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[揺れる。揺れて。吸い込めば。
喉を冷たい空気が通りすぎていった]
――…ッ、ほ、けほッ
[急いた呼吸に咽て咳き込めば、振りかかっていた冷たい滴。
明瞭になった視界に映るのは少女の姿、そして覆いかぶさるような温かい重み。
2人を見比べるように、黒い瞳は動いて――
少女にむけて大丈夫、とでも言うように目元を緩ませた]
[冷たい。
さむ い。
さみ し い。
――ここは、何処?]
ジラント…………
ジェーニャ…………
[家族の名を、呟いた、つもりの霊体。
見渡せど、その存在は感じられない。
確かに、自分は真白の世界にその身を投げ出し、死を迎えた筈だった。
だが、その霊体を迎えに来てくれる夫の姿も、子の笑顔も無く。]
これは……罰?
[人間に絶望し、狼に一矢報いる事も出来ず、只生から逃げ出した愚かな女には、死の世界ですら幸せを得る事は赦されない、のか。
浮遊する霊体は、列車で起きている凶行を、恐慌を、じっと見ている。
――<<狩っている>>のは、どちら?]
見届けろ、という事かしら……。
[絶望の溜息。
救いなど、何処にも無い。]
―――……、りがと う。
[狭まった喉は掠れて、上手く音を紡げなかった。
なるべく衝撃がないように、サーシャの身体を支えながら、その下から這い出る。落ちたマフラーは彼の体の下にあるので、とりあえずそのままに諦めた。
銃は再びコートの下に、仕舞いなおして。
伏したサーシャの髪を一度撫でて、立ち上がる]
………、
[窓は深い闇の外、雪は吸い込まれそうな白い渦、
床に赤黒い痕は転々と続いていたか
近づけば、窓枠の上に手を伸ばし触れてみる]
[少女は辺りを見回します。
おねーさんの死体。
今は気絶している、身を挺してかばってくれたべるおにーさん。
割れた窓と、割れた水差し。
折り重なるように倒れている、サーシャおにーさんとロランお兄さん。]
‐食堂車‐
[...は車内の騒動を余所に、一人悄然と佇む。]
孤独で寂しい獣よ。貴方の行く末を見て差し上げましょう。
{18月:正}{19太陽:逆}{13死神:逆}
[...は、タロットカードを取り出し3枚を捲る]
[状況を確認すると、ロランお兄さんの手に自分の手を重ねて、引き金が優しく指を離そうとします。
信じて。
そう言うかのように、こくんと一度頷いて。]
月の正位置…意味は…不安、不満、嘘、裏切り、水面下の陰謀
太陽の逆位置…争いになる
死神の逆位置…孤独…孤立
…寂しい獣よ…貴方は、不満や不安から闘い、争い、そして闘い争うほどに、孤独、孤立を深めていく。
なんという、寂しく悲しい因果の鎖。
貴方がこの定めから逃れる事はあるのかしら…
――……、
[少女の手が固まる指先に伸ばされる。
ハンマーに触れぬように、示唆しながら、その手を預ける。
追わなければ、と気は急いていたけれど]
[ローラお兄さんから黒くてごつく、少女の手には不似合いなそれを受け取ると。
少女は躊躇わずにそれをサーシャおにーさんへと向け、かちりと撃鉄を上げました。]
[その銃口が倒れたサーシャに向けられれば、息を飲んだ]
カチューシャ……!
だめだ、それを返して。
[撃鉄の挙げられた銃の危険性はわかっていながらも、咄嗟に手を伸ばす。よもや今度は銃を奪おうとする側になるとは予想できるはずもなく]
[それを予想していたかのように銃口をローラお兄さんの腹部へ向けると、二度連続して引き金を引きました。
乾いた音が連続して鳴り響き、腹部へと二発の弾丸が吸い込まれていきます。
それは少女には不似合いなほど、慣れた動作でした。]
う……
[小さなうめき声。青年が、まだ生きていることを示すもの。
ああ、自分は今何をしていたんだっけ。視界はぼやけ、揺らいだまま。思い出せない。思い出せない。]
あ……
[視線をかろうじて動かす。なんだか黒いものが見えて。まぁるいもの。穴の開いたもの。なんだか見覚えのあるもの。]
ぁあ……
[ロランに、謝らなきゃ。
そう思う。頭をかばうようにのろのろと、動かない手を動かした。]
―少し前・一等車両、自室―
あ〜あ〜…、僕の人生、一体何だったって言うんでしょうねぇ…。
[ベッドに腰掛け、極力自分の「残骸」は視界に入らないようにしている。
見つめ続ければさすがに、エクトプラズムを吐き出してしまいそうで。
隣の部屋での騒動は、見に行くまでもなく、全て伝わって来ている。]
…なるほど、これが幽霊になるっていう事なのですね。
[浮かぬ顔で、一見暢気に言葉を漏らす。
しかしその胸中はまるで、冬の吹雪のようで。]
[そうこうしていると、
ぽつり。
ぽつり。
と別の魂の輝きを、その囁きが大気を揺らす。]
ああ…!
シャノアールさん…、アナスタシアさん!
イヴァンさんもいらっしゃるのでしょうねぇ。
シャノアールさん…?
はて。
[それにしては僅かに「色」が違う、とふと首を傾げるものの、小さな少女の凶行にはっと蒼ざめた顔を上げた。]
[ロランは声を上げただろうか。なんだか全てがスローモーションに見えて。
まだ半分見えない視界。血が足りなくてしびれた腕。力の入らない足。……構うものか。カチューシャへと飛びかかる。]
殺してやる殺してやる殺してやるっ!!!!
[先ほどロランに向けたものとは比べものにならない、明確な殺意。ポケットのナイフを抜いた。]
[それが、果たして当たったのか、逸れたのか。
わからない内に身を翻し、羊さんを拾い上げ走っていきます。
部屋を出て、食堂車の方へと。
怖いおにーさんが追って来るので、躊躇わず、全速力で。]
[デコッキングレバーへと、咄嗟に伸ばした腕は間に合わない。けれど、撃鉄を起こすシングルアクションのリボルヴァーに、連続射撃は不可能だ。1発弾丸を撃てば、次発までに間が開く]
――……、ッ
[腹に打ち込まれた弾丸、衝撃に吹き飛ぶ体。
意識を失わなかったのは、何故だろう、くず折れながら足は外へ**]
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