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[ラッセルの説明が耳を通り抜ける]
人、狼………
[見つめるその顔。やっぱり、おにいちゃんと似てるなと、座り込みながらぼんやりと思った]
[アーヴァインの言葉が途切れると、それに呼応するようにネリーの緊張の糸も切れたようだ。ふらりと倒れそうになるのを何とか踏みとどまるが、しかし目の前のテーブルにもたれかかるのは止められず、顔を伏せた。
その表情は、まだ呆然としたまま。]
ころ、す…。
こ、ろし、あ…う…。
そんな…間違いでは、なかったの…?
本当に、本当に…!?
[身体を小刻みに震わせて、何度もぶつぶつと呟いている。]
[老婆はアーヴァインの台詞に盛大に顔を顰めた。]
なんちゅう残忍なことを…。
おまえさん、村のみんなを何じゃと思うとる。
こがいに未来ある若者ばかり集めおって…。
念のため聞くが、自分が人狼じゃと、名乗り出る者はおるかえ?
そもそも…
[広間に居る面子をぐるりと見回す。]
この中に人じゃない奴が居るってぇのが…なぁ。
どう見ても…そうは思えねぇよ。
[ギルバートに声をかけられ肩に温かな感触を受けて、はっと顔を上げる。目の端に涙の珠が浮かんでいる。]
そう、ですよね。
だってみんなとても優しい方ばかりで…そんな、そんなこと…。
[自分に言い聞かせるように、目をぎゅっと瞑った。涙の珠が頬を伝い落ちた。恥ずかしそうに呟く。]
いや、だわ。エッタさんだって、あんなにしっかりしているのに…。私がこんなだなんて…。
くそっ。
せっかく人がいい気分で楽しんでるってのに……
[並べられている皿を見れば、シチューから立ち上る湯気は無い。
ほろ酔いも醒めてしまい、ネリーの肩に置く手に力が籠もる。]
嗚呼、そうだな。
考えるのは、何か起きてからでいい。
起きるかどうかも分からないのに、考えるだけ無駄だ。
なんでそんなに妄信できんだろ。あのおっちゃん。
[座り込むエッタの目線にあわせるようにしゃがみこみ、表情こそ仏頂面なままだが声音は幾分柔らかく]
…エッタ…大丈夫…か、どうかはわかんないが、何かが起こると決まったわけじゃないし、大丈夫さ
[ 皆が口々に文句を言う中、アーヴァインの言葉を確かめようと扉をくぐり門へと向かう。そこで目にしたのは言葉通りの事。閉ざされた門に諦めの溜息を吐き集会場の中へと戻る。]
…どうやら、文句を言ってりゃ済むって話じゃないようだよ? アーヴァインの言った通りさ。敷地から外にゃ出られやしない。
なあ、デボラ。アーヴァインの話に嘘が無いんなら、多分、名乗り出やしないだろと思うよ。
[ 皆を見回す。]
裸にひん剥いてみたら、もっさりした毛でもはえてんなら話は別だがなぁ。
[冗談めかして言ったものの、自分も周りも、それを笑える雰囲気では無かった。]
まぁ…まだ何も起こっちゃいない。
自警団長殿の妄想ってオチが着く事を祈ってるぜ。
そんな職種に就いた覚えはないね
[デボラの言葉にあっさりと否定を返して]
ぁー、本当だったんだ。それはなんとも…
[とローズの話を聞き言いかけた言葉を止めて、考え事をするように二度三度己のこめかみを軽く指で小突く]
ほうか。
疑わにゃいけんのは…悲しいのう。
[老婆は憔悴した様子で溜息をつく。皆、自分の半分も、多くは3分の1も、生きていない若者達ばかりだ。空になった椀を、静かにテーブルに置いた。]
ババはもう休ませてもらうよ。
ネリー、ごちそうさん。
[元々曲がった腰が更に曲がったように、頼りなげな背中が、寝室へと消えた。**]
ラッセルにケネス、ローズマリー…
ヘンリエッタまで呼び出されていたのか!!
皆が言ってるのは本当なのか、昔に日曜学校の帰りにそんな話は聞いたことがあるが人狼とやらが旅人を襲っていて、本当にこの中にそいつらがいるのか?
俺は送り狼だと言われたことはあるが、人狼だと言われたことはないぜ。
[デボラには、いつものような冗談を言ってみる。
少しでも、場の雰囲気を和やかせたい気持ちだった。]
ローズ、お前、まさか……
自衛団の言うこと、信じてるのか?
[半分呆れた表情で、ローズマリーを見遣る。]
[デボラからの問いに、頭を振って否を示した。巻き毛がふるふると揺れる]
うん…ありがと。
おにいちゃ…あ、ラッセルさん、だった。
だよね。何かが起こったわけじゃないもの。間違いだわ。きっと大丈夫よ…ね。
[言い聞かせるように呟き、ゆっくりと立ち上がる]
[地響きを感じたような気がしたが、見上げるとミッキーが上から降りてきた足音だった。]
…よぅ、おデブちゃん。
小説も真っ青なホラーサスペンスストーリーが、今幕開け……って感じかな。
[冗談めかして答える。目は笑っていなかったが。]
[ローズマリーの「名乗り出やしない」という言葉が、重くのし掛かる。]
みんな、悪いやつではないと思うんじゃ。
女にだらしがなげなんも、酒癖が悪いんも、普通じゃろう?
普通の顔をして、ババ達を騙しとるモンがおるとは…悲しいのう。
みんなが何をしたゆうんじゃ。
何でこがいな目に遭わんにゃいけんのんじゃ…。
[独り言を呟く老婆の目には、涙が。**]
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