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…………。
[どれだけ悪戯されて泣かされても、
絶交を一度も口にしなかったのは。
きっと、彼女の芯は優しくて仲間想いであることを知っているから]
じゃあ、もうお互い引きずるのは無しってことで。
[狼狽えるキーラを安心させようと、微笑を浮かべた。>>157
この言葉を自分から言えるようになったのは、
子供の頃よりは成長していると思ってもいいのだろうか]
ところで、ヴァレリーさんを知らないかい?
頼まれていた銀細工が完成したから、
見せに行こうと思ってるんだ。
[ヴァレリーの居場所を教えてもらえれば、
礼を言ってまっすぐ聖堂へと向かった]
まほう …………?
私は……どうなんだろう
私の作ったお菓子とか食べて……
誰かが笑ってくれると
ちょっとだけ、 あ 魔法使えた って、思うかな?
どうやったら使えるかは……
たぶん つかう人次第だけど
私の使い方は……多分そんなかんじ
うまくいえないけど……
……偉大な事を成した人に?
なんだかすごい紅茶なんだね
[ほわ、と銀の粉が舞う紅茶缶を
ぱちくり、目を丸くしながら見つめる]
すごく美味しいんだろうなあ……
でも私は
おねえちゃんと一緒に飲める紅茶なら……
きっとなんでもおいしいや
― キッチン前 ―
……あ、メーフィエさん……
ううん、だいじょうぶ
[中から出てきたのはメーフィエで
表情をほころばせる]
これから、スコーン作るんです
美味しく出来たら、メーフィエさんにも
たべて、ほしいな
[照れたように笑いかけて
キーラへ詫びる姿は不思議そうに見つめた
何か、あったのだろうかと]
…まーたオルガンかよ。
今度は何を弾いてくれるんだ?
[傍の椅子に腰掛けて、チラとオルガンの鍵盤へ視線を投げた。
なんとなく、なんとなくだが。
何かが其処に居るような、そんな気配だけは感じられる。]
…なんか居るのか、そこ。
[引きずるのは、無し
そう言われて、少し安心する
問題はメーフィエよりもむしろあの少年だが
会えたとしても、きっと猛烈に気まずい]
[ヴァレリーは聖堂で作業中、と伝えた]
ここがあんたの夢なら
あの子に会わせてくれて、有難う。
[ずっとずっと、とても長い間。
彼女にあの薔薇を渡したかったと思っていた気がする]
一人ぼっちの子供と、食事をしてくれてありがとう。
[記憶に残らないかもしれない。
でも、それだけで幼い頃の自分が、夢を見られた気がして]
[席についているのは、“おとな”の姿だった。]
[リディヤの言った、お菓子の魔法
いつかアリョールに聞いた、笑顔を願う魔法
創作する人々が編み出す、『楽園』の魔法]
私の魔法は――……
[強いと信じる、弱いなんて考えるな
使えると信じる、使えないなんて考えるな]
リーリャ。
スコーン、焼きあがったらまた食べに来るよ。
楽しみにしてる。
[去り際、再びお菓子作りにとりかかるらしい少女に
にっこりと笑いかけて手を振った]
が がんばり ます
[にっこり笑うメーフィエに、若干顔を俯けて
小さく手を振り返す]
[そうして、ようやく調理場の戸を小さく叩いて
中へと――――]
失礼します……
[メーフィエが誰かと話をしていたのなら
まだ中には誰かがいる
控え目に戸を開いて、室内を覗いた]
― キッチン ―
あ、さっきの……
[キーラと話していた黒服の男性
辺りへ漂う香りから、きっとその手にあるのは
果実酒の瓶なのだろう]
……………………おねえちゃんの彼氏さん……?
[小さな呟き]
[キーラがこのひとに向けていたまなざしは
他の男性へ向けるそれと明らかに異なるもので]
[そんなふうに、認識していたのだった]
― 聖堂 ―
[足取りは自然と早足になっていて。
最後はほとんど駆け込むようにして、聖堂の中へ。
入って真っ先に目を奪われたのは、
光り輝くステンドグラス。
思わず足を止め、暫くじっと見上げていた]
ヴァレリーさん!
お待たせしていたら申し訳ありませんでした。
……銀細工、仕上げてきましたよ。
[本来の目的を忘れてはいけないと首を振り、
オルガンの傍らにある椅子に腰掛けた男へ呼びかける。
彼の近くにはアリョールと、初めて見る黒髪の青年の姿。
二人にも軽くお辞儀した]
[ 去った男(結局名前も知らない)の陰から少女がおずおずと顔を出す。]
彼氏?そう見えるのか?
[ 意外な言葉に眉を上げる。そんな甘い会話を交わしていた心算はない。]
[キッチンの中には、ダニール
アルコールの匂い]
彼氏?
[突飛な言葉に、驚きの目を向けた
ずいぶんませたものである
色恋沙汰を好む、という意味では普通の女の子らしい
自分のように育たなくて良かった、とある意味安心した]
先生は立派な嫁持ちなんだよね
残念、かっこいいのに
[あっけらかんと笑って見せる]
よ、メーフィエ……の親玉。丁度良かった。
これからお前を捜しに行かなきゃなーって思ってた所。
[椅子に凭れて、手を挙げて
細工師の先輩として見上げるメーフィエを迎える。]
……こっちの準備も整ってるぞ。
悪ぃな、なんかタダ働きさせちまってよ。
また良い仕事が入ったらそっちに回すなりなんなり
すっからな。
[気休めにしかならない約束。
でも、これ以外にらしい事が浮かばなかった。]
[ふ、と、思わず噴出した。]
おれ、あんたのそういうとこ、すごくすきだ。
[くすくす笑いながら、紅茶を飲んで。
からん、と音をたてて転がる、鈴。]
あ。
………わすれてた。
[狼になった事にはしゃぎまわって、慰み程度に飾ろうとしたそれを、未だ手に持ったままだった。]
あ あれ
違いまし、たか
……ご、ごめんなさ い
[黒服と姉、両方に問われ
気まずそうに口を抑える]
[しかも黒服の方には嫁が居るらしく
ますます気まずかった]
[赤くなった顔を隠すように
キーラの後ろへと隠れる]
[ 少女の横から更に人。]
キーラ。
早かったな。もう「喰えない縄」とやらは出来たのか?
[ 少女に向かっては]
今から予約札貼ろうかって思ってたトコだ。
何処齧ろうかな……っと。
[ 視線が品定めをするように移動した。]**
えー?
[片方だけの目を見開いて。
ただでさえ、さほど大きくない灰青が、
よけいに小さく見えるのは昔から。]
はは。 ありがとうございます?
[よくわからないが、悪い気はしなかった。]
……ん。
なにか忘れ物でも?
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