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――――ッ!!!
[じわりじわりと力を篭める指先は緩やかな死を齎す為でなく、自身の迷いに依るもの。
子供の細い首を手折るのは容易いだろう。
だが、今自分の腕の先に居るのが、殺めようとしているのが、なぜあの少女なのだろうか。
救おうとしていた少女を、殺すのか。分からない。分からない。]
………お前が死んでも死ななくても、
戻ることはないんだろ。
[悪霊のその笑顔は、全てを見透かすかのようで。]
>>183
在る……ぞ……。
[息苦しそうに、それでも笑顔を崩さず、そう云う。]
条件次第で……出て行ってやってもいい……。
………何だと?
[「条件」―――以前の騒動で幾度も耳にした言葉だ。
手を離さぬまま、小さく舌打ちをする。]
一体、何をしろってんだ?
[瞳を伏せる]
…まって。まだ、貴方の答えを…聞いて…いな…
[ナイフは思いのほか深く突き刺さった様。ユーリーの手当てを受けて尚、傷口から溢れる血液は、どす黒く、とめどなく、...の服を赤く染めていく。
...は、そのまま瞳を閉じ、意識を失った**]
>>185
代わりの躰を見つけるまで、私を護衛しろ。
早い話が、この列車の中にはもう私が使えそうな躰は存在しないんだよ。
ついでにあいつらは、割と見境が無いからな。私が入ってるのに、この躰を「美味しそう」と襲って来たりしたんだぞ? いやあ、あれは。死ぬかと思ったな。あの頃は近くに都合の良い躰が在ったから、別に死んでも良かったんだけどな。
さて、どうする?
このまま力を込めれば、私とカチューシャは死ぬ。私はまあ、そうだな……こんな処で放り出されたら、適当な躰を見つける前に消滅してしまうだろうね?
全く、困ったモノだよ。
そう、あの男が好いたあの女を……散々汚してやると云うのも、実に愉しそうだったし、な。
[それはとても邪悪な笑みで。決して世の中に解き放って良い存在では無い事が解るだろう。]
それで、お前はどうする。
気になる女の為に、気に入らない女の言いなりになり、自らの手を汚す覚悟は……在るか?
[その目は、紅茶色に燃えていた。]
お前の覚悟を。選択を―――聞かせてくれよ、ベルナルト。
………護衛。
満身創痍の怪我人に護衛をさせてぇってのは、また随分だな。
……、確認するぜ。
代わりの身体を見つけるまでってのは、北に着くまでって意味か?
んで、「あいつら」ってのは人狼か。
人狼から護ってやりゃ、四の五の言わずにカチューシャから抜けてやる、と。
全てが終わったら、魂は戻ってくるんだろな?
使われるだけ使われて、死体が残りましたってんじゃ引き受けらんねえ。
[問い詰める様に、更に指先に力を篭める。
白い肌に食い込む自分の指から、そして少女が浮かべる邪悪な笑みから――目を逸らした。
それは、殆ど肯定に近い、弱すぎる抵抗。]
>>190
北に着いた後、代わりの躰を見つけるまで……だよ。
あいつらと云うのは、私の敵全てだ。人狼も、人間も、分け隔て無く……な。
戻って来るも何も、カチューシャの心は今も眠ったまま、私の行動を見ているさ。表に出られないだけでね。
私が出て行けば、問題無く主導権を得られるだろう。
悪魔憑きだって、偉い神父さんが祓ってくれれば元の人間が戻って来るだろう? いや、これは余り一般的では無い例えだったかな。
[指で、ベルナルトの唇を軽く撫でる。]
―――取り戻したいなら、信用するしか無いのさ。悪魔の言葉で在ったとしてもな。
尤も?
気になる少女を、泣きながら殺す王子様―――そう云う見せ物も、悪く無いがね?
ああ、悪く無い。
[ベルナルトの瞳を覗き込むようにして、囁く。]
心からの嘆き。悲しみ。怒り。憎悪。
それらは全て、心地良いからな。
長ぇな。
……実際敵が多そうだ、お前さんは。
殺すのもまた一興、とは悪趣味なヤツだな。
これまで幾人を誑かした? 慣れた顔してんぜ。
[何を思うのか。微かに、哂う。
唇を這う指にも、それが伝わっただろうか。]
フン……一遍地獄に足が付いちまったら、そこから這い上がるのは難しいってか――……
[一先ずは信用してやろう、と腕を放す。
もうその方法しか、道が残されていないのならば。
唆し、誑かし、時には闇に与し、裏切って…今までも、そうやって身を護り生きてきたのだから。
但し、もし妙な真似を見せたらその時は―――
少女の首筋に付いた紅い痕に、滑らかに指を沿わせた。**]
慣れてる、か。
そう―――慣れているよ。
当たり前だろう?
もう百年以上、こんな事を繰り返してるんだからな。
[けほ、けほ、と咳き込み。それから落ち着いて、一呼吸。]
背徳の賢者には、騙されるなよ?
"背徳の賢者"………?
お前さんが名乗った「賢者」って奴とはまた別モンか?
[怪訝そうな表情で聞き返す。
もう横になっては居られないだろうと壁に右手を付いて身を起こせば、血液が下へと抜ける感覚がはっきりと分かった。
相変わらず身体に自由が利かず、押し寄せる眩暈に息が上がる。]
……北に着くまでにこっちが逝くんじゃねーか、これ。
…………
[そうなったら、悪霊ごと少女は死ぬのだろうか。
もう暫くは長らえなくてはならない。人狼を退け、まずは列車を北の地へ運ばなくてはならない。
自身を叱咤し、無理に寝台から立ち上がった。
密約と取り決めの目処が立ったならば他の乗客の居る方へと、或いはシャノアールの意向に沿って歩いて行くだろう。
100年以上もの間、器を変え現世に留まる理由は何だろうかと、ぼんやりと考えを巡らせながら。**]
何、伝統的な云い回しさ。
騙されても構わないと思える事以外信じるなとか、悪意在る嘘吐きは常にお前を食い物にしようとしているとか、注意深く真実を探れとか、そう云った意味合いの。
[ベルナルトの様子を見て]
おや。少し大人しくしていろ。
[救急箱から、薬や包帯、そして針と糸を取り出す]
死なれては面白く無いからな。もうちょっと本格的に治療をしてやる。
何、それでも駄目だったら……この躰の命を、少しばかり分けてやるよ。
それが嫌なら、こっち側に踏ん張る事だ。
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