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[魂の震えに呼応するよう、ラミアの胸部──真紅だけが闇の中で輝きを増す。
ラミアから放たれる弾幕は尽きる事が無い。
双肩、両手、その五指、あるいは全身を包む 巨大な円環が。
だが、ヴォルバドスは近付いて 来る。
爆炎に包まれて見えない、おそらくコンゴウからの斬撃波が的確にラミアのボディを撃つ。]
──フィル。
こわいの。
一緒に居る事の幸福を感じるほどに、
別れがこわいの。
[コックピットが激しく揺れた。
インターフェイスが感知し得る機体の損傷度から、全身がバラバラになるような痛みが襲い来るはず。だが、すでにそれをあまり感じない。]
承知しました。行きすぎて外さないでくださいね。
[鉱血融合炉の出力を翼へ送る。そして怒号反応炉から「大砲」への安全弁を解除]
僕だって怖い。
失うのも怖いし、君を残していくのも怖い。
[身を乗り出し、リルのすぐ隣へと身を移して肩を抱く]
でも、この一瞬一瞬が、永遠に感じる。
リルを失って生きる時間よりも、リルに出会うまでの時間よりも。
今この時が、たまらなく愛しい。
[肩を抱く手に力が篭る]
・・・・・・これから先も、ずっと二人でいたい。
[コンゴウの斬撃波に何処かが吹き飛ばされた。
ギルゲインがテラフォーミングが終えるまで、戦わなくてはならない。
敵を一体でも多く倒さなくてはならない。
ラミアの機体は動く。
間合いを詰める、ヴォルバドスと腕と腕を組んでのつかみ合いになる。
イステとヴォルバドスの接続がどうなっているか(接続が深い程インターフェイスが損傷を受ける事は共通項としても)、考える事無く。
手首を握りつぶし、
腕ごともぎ取ろうとする、
獣のように。
無──永遠の別れ 死に近付きつつあるラミアの咆哮は、リルの悲鳴のような声に似る。]
すまねぇが―――、
是以上攻撃喰らってやるわけにはいかねぇんだよ……ッ。
[襲い繰る多重の弾幕。
だがそれを最小限の被弾で抑えながら前へと出る。
もはや距離は詰めた。
組み合う腕の一本を振り払えば、上半身を捻り振りかぶる]
喰らい……やがれぇぇぇぇぇ!!!!!
.
[コードを再生していく。
邪魔な抗体は「ラミア」と戦っている。
心が乱れる。
ああ。
いらない。
いらない。
いらない、いらないいらないいらない]
[ヴォルバドスの片腕を強く握りしめたまま、ラミアは──吹き飛ぶ。
焔に灼かれ──損傷した機体から破片が、真紅の体液に似た液体が飛び散る。ラミアの背が不自然な方向に捩じれて、波打つように、しなる。
空中からの急激な落下。
今、何者かがラミアを狙い撃つならば──格好の標的。]
[妨げる空気の壁。突き破る重装歩兵。愚直なまでに直線を進んだ先に、落下する黒の機神。そして砲身が伸ばされ、掌の砲口がラミアを捉える。
《超最強吸収破壊砲/ドメイン》は、放たれた]
[視界が、世界と接続した無数のエネルギーコードに溶け出すように、滲んでかすむ。涙に濡れて揺れる真紅の双眸は、すぐ隣にいるフィリップの姿を捉えようと、睨んだように歪む。
フィリップが、触れている。
フィリップに、肩を抱かれている。
──その感覚が薄れて行く事に、いい知れぬ恐怖を覚えながら。
両腕をのばして、フィリップにしがみつく。]
……ずっと 二人で、
[息を零して頷くと。
ラミアがこの【青い】【星】の世界と繋いでいたコードが、自然に解除されていくのが分かった。]
[とうに、ヴォルバドスとは離れている。
ラミアの腕は何も掴んでは居ない。
コンゴウから放たれた破壊砲の閃光が──ラミアの無の闇色を塗りつぶすように覆う。]
[唇をそっと離し、リルの耳元で囁く]
僕の記憶も、そして人生も。
全てが幻だったみたいだ。
でも、僕は不幸じゃない。
だって、
君と最後の瞬間を、こうやって一緒にいられるのだから。
何も知らず、何も気づかないでいれば苦しい思いをせずに済んだのかもしれない。そう何度も思った。
でも、やっぱり知ってよかった。
君と僕は、出会う運命だったんじゃない。
出会ったんだ。
お互いに望んで出会ったんだ。
順序なんて関係ない。
僕は、僕の居場所をやっと手に入れた。君の腕の中という、居場所を。
こんなに幸せなことは無い。
[ラミア……、
貌を無くした機神が炎と衝撃の渦へと消える。
それを見届ければ意を決したように、
厳しい顔をして後ろへと振り返った。
そこには、同期の影響により傷付いた姿のイステが居ただろうか。
仕方が無かったとはいえ、敵の攻撃の中に身を投じる事になってしまった。
その代償は、やはり大きい。]
―――……一度、戻るぞ。
[その言葉に対して、イステは何か言っただろうか。
例え反対したとしても押し切る結果となっただろう。
どちらにせよ、この様な状態では終焉と闘えない。
ヴォルバドスも、イステも……自分自身も。]
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