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──文化祭の一幕──
「う、ぅぅう……」
[担当の時間が終わって、風音と一緒に校内を回っていた時のこと。
校舎の片隅で、子供が泣いていた。幼稚園くらいだろうか、小さな男の子だ]
どうしたの?
[スバルの弟妹たちにこれまでそうしてきたように、膝を折って目線を合わせて。スカートをまとめながら笑って問うた]
そう、お母さんとはぐれちゃったのね。
大丈夫大丈夫、泣かないの。
[ちら、と風音の顔を見て、それから男の子の頭を撫でて]
お姉さんたちと一緒にお母さん、探しましょうか。
[風音と自分とで、男の子を間に手をつないで。
放送を聞いて彼の母親が慌てて迎えに来るまで、少しばかり寄り道の一幕*]
[みんなでおせちを食べて、自室で二人で喋っているうちに眠ってしまったようで、薄暗くなりかけた部屋で目をさますと、隣には愛おしい寝顔が]
昴・・・
[眠っている昴の頬に口づけを落とし、窓に目をやると]
あ・・・雪
[部屋の中だから気づかなかったが、雪が降り出していた。*]
[朝、眩しくて目覚めると、降り積もった雪に日光が反射していた。これだけ良い天気なら、今日中に全部溶けて消えてしまうかもしれない。
朝食をいただいて]
ユリ子、公園にでも行こうか。小さい雪だるま作ろう。手袋ある?手袋がないと雪は指先まで痺れるくらいに冷えるから。
[新雪にふたりの足跡を刻んで、近くの公園へ。雪は遊びに来る子供たちの為に残そうと、少しだけ丸めて]
ぼくの雪玉が胴体でユリ子の雪玉が頭。ほら、可愛らしいよ。写真撮ろう。そしたら溶けてしまっても消えないから。
[掌に乗るくらい、小さな小さな雪だるま。誰かが見つけて少しでもほっこりしてくれたらいいな、とその場に残して立ち去る。手袋をしていても冷えたお互いの手を、繋いで温めながら*]
[降り積もるとは思わなかったが、積もるほど雪が降っていたようだ。
昴と公園へ行って二人で作った雪だるまをスマホで撮る]
かわいい
あ、そうだ、もういっこ作っていい?
[勢いでもう一体、小さい雪だるまを作って、花壇のレンガの上にふたつ、寄り添うように並べて]
こっちが昴で、こっちが私
[なんてはしゃいで、もう一枚写真を撮る。
その場においた雪だるま。誰かに見つかることはあるだろうか。
帰り道、積もった雪が太陽に照らされたキラキラと輝く。
雪によって浄化されたような冷たい空気の中、昴と繋いだ手から体温のぬくもりと好きの気持ちが伝わってくるようで、心はぽかぽかあたたかかった。*]
[寄り添い並ぶ雪だるまをスマホの待ち受けにする。この先、待ち受けが変わるとしても、ユリ子関連の写真か、或いはふたりの子供の……]
吐く息が白いね。
[なんて、当たり前な事を言いながら、上気した君の頬を盗み見る。ずっとこんな風に、幸せな顔でいて欲しい。ぼくにとっては誰よりも可愛くて、誰よりも愛しい、大切な、ひと。
永遠は無いと知っている。それならそれで、少しでも長く共に歩きたい、君と、ふたり**]
[昴との帰り道、2つの白い息が風に流れて一つになる。]
ほんとだねー
[話す言葉の息も白く。
時折こちらを見る昴に、タイミングよく目が合えば微笑み、目をそらされればしばらく顔を見つめ。
あなたの目に私はどう映る?私の目には、二人だけのときにしか見せない穏やかな笑みが映っている。
この昴の笑顔をずっと見ていたい。
この世に永遠がないことを知るほど、悲しい経験はまだしていない。
それでも、楽しいことは二人分、悲しいことは半分に、そう願いつつ、昴と歩む、雪の道**]
