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周りから隔絶された集落、外場村(そとばむら)。
昔から変わることの無いこの地では、今でも土葬の習慣が根強く残っていた。
近年行われた市町村合併により「外場」という地名になったのだが、
村民は未だに「外場村」と呼んでいる。
少し前にこの村には似つかわしくない洋館が、どこかから移築されてきた。
村人達は代々村長の家系だった竹村家――村を辞去してしまった――
の屋号を取って「兼正(かねまさ)の屋敷」と呼んでいる。
そんな外場村である日、村中の地蔵が壊されているという事件が起こった。
1人目、独居老人 大田敏郎。
2人目、女子大生 栗山瑞穂。
[買い物の帰りに偶然耳にした大田の言葉に、思わず足を止める]
(…お地蔵さんの首が?
誰かのいたずら…かな。この村にそんなことする人がいるとは思えないんだけど。
それにしても…「よくないことがおこる前触れ」なんて…本当、田舎ってこれだからイヤになっちゃう…)
[小さくため息をつくと、その場を静かに立ち去った]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
3人目、女子高生 逢沢ゆか。
[遊びの帰り道、二つに結わえた髪を揺らして連れの友人を振り返れば怪訝そうに眉を寄せて]
地蔵が壊されたぁ?
そんなの、どうだっていいじゃない。
あーあ、ばっからしい。
[興味が薄そうに肩を竦め、そのまま帰路へ…**]
4人目、民俗学者 小松敬介。
さくり。
[濡れた落ち葉を踏み締めて、長身のひょろりとした男が姿を現した。身をかがめ、破壊された地蔵尊の残骸を検分する]
地蔵サンを壊すなんざ、とんでもねぇ事する奴が居るもんだな。
こりゃ、子どもの守り神だぞ、おい。
[ふと、その先を見やり、ハッとした表情で近寄る。]
目立たねぇ古いもんだが、こっちは道祖神だな。
あーあ。こっちも砕かれちまってら。
風化しちまってナンだか解ンねぇ道祖神まで、ワザワザ壊すんかい。
道祖神は塞の神。
村に悪いモンが入るのを防ぐ神サンだ。
……悪意ある悪戯だな。こりゃ。
[頭をかきながら]
大田の爺さんが騒ぐのもしゃーねぇか。
これ、人間が気軽にやるには、ちと無理があらぁな。
まあ、あんまり大袈裟にして空気悪くすンのもアレだな。
爺さん家に帰って宥めとくか。
[ぐるっと辺りの木立を見回し、肩をすくめる]
今時、フィールドワークで得るもんあるんかね、
とか思ってはいたが、案外面白い口伝でも聞けるかもなあ。
もうちいっと、そこらの祠やら神社やら見てくっかね。
[落ち葉を踏み締め地蔵を後にした**]
5人目、高校生 山崎秀一。
[通りすがり、地蔵の残骸が視界に入り、眉を寄せる]
誰がこんなことを?
馬鹿馬鹿しい。
(こんなもの壊したところで、村は何も変わりはしない。一時、破壊衝動を満たしても、それはただそれだけのことだ。何も変わりはしない)
[そのまま立ち去ろうとしたが、ちらりと振り返る]
(変わらない。何も。本当に?)
馬鹿馬鹿しい。
[再度吐き捨てるように呟いて、その場を後にした]
6人目、老婆 三津田銀子。
[休みながら、よちよちと歩いてきて]
騒ぐほどのことはないわな…。
わしらくらいの歳くらいになったら、もう、良くないことなんて、起こりゃせん…。
じい様のところへ行く準備は、とうにできちょるしのう。
[のんびりと、電柱に向かって話しかけている]
外場村…そとば、卒塔婆、ねえ。
外の場、か。
内の場があって、外の場があンだよな。
外の場ってのは、だいたいコミュニティの外界、あの世に通じる場になンだがな。
森だったりする。
共同体の中で友愛関係を失った者が、「森の放浪者・人狼」として共同体の境界の外に追放されんだ。
赤坂憲雄の「異人論序説」にあったンだっけかな。
ヴァルク。どこの国の話だっけかなあ。
ん?
[電柱に話しかけてる老婆に気付く]
卒塔婆を作って生計を立てているわしらをのう。
不気味だとゆう外の人もいるがのう。どこの墓にも必要なもの。誰かが作らないとのう。
そう思いませんかの?
そうですかそうですか。
[聞き取りにくいしわがれ声で、電柱と会話している]
[老婆の呟きを耳にする]
よう、婆さん。
元気かい。
地蔵が壊されたってなあ。
全く、酷ぇ事する奴が居る。
この村ぁ、あれかい。
卒塔婆作りが生業になってンか。
農業もやってるって聞くが、畑に出てる人影を見ねぇ。
皆、地蔵サンの件で怖がってンのかねえ。
[老婆の言葉を待ちながら、頭の中で色々捻くる。]
卒塔婆作りって事ぁ、林業なンだよな。
確かに立派な林だが。
林…森なあ。
共同体を追われた者が、森の中で狂気を聖性を帯びて帰ってくる、ってのもあったな。
生と死の境界を越えた者は聖性を帯びるンだ。
生と、死、だ。
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