな腑抜けた世界に私は生きているのか。
[腰かけていたベッドから立ち上がり、カインを見つめた。
諦めたと自嘲した、彼。
諦めたという、世界。]
冗談じゃあないね、君。
諦めたくないと思う私が、阿呆みたいじゃないか。
[紅い羽根は大きく大きく開いて。
その影を覆われながら話を聞いていた。
エラリーの視線通り身長差のあるランスとエステル。
それは、体の成長がある時から殆ど止まっている事の証左。]
見えた限りではね。
……死ぬくらいで、そんなに変わるもんでもないさ。
多くの存在はそうさ。
[半ば、自らに信じ込ませるように。]
――エステル、これで良かったのかい。
[ついと少女に身体を向ける。
その様子から、恐らく目的は達したのだろうと予想して。]
…………幸せかい。
[星精の、エステルの力を使えば、
瀕死のドワイトの命を掬う事は出来たかもしれない。
灰で芽吹かぬ種も芽吹き、一瞬で花を咲かせも出来たろう。
けれど、その場合ドワイトは癒される箇所は魔物化が進み、
植物は芽吹いた時から変異植物として育つだろう。
それは星精が原因ではなく、──────。]
[理解には大きな隔たりがある。
それは正解で、間違い。]
そう、そんな腑抜けた世界に、お前は生きてるのさ。
[知っていることを、カインの言葉で話しているだけ。]
諦めたくないと踏ん張ろうとしたって、もう、その足場が壊れてしまうとするならば。
パースは、どうする?
[それでもなお足掻くのだろうかと、日常会話のトーンが問う。]
…………そうかい。
灰色の羽だか、マイダだか分からないけど。
そりゃ良かった。
――でも。
今その羽の。
――――エステルの、幸せとは別なのかい?
[皮肉でも、毒舌でもなく。
ふたつに分かれたものを慈しむように、
あるいは哀れむように。]
[何でもない事のように、いつもと同じ調子のように、今日の天気をつぶやくように言われても。]
なんだい。それ。
泣いちゃうよ。
[カインに向けて、ゆがんだ笑みを浮かべた。
ほかにどんな表情をすべきか分からない。
言葉を探して、口を開けて閉じて、うつむいて。キャスケットを脱いで口元を隠す。
壊れかけている友人の顔が浮かぶ。
どうせ壊れるなら、いっそ、と思ったあの時。
じわりと目頭が熱くなる。感情が荒れる。]
ああ…………。
足りない私には分からないね!
憎らしくて自分の足で壊してしまいたくもなる。でも、最後まで方法を探してあがきたい……。
…………。
[記憶と今とは違うから。
それだけのシンプルな持論。
羽を持たない女の、狭量かもしれない考え。
だから、羽を持つものへ、問い掛ける。
――今、幸せかい。
アンタ達の世界は、それで、満足かい。]
………………。
・・・・・・。
私は、見守るだけ。
(ソウ、キマグレ。)
[終わりの一時に、
心も記憶も失った哀れな残滓に委ねたのは。
エステル《星》として委ねたのは。
星《エステル》の気まぐれ。]
[絞り出すように放たれた言葉は、どう響いただろうか。
少なくとも男は、セルマに視線を向けた。
続いて現れた二人を順に視線を移し、またセルマに戻る。
静かに。
続けて。
とでも言うように無遠慮に]
……泣くなよ。
[泣かせたかったわけじゃないのだと、慰めに頭を撫でようと手を伸ばす。]
すまないな、でも……
[否定が過ぎる。
それを、出来る限り堪えた。]
お前は、良いやつだ。 ……ごめんな。
[カインの、出来る限りの答えが、それだった。]
[遠い遠い流れ星。
星精はこの世界を見守る。
慈愛はうしなってはおらず、しかし、
その慈愛は常人にはきっと理解し難いもの。
元の世界だろうと変質してしまい終わる世界だろうと、
どちらも愛し慈しむもの。
喩え、世界が静止してしまったとしても。
闇に沈んでしまったとしても。]
[ケープを脱いだナデージュの姿が遠ざかって、見えなくなって、しばらくして。
スーの視線は彼女が去っていった方とは別のところを向いていた。
倒れた椅子、割れた花瓶、緩く道をつくる赤の雫。
自分が壊してしまったものの方を]
……。
[花瓶の破片がある方へと手が伸びる。
届かない。
壊したものを拾い集めるのを投げ出して、
ちっぽけな手は頭の上に]
[やがて、道具一式を持ってナデージュが戻ってきた。>>24
されるがまま、でいいつもりでいても。
包帯をつまんで再度、首をかしげる様子を見れば、
思いが鈍って苦しげに一度目を閉じる]
…こうかい。
しない?
