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― カジノ『パラダイス』:支配人室 ―
[怪盗が去った後もカジノは熱気に包まれている。そんな中、支配人室だけは重苦しい空気に支配されていた。
仁王立ちの警備リーダー、その向かいには椅子の上で真っ青になっている支配人。
支配人は未だ、悪事がすべてバレたという現実を受け入れられずにいるようだ。しばらく頭を抱えていたが、何か活路を見出したのか少し顔色がましになる。]
「そうだ、お前。
もしもその証拠を握りつぶしてくれるなら、
今回の報奨金の半分をやるぞ!」
[だが警備リーダーはその提案を鼻で笑った。ポケットからボイスレコーダーを取り出し、軽くふって見せる。
支配人は顔を歪め、ぎりりと歯をかみしめた。]
「ちくしょう!
なんで俺ばっかりこんな目に!」
[とわめき散らす支配人をよそに、警備リーダーは支配人の端末を操作し、証拠となる情報を集めていく。]
「くそっ、やめろ!」
[この期に及んで邪魔しようとする支配人だったが、巨躯の警備リーダーにかなうはずもない。あえなく床に転がされた。]
── カジノ ──
[そうして、ハイレートフロアも一頻り見終わったか]
…、大体回ったっぽいけど……
どーする?
[薄い蒼のサングラス越しにベルを見遣り尋ねる]
ブラック・ジャックだっけ……?
そっちの方で暫く遊ぶならそうでもいいし…
少し、俺、休もうかと……
[視線が緩く揺らいでいる。
ベルの返答はどうだったか?
まだ暫し共に行動するも良し、逆に暫し別行動をとる場合は、待ち合わせ場所なり、何なり定めて別れたろうか*]
[やがて全ての証拠を入手した警備リーダーは、低い声で支配人に告げる。]
「じきに迎えがくる。
首を洗って待っているがいい。」
[支配人は頭を抱え、床に崩れ落ちた。]
「う……うあぁぁっ!
騙されたんだ。私はっ。
あんなガラクタだと知っていたら、
カジノの資金に手を付けたりしなかった!」
[Cocの顧客リストには支配人の名も乗っていた。どうやら、支配人が熱心にコレクションしていた品と偽り、大金で贋作を買わせたようだ。]
「私は、私はっ――!うぅっ!」
[支配人の嗚咽が室内に響く。警備リーダーは何も語らず、冷ややかに支配人を見下ろした。]*
………
[声が出なくなるまで、叫んで。
疲れ果てて、顔は俯き、肩が、苦しげに上下して。]
…………ってぇ…
[もう銃声の幻聴は聞こえていない。
頭が痛いのは、ずっと泣き叫んでいたせい。]
…め…いた…
[まだ、どこか苦しい。
けれど、さっきより、ずっと、すっきりした。]
…つ……かれ…た…
[声は掠れて、ほとんど出ない。
座り込んだまま、片膝に乗っけた腕へと、顔を埋めた*]
ー オークション会場 ー
ボクはそろそろこれで。
『お疲れ様でした。 他のゲームも是非見ていってくださいね』
[しばらく勝負を繰り返し、ふとした時に立ち上がる。
壁近くに寄って背を預けて周囲を眺めるだけにする。少し離れたところに見た事のある緑髪がディーラーをしているのを見かけた>>+149
黒い燕尾服のままだと調子が狂う。 気になることもある。 しかし事件は解決した、真相は解明された。 あとは待つばかりなのだ]
………あーもうっ…
[ガリガリと頭をかく。 バサりと髪を結っていた紐がほどけ落ちた。]
[ピンとチップを1度コイントス。 特に意味は無い。もう一度コイントス。 くるくると回るコインを見つめながら、思考を続ける。]
[コインがまた一度舞った*]
─ ハイレートエリア ─
[ロールエリアが片付けられ、テーブルの上にスーツケースが開かれる。
現れたのは数多の梟人形。
年代は様々のようだ]
「さぁ好きなのを選んでくれたまえ」
…好きなのを、と言われてもな…。
[しかし賭けに負けたのだから買わざるを得ない。
仕方なく1つ1つ確認するように梟人形を見ていった]
[その中で、1つの人形に目が留まる]
………んん?
[数ある梟人形の中からそれを拾い上げた。
仲介人が満足げに笑っている]
おいドライ、これってもしかして……
「え? …………あー!?」
やはりそうだよな!?
[端末を取り出し、画像の梟人形と見比べる。
模様やデザインは寸分違わぬものだった]
「ミスター、これってどこで……」
「ここを出入りしている者が買い取って欲しいと言ってきてな。
4・5年前だったかねぇ、作られたばかりの割には汚れていたが、手入れすれば十分売り物になりそうだったのでね。
買い取ったのさ」
そいつ、他に何か言っていただろうか?
「そうだねぇ…オークションの種にもなりゃしねぇ、なんてことを言っていたかな。
宛が外れたような物言いだったぞ」
オークション……もしかして。
[これもまたCoCの仕業では、と。
大方プレミアものだと思って拾ったが、そうではなかったために売り飛ばしたと、そういったところだろう]
「それで、買うのはその人形でよいかね?」
……ちなみに値段は?
[一番気になるところを問えば、まだ5年しか経っていないものだから、とそこまで高い値にはならなかったよう。
リルは安堵の息を吐く]
「値切るのならばもう一勝負だな。
勝てば2割減、負ければ2割増だ」
遠慮しておく。
[負ける気しかしなかった]
[ともあれ、リルはノーマが所持していた梟人形を見つけ、手に入れることに成功する。
手持ちのキャッシュで支払いをし、安堵の息を吐くのだった*]
─ カジノ ─
[人の多さにやや目眩に似た感覚を味わいながら人混みを抜けていく。たどりついた卓は「ルーレット」。ヴェスから手ほどき>>58を受けて頷きはしたものの、飲み込むまでに時間がかかったのか、最初のゲームは周りの様子を見るだけだった。]
『赤の7!(セブン・レッド)』
[ディーラーの宣言に歓声と落胆の声が響く。]
なるほど、やっぱり7って縁起のいい数字なんだ。
[そんな気の抜けた発言をしながらもようやく仕組みは理解したらしい。比較的当たる確率の高いアウトサイド、黒にチップをおそるおそる差し出した。]
『黒の24!』
あ、やった、当たった!当たりましたよ!
[賭けに勝てば、ベルのもとへと配当が配られる。小額とはいえ、初めての勝利にベルは興奮気味にヴェスやハロルドへはしゃぎたてた。]
(なるほど、これがギャンブル依存症ってやつになるんだ。)
[興奮さめやらぬ中でもふいに浮かんだある人物の顔。昔ベルのカウンセリングを受けた女性だった。ギャンブルをやめたいがやめられない、そんな悩みをベルへ相談しにきたのだった。]
『黒の9!』
あらら、外れちゃいました。
[赤に賭けたベルのチップが没収されていく。先ほどの勝ちの分とで相殺されてはいるものの。外れた時の喪失感はまた大きい。]
大丈夫、大丈夫、節度を守ってやるなら遊びだから。
[結局数ゲーム続けた後もベルのトークンは増減を繰り返して最初とほぼ変わらずといったところだった。]
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