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次の日の朝、負傷兵 スヴェン が無残な姿で発見された。
照坊主の下駄が、どこからともなく 永の眠りを呼ぶ球体 の頭に飛んできました。
からんころ〜ん♪…明日は… 真冬日 かなぁ?
人々は緩やかに滅んでゆく。
現在の生存者は、浜辺の少女 フラン、擬人 リュミエール、湧き立つ混沌の球体、永の眠りを呼ぶ球体、神父 ジムゾン、医療電子技術士 フラット、廃ビルの住人 トレイスの7名。
――さむ、い。
[急激に気温が下がっていく。
日が昇るにつれて、どんどんと。
異常気象はここまで及んでいた。]
構うものか。
今更、肺炎くらい。そのくらい。
―海辺―
[ 浜辺に近い場所で海を眺める。まだ少し、青い海の軌跡が残っていた。一匹の海蛇のように、小川のように、細い青色は揺蕩っていて。]
[なぜだろう、日が昇ってきたのに、奇妙に冷え込んできた気がして。
平穏な日々からどれほど経ったっけ? もはや季節のことさえ意識なんてしていなかった自分に気づく。時間は、止まりはしないのに]
……いこう。
[足が震えるのは、きっと寒さのせいだけ。
気を抜くと海に引き寄せられそうな自分を奮い立てて、顔をあげた]
――医療所――
………いったいどうなってんのやこの気温は!
[ワイシャツに白衣の上から薄手のコートを一枚羽織った格好で、
ばたばたと足音を立てて医療所内に駆け込んだ。
扉を閉めれば空は見えなくなる。
真冬日の晴れた空は天上の青、と呼ぶに相応しく澄み渡る――普段なら。
しかしそうは見えないのは、そもそも真冬日であることが異常だからか、あるいは]
間あけすぎてすまんかった。
怪我は………治ったはずや。もう痛くないしな。
[思考を切り替えて、歳若い医療従事者の姿を見つければ、
コートを脱いで包帯が巻かれたままの右腕を突き出した]
あれ、リュミエールさん、かな。
[遠目だから自信はなかったけれど。
歩きながら、昨日話したことを思い出そうとする。
何度か試みて、そうだ、リュミエールさんもどこか行っちゃうんだったっけ、と。感傷に浸り過ぎないように、近寄って挨拶を]
おはようございます。
もう、お出かけですか?
[ジムゾンやリュミエールが集積体を目指していることも知らず、努めて普段通りの振る舞いを]
ターン・オ……あ、マドモアゼル・フラン?
[ 挨拶される少し前に、フランに気付いて赫眼を開く。ぱちぱち。]
おはようございます。
[にっこり]
はい、もう発つところです。
急に寒くなりましたが、大丈夫ですか?
本当、急に。
何もかも、わけがわからないです。
……あっ?
[ちらと見かけた、神父の姿があることに気づき、そちらに気を取られる]
[擬人 リュミエールと青い髪をした少女の側へとゆっくりと歩み寄る。]
お早う御座います、また会いましたね。
……どうかなさいましたか?
[昨日遭ったばかりの機人へと挨拶をする。そして、その傍らに居る名前も知らぬ少女を見た。少女が声を上げたのに不思議そうにする]
ああ、もう来ないのかと思っていましたよ。
[ぎこちなく、トレイスに微笑んだ。
うまく笑えているだろうか、こういうのは苦手だ。]
ええ……傷は、大分良くなっていますね。
でも、まだ消毒と薬、続けないといけません。
[包帯を巻き直し、トレイスの白衣をちらりと見た。
何だか不思議な感覚だ。]
おはようございます、プリースト・ジムゾン。
[一礼]
今から貴方も発つところですか?
[ 集積体や移動基地のやりとりはしていても、ジムゾンが何処へと発つかは聞いていなかった。]
[つい物珍しげな態度を表してしまう癖をどうにかしたいなぁと照れ隠しに白い息を一つ]
わ、ごめんなさいっ。
私、この街のフランっていいます。
えーと。寒いですね。
お二人はどちらに行かれるんですか?
