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目撃されたのが若者だから化けている先も若者とは限らない。
それと昔からの馴染みだからとか、余所者だからとか、それで人狼かどうか見極めるのは危険だと付け加えておく。
件の目撃された人狼らしいものが、この村に来たとは誰も見ていないし、どこからかそう強く訴えがあった訳ではない。
人狼という存在自体、懐疑的な者もいるだろう。
それでも、この村に対して「人狼の噂への対策」をしたということが強く求められている。
恐らく数日間、ここに篭って何も起きなければそれで終わりだろう。
正直なところ迷惑だろうが、国の意向ということで村としても協力願いたい。
[そう言って、頭を下げた]
[アナスタシアが謂いだした言葉には、
一瞬眸を瞬かせて。小さく吹きだした]
やれやれ。何を言い出すかと思えば。
[友人の傍へ行き、その肩をそっと抱いて]
あなた、少し疲れてるのよ。
後片付けはやっておくから、休んでおいでよ。
[一度その背中を撫ぜた後、ドラガノフと一言二言会話し、
自室へ戻る友人を心配そうに見送った]
実際どうなのかは俺も知らない。
噂でも人は死ぬし、疑いでも人は殺される。
だから迂闊な事は云えない。
[人狼として疑われ、死んだ友の亡骸を思い起こしながら]
村としては「対策をしましたが何もおきなかった」という状態を望んでいる。
できれば明るい話題で集まれればよかったのだがな。
[先ほどの白々しい会話を思い出しつつ]
まあ、恐らくは暫くは暇を持て余すことになるだろう。
ここにいる限り、諸経費は全て村が持つ。好きにしてくれ。
遊具など持ち込んで、遊ぶのもいいかも知れない。
酒を飲むのも構わんが、飲み過ぎないようにな。
[誰にも気づかれぬよう、食堂に面していない方の扉から廊下を出た。
階段を上り、向かうのは――――旧友の部屋。]
あたしよ。
……開けてくれる?
[部屋に入れて貰えたなら、女は唇を開くだろう。]
御免ね、びっくりしたでしょう?
でも、もっとびっくりする事、あんたに話しときたいの。
うちの人が死んで、あたしが村に戻って来た時の事…… まだちゃんと、話してなかったわね?
あの人――――、殺されたの。
人狼に。
[別の村で、人狼騒動に巻き込まれたこと。
夫が殺されたこと。
そして自分はその時の生き残りであること。
金緑石を握り締め、時折、肩を震わせながら。
フィグネリアだけに、打ち明けただろう。]
― 自室 ―
[納得いかないまま、自室に籠っていると戸をノックする音が聞こえる。
開いてるよ、と。
一言だけ答えれば、開いたドアの向こうから姿を見せたのは旧友で]
……ナースチャ。
どうしたの? 顔色悪いよ。
暖炉あたる?
[と、ぱちぱちと薪を爆ぜる音を響かせる、
暖炉の傍へと彼女を導いた]
殺された―――…?
[アナスタシアが口にした言葉に、思わず眸を数度瞬かせる]
あ、んたまで、なに謂ってるんだい…?
そんな冗談、
[笑えないよと謂おうとして、
彼女の眸が真剣であることに気づく]
……嘘じゃ、ないようだね。どうやら。
[大きく息を一つ吐いて]
聞かせて。詳しくその話。
[彼女と対面するように寝台に腰をおろし、
真剣な面持ちでアナスタシアを見据えた]
[金緑石を握りしめ話す友人が話す男の最期に。
女も、眸を揺らす。
肩を震わせるアナスタシアを抱き寄せ、その背を叩き]
あんたも……辛い思い、してきたんだね…。
[呟く声は、自身が街で経験した想いも含んで。
重く重く、床へと落ちる]
ありがとう。あたいにだけ、打ち明けてくれて。
[彼女の眸に涙が浮かんでいたならば、
その雫をそっと拭っただろうか]
……しかし。
ただの噂だと思っていたのに。
本当に”い”るなんて、ね。
[何が、とは口にしない。
ただ不安からなのか、がり、と。親指の爪を噛んで]
あたいは……死にたくない。
この子を産んで、育てるまで。絶対に……。
[呟き、下腹を撫でる。
まだ目立たぬ腹であろうとも、この中には確実に。
新たな命が芽生えているのだ。
それを生まれ落ちる前に摘ませる訳にはいかない]
あの人を喪って、
傷ついてるあんたにこんな事を謂うのは、酷い事だって判ってる。
でも――――
[唇を僅かに噛み、下腹をそっと撫ぜて]
教えて。
あんたがどうして生き残れたのか。
その村の事、狼の事。そしてあんた自身の事を――
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