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[引き寄せられたのならば意味がないナイフは
左手から滑り落ちカラカラと金属質の高音で嘆いた。
武器と別れた左手は、その嘆きに反応することなく
後頭部から暗い髪を掴み引こうとする。
吸血のため、顎をあげさせて、喉をあらわにせしめようよ。]
[牙を突き立てるのに躊躇はない。
薄皮を表皮を食い破り、真皮を抉り、肉に穿つ。
わざと傷跡を広げ残すために、牙を入れたまま首をねじった。
にちゃり、粘着質。
既につけた傷には興味がなく、新たに傷を増やす。]
[相手はすぐに警戒の体勢を呼び戻し、攻撃の手を入れてくるのだろうか。
それを邪魔するように、右手に収めたフリントロックは鳴いた。
視界に入らない、体の下から一撃。
相手の腹に当てるよう、手首の角度だけで調整した拳銃。]
[当たったのならば ――
開いた傷口にねじり込むよう熱のある銃口を押し付ける。
皮膚に触れる場合でも簡単に火傷を与えるそれを、傷口に、生肉に
充てられたというのなら彼はどのように、反応してくれるのか。
銃口より小さな弾丸が通った道を、無理に押し入るように
粘着質な音を立てて抉る。]
[けれどそれは、当たったならばのもしも。]
[吸血も、銃撃も すべてはあっという間の出来事だったのかもしれない。
翡翠を熱に歪めて男は身を離す。
要因は、あるいは理性か、あるいは反撃だったか。]
[男は身をよじり、距離を取った。
口に残る血液を、目の前で吐き出して
心底楽しそうに口端を歪める。
いまだ左目はつぶったまま、残る翡翠で睨んだ。
それは明らかに、歪に、膿んで、濁った緑。]
メイド シンデレラは、ここまで読んだ。 ( b3 )
アシュレイは、ここまで読んだ。 ( b4 )
[別の斑な気配に気を向けた始祖は消え。
残ったのは、倒れた男と、自分。
突然の静寂に不意を突かれ、思考が戻ってくる。
黙って、倒れた男の背を軽く踏む]
無聊……很無聊。
[ぽつりと零し、倒れた男を足で仰向けになるように転がした]
[一度吸血鬼から人の身に戻った男の血を吸う。
つまり、男を再び吸血鬼へと変容させる、ということ。
自分だったなら。
屈辱で死にたくなるだろう。
自分の存在そのものが生き恥と思うだろう。
わかっている。
わかっている。
― でも ]
是我分清界限。
我不返回…我不能回去、我不能返回。
[想うものは、それ以上口では言い表せない。
封印という術があるのを知って、それを求めようとは思わなかった。
この方が、きっと妹を早く探し出せる。
そんなのは、只の、言い訳。
つまりは]
我屈服于欲望……。
[倒れた男の横へ屈む。
起きても、動けぬように片手で腕を固め。
残る手で上体を起こすようにして、その首元へ顔を寄せる]
……。
[男がここに来なければ。
一瞬そう思って男を恨んだ。
けれど。
きっと。
別の人間を見れば同じ事だっただろう]
ン……。
[首筋に、噛み付いた。
プツン、と皮膚を裂く感覚。
そして、初めて口にした、糧たるものの味に目を開く。
その甘美さは、今までの記憶にはないもの。
ごくごくと喉を鳴らし、しがみつくようにして顔を押し付ける]
── B2 クロスボウの転がる廊下 ──
[ シェリーの亡骸を抱いたフルムセートの唇が零した言葉に、その胸に刻まれた感情を思う。
自分は、この絶対美の権化がもっていた何かを壊して、「人間」にしてしまったのかもしれない。
そんな気さえする。]
好喝……あ、は……好聞……
[身体が悦びに、力に満ちていく。
表情は恍惚に染まり、血色は潤んだように瑞々しく輝く]
喫飽了。(ごちそうさま)
[口を離し、牙で穿った傷をひと舐めしてから身体をも離す。
男は、すでに気がついていたか*否か*]
[ 呼び込んだ闇の力を眠らせると、杖を頼りにゆっくりと歩みよった。
途中、ランタンを拾い上げる。
小さな炎は指先にまだぬくもりと感じられず。
それをフルムセートに差し出した。
人となった身は暗闇を見通すことができないから、きっと必要になるだろうと。]
大扉の先の部屋に水場があって、そこに動物たちがいます。
そこでなら、彼女を休ませられると…思います。
[ 共に始祖と戦ってほしいなどと言えるはずもない。
ただ、地上に近い場所で、城から出られるようになるまで待っていてほしいという意思を伝えた。]
[ 忠興の足の傷を手当てをし、自分の腕も再び包帯を巻いて止血しておく。]
戻っている時間が惜しい。
我々は このまま進みましょう。
もし、その…少しの間、背中をお貸りできれば
[ 足を怪我している忠興には負担となってしまうだろうが、服を脱いで肌を合わせているよりは安全と*考えた*。]
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