『嬉しい。』
『言っちゃって良いのか、迷ってたんだ。』
『部活、今日は終わったけどまだ学校いる?』
『いるなら、一緒に帰ろ。』
[風音のためなら、って言葉を反芻しちゃって。顔が赤くなるのを感じているけれど。
恥ずかしいなって思うのより、キミと一緒に帰りたいって思う気持ちの方が、強いんだ*]
── 2度目の春 ──
[二人で迎える二度目の春。
約束通りあなたと桜並木を散歩したの。
11月のあの日歩いた桜並木は満開の桜が彩っていて
花筏の川面は一面のピンク色だった。
私の胸を彩る鍵も。
私の腕を彩るピンクも。
全部全部溶け合って。ピンク色の世界を二人で、あなたにピッタリ寄り添って歩いたんだ。]
綺麗だね。
……ありがとう。
[なんのことだかあなたには分からないかもしれない。
でもね……伝えたかったんだ。
ありがとうって。*]
『えー。(羽で泣き真似するインコのスタンプ)』
『喜ばないわけないでしょ!』
[でも、「予定埋まったからね」と父さんに釘は刺しておこうと決意した]
『今屋上。部活は今日は終わりー』
『雲が綺麗だよ。』
[ここに来る、といわれればきっとそのまま寝転がって空を見上げて。
どこかで待ち合わせになれば、おっとり刀で向かおうと*]
― 桜ノ雨 ―
[高校二度目の春。
一度目は独りで。桜舞う中、色なんか瞳に写すこともなかった。
二度目は二人で。桜舞う中、瞳に映るのは桜をの桃を映した貴女の笑顔。
ずっとずっと、二人でいたいと歩いたあの川辺は、花の雨に染まって。
一面を覆う桃と薄紅の中で、愛里ちゃんの体温と笑顔だけが、映えて見えたんだ。]
お礼をいうのは僕なんだけどなー?
ありがとう。
[にっこり笑って、寄り添ってくれる恋人に言葉を返す。
お礼を言いたいことが多すぎるんだ。これまでも、いまも、これからも*]
[あなたが私に微笑んでくれるから。
ありがとうって返してくれるから。
眦を細めてあなたを見詰めて、組んだ腕をぎゅって抱き締めた。
あの春の日に、私を見付けてくれてありがとう。
少しだけ遅れたけど、私もあなたを、見付けたよ?]
お腹空かない?
公園でお弁当、食べよっか。
[石組みの少し小高い公園は、花見客もいたけれど。
地元の小さい公園だから、スペースは十分にあったの。
子ども達が駆けまわって遊んでる。
うららかな春の日に、約束通り、お弁当を作ってきたよ。*]
[愛里ちゃんが抱きしめてくれるから。
愛里ちゃんのそばにいさせてくれるから。
見つめる瞳を見返して、そっと額に口づけた。
あれから一年。
無色の世界の中で、たった一人見惚れたひとが、隣にいてくれて。
本当に、ありがとう。]
お腹空いた。空いてなくても今空いた。
食べよ、愛里ちゃんのご飯美味しくて好き。
[目を細めて、愛里ちゃんの笑顔を見つめて。
少し離れた小さな公園だからか、人気もまばらな中。
小さなベンチに並んで座ろうか。
ラフに巻いたストールが汚れないように、もう一度首元に巻き直してからね*]
[桃君と並んでベンチに座って。
あなたの仕草に目を細めるの。
ハラハラと舞い散る桜は公園にもたくさん植えられていて。
ベンチの上も桜の枝が覆って居た。]
へへっ。今日はね。から揚げと玉子焼きと、ポテトサラダです!彩はブロッコリーとミニトマト!!
から揚げ大好物だから、お母さんと一緒の間に覚えておきたかったの。
2度揚げしてるから、火はちゃんと通ってると思うよ?
おにぎりと、ラップサンドもあるから、いっぱい食べてね。
[そう言って微笑みかけて。]
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