…………右腕……。
[ふ、と浮かんだのは爛れるようなあと。
トレイスの怪我もたまたま右手である。]
念のため、右手は日光にさらさないでおいて下さい。
敗血症はもうないでしょうが、貴方は無茶しそうですから。
あと……
風邪、引きますよ。
[冷静に、ただし自分も夏の格好のまま、ぽつりと呟いた。
まるで友人に対して意見が漏れたときのように、
率直な、毒気のない声だった。]
[機人の質問に首を縦に振って答える。機人が貴方”も”と言った事に疑問を覚える。リュミエールも何処かへ行くと言うのだろうか。]
はじめまして、フランさん。
私はジムゾンと申します。……そう、寒いのですか。
[唇に微笑を浮かべて少女に挨拶をする。寒いという単語に違和感を覚えつつも笑顔のまま相槌を打つ。「どちらに行かれるんですか」という質問には直ぐに答えず一度口を閉ざす。]
はじめまして、ジムゾンさん。
神父様の服って、あたたかいのかしら。
[どこか他人事のような落ち着いた口ぶりに首をかしげる]
……。
[釣られて海を見やって。
口を閉ざすジムゾンと、海を見つめるリュミエールとの様子に、踏み込んでいいものかと]
え……。
[リュミエールの答えに、続く言葉を失う。
「集積体の元へ」。
その言葉に、緩やかならぬ死の予感が、背筋を冷たく撫でる]
[横目で海の彼方を見る。この向こうに神が居ると確信めいたものがあるのに、海を渡ってゆける筈も無い。口惜し気に海の向こうを見た後、砂浜へと視線を落とす。傍目からは眼を伏せた様に見えただろう。
しかし、直ぐ側から
「集積体の元へ今から行きます」という声が聞こえて、
思わず数度瞬きをする]
[若者の操縦する戦闘機が 爆弾を投下しようとも
たとえ機体ごと 飛び込んでこようとも
集積体には傷一つ つきはしなかった
尚も変わらず 狂おしい光を放ち 滅びの吐息をこぼす だけ ]
………そうか。
いやー、忘れられんうちに来れて良かったわ。
たまたま早起きできて、それで思い出せてな。
[ぎこちなく見える笑みに微笑みを返す。なんだか嬉しそうな様子である。
まだ消毒と薬が必要、という言葉にすらも]
ん、じゃあまた数日後に来ればええんやな。
…………どーした?
[こっちの白衣をちらりと見やったのも気になったが、
直後ふっと相手の口から零れた「右腕」という言葉に、
少しだけ首を傾げた後、]
成程………嬢ちゃんのことでも考えとるんやろ。
[深い青の髪の少女。確か自分よりずっと前から、右腕に包帯を巻いているはずの]
無茶ってなぁ、今更誰を相手にそんなこと………。
[少し強張った笑み。
集積体の接近が男の表情に陰をおとす]
[自ら何かを招く事もしなければ拒む事も行いはしない。
ただ、ただ、浮遊し、其処に在るのだ。
爆撃は多胞の幾つかを押し潰す程の輝きを見せるけれど、硝煙晴れた暁に見える貌は傷がついたようには見えない。湧き立つ胞で、表面の貌が変わったようには見えるけれども。]
[茫然としながら、二人といくつかの言葉を交わして。
別れ際に、届くか届かぬかの声で、ぽつり]
私には、分からないんです……。
アレに立ち向かっていくことは、――。
「希望」? 「諦め」?
何を思って成すことなのか、それが、分からないの……。
[一つ一つ日常をもぎとられていく。
彼らが瞳に宿す意志は、それぞれ異質のものに思われて。
父が最期に宿したもの、兄が心に決めたこと、虹色の光に導かれる人々が何を思い進んでいくのか。
七色に穢された海の底の色のように、それを見ることが出来ないでいる**]
あと?
[言葉の切れ目に眠そうな顔を見せていると、再び相手から声がかかった。
のんびりと聞いているうちに、その表情が、
あまりにも驚いた時のそれに一瞬、彩られる。
待っていたものが戻ってきたような、そんな心地を受けたから]
しゃーないねんこれは、冬物探すのめんどくさくなってなぁ。
…………それに、風邪引くかもしれへんのはお互い様やろ。
医者の不養生って言葉、知らんのか?
[ややあって声をあげた時の表情は先程とは異なり、
笑い出すのをなんとかこらえているかのようだった。
声も僅かに震えを帯びている]
[「集積体の元へ今から行きます」と真直ぐに答えた機人を見て、青い髪をした少女へと視線をやる。]
私は……。
[少女を見据えながら、先程答えそびれた質問に回答しようとして、またも口を閉ざす。]
貴方は?……。
[不意に少女はどうするのだろうかと……、昨夜遭った男の様に此処に居座り続けるのか、それとも。逆に少女に問いかけるだろうか。]
笑わないで下さい。
ただでさえ、調子が狂っているのに。
[嫌がっているのではない。
もう拗ねた子供にしか見えない顔をしていた。]
……何なんですか。
どこか嬉しそうに見えますよ。
ほら、早くコートを。
[――本当は。
また彼の姿を見られて、診療所に来てくれて、
それでいくらか落ち着いていた。
あの擬人の件では――]
[――擬人。
そうだ、彼は出会っていないのだろうか。]
会いましたか。あの擬人に。
長髪の、赤い目をした。
こんな閑散とした街にやってきて――
[守る、と言った声が耳に蘇る。
だが、そこは伏せておいた。]
[この仕事も、厄介なものだ。
人の弱さを、自分の弱さを知ってしまう。
だから、人を好きになってしまう。
それが、いつか、近いうちに。
どれも失われてしまうのだ。]
ああ………すまんな。
[と言いつつついにこらえきれなくなったようで、
くくっ、と喉の奥を震わせて本格的に笑う。
コートをばさりと羽織った後、]
ついでに寝る場所も貸して欲しいんやけど構わんか?
流石に今あっちで寝たら死んじまいそうで敵わん………ん?
擬人?
[人を模した機械、だったか]
会うとらん。神父には会うたけどな。
[擬人とは珍しいなぁ、という思いが一番に来たが、
どうやら相手は自分より暢気に構えてはいない様子]
それは………気ぃつけろっちゅーことやな?
