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[ 最初のダミーメッセージを聞いていれば、ゼロフォードという男は無実な囚人を解放する為に「Dione」を使わなかったという推測をする事も可能だっただろうか。]
Dione、Dione、アイラ。
[ 歌うように。くるりと、杖を回し――]
イグニッションをコール?
遅いわ。
[ 背中の赤い小さな羽のお陰か、それともseraphに元々備わっていたのか。トン、と杖を軽く叩くと、軽やかな動きで宇宙に舞う。]
――――アハッ
[ それは紛う事なく、死を願う笑み。
熾天使の赤い羽が宇宙に赤い尾を引く。そして、杖の先には熾える刃。それはまるで、死神の鎌のように。]
[ 唇が囁く。]
熾天使は、神の敵に容赦しないみたい。
[ AIの神は人間。
「ソレ」の体は背面宙返りをし、杖に体を添わせるようにしながら、一体の少女の頭を後頭部から「熾」える刃で突き刺し破壊する。続いて、態勢低く構えると、直ぐ傍らの別の少女をseraphの膂力を持って潰すように薙ぎ払った。]
宇宙を模すのなら、
ニュートリノをお願いしたいわ。
バリオンでも良いわよ?
[ 赤いゴーグルが4体の少女と、Ira=Ant-lionを映す。]
ねえ、アイラ。
[ くすりと*微笑んだ。*]
―― 2F(>>15と同じ頃) ――
[私は明滅とともに襲いかかった強い揺れ(>>13)に耐え切れず床に尻餅をつく格好になっていた。
その状態で、シャーロットの声を聞いた]
分かるのか……今生きているうちの誰かが、敵なのか否か。
本当にそういうプログラムを持っている者がいたってことか……。
[ゲームじみた状況を用意した者は非常に抜かりなかったようだ]
『ってことは、Legionsの正体は統制機構側の者で、敵を倒すと手に入るお宝の正体は鍵のカケラで、Lost One.は仲間で、この先にLegionsがいる? だったらアタシは力を貸すよ』
[私からの異論はなかったが、訊きたいことは山ほどあった]
それで、シャーロット、
[まず何から訊こうか迷っているうちに、彼女は書庫のある方へと駆けていった]
― oolt cloud ―
[目の前で始まった戦闘から完全に意識を外し、ソレは天…瞬く星々を振り仰いでゆるゆると息を吐いた]
…宇宙……?
[avaritiaが幻影に混乱を伝えて来る。
位置情報の混乱。Babylon内部の座標を失い、球体はくるり、回転した。防御の意志を持って浮いていたレーザーアイが微かなノイズと共にデリートされる]
―――
[笑みを表出する。LostOneが2体のAIを破壊する音を、聞き流した]
きれい。 ……これは好き
懐かしい――感じ
ぼくの宇宙? ぼくの なか
[「場」に設定された情報を書き換えてBabylonの統制システムを切り離す幻影の世界は、ソレにとって――母の揺籠にも似た暖かい世界だった。
混乱するSub Programを停止する。収集と解析を行うavaritiaを停め、模倣と表出を行うinvidiaを停め―― Corneliusのアバターは解体され始める]
Vincent たたかわないの?
iraと…Charlotteと?
[物理的属性を虚数に還元しながら、音声を発生させる。
質問のカタチを為してはいても、疑問ではなく、誘いでもなく。
答えがどうあれ――音声情報を聞く物理受信器は消えて、ソレには届かない。
<gula>は、有機的な『塊』を形成することなく自身のデータを全て。 仮想の宇宙空間へ拡散させた]
― oolt cloud ―
[熾天使とAnt-lionの戦いは、まだ続いていた。
見守るように遥か天遠くで瞬いていた小さな星々が、墜ちるように闇に消える。
一つ、二つ、加速度をつけて天頂の一点から無が広がった。
<gula>によって幻影世界は侵食され、虚無へと還元されていく]
―oolt cloud/書庫であった宇宙―
[白はant-lionのプログラム展開によって黒に変わっていく。否、正確には闇。数多の星の瞬くそれは宇宙空間のテクスチャだった。
白色世界にいた時点で床面の感覚など無いに等しかったが、それでも宇宙空間に立つ自分を些か奇異に感じてしまうのは人間の悲しき性か。]
[ant-lionはメタリカルブルーの少女――LostOne.を取り囲み、会話し。そして交戦しているようだった。
ならば自分が向くべきは彼女たちではない。視線の方向を切り替える。]
[彼は、天を見上げていた。戦闘に意識が向いていないようにすら見え、男は眼鏡を押し上げながら笑みを浮かべ、MARIAを攻性の強いモードに移行させる。
彼がこちらに問うてきたのは、男が彼に近づこうと一歩、足を出したその時だった。]
いいえ、ira――ant-lionと戦う必要はありません。彼女は私たちのものですから。
そして彼女ならLostOne.を止められる。それが可能でないようなら、彼女がまだ未完成であるだけのことです。
[返答する間にも彼の動きはより緩慢に、プログラムの挙動も止まり。氷が水になり溶け広がるように存在をその場に残すこと無く"データ"は宇宙空間に拡散していく。]
[流星が駆ける。次いで、男の元でも白い星が瞬く。]
自身のデータ化ならば、得意分野ですよ。同時刻座標データで飛ぶのは、久しぶりですがね。
[BackSkipperの起動。自らをデータ構造と見なし、記録地点をLoadするプログラム。男とその傍らのMARIAもCorneliusと同じように、アバターをデータとして"溶か"した。
Loadするのは、今、この瞬間――]
― oolt cloud ―
[電脳世界。
より物理的な法則を模してエンコードされた塔内部での”法則”を離れ、gulaはプログラムとしての本質で世界を見渡す。
書庫内という狭い空間に、Babylonの統制に割り込んで置換された仮想階層領域。
指数線肥大するgulaに容易く呑み込まれ、可算領域を減少していく。狭められた領域で、ぶつかり合う力と力。
2体のAIの戦いを、眺めながら]
せまい ちいさい たりない
[gula programは明滅する”宇宙”の枠組みを潰し、均し、 己自身というデータに置換して食い荒らす。揺蕩う暴食]
――だれ?
