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嫌ぁああああああああああああ!!
[響くのは悲鳴]
[裁定は下される。
『他のインターフェイスに悪影響が出る前に』
『少しなりとも使える余地があるなら』
『記憶を───消せ』
視界には何もない。
ただ、声が続いていた]
[敵機の映像。状況に舌打ちし、とにかく回避行動を取ろうと操作する。
が、動きが鈍い。バランスが崩れる。ポップアップする警告。オキセンシェルナの異常]
……しっかり、つかまっておれよ。
[戦斧を、刃を横にし前に構える。防御の構え。
あの攻撃は、避けられまい]
「次に、未知のHMの方ですが」
未知のHMは、以後社内では「インフルエンザ」と呼称する。
ややこしいが、隠語だと思え。
「は、当社ではインフルエンザの研究もされておりますが」
インフルエンザとだけ呼ぶことはほとんどあるまい。
「了解しました。今回確認されたインフルエンザの映像を出します。現在インフルエンザ同士で交戦中のはずなのですが、こちらは干渉が強くなかなかまともに映像が入ってきません」
そうか。仕方ない。可能な限りデータは取れよ。
「もちろんです」
[相変わらず、なんという力。]
…急がなくてはな。
[呟き、自室へ足を向ける。
途中、「リル」のための施設が目に入る。
く、と胸が痛む。
二人は、無事だろうか…]
[黒の上に描かれていた金の光が弱まる。
インターフェイスの弱体化を示すかのごとく。
それでもパイロットとの接続はどうにか保たれているのだろう。
水平に構えた戦斧、けれどこの状態で
あの狂攻を受け止め切れるかは定かではない]
…… ァ
[襲う熱の波に、何処か恍惚とした炎がリルの双眸に宿る。
形相の変わったフィリップを見詰める。
ポールアクスを避けろと言う命令に頷いたのか、どうか。]
[真紅の球体軍は、淡い金色の光に包まれた半獣の機体を容赦なく破壊する。戦斧に弾かれても爆球は連続して続き、真紅の闇の向こうに、漆黒のその機体を覗かせない程。
ロッドがフィリップの突き刺すような命を受けて、紅い流線型を描く鋭利で巨大な長槍に変化した。
──ラミアは巨大な槍を掲げる。
赤黒く禍々しい気が流出する。
その槍は、憎しみの記憶を突き立てるごとく、爆心地に立つリュースを貫く。]
[装甲の外で弾ける複数の球体。
その振動は内部へも伝わる。
腕に繋がったままのケーブルが、数本切れた。
だらりと、腕に刺さったままのプラグからしな垂れ落ちる]
…じーさん、
[離脱させたい、と思う。
自分の勝手で巻き込んでしまった老兵。
見つけさえしなければ、もっと気楽な余生をおくれていたはずで]
[装甲は悲鳴を上げている、といってよかった。
接続は既に危うい。
戦斧を水平に構えていられる
その両腕が在ることすら既に奇跡といって良い。
迫る赤黒の槍、それは過去の憾みを果たすかのように
的確に黒金を貫いた]
[視界が赤く染まっている。額から流れ出る血。
警告音が沸き立つコックピットでオキセンシェルナに声を掛けられ、ポルッカは声を返す]
おう、征くぞ。
[手はしっかりと操縦桿を掴み、目は前を。絶体絶命の時にあっても、戦意は未だ失われず。
コンソールを操作する。
赤黒の槍が自機に命中する寸前、敵機に向かって、リュースに戦斧を投げさせた]
───……、…
[震える。
けれどそれは、恐怖からではなく]
ああ
[短い声。
そこにある感情は、感謝とそれから]
征こう
[微かに滲む金色]
[呼吸が荒れる。両腕を激痛が支配する。
否、もしかしたらこの激痛がフィリップを支配しているのかもしれない。
古代の【フィリップ】という存在の記憶と憎悪。ラミアから伝わってくるその濁流が体を駆け巡る。
目、口、鼻、耳、その全てから暴風が駆け抜けていく、そんな感覚に陥っている。
そして、フィリップ・ミラーはその濁流に身を任せている]
リル、とどめだ。
[途切れ途切れの呼吸で、リルの名を呼ぶ]
──…ッ
[フィルと名前を呼びかけて、眉を寄せて頷く。
激痛に耐えている彼の腕に両の手を重ねながら、リルは、リュースを貫く槍を持つラミアとの接続を深くした。]
[槍はリュースの機体にズブズブと埋まりながら、破壊部を広げるように波打つその形状を変化させる。狂気に似た憎しみの槍先は幾つにも分かたれ、半獣の四肢を内部から引裂いた。
淡い金色を放つ漆黒の優美な機体を、黒紅は蹂躙し尽くす。]
[──最後に。
ポルッカが放ったポールアクスだけが、鋭い軌跡を描いてラミアの胸に飛び込んで来た。
黒蒼の機体と対峙した時も現出したリフレクトシールドが、僅かに遅れたのは何故だろうか。重い斬撃は、薄紅色のシールドによって幾分緩和されては居たが。
ラミアの胸に黄金纏う刃が、突き刺さる。
その衝撃はフィリップではなく、接続を更に緊密にしていたインターフェイスであるリルへと。]
[狂槍を受け止めるべきであった戦斧は
繰り手の選択によって閃く。
金色の願い──一発殴る、それを叶えようとしたようにも
どこか見えた。
その瞬間、確かに黒には再び金が奔る。
金色は、狂槍の貫きによって
半人半馬が破壊され、ただの骸となる
その瞬間まで確かに黒の上で輝き続けていた───**]
ふはははははh!!宿敵リュース、これが貴様の最後だ!!
[憎悪が体を駆け巡る。
望みは叶った。
だが、その後ろ・・・・・・リルに異変が起きる]
・・・・・・
[体の中のエーテルの流れが変化する。
”自分とは何だ?”
【フィリップ】なのか?
それとも、”フィリップ・ミラー”なのか?
魂は、どちらだ?]
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