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―教会前―
最近の英霊は、斯様に礼儀正しいものなのじゃのう。
[見当違いの方向に感心しながら、姫倉の発した疑問に英霊が各々の答えを返すのを聞いている。
妻扱いされているサーヴァントにつられて高い空を振り仰げば、陽は雲に遮られることもなく六角矢を投げかけていて。
眩しさに細めた瞳を自身の影に落とす。隠されたアーチャーの瞳の彩に、思いを馳せながら]
主の奇蹟ねぇ。
んでも、今ここにあるものはぜーんぶ。人が作ったもんだよ。
長い時間考えて、自分らが住み良い世界にするにはどうしたらいいか、何世代も試行錯誤重ねてさー。
自然大好きな人には街中は住みづらいかもね。
ん?
ああ。まっすぐ教会に行く前にご飯!
ってぇ気分なの。
[教会の方角へと向かいながらも、視線は食事処を探す。見つけた鮨の文字にサングラスの下の目を輝かせた]
おすし屋さん……ここで会ったが百年目、いざ尋常に勝負! …なんてね。
教会先に行く? ご飯食べる?
とはいえまだ準備中みたい。
もちづきこちょう。
なるほど…。じゃあ、恋人同士ということで。
[同じく裏稼業に足を突っ込んでいる姫倉は――残念ながら全く心当たりがなかった。
とりあえず見た目から二人の間柄を設定しておく。
異文化カップル。悪くない。
そうこう考えている内に、まずはライダーの答が。]
……ふーん…。故郷と、兄弟か。
[姫倉はエウロパの伝承を詳しいところ知らない。
ただ相槌だけを打って、腕を組んだ。]
むーん…。
[目を瞑ってみると、そこには――シルクハットを着た数人の若い青年が、ティーカップを持ちながら「やあお帰り、エウロパ」などと言っていた。
姫倉の異国イメージはそんなものだ。]
そりゃあ血が繋がっておるようには見えぬじゃろうが、
おぬしの目は節穴か!
誰がこんな変質者と……!
[口と同時に手が出かかったのを、「ここは教会、ここは教会」と言い聞かせて自制する。甚だ不本意、と顔に書かれていた。
全裸召喚の悪夢は、忘れようとしても忘れられず。
気不味さにうろうろと視線が虚空を彷徨う]
そのようですね。
主の御業というには…その、幾らか…欠けていると言うか。
[この灰色の巨石群には威光も恵みも感じられない。
静かに息を吐き出して、脳裏に描くは
人々が合理性を求めた結果なのだろうと言う答え]
ご飯はかまいませんが、鮨…。
[頭の中に勝手に描かれるのは玉子。綺麗な黄色に黒い帯。
ところがそれを中断したものがあった]
…食事の前に、先にやらなくてはならないことがあるようですね。
[小さく口の中で紡ぐ。
それはうっすらと気配を空気に溶け込ませるためのもの]
───Noli me tangere.
(私に触れる者の無きように)
[姫倉の表情とうなりは一向に冴えることはなく。]
…。
[風の行方を追うように、揺れる花を見た。
]
なあ。
胡蝶の姉さんは、――。
[問おうとして、へんしつしゃ、という言葉が耳に入った。
脳内エウロパ兄達が、途端に全裸になってしまった。
エウロパもなんか全裸で「お兄さまー」とか言って駆けていってる。
不思議だ。違和感がない。]
…まあ、愛の形はそれぞれとも申します。
お兄さん。恋人は大事にしないとなりませんよ。
[なぜか突然敬語になって、満面の笑顔になって。
一歩だけ、引いた。]
…あまり役にはたたないかもしれませんが、
気持ち程度には、ね。
食堂も…ええと、まだ開いていないようですし
開くまでの時間潰しには丁度いいでしょう。
[所詮は概念によるスキル。
子供に知られぬままに贈り物ができる程度のものだ。
文字通り、気持ちばかりの保険と言えるだろう。
サングラスをずらしたままのアルへと声をかける。
目を伏せて聖霊の声に耳を澄ませるがの如き姿。
その後に、教会へと向かう主の背を一定の間隔で追う]
[表情から、姫倉が何を考えているのか――英霊に死を問うた意図も、脳内妄想も――窺い知ることはできず首を捻っていたが。
妙な言い澱みと明らかな作り笑顔に、唇の端が引き攣った]
姫倉とやら。
とりあえず、それは違うと思うのじゃ。
[よく分からないが否定しておく。そうしなければいけない気がした。
失言ではあったが同意が得られぬあたり、アーチャーの申告通り黄金の鎧に纏る召喚事故だったのだろうと片付ける]
サーヴァントがマスターを守るのは当然じゃろうに。
[大袈裟に竦める肩。
姫倉の余裕綽々の笑顔が、余計に気に障る]
いーんじゃない?
隠してどうなるものでもなし。
どうせ近いうちに会うことになるわけだし。
[ずらしていたサングラスをはめなおす。
教会が見えてくると人の姿が遠目に見えた]
無念?
[胡蝶へのからかいはほどほどに。
男の声に、そちらを振り向く。]
無念…。
[心痛か、物理的な痛みか、といった表情。
それを見て――姫倉は少しだけ昔を思い出す。
顔立ちも年齢も違う誰か。
男の見せた表情は、その人物と同じ色があった。]
[ふと、男と胡蝶の顔を見比べる。
「サーヴァントがマスターを守るのは当然」。
胡蝶はそう言った。なら、それは――]
んー…。
[もしその時がきたら、彼女はどうするのだろう。
どんな顔を――するのだろう。
相変わらずぼけーっと見ている。
そんなだから、新たな来訪者にまた率先して気付けなかった。]
…それはそうですが、
最初から警戒を怠るのは。
[マスターの気楽な様子に肩を竦める。
人を疑ったり嘘をつくことは好まないが
己もまたサーヴァントとして召致されたからには
それなりの行動を求められると思っている]
…あれがそうなのでしょうか。
[ちりちりと、頭と脊椎の接点が痛む]
[主が抱く妄想にも、新来の主従にも、気付かずに。
ただ、異邦の英雄が紡いだ悔恨だけは、視界の端に認めて。
――かれもまた。
遠き神々に運命を千々に乱された、不幸なる系譜に名を連ねる存在なのであろうか]
――けれど。
私たちはいまいちど、命溢るる大地に立っている。
それが全知なる神々の償いか――気紛れかは知らねども。
[空を仰いだまま。詠うように、独白]
死して尚、果たせぬ望みがあったから
聖杯戦争に臨むのであろう?
[そういえば、アーチャーに聖杯を希求する理由を聞いていなかった、と心に留め置き]
先客万来じゃな。
聖杯戦争の開始が近い証拠、か。
教会の前で立ち話をしておっては、さもありなん。
[一度アーチャーの袖を引いて合図してから、向かってくる二人組の気配に神経を研ぎ澄ませる]
――……サーヴァントの気配、感じないけれど。
[茫洋と構える主へと、視線をやった。
サーヴァントは、他のマスターを識別できない。
さりとて、英霊としての気配を消す術を破れるほど、この身は知覚に優れてもいない。
ならば、真実、あの二人連れが聖杯戦争の参加者ならば、アサシンの主従なのだろうか?]
18人目、ジュリア エンジェル がやってきました。
−某所−
ああもうっ、オジサマったらマスターの私を置いてどこへ行ったと言うのかしら!
[ぷんぷん、とでも聞こえてきそうな様子で部屋の中を往復している**]
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