[真剣な面持ちに射抜かれて、思わず背筋が伸びる]
[嬉しさが影を潜めていく。
代わりに迫るのは現実]
まぁ、気ぃつけてみるけど………。
でも、その嫌な感じ、何か明確な根拠はあるんか?
たとえば、
“名状しがたき「別の存在」”を神として崇めとる………とか。
[脳裏に昨夜の神父の話を置きつつ、問うた**]
部屋は自由に使っていいですよ。
今なら無料でどうぞ。
凍死されても寝覚めが悪いですからね。
[束の間、年相応の明るい表情を見せた。]
……神父、ですか?
擬人とは別の、人間……どうして、こう次々と人が来るんでしょう。
あの擬人――あれには、その。
身体的な危険を予測しなくとも、構わないと思います。
でも、必ずあの電子人形は。
大きな争いに身を投じるでしょう。
[根拠。伝えられた事実と、それに基づいた直感だけ。
そして、今。
「別の存在」を想起させるいくつかの単語が頭をよぎり、
一度小さく開けた口を閉じた。]
いえ……考えすぎ、かもしれません。
荷物、置いてきたらいいですよ。
珈琲くらい、入れますから。**
[リュミエールの様子を落ち着かない気分で見つめていると、口をつぐみがちなジムゾンの問いに不意をつかれた]
えっ。
わたし、私は。
……どこへも。
[冷たい空気が肺を満たす]
考えたことがないんです。離れること。
考えたくない、ってだけかもしれないけれど。
[せめて、少しでも以前と変わらず在り続けようと日々を過ごしていた。
自分も、周囲も、取り返しがつかない変革のうちに落ちていることには、とっくに気付いていたのに。
苦い薬に糖衣をかけるような、そんな日々。
苦味を誤魔化して、これは甘い菓子のようなものと言い聞かせて]
ジムゾンさんには、神に祈るよりも大切なことがあるんですね。
リュミエールさんにも。
[空っぽなのは、街や家ではなくて。
――自分だ、と気付いた*]
僕の製作者はフラットラインというのですが、
彼は昔、世界の敵になったそうです。
[ 記録の中の製作者の情報は、多体情報でまるで記憶のように読み出せる。]
簡単に言ってしまうと、僕は人にとっては悪の擬人なのです。
けれども、起動前に僕への命令を書き換えられてしまって。
[ あははと頭に手をあて困ったように一頻り笑う。]
人類を守ることと。
僕への命令は、そう新たに書き換えられました。
僕が集積体の元へ行く理由はシンプルです。
人類を守るには、集積体を何とか出来れば良いから。
僕の理由は、それだけです。
でも、僕の命令を書き換えた人は、
シンプルではなかったのだろうなあ。
[ フランを間に挟み、ジムゾンと向かい合う形で対話を続けている。*]
[大分遅れて、>>12のフランの質問に漸く答えると、青い髪をした少女が驚いたように目を見開いた。
少女の呟きに>>46そんな事はないと答える。>>48
ふと、今朝見た夢で子供が泣いていたのを思い出した。ひとりぼっちは嫌だと、泣きじゃくっていた幼い子供
淋しいのも痛いのも辛いのも苦しいのも、嫌だから。全て消えてしまったらきっと楽になれるのに。そう感じていた子供にとって、集積体はどのように映っただろう。きっと、……神様のように映ったに違いない。
昨夜遭った男は不思議と淋し気に見えた、今目の前に居る少女も。元々何も持たない私にとって何かを失ってしまった際の感情は計り知れない。けれど、全て消えてしまったら、そう思う事もないのだ。……希望だ。今では1日も早くその日を訪れる事を
……いや、ずっと前から、それこそ思い出せないずっと昔にそう願っていた。ふと、その事を思い出した]
[擬人の方を見る。集積体の元へ行くと思い掛けない事を言ったと思えば>>18、 冗談だと笑ったり>>27、 集積体に立ち向かう事を命令だと言う>>49。
機人が何を考えているのか全く想像出来ずに居ると、機人本人から正体を告げられる>>49。暫くの間機人が笑っているのに少し困った様に眉を顰めた。]
貴方は、集積体を何とか出来れば、
人類は救われると思っているのですか?
……命令を書き換えた人は、シンプルで無かったと思うならば、
その人物はどのように考えていたのでしょうね。
貴方には分かりますか?