[データの宇宙に、走るnoise――いや、凝集したデータの塊。Vincentに、ソレの意志は微笑んだ]
あそぼうか ――
[―回想(>>3前後) Dioneシステム内部の深層階層]
[システムDioneの奥深く、全ての権限を奪われたIraは体を自由にする事は出来ず…だが、Ant-lionの目から届く情報は確実にIraの元にも届けられていた。
「自分」の手がトビーを掴む>>3
―やめて…だめ…、その子が…死んじゃう…そのこの製作者も…死んじゃうよ…っ!!
だが、無情にも「supernova explosion」の起動がコールされる。
―ダメーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
目を瞑りたかった。耳を抑えたかった。
だが、システムの権限全てを奪われ、深層に拘束された少女には…何もできなかった。]
− target lose −
[無情にメッセージが流れる。
「target lose」僅か2ワードで人が死んだのだ。
誰に惜しまれる事も無く。哀しまれる事も無く。
少女は、涙を流した。失われた、二度と帰ってこない魂の為に。もう、二度とあの少年は笑う事が出来ないのだ。遊ぶ事が出来ないのだ。
そう考えると、止めどなく涙があふれ続けた…
―誰か、殺して…私を…
…殺してよ…!!!!!
少女の慟哭は…誰にも聞こえない]
[回想…>>28>>29>>35>>36>>37]
[Iraは衝撃を受けた。滔々とAnt-lionから語られる、自身の出自。生まれてきた意味。
そして知らされる…>>41
自身の真の製作者はゼロフォードであるという事実。
そして、その死。]
―うそ…そんな事は無い。私の製作者は…ナンシーで…
無実の人を守る為のシステムで…
分かっている。Iraの思考プロセスは事実を理解出来ない程劣等では無い。
自分が見つけた、あのコメントは、嘘だったのだ。
あのコメントは、他の参加者と協力しやすくするように…油断する様に…仕組まれた罠。
―誰か…私を助けて…私を壊して…私を助けて…私を壊して……私を助けて…私を壊して…私を助けて…私を壊して…
事実を受け入れ…少女の…Iraの心は…壊れた。
バラバラに砕け…Dioneのノイズとして…消えて行く…]**
―oolt cloud―
ええ、"遊び"ましょう。
[一方的な破壊を許さず。声ではなく音声データとして発信された音は笑声を含んでCornelius――<gura>を捉える。
アバターの構築をやめ、攻性プログラムとしての能力、すなわちデジタルデータの破壊に特化したAIスクリプトと化したMARIAが自身の付近をじわじわと壊-format-していく。
Corneliusに触れようとしないその破壊は、"遊ぶ"という言葉に似合ってすらいた。]
[それからしばらくして]
『ねえ、どうしてキャロルは、統制機構に捕まったRedfeathersの面々を助けに行かなかったのさ?』
……あの町は無法地帯だった。誰も、他者のクローズドスペースとか政府のサーバーとかに侵入したり、そのための隠し通路を作ったり、そういうことが法に触れることであると私に教えなかった。
[私は一つのプログラムを組みながら淡々と話し続ける]
そして「他人のものを勝手に壊したり消したりするのは倫理に反する」とも教えられなかった。
だけどね、「電脳世界における物の壊し方や消し方」も、誰も私に教えなかった。
私の周りにいる者達は穏健派だったからだろうと、今は思っている。
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