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[男がそう考えた通りに、やがて医院に戻ってきた戸田は、未だに一見してわかる程に顔色が悪かった。例の患者達と被って見える程だった。実際に己で無残な死体を見てもいるのだから、当然だろうと思えた。医療施設で働いているとはいえ、事務の身では、そういった耐性はほとんどないと言ってもいい。
戸田には少し休ませてから、今日のところはすぐにでも帰宅する事を勧めた。それにはやはり戻った高瀬も同意してくれただろう。
男はあれこれと尽きぬ思考を巡らせながらも、受付にて予約患者への応対や、電話の応対や書類の処理にと動き続けた。
空は刻々と暗さを増していって]
[緊張した面持ちで席に付き、食前の挨拶をする彼女に]
どうぞ、遠慮なく食べて頂戴。
須藤の腕は私が保証するわよ。
[にっこりと笑みを浮かべ、自分も前菜に手をつける。
村の様子を尋ねられ、軽く小首を傾げるような仕草をしながら]
今日はね、クレオールという喫茶店に行ってきたのよ私。あそこはとても素敵なお店ね、私気に入っちゃった。
瞳さんはクレオールには行った事が有るのかしら?
[この二人の会話だと、自然、伽耶が話題を振り、彼が饒舌にしゃべるという展開になる。
…彼も、伽耶が「兼正の者」である事を察していたが、客の事情に立ち入らないのが、接客業として、そして同じよそ者としての彼のマナーだった。そして、伽耶の振りに対しても―――]
ハイ、ソウネー、病院は忙しそうネー。ワァタシィ、お客サンからカゼが流行ってる、聞きマシター。昨晩、ワァタシィ、若先生のところに出前行ったネー。タイヘンそうダッタヨー。
…デモ、妙デスネー。昨日、夜に若先生が輸血の指示をしてたネー。ウン、銀子サンの治療だったと思うヨー。カゼって輸血で治るデスカー。ワァタシィ、医療はシロートなので分からないデスヨー。
[自分の懸念を、特に気兼ねなく打ち明けた]
[入院している二人、"言い聞かせ"が効いている間に対処する必要があった。
両方一息に片づける、それだけの人数は用意している。
大田の方だけを警戒してもし、銀子の方を軽視しているようなら、その隙をつけるだろう]
[その後は、概ね彼自身の身の回りの話や、自分が好きな村の場所などを気楽に語り…]
オー、お帰りデスカー。
また来てクダサイネー。ご家族や、お知り合いの方もご一緒にドウゾー。
[いつも通りの陽気な挨拶で、伽耶を送り出した**]
[様々な事態に対処するために駆けずり回るうちに、
山入で悲惨な遺体に遭遇した戸田へのねぎらいも忘れていた。
神威が戸田に帰るように言うのを聞いて初めてそのことに思い至った]
あぁ、今日は帰るといい。大変だったな。
俺でも滅多に見ない状態だ。戸田さんには辛かっただろう。
[そして、その時初めて桜子も一緒だった事実を知る]
桜子ちゃんも見たのか、あの状態を
[男は絶句した。戸田ですらこの状態だ、桜子がどれだけショックを受けたか計り知れない。
しかし、桜子を気遣うだけの余裕はなかった]
― 夜・控え室 ―
[昨夜の夜中からの騒動で食事を摂るのもままならないほどだった。
ようやく一息ついたところで、強烈な睡魔に襲われ、
寝入ってしまった]
― 仕事後 ―
とても嫌な感じですね。
風邪と言い警察?といい、何かこう、見えないところで何かが動いているような感じは…。
[普段と違い内勤だったためか外の事件には疎く。ただ、帰宅の徒についた頃に、事務所の近所の方、一人は山迫さんだったか―から警察と思しき連中が慌しく動いていたようだという言葉は聞いた。]
病院はどんな感じ、なるほど、そう、ですか。
なら社長も無事に治療できたら良いのですけど。
[社長は明日も来ないかも、と頭に過ぎった。]
― 帰路の徒 ―
病院の様子にちょっと興味があるけど、今俺が病院行っても邪魔なだけだしな。
クレオール開いてるかな―。
[昨日の様子を聞きにクレオールへと足を向けた。
開いているなら、まずは軽い食事を注文するだろう。]
―回想・昼間・クレオール―
[>>97店の中にマスタート数名の客が居る事を確認し、店のドアを開けた。ひんやりとクーラーの効いた室内に、ふんわりとコーヒーの香りが漂う。
冷たい麦茶とくず餅は如何?と尋ねられ]
風流で良いわね、頂きますわ。
[たおやかに頷きながら、それらを頼む。
喫茶店の店長なら、色々と知ってるだろうと、自分も貧血気味で病院のお世話になるだろうと、マスターに病院の話を振った。
自分が越して来たばかりのよそ者……という感じではなく、普通に1客として喋っている様で、1聞けば5は返って来るような感じだった]
>>103それって、風邪じゃなく貧血かもしれないわね。酷いときは輸血もする事が有るって聞いたことが有るの。私はまだ未経験だけれども……。
[マスターと自分の輸血話を聞いて、後ろの見知らぬ客二人が、午前中に大田さんが病院に運ばれた…とか、また誰かが死んだとかという話を小声で話してるのが耳に入った]
[声にふらりふらりと引き寄せられるように、老婆は彷徨い歩き――
その時、一階の電気が消えた。
扉を開き、老婆がまろび出てくる。嬉しそうな笑顔で]
『ああ……待たせて、悪かったねぇ』
[老婆を呼び続けていた僕は、それを喜びと申し訳なさの入り混じった表情で、抱きとめて]
『ありがとう……ごめんね』
[その首筋に牙を立てた。
それを尻目に冷ややかな声が響く]
よし。――やれ。
―クレオール―
>>110 オー、アキオサーン、イラッシャーイ!
昨日はお申しわけないデシター。昨日、病院がひどく慌しかったヨー。
小腹すいてマスカー。ソウメン、アリマース。錦糸卵に、千切りキュウリに、味付けシイタケ、それにネギつけマスヨー。特製麺つゆデスヨー。イカガデスカー。
[後から二人ほど、老婆に群がり、その腕を取った。
ぷつり。ぷつり、と牙を立てられて、急速に血の気を失っていく。
青白く、そして土気色へと――
三人が満腹になる頃にはもうその命はないだろう]
済んだら、元の場所に戻しておけよ。
[ちらりと一瞥し、それきりもう興味をなくしたように扉に向かう]
お前はまずブレーカーだ。明かりがなければ人間にはどうにもできん。
闇は、我々の味方、だ。
[指示を出しつつ悠々と病院に入っていく]
どうも――お招きにあずかりまして。
[誰にともなく呟いた]
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