きれいなきずじゃ、ないよ。
[かくして逆に訊き返す。
包帯の下に隠されたのは鋭い何かで抉られたような傷、一筋。
それを見てしまって構わないのか、と]
びっくりするのはしょうがないけど。
触れるな。
[キャスケットを捨て、伸ばされた手を打ち払った。
はあ、と熱いため息が漏れる。
彼をにらむ。
挙げた手をそのまま矢筒へと。]
お前は……おかしいよ。
[矢を一本取り出して、握る。]
なんだい。
[彼が衣服を脱いだ時、振り返りはしなかったけれど。
できれば気のせいと思いたかったけど。]
そうか。
[友は、人間のままだった。
それは、ランスにとっては、せめてもの救いと思えた。]
……。
[はたと思い出す、友と、最後に交わした言葉。]
すまない、用事を思いだした。
すぐに戻る。
[言い残し、紅い翼を羽ばたかせ、急いで向かうのは、2階にある自分の部屋。]
[傷に、綺麗も醜いもあるのでしょうか。
深い浅いはあれども、傷と言うのは誰にとっても等しく傷であるものだと、わたしは思います。
大丈夫、と、告げるように小さく頷きました。
そっと手を伸ばし、包帯を解きます。
真っ赤な傷に触れないように、慎重に解いていきます。
解き終われば傷の周りを湿らせたタオルで拭います。
ゆっくりと、ゆっくりと、スーさんが痛みを感じないように、慎重に。
それにしても、こんな傷、どこでついたのでしょう。
わたしの病は左の瞳から進行していったものですが。
こんな、抉られたような傷、この村で暮らしていて、つくものなのでしょうか。
ずっとスーさんはこの傷を抱えて、過ごしていたのでしょうか。]
[或る程度を拭い終われば、わたしは道具箱を開き、比較的清潔なガーゼを取りだしました。
それを傷にあてると、片手でおさえたまま、スーさんの手を取ります。
その手をガーゼに導けば、おさえていてください、と声無く告げたでしょうか。
スーさんがその通りにしてくれれば、次は包帯です。
ガーゼが落ちない程度で大丈夫なのですが、なにぶん、人間の頭と言うのはなかなかに大きいものです。
真白い包帯を取りだすと、少し、強めに巻いていきます。
圧迫止血だとか、そういうやつです。
詳しくは知りませんが。
ガーゼがずり落ちないのを確認すれば、包帯の端と端を縛り、処置を完了とします。
医学的な知識は持ち合わせていませんが、それでも、毎日自分の包帯を巻いていますから、包帯を巻くくらいなら朝飯前なのです。
具合はどうでしょうか、と、尋ねる様に、スーさんに向けて首を傾げました。]
[睨まれ、拒まれ。
寂しげに瞳が揺れるのは、カインの記憶のせい。]
なんだい、って……何が?
[薄く微笑み、何にも気付いていない振りで返す。
おかしいと、普通の感覚ならば思うのだろう。
腐ったような、異常な色をした腹部に。
諦めが過ぎた様子に。
けれど、何も、おかしくはない。
カインという死体に入り込んだ、世界の滅びを仕組んだ当人からしてみれば、何も。]
[なにかの、報せのようなものを感じた。
窓を開け、部屋に入れば、そこには木箱が置かれていた。
開けてみれば、そこには薄紅色のリボン細工が───]
……ドワイト……。
[添えられていたカードを見て、また胸が締め付けられた。]
[吐き気がする。]
なんだい、君。
実に、つまらない男になったねえ。
[にやり、と笑った。
いつものように笑うのは口元だけで、両目は目の前のおかしくなった誰かをにらんだまま―
握った矢を、その首元めがけて―]
薄紅色の花。
───おれの、勝ちだ。
[微かな笑みを浮かべると、リボンの花を、潰さぬように緩く握りしめる。]
ありがとう。
[そして再び翼を広げ、窓から飛び立つ。]
[寄り添った相手に未練も見せない少女が、何者かなどと知ることはできなくて。
理解できなくとも、共存することはできると、思っていた、のに。]
――アンタは、未練も持てないんじゃないか。
[愛したひとが体温を失くすところを思い出す。
手に触れた相手が冷たくなっていく過程。
女は、夫の未練にもなれなかった。]
[傷を負った日のことはろくに思い出せない。>>1:13
この日を境に、お手製の呪符を持って森にも平気で踏み入る活発な様はなりを潜め、
現在も壊れ続けたまま]
…っ。
[僅か、うめくような声を上げたのは、
水が傷に染みたからであって、
記憶を引っ張り出せたせいではない]
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