[機人が言う通り集積体をどうにかすれば救われるとは到底思えなかった。
けれども機人には酷な問いであっただろうかと質問を投げ掛けた後にそう思う。]
例え集積体が消え去ったとしてもーー、
私には救われるとは思いません。
フランの何も考えたくないと思う気持ち、
私には分かりますよ。……。
集積体が居なくなった所で、辛い気持ちは、消えたりはしない。
[集積体が消え去ったとしても、故郷の街が灯る事は二度と無い。居なくなってしまった人が帰って来る訳でもない。もう、戻れない。
淋しいのも痛いのも辛いのも苦しいのも、消えたりはしない。
その時ふと、空から鳥の羽毛のようなものが落ちて来た。一旦喋るのを止めて天を仰ぐと頬を濡らすものが雪だと気付く。季節外れの雪が空から振っていた。
空から降り続けている雪はまるで細かな泡のようで。或いは、たくさんの白い魚達が、灰色の空に放流されたかのようだった**]
お、そら助かるわ。
[>>40申し出が受け入れられると、笑みを抑えようと口に手を当てながらそう応じる。
笑う時特有の、悪戯が成功した子供のような表情から、
しばらくすると歳相応と言える穏やかな笑みに変わり、両手をコートのポケットに突っ込んだ]
さあな………。
神父からは訊きそびれてもーたから、ここに来た理由は。
[彼の信仰と決して無関係ではない、そう推測を立てることは可能だけれど]
………。
[大きな争い。接近する集積体。
それらふたつを結び付けることは容易だった。
それでも期待よりは諦めが勝り、目の前の歳若い医療従事者と視線を合わせる。
彼も同じ気持ちを抱いているのでは、そんな気がしたから。
何故戦うのか。
思いは言葉にならず、足元に視線を落として溜め息をついた]
[>>41相手が小さく口を開け、閉じるのを見ると、
特に追求することはなく立ち上がる]
………。
なるべく早く戻ると言いたいところやけど………寝てまうかもしれん。
濃いの一杯頼むわ。
[人差し指をひとつ立て、荷物たる手提げ鞄を片手に、部屋へと向かった]
――診療所/個室――
[鞄をサイドテーブルに起き、ベッドに腰掛けた体勢で、
男は個室の天井を見上げていた。
その表情は明らかに眠そうで覇気がない。
暇な時の常で、かちりかちりとジッポライターを弄っているがそれも長続きしない]
………………探しに行こうか。
[神様を探しに。
昨夜、神父に告げたことが断片的に蘇り、
やることを与えられて喜ぶ仕事熱心な者のように、無機質な白に向かって僅かに笑う。
世の終わりまでの暇潰しの始まり。
その言葉を口にするより先に、睡魔に身を任せて、
投げ出されるようにベッドに倒れこんだ**]
[リュミエールとジムゾンの言葉を聞きながら、物思う。
仮定のように「命令」だと口にしながら、何かをのこすこと、立ち向かう理由を穏やかに分析するリュミエール。
信仰のみを抱えて、何処までも進んでいくジムゾン。
あちこちを人が行き交う賑わいが消え、世界はずっとシンプルに緩やかな時を過ごしているのに、各々のうちにある想いは複雑で、難しくて、気が遠くなる。
そうして、2人の話を聞いていると]
フラットライン、て。
あのフラットライン?
[詳しいことなんか知らない。これまでは身近な世界に夢中で過ごしていたから、どこか画面の向こうの話だと思っていたし、実感はまったくない。
ただ、赫眼に目を引き付けられた]
へ、あ。
そ、そんな何やら偉いこっちゃなこと。
[途方もない話だ。
人類を守る。本当にそんなこと出来たらどんなにいいだろう。
日一日死んでゆく若者を想って、胸が傷んだ]
なんというか、
はぁ――。
何を思って、そうしたんだろう…。
[なんだか固まってしまった視線を、冷静なジムゾンに向ける]
[2人の言葉を聞き、答えを反芻しながら、ふるり震える]
――あ、また、お引き留めしちゃった。
一回、家に帰って支度しなきゃ。
……。
えぇと。
[適当な言葉を探して惑う。再会を願うのも、幸運を祈るのも、なんだかこの場に合わない気がして。働かない頭を恨んだ]
どうか、お気をつけて。
[ようやく出たのは、ありふれた言葉だった**]
雪……。
ひょっとして、積もるのでしょうか。
[本に落としていた視線を上げる。
窓の外は灰色で薄明るい。
ふるりと身体が震えた。]
あ、毛布を出さないと。
布団をかぶっていないような患者が、うちにはいたんでした。
[読書なんてとてもできるような状態ではなかった。
こつりこつりと足音が廊下に響く。
それ以外に音は聞こえない。]
僕のは、別にあとでいいか。
構うべき相手がいるのはいいこと、ですね。
[この雪で最後の体力を奪われ、
もう診療所に現れなくなる患者もいるだろう。
そう考えると空の色のように陰鬱な気分になる。]
[空から降り続けている雪はまるで細かな泡のよう。或いは、たくさんの白い魚達が、灰色の空に放流されたかのようだった。
はらはら、ひらひら、と、舞い降りる美しい毒。
生まれて始めて見る雪だった。故郷の街では気象さえ管理されていて、雪は降る事は無かったから。大人ながら初めて見る雪に喜びを隠せない 。うっとりと瞳を細める。その瞳は海と同じ艶やかな七色をしていて綺羅綺羅と輝いていた。]
雪、ですね。
綺麗ですね……。
[フラットライン……、その名は聞いた事がある。しかし、かの有名な科学者が造った機人がどう行動した所で、現実を変えられないと冷静に思った。
先程少女に視線を向けられたが>>60その訳を分っていない。
雪だという呟きに上を仰ぐのを止めて、少女の方を見る。にこりと笑いかけた。]
[降り積もる雪は、灰のように思えて。
覆い隠される大地は、人々の心のように。
本当に言いたいことは、言えなかったのに。
なのに、この感覚は何だ。
足の軋みとも微かな苛立ちとも違う。
――ああ、自分は恐れているだけなのだ。
この日常が終わることを。
なにもなされぬまま終えることを。]
有り難う御座います。
ええ……。
フランさんは……、今お辛いですか?
