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[髪を撫でられながら、レイスの肩に頬を寄せ、静かに目を閉じる。
その温もりも、匂いも、鼓動も。
記憶には無いはずなのに、その全てが懐かしく思える。
ぎゅっと彼の衣服を掴んだまま、子供のように、その胸で甘えていた。
もし誰かが入ってきたならば、慌てて飛び跳ねる事になるだろう。**]
[思い返すのは守られなかった約束、死に急いだ男の姿。
思い至らないらしき男の様子に記憶の欠落を感じたけれど、己の記憶にも確たる自信はなく――]
うん、そうね。
[大切なのはここにいてくれうというそれだけだったから、柔らかな笑みを浮かべてて視線をあわせた]
あまいもの、たべにいかない?
[もう一度ぎゅっとだきつくと、切り替えるようにすいと立ち上がる。
きっとこれには関心を示すだろうと半ば確信しつつ問いかけた]
[同じ味のプリャニキをてのひらに乗せて
黒狼の傍まで歩いてしゃがみ]
……あなたにそっくりな黒いわんちゃん、
わたし、どこかで見た気がするんだけどなぁ
なんて、わんちゃんが知ってるはず、ないか……
[首をこてっと傾いで、黒狼の頭を撫でた]
[>>316やくそくした。
覚えている、けれど約束の記憶はないという矛盾。
すべてを飲み込む、奇跡という靄。]
……。
[それでも、細かいことはどうでもよかった。
目の前に居る女が、笑顔なのだから。
抱きつく女へ腕を回すでもなく、ぽんぽんと硬い動きで頭を叩く。
放置でいた頃と比べれば格段の進歩なのだが、二人が生きて恋人となった世界を知らないのであれば、女にとっては異常事態かもしれない。
けれど、動揺してもなぜかはわからない。]
…ああ。
[誘いに、沈黙は他の問いよりはずっと短い。
立ち上がれば尻を払う。
座り込んでおいてなんだが、やっぱり冷たかった。]
えーと…ちょっと俺、教会の中歩いて来るわ。
なんか色々忘れもんしちまってるみたいでなあ。
千枚通しもねーし、新作もねーし……。
ついでだし色々、辿って来る。
[メーフィエが去った後、キーラに声を掛ける。
彼女はどうするのかは聞かなかったので、もしも
付いて来ようとするなら止めはしない。]
[ふたつめを差し出されたなら、
また同じ動作でもぎゅもぎゅといただき、]
?
[とばかりに、少女を見上げて同じ方向に首傾いだ。
まだ口をもぐもぐさせながら、
狼は目を細めておとなしく撫でられている。]
メーフィエさんと、ヴァレリーさんと。 キーラさん、ね。
よろしくね。
[さいごのひとりの名前は、本人の口から聞けたかしら?
そうでなくても、彼女の顔を見ればきっとわかることでしょう。]
わたしたちも、行こっか?
[立ち去る人たちを見送って、ビーニャの瞳を見つめ微笑んだ。]
……。
[ん、と腕を差し出す。
微かにかすかに、記憶にない思い出。
腕をくむか、と。
とられてもとられなくても、フィグネリアにあわせた足取りで水車小屋を出た。
教会へ足を向けるだろう。]
[男の仕草にはなんだか慣れずにくすぐったくってくすくすと笑みがこぼれる]
あのね、プリャニキ。
作ってくれるんですって。
[転がっているマグカップ拾って、男の手をひいて甘い香りのもとへと急ぐ。
――早足なのはいささか照れ隠しがはいってくぃるのだけれど、男が気がついたかどうか**]
[とりあえずホールの食器を片付けないといけないとホールに寄り、置いてある皿などを持ってキッチンへ。
入り口にいる黒狼と少女を見つけ>>317]
あら、良い匂いね、あなたが作ったの?
[ブリャニキを持つ少女に話しかけつつ中に入る]
……。 …… 誰が。
[>>323微笑む顔を見下ろし、プリャニキの作者を短く問いながら歩く。
早足な気がするのは、歩調を合わせることにようやくなれていた、きがするから。
大して気にすることもなかったが。
さくりと雪を踏みしめれば、いつでも新雪のような柔らかさ。
不思議な空間を不思議に思わないこともまた、奇跡。]
[二人で揃って、女の案内に従って教会へ入った。
キッチンを目指そうとして、二人の見慣れぬ人影を見た。]
……… ……。
[なんだあいつら、という視線を少しだけ。
プリャニキとは関わらなさそうだと判断すると、そのままキッチンへ移動してしまうのだが。]
…あなた、寒そうね。
[ブリャニキを食べる少年にも声をかける。食器を流しに置くと>>308]
あなたの体に合うサイズのセーターでもあるといいのだけれど…
[と言うと女の手にちょうど少年に合うであろうサイズのセーターが]
そうそう、これ…って
[思わず絶句する。不思議な事が起こるもので、
ともかく少年にセーターを差し出し]
良かったら…着る?
[受け取ればそのまま渡し、受け取らなければとりあえず、と近くの椅子に置いておくだろう]
― 一階廊下 ―
[思い出していたのは、幼馴染たちと駆け回っていた日々。
その中には、村外れの廃教会で肝試しだなんて
スリリングな冒険も含まれていた]
……。
[扉を開け、教会の中へ。
真新しい内部は、朽ち果てていたあの建物とは違って
埃臭い澱んだ空気もなければ不気味さもない]
ちょうど、廊下の幅もこのぐらいで…。
あそこに曲がり角があって。
…………同じなのは、偶然かな。
[当時は何が起こるかわからない怖さで
周りを見る余裕なんかなかったはずなのに。
意外と覚えているものだった。
そしてその間取りは、今のところ
記憶の中の廃教会とほぼ一致している]
奇跡の力で、一番輝いていた頃の姿を取り戻した、とか…?
[口に出すと、なんとも荒唐無稽な話。
もっとも、不思議な出来事は他にも目撃しているのだが。
嘗ての肝試しの経路を辿るように、歩みは更に内部へと進む**]
―聖堂―
[男は今、信じられないというような表情で立っていた。]
――――――――…奇跡だ
[遥かな過去、此処と同じような場所で永い眠りに就いた。
あの時は色がくすみ、歪み、所々が傷んだ姿で原型すら
留めて居なかったステンドグラス]
ああ……これって、こういう絵だったのか……。
[今は夜のはずなのに、ステンドグラスは
温かな光を湛えて聖堂内を明るく照らしている。]
俺が寝てたのは、何処だったかな。
確か、この辺……
[己の亡骸が横たわっていた辺りへと歩み寄り、
椅子の上にごろりと寝転がる。
丁度そこからだとステンドグラスの光が全身に差し込み
男は静かに目を閉じた。]
あーーーーーーーーー………
幸せ。
[少しくらいはモザイク画も見た方が良いとは思うが
今は、この光の芸術品を全身で感じて居たいと願う。**]
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