306 大きな桜の木の村
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絢子
タダ飯狙い クイル
わ、わたし。あなたのことが好きだって。昨日言ったのよ。
そっと言ったけど、聞こえてたんでしょう？
……私も恥ずかしかったんだから。
[顔が耳まで真っ赤に..]
……桃井さんは、私のこと……好き？
[どきどきしながらも、真っ直ぐ瞳を見つめた。]
絵描きの卵 ミンティス
[ゆるりと目蓋を開くと、視界の全てを埋め尽くす桜。
圧倒的なほどの桜の世界に、魂さえも魅了されてしまいそうで]
…そう、か。
私も…桜に、囚われて…しまった、のか…。
[目を閉じる瞬間まで抱いていた、小さな桜のヌシの温もりは、もう腕の中にはない。
蛇使いの青年が半身と称してくれた、常に傍らにあったスケッチブックも、失われて。
何もない両手を、桜の空にかざす。
結局何も出来なかった、無力な両手を]
ずっと…ずっと、みんなを守りたいと、思っていた。
けれど結局…私の手には、そんな力は…宿らなかったんだね…。
[はらはらと、桜の花が降る。
降るが尽きない、永遠の薄紅の雨。
この胸の空虚が、全て桜で埋め尽くされてしまう時。
自分は消えてしまうのではないかと。ただそれが、恐ろしかった]
絵描きの卵 ミンティス
…ねえ、オリマ。
君は、この世界を望んでいたんだよね。
君の瞳に、この世界はどう映っているのかな。
桜の声を聞き続けた君は、この世界で、何を望むのかな…？
[桜の下に佇み、遠くを見つめ続けていた青年のことを、思い出す。
ただ一度だけ、彼が自分を見てくれた時のことを、思い出す。
澄み切った、どこか寂しげで、哀しげな色。
彼はこの世界で、幸せになれるのだろうかと。そんなことを、胸の痛みと共に想った]
私は…ずっと、みんなを守りたいと、思っていた。
君の事も、守りたいと。そう、思ったんだ。
…だから、きっと。
私は…君の本当の笑顔を。描きたいと、想っていたんだ…。
[呟きは、全て桜に溶ける。
はらはらと降り積もる花弁に、全て埋もれてしまう。
そっと目尻から零れ落ちた涙の欠片も、何もかも全ては、桜の中に消えていってしまった**]
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