[「どうか、お気をつけて」という言葉に礼を言う。
そして、最後にもうひとつ質問を投げ掛ける。長い裾に隠れた腕が本来曲がらない方向に捩じれた。**]
[個室のインターホンに指をかけた。
応答がなければ、カードキーで入ってしまおう。
毛布だけを出して、そのまま放っておこう。]
……トレイスさん。寝てますか。
[中の反応を待つ。
じわりじわりと、足元から寒気が這い上がってくる。
不安な予兆のように。*]
――診療所/個室――
寒………、
[冷気に溶けるような小さな声。
目は閉じたまま、サイドテーブルの方へ震える手を伸ばす]
雪まで降るんか………ほんまにどうなって―――。
[伸ばした手に雪の落ちる感触はない。
ただ、雪が降っているのが見えるだけで。
外からの声>>68は耳に届いていない]
…………凍死、してるんですかね。
開けますよ。
[寝ていると判断し、すぐにキーのロックを開けた。
扉が自動でスライドして中をつまびらかにする。
予想と異なり、患者は起きていた。]
……あの。毛布、出しにきました。
[気まずそうに言うと、目をそらして戸棚からそれを出した。]
[荷物が散らかっていないのを見て取った。
いくら持ってきたものが少ないとはいえ、
なにがしかの意図をくみとる。]
雪、ですけど――
貴方も、出掛けるんですか?
[診療所なら安心できるのに、
昨日の擬人も、海の少女も、この人も。
ここからいなくなってしまいそうだと思った。]
[機人からの返答に>>71改めて認識させられる。相手が人ではない事を。自分が、自分自身が最も嫌う浅ましい人間である事を。
人類を守ること。そこには、個々の感情は含まれていなかった事に気が付く。確かに汚染源の除去、直ぐにとは行かないが、人類そのものは復興するかもしれない。
けれど、傷ついた人々の心は癒える訳ではない。集積体が立ち去っても亡くしたものは帰って来ない。それ以前に抱えた気持ちも消える訳でもない。
それでは、私は救われるとは思わない。なんと身勝手な話しだと思うけれど――、それでは私は救われない。]
……ああ、貴方は機械なんですね。
人は身勝手な生き物ものですからね。
[誰かを生かそうという尊い想いではなく、浅ましく自らの生存のみを願う人間を軽蔑出来なかった。ただ相手は人でなかった事をぼやくだけ。自分自身もまたエゴにまみれた人だったから。*]
[ふいに目を開けて横たえていた身体を起こすと、
ちょうど扉を開けて入ってきた歳若い医療従事者と目が合った]
…………あ、すまん。
[彼が何の前振りもなしに扉を開けるとは思えない。
だとしたらこっちが気付かなかったわけで、
ばつの悪そうな表情で謝罪の言葉を零した]
助かるわ。ってか手間かけさせてすまんな。
去り際に毛布の場所だけでも訊いてくれば良かったわ。
ほら、………。
[他に患者が来るかも、といいかけてふっと口を噤む。
この天気の中診療所に向かう体力のある者が、
あとどのくらい残っているというのか]
身勝手なのも、人だと思いますよ。
[ 浅ましく自らの生存をのみ願う事もまた、人間らしいと。それこそが、利己的な生き方も人を人たらしめているのだと肯定的に返事をする。]
―自宅―
[以前は冬に学校に行くときに来ていた紺のコートを引っ張り出して、赤いマフラーをふわり巻き付ける。
自分に必要な分だけ毛布など物資を選り分けて、残りはあちこちに差し入れようと思う]
おばあちゃん達、体調崩してないといいけど。
建物の状況が悪いとこなんか、夜大丈夫かなぁ。
[この頃行きやすい雰囲気とはいえない、廃ビルや治安の悪い辺りを思い浮かべた]
いっそ、血の気の多い人たちだけ、盛大に風邪引いちゃえばいいんだわ。
[苦い笑みが浮かぶ。
実際そんなことになってフラットが柄の悪い患者に囲まれるのは想像したくないけれど]
ふぅ……。
あなた“も”? ………って、ああ。
[話に聞いた擬人のことか、と勝手に納得した後、頷いて]
………ちょっとした様子見っちゅー奴や。
[それだけを答える。
眠りの中で盗み見た視界の持ち主が、どうやら海辺にいるみたいだから、
風邪引かないうちにどっか屋内に連れ込むと正直には言えず]
………なんかまるで、出かけて欲しくないみたいな物言いやな。
ひとりが駄目なら一緒に行くか? その方が心強いし。
ええ、いいですよ。
[さらりと了承した。]
こんな天気では、患者もやってこないでしょうし。
なにかあれば、端末に知らせるようにしておきます。
緊急のヘルプも来ないようですしね。
[そんなに深刻な事態なのだ、とは説明しない。
目の前の人物はそれくらい分かっているだろうから。]
荷物は置いておいても構いませんから。
[言い切るなりコートを取りに立ち去ろうとする。
が、思い出して振り返った。]
……そうだ、防寒具。クローゼットに入っています。
他にあれば、言って下さいね。
外で待っています。
[すたすたと大股で歩いていった。]
[少し迷ってから、立ち上げた端末で基地にコンタクトをとった。
どれほど組織立っているのか分からないが、友達や馴染みの場所にいないなら、ごく普通の若者である兄が取りうる選択肢は限られている。
……知りたくてようやく動き出したくせに、返事がこなければいいと思う自分が可笑しくて、泣きそうになる]
すごく、遅くなっちゃったけど。
まだ間に合うなら。
手を伸ばしても、いいかなぁ…?
