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……へ?
山田くんが女の子?
[……なんぞそれ]
……や、知らない、けど。なにそれ。ほんと?
だから最初、男女の数が合わなかった……とか。そういう?
ここを出る、か…。
山田が、もしその、何か別の方法で、ここを出たのなら、その方法を、教えていってもらいたかったな。
最近の、恋愛、な…。
[最近、か。]
俺は、弱い人間でな。どうも、日本へ来てからは、生きるので、精一杯だった。
だから、恋愛が、どういうものか、忘れ気味だな。
[最近ようやく、誰かの「特別」になりたいと、思えるようになったよう、だが。]
誰かを特別だと、思うとして、それが、みんなを特別だと思っている自分と、何か違うのかと、迷うだろう。
俺にとって、俺を普通に受け入れてくれる、クラスのみんなは、「特別」だしな。
そう……。詮無い事を聞いたね。ごめん。
素敵な先生だったんだろうね。そんな気がする。
でも、「ただの」なんて、付けない方がいいよ。それは、少し寂しい事だから。
――振り返る事に、ためらうようになるから。
…何が駄目なん、構へんやろ。
別にうちは心配してくれなんて一言も言うてへんやんか!
[大きな声に、弾かれたように返した言葉は怒鳴り返すようだった。
ここに来てからの苛立ちが一気に爆発したみたいだ]
放っとけ言うたんや、心配なんて要らん。
そんなんもろても、邪魔なだけや。
…うちみたいなん、ずっとここにおったらええねん。
どうせ、何もこの先見込めんのやし。
…やから、はよ他の子と仲良うなって出て行きや。
[そう告げて、口を引き結んだ。
もう一枚浴衣をたたんで、ラックに乗せた]
うむ…結城から、聞いた。
前から、知っていたような、感じだったな。
…確かに、そうかも、しれない。
男女の数、か。
確かに、こういう趣旨でこの島にいて、数が合わないのは、おかしな話では、あったな。
[笑う。
よしよし。
知らないのは、俺だけではなかった。]
俺だけ知らなかったのかと、切ない気分になりかけたが、やはり、みんな知っているというわけでは、なかったのだな。よかった。
恋愛を忘れ気味、ね。
[似たようなことを、つい朝方に聞いた記憶がある]
みんな、難しく考えすぎだと、思うんだよね。実は。
恋愛とはなんぞや! なんて、大上段に構えなくてもさ。
一緒にいると気が休まるとか、話してると楽しいとか、
……そういうところからで、いいと思うんだよね。
まあ……私が単純なだけなのかもしれないけど。
素敵、だったのかな。
少しだらしなくて、優しくて、でも怒ると怖かった。
二度結婚してるって聞いて、三人目になりたいって思った。
無理だったけど。
躊躇うの、かな。
……だって、そうでも思って引きずらないようにしないと、いつまでも進めない気がしたから。
……でも、宇留間くんがそんなに真面目なの、なんだか珍しいね。ちょっと見直した。
[返ってきた答えに、驚愕にも似た色を浮かべて瞬いた。
どういう意味なのか、其れを問おうとして。続いた言葉に再び言葉は止まる。]
――…、っあの
[何か言おうとして、それでもどれを口にすればいいのか悩む内に
寄せられる力に、敢え無くそのまま腕の中に収まった。
慣れない場所に、少しだけ慌てたように身動ぎして。
それでも満更でも無いと思ったのか、もしかすれば心地よかったか
暫くすれば小さな動きは止まる。
其の代わり――ゆるりと、握っていた自分の両手を解く。
それでも一度だけ躊躇するように縮んで、
そうして再び緩んだ指は、相手の服の裾を、遠慮がちに掴んだ。
…拒まれなければ、小さく安堵の息を落としたか。]
それは、知らないよ。そんなの。
女の子が男の子として学校、きてるなんて。
よほど、仲が良くなければ、言わないんじゃないかな?
[と、見上げたら、笑顔が浮かんでいて。ちょっと可愛かった。
風峯くんといい宇留間くんといい。
邪気のない笑顔に弱いのかもしれないぞ、わたし]
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