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[何処に出かけていたか、ドラガノフが宿に戻ってきて]
おかえりなさい。
[そんな挨拶をしてみた。
宿の外で。手は、小さなかまくらを作りながら]
それじゃ、家に付いてく。
[墓地の方向へ一度顔を向けてから、相手へ向き直る。
「いいよね」と確かめるように、首を傾げながらニイと笑う]
久しぶりに、兄さんのいれたココアが飲みたいな。
[なんて、我儘を挟みながら。先行くように、歩き出す]
イヴァン、ミハイル・・・
あいつら大きくなったな。
こんな村長のたわごとに付き合わされて気の毒なこった。
ふたりとも無事に家に帰してやりたいもんだ。
[さっさと行ってしまった後姿を、しばし見つめて。]
……ま、いっか。
[特に急ぐこともなく、その後を追う。]
[ドラガノフに対しては、軽く目だけやって。]
[途中でナタリーを見たなら、またか、と呟いた。]
はやくー。
[のんびりと後ろを歩くミハイルを振り返り、声をかけるけど。
其れは何処か楽しげな声で、別に本当に急かしている訳ではない]
―――――……兄さん。
[やがて彼との距離が縮まったら。白い息を吐きながら、少しだけ神妙な声で呟いた]
何か、知ってるの?
人狼のこと。
[青年と付き合いの長い彼ならば。そこに不安の色が滲んでいることに気づいただろう]
嘘みたいな話だと、思うけど。
[言葉が続かなくなって、俯いた]
ん?
[距離が縮まったかと思うと。]
[少し、様子が変わった。]
……あー。
[相手の口から発せられた言葉に、僅かに眉を顰めて。]
人狼、ねえ。
[俯いた彼の頭を、軽く。撫でようと。]
[手を伸ばし。]
……知らん。
[明らかに嘘をついた。]
―ちょっと前―
ナタリーさん、風邪ひくよー。
[くしゃみをしかけた彼女の姿に気づいて、肩を揺らす]
はい。貸してあげる。あったかいよ。
[マフラーを外して、彼女に差しだした。
よく考えたら此れは相手の店で買ったものだったような気もするが、深く気にしないことにした]
行ってきまーす。
[疑問形の挨拶へ、元気良く返事して、白い道を歩き出す]
……ぬ。
[ばれた。]
[どうしたもんかと考えていると。]
[上目で見られたので、視線を外す。]
[それから続く言葉に、再び視線を相手に向けると。]
[ふう。]
[とひとつ、溜息。]
……なにも、難しいことじゃねー。
[だから、説明しづらいのだと。]
[肩についた雪―さっきナタリーにぶつけられたやつ―を払い落としながら、ぼんやりと思う。]
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