[いつからか、形見を分けるよいに1つ1つ物を減らすようになったことに、自分では気付いていない。独り住まう家も、何もかも、空っぽだ。
右腕は、海に惹かれるようにザワザワ騒ぐ。
感覚は日々ずれていき、まるで自分のものではないみたいだ]
いこう……。
[用意と気持ちを整えて、街へ向かう。
螺旋を描くようにループする老人たちの長話を聞けば、普段のように振る舞える気がする]
[さみしいという返事に腕はざわざわと波立つ。自分でも気が付かない内に腕は人ならざるものへと変化していたが、フランが浜辺を立ち去ると正常な腕に戻った。]
良い子ですね……。
[余り人を好ましく思ったりしない質だったが、少女についてそう感想を漏らす。少女が浜辺から離れるのを視線で追い、青い髪が風に靡くのを見つめた。]
…………端末。
あぁ、その手があったな。
[残り電力の消費を抑えるべくあまり端末に触れていない男にとっては、
端末の存在は盲点だったようだ。
急を要する患者。
いないのが一番とは一概に言えない状況だと男は分かっていた。
ただ、了承の声に穏やかに笑んで頷いた後、
相手から出される指示にもこくこくと頷きを返す]
そやな、防寒対策ちゃんとして出かけた方がええやろな。
………………海辺やし。
[ぽつりと放った言葉は、去り際の相手に聞こえていただろうか]
僕は今から発ちます。
[ 見たところ、海上の集積体へ近づく術があるようには見えない。]
貴方はどうします。
移動基地へ向かうのなら、一緒に行きますか?
[ それでも、何らかの術は持っているのだろう。]
集積体の元へ向かいたいのはやまやまですが……、生憎海は渡っていけませんからね。
[一緒に向かうかと訊かれると戸惑う。再度、海の彼方を見る。この向こうに神が居ると確信めいたものがあるのに、ひとりの力で海を渡ってゆける筈も無かった。
少しの間考え込んだ後に首を軽く振る。]
いえ……、此処で待ってます。
あ、そういえば手袋はあるか?
[今度は大声で問うた。
答えがなければ勝手にあちこち漁って探すだろう。見つからなければそれはそれで、と思いつつ]
[ややあって、個室に姿を見せた。
その手には茶色の手袋。]
僕のスペアでよければ、どうぞ。
それと、電子懐炉も。これです。
……寒がりですか。腹巻きは後ろの棚ですよ。
[なんやかやと説明しては、取り出して見せるなどした。
久し振りに「患者」が個室を使うことに、
不謹慎ながらもどこか浮き足立っていたのだ。]
いや、寒がりと違う。
手が冷えたらあかんという突っ込みが響いてなぁ………。
[無論男の脳内だけの話である。
そして腹が冷えたら駄目、という突っ込みは過去にも先にもなかったので、
そちらの要請はせず、取り出される電子カイロに感心などを向けていた]
[歳若い医療従事者が去った後、
クローゼットから黒緑色のコートを手に取りつつ、手提げ鞄の方を振り返る。
その中から、布で包まれたうえにベルトであちこちをぐるぐると巻かれている、長細い何かを取り出し、
ぱちん、と留め金のひとつを外した]
――診療所/外――
待たせたな。
そんじゃあ………行くで。
[数刻後、男は黒緑色のコートに身を包み、
手提げ鞄をしっかり片手に持って外に出た。
行き先は海辺。
七色の斑色をした海は、誰かの視界を借りても尚この世ならざる光景として映る。
そこに雪華が映えたとしても何も変わらない。
そんな思いを抱えながら]
遅かったですね。
……さては腹巻き、つけてきたんですか。
あと、肝心のマフラーです。
[と、同行者が鞄を手にしていることに気付いた。]
荷物……どうしたんですか。
―浜辺―
飛ぶ……?
