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[立ち上がった時に枕を落としてしまっていたが、拾おうとせずに。
テッドがサユラへと近づいていくのを、ただじっと見つめていた。
マーブノレが倒れているのには気づかなかったかもしれない*]
仕事ねぇ…
[あの日も仕事帰りだった。だからこそあの白い景色は殊更忌々しく感じていた]
(戻るときは――あの時に戻るのかしら?)
[だとすればこの白い花など、なかったことになるのか。
いやいや、記憶すらなくなっているのか。]
(ふふ、馬鹿みたい。戻れる――なんて保障もないのに)
[消えると言う事がどういう事なのかすらわからない。
そうなってみないことには。**]
―――――――――――――――――――――
私、カサブランカが大好きよ。
だって聖母マリア様に捧げる花でしょ?
まっ白で凛として気品があって、飾らないのに美しくて…。
(ああそうか、あれは彼女がいつも言っていた節回しだったっけ。)
教会に行くとね、聖母マリア様に天子さまが百合を差し出している絵があってね。
すっごく素敵なの!だからね、私の結婚式には百合の花を使ってね。
駄目?…あなたもお葬式みたいだって思う?
(わかったよ、君の望むとおりに。花はいつだって美しくそこにあるだけだ。どんな事に使うかは人次第なんだ。
うんと艶やかに華やかに気品あふれる花束を作ってあげるよ。俺の最高傑作だ!)
ありがとう!ああ、楽しみね。ゲホッゲホッ…。
ん、やだ大丈夫よ、ちょっと咳が出ただけよ…。
[ああそうだ、それで俺は花束を届ける為に式の朝、あの丘の上の白い教会に向かったんだ。飾り付ける為の沢山の花を積んだ車で―――]
…いってぇ…なんだ?眉間がいてぇ。
[頭を振って目を覚ますと、おでこをさすさす撫でながらむくりと起き上がった]
あれ、濡れタオル。
[起き上った拍子に、ぽてっと膝に落ちたタオルを拾うと]
サユラ?これ君がやってくれたの?ありがとう、優しいんだな。
[何故か眉間が痛むのが不思議だったが、そばについててくれただろう少女にお礼を言った]
[白い花が洋服のように胸元を覆っている姿に何かを思い出す。あれは…彼女の病室?]
少し、ここに来る前の事思い出したんだよ。
なんだか、君に前にもあった事があるような気がするんだよね。あの病院で…。
ううん、君って言うか君に似た人?君、看護婦さんとかお医者さんのお姉さんなんて…いる?
[混乱した記憶で誤認したのかも解らないが、一応サユラに聞いてみた]
そう…病院。
[仕事続きの毎日で、私は――を見舞う事もろくになく]
看護婦や医者に知り合いはいなかったかしら。
今、覚えている限りは、ですけどね。
[最後に行ったのはそう、あの日…**]
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