[寄せては返す波の音。空を飛べれば海も渡る事も出来ただろう。しかし人である自分には到底無理な話しだった。
機人を訝し気に見つめる]
………。
[本気なのかボケなのか計りかねる表情を見せた後、首を横に振った。
無論腹巻について、である]
あぁ、これは………気にすんな。
単なる保険や。
あ、待て、
[ためらいなく海辺へ歩き出した歳若い医療従事者のあとを早足で追う。
横に並びながら周囲をぐるりと見回し、]
ええか、万が一誰か襲ってきたら、わき目もふらずに逃げた方がええ………お互い、な。
[武器は持てどぎりぎりまで抜かぬ心積もり。
海辺に向かうまで、自分からあまり話は振らずに、ただ歩く]
襲うって、なにが――あ。
[口数の少なくなった男の様子を見て、黙り込む。
確かに、こんなご時世だ。
強盗めいたものがいることも知っていた。
ただ立場上、赤い十字の腕章が守ってくれているだけで。
警戒心が足りなかったのだな、と無言になった。]
――浜辺へ――
[ほどなくして相手は、
こんな時にのこのこ外を出歩くことの危険性に気付いたようだった。
男の思考で何より優先するのは自衛。
気まぐれで困っている者に手を貸すことはあるが、
困っているように見えた者が、実は困っていなかった過去もある以上、
心許せる状況というのは少ないのだ。過去も今も。
横を歩く歳若い医療従事者のことは結構信頼しており、
危険が迫ったら損得抜きで手を貸すこともやぶさかではない、けれど]
――浜辺――
あー、あんたやったんか………無事とはな。
[神父の姿を見かけて、少しばかり驚いた表情になる。
廃ビルの無法者の存在は知っている男、
出くわさずに済んだのだろうか、と思考を展開する。
神父の向かい側に、赫い眼の擬人の姿があれば、
そちらにもゆるりと目を向けて]
…………風邪引かんうちに終いにしな。
[神父(達)から少々距離を置いて、
片手をポケットに突っ込み、煙草のケースを取り出した]
……?
ええ、そうですよ。
[今も尚、傍らにある海のように七色に輝く瞳。目の前に居る機人の瞳の表面にうっすらと映り込んでいる。けれども、気付かない。集積体の汚染を受けてからは他者とは違った視界が広がっている。とても自分の都合の良い世界が。
機人の質問の意図が分からずに更に訝しんでみせる。勿論人だと肯定する。]
………。
[ 赫眼の水平ラインの奔流は既に停まり、オレンジ色の光は明滅ではなく灯ったままで、ジムゾンを見つめている。]
まだ、そうみたいですね。
[にっこり]
[もう会わないだろうと思っていた擬人がいた。
それと、話にのみ聞いていた神父らしき人物。
二人の会話は風にさらわれ、聞こえない。
自分がひどく場違いな気がした。**]
[ちらちらと視界を掠める、空から降り続ける白い雪。舞うように空を漂い、砂浜の上に落ちて ゆく。
機人は意味深な言葉に眉を顰めた。まだ、とはどのようなつもりなのか。そう問いただそうとして、昨夜遭った男の声がして、止める。]
貴方は昨夜の……。どうして此処に?
……ええ。
[当然男が此処に来た理由を知らない。まさか浜辺で出くわすと思わず、真っ先に浜辺に来た理由を訊ねる。
無事だったのかと言う呟きに不思議に思いながらも頷く。
その後直ぐに男の側に若い青年の姿を見つけて、挨拶代わりに一礼する**]
―街の中心部―
[弱い者たちは、言葉通り身を寄せあって生きている。
枯れ木のように萎れた者も、奔流のように言葉を溢れさせる者も、同じように、緩やかな時を過す]
あっ、ほら。
我慢は禁物なんだよ。
こんなおかしなお日和なんだから……。
[背を擦り、言葉を交わし。
今までの自分は気楽すぎた、と思った。この中の幾人が、こんなふうに日々変わりゆく世界を生きていけるだろう?]
んー?
大丈夫。生まれた時からずっといるんだもの。
この辺りは、ずいぶんマシだし。
これまでだって何とかやってこれたんだから。
[あちこち行き交って、物や人とのやり取り。
時折、懐の端末に情報が転送されていないかを気にしながら、飛び回る。
白い息が、泡のように空へ消えてゆく]
……魚みたい。
[馬鹿みたいな呟きも、一緒に溶けていった**]
ターン・オーバー。
[ 形の良い唇が起動言語を囁いた。秘め事を紡ぐように、寒気という張りつめた弦を指先で撫でて震わせるように。]
[ それは変身と呼ぶに相応しい変貌。瞬きする間に、人工亜空間に貯蔵された物質が生成プログラムに添って形あるものとしてこの世界に現れた。
一瞬、それは鋼の蝶の翅めいた物を思わせた。最終的には、一対の隙間の空いた翼としてするすると伸び、辺りの空間を覆った。浜辺に舞う雪が、スラスターの上に舞い降りては、暫くしてゆるりと融ける。]
それではご機嫌よう。
[にっこり]
[ 赫眼を開き、浜辺に居る幾人かにぺこりと頭を下げ、スラスターから蒼白い粒子を零しながら、遠き海上へと飛び発った。*]
[神父が一礼したのを見て、慌てて礼を返す。
擬人は常と変わらぬ様子で佇んでいる。
傍らの男がどちらかに用事があったのか、と尋ねようとしたとき。
空間がふわりと輝いた。]
[灰色の空に、青白い光が瞬く。
目を灼くようなそれは、しかし厳しいものではない。
顔を覆いかけた腕を下ろす。
銀の翼が伸びきる。
フラットに注ぐはずの雪が、少しだけ遮られて。
微笑んだ擬人は視界から消えた。]
――浜辺――
[擬人と神父。
彼らの間でどのような会話がなされているのかさほど興味の無い男、
空から浜辺に視線を戻して、神父>>107に向かって片手を上げる]
面倒を見に来た………っつーところやな。
[風にさらわれない程度の大声をあげて、一歩進めば、
先程まで立っていた場所にうっすらと足跡が残る]
つーか、そっちの擬人とお取り込み中じゃなかったんかい。
[話は終わったのか。
まあそうだとしても、至福の喫煙時間の間に見える景色が変わるだけの話。
煙草をくわえた後、しばらくは火をつけずに周囲を傍観していた]
[先程の台詞には、「誰の」面倒を見に来たのかが足りていない。
それどころか傍らの歳若い医療従事者には、そもそも誰に用があるのかすら話していない。
しかしそれらに構うことなく男は煙草に火をつけようとして―――]
………………!?
[男の口から煙草がぽろりと落ちた。
赫い眼の擬人>>113からたちどころに銀の翼が生えた。
飾りなどではなく、どこへでも飛んでいけそうな。
開かれた擬人の眼と視線がかち合う]
お、おい、何処に行くんや………!
何で、あんな……
[ぽつりと呟いた。
旅立ちとは思えない。
本気にはしたくなかったが――恐らく、あの擬人の向かう先は。]
――何で。
何で、あんなに綺麗なんですか。
[悔しそうにも鳴きそうにも見えた表情は、
言葉にも、声にもならなかった。
たかだか組み込まれた決まりに従って、
そうやってどこまでも進んで、
七色の海を照らしていた。]
[まるで秘め事を呟く様に唇に人差し指を当てて、「空を飛べば良い」と機人は言っていた。>>92きっと機人は集積体のもとへ向かったのだろう。
男の問いに答える機人に、自分の推測が当たっていた事を知る>>121。
機人が消えていく海の彼方を見る。この向こうに神が居ると確信めいたものがあるのに。翼を持たない自分には海を渡ってゆける筈も無く――。]
はあ……。面倒を見に来たんですか?
それはどうもお疲れ様です。
……少し世間話をしただけですよ。
[機人が立ち去った後。ゆっくりと口を開いて、男からの返事に曖昧に頷いた。>>117
浜辺にはトレイスとその連れの他には自分以外の姿はなく、一体誰の面倒を見に来たのだろうと純粋に疑問に思う。何処か惚けたような溜息が口から漏れた。
擬人とお取り込み中だったのではないかと訊かれれば、世間話をしただけだと答える。世間話にしては機人と交わした会話は重々しいものだったが、男が知る由もないだろう。]
[「集積体の元へ」。
それはそう遠くない過去に聞いた言葉と全く同じだった。
反射的に赫い眼の擬人に向かって手を伸ばす。
………まだ届く。
スラスターの零す光がペンダント代わりのドッグタグに反射して周囲を仄明るく染める]
……………置いて
[だが、あの時飲み込んだ言葉を最後まで口にするより先に、
弾かれたように伸ばした手を引っ込めた]
[空を舞う雪は白い魚のよう。
七色の海で死にゆく魚のように、病み衰えてゆく地上よりも、よほど健全で生き生きしているような、そんな錯覚を覚える]
はー。
はーっ。
うーん、酸欠に、なりそう……。
[指先に遊ぶように息をはきかける]
[音を吸い込まれたように、人気のない街角は奇妙な静けさ。なんだか足音を立てるのも決まり悪くて、そっと歩く。
りりりり。
不意に鳴り出した小型端末をぱっと取り出して、ふっと息を止める。
アラーム音さえ止まってしまえば、本当に何もないみたいで]
……。
[基地から来た返信は、ひどく簡潔で。
添付された死亡証明書と、地図とを眺めながら、やっぱり手を伸ばす意味なんてなかったのだと。
しばらくして、思い出したように吐いた息がぷかりと消える。
かつての青さは一片もないのに、海の底にいるような心地がした]
[赫い眼の擬人から目を逸らしたのは、
擬人の口の動きが見えた直後だった]
なんで、………なんで言葉を掬おうとするん。
どうせこっちが何を言おうとも、行くんやろ?
だったら、
[傷付いたかのような横顔から白い息が吐き出される]
………無力な言葉なんて放っとけばええ。
―自宅―
[気がついたら、頼まれた事も放り出して、家に飛び込んでいた。
板を打ち付けた窓は、有り合わせの物でさらに塞いではいたけれど、隙間風が吹き込む。
震える手で端末を機器につないで、画面を拡大する。見慣れた筆跡のサインを確認して、印刷した地図を手に取った。
星のマーク。
兄が最後に遺した、遺書代わりの地図だけを持って、ふらふらと家を出た]
[星のマークは、元々は学校だった寂れた雰囲気の場所を指していた。
兄の名前の横に書かれた文字は、木の下。
心当たりの木に近寄り、指で土をかきむしると、爪に土が入り、冷えて痛んだ。
たいして深くない場所から出てきた箱には一枚のカード]
――。
え……?
[北に1キロ、東に3キロ]
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