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[男が、バグ・シングに同情を抱くことはない。
それでも、言い知れぬものを覚えた。
目の前の3号は、不格好も良いところ。
……頭痛がする。
継ぎ接ぎの中、くず鉄のようなそれ、黒い蛇で結合された、美しい金属のイメージをみる]
[遠隔移動能力。
異能行使。
対象は、視界内3号コア・動力源。
3号胸部に異能の力が収縮し、撓み、ゴトリ、と近くの床へ落下した*]
[ヴェスの声に、振り向く。
その時みえた光景は、切り離された尾と対峙している光景。]
大きい方って…!
あぁ、もう!
[男の能力行使範囲は狭い。
それに、ヴェスのように連続で行使はできない。
走って、ラックまで辿り着けば、すぐにそれを床へと置く。
既にそのとき、ヴェスの声と共にムカデのようなそれの空間が歪んでいた。]
借りるからな!!
[ヴェスの方を見て、その歪んだ空間の一部と、
爆弾を巻き込むように空間を交換する。
ヴェスの元を離れた空間だ。対象は定められていない。
巻き込まれないように、ダンっとその場を離れる。
爆弾とムカデ尾の目的地は同じ。
男は起爆スイッチを押した。]
オホホホホ、出るわ出るわの大豊作じゃない。
[アンプル精製、大量の偽機械生命体の開発設計図、調査班の襲撃計画等々、ドームの警備隊が飛びつきそうな『特ダネ』がボロボロと手に入る。]
これだけ挙げればユウヅキやアタシのビル襲撃なんてニュースになりやしないわね。
[メインコンピュータから送られる情報はそのままヴェスにも転送され続けている。]
オーケー、ここは用無し!
お二人さんに合流よ!
[アデルン1号を掴むと部屋を後にする。警備システムは完全にアデルン1号に掌握されている。ドアの開閉から空調まで、このモフモフのゲテモノの采配一つだった。]
[響く爆発音。
だが、まだ、それは立っていた。
そこで、ヴェスが何かに気付く。
その手で投げられた手榴弾は、その胸部装甲を飛ばした。]
……ヴェス?
[どこか様子がおかしく見えるヴェスの名前を呼ぶ。
それは聞こえたか聞こえていないか、
ゴトリ、音がした。
それと同時、ヴンと何かが落ちるような音がし、
3号は、ギシ、ギシと両腕を垂らし、両肩の赤い光は消える。
今度こそ、ゴールデンウロボン3号は動作を停止した。]
ヴェス、お前、
大丈夫か?
[近寄りなが、そう声をかける。
そこに、まだ動くコアを見。
"コア"を持って来いって言ってたが…]
……
[棒代わりのナイフ状の腕を振り上げて、
ヴェスが止めなければ、それを破壊しただろう。*]
―― 中層 D-327 ――
『――― エル……、ノエルーーー!』
[しばらく歩いていればその声はノエルの耳に届いてきた。
表情をぱっと明るくし、声がより大きくはっきり聞こえる方へと、
とにかく進む。進む。
そうしてようやく出会えた。養い親に。
枷を付けられて転がされている様はタブレット型端末のモニターで見せられたのとほぼ変わらず]
ここまで来るのに色々あったんだがとにかく……、
助けに来た。
[養い親が苦笑するのをよそに枷がどうなってるのかチェックする。
鍵はひとつ。電子ロックの類ではない]
『鍵、は……こん中のどっかに隠したとか言ってたが』
……そんなまどろっこしいことしてる暇があると思うか?
[ばっさり断言すると片手を人差し指だけ立てて、
床を指差すような形で軽く振る。
射出された切断機能のない短い鋼線を手に持ち、
枷の鍵穴に侵入させてかちゃかちゃとやり始める]
『ノエル……お前はどこまで知っている、ヤツらの目的を』
……そうだね、ヤツらがとにかくすごい機械生命体を造ろうとしてることは知ってる。
それを使って、ドームの支配に乗り出そうとしてるんじゃないかってことも。
『だいたい正解だな、だがヤツらの思惑はそれだけじゃないように思えてならない。
奴らがバグ・シングじみたモノを造り、必要あらばけしかけているのも、
それが何らかの目的ではなく、
手段に直結するからじゃないかと……』
[しばしの沈黙]
『とにかくその様子なら知らなそうだから言っとくしかないな……』
[男は口ごもる。その理由は、
ノエルに余計なことを思い出させやしないか、というものだ。
ただでさえ実の親に置いて行かれた記憶が長年色々とあとを引いていたのを散々見てきたのだ。
だが、意を決して告げる]
『ヤツらの目的……それはお前だよノエル。
詳しいことは知らん。
僕に何かを依頼しようとした奴は、
前文明の遺跡から発掘された技術の再現のために……とか言っていたが』
…………。
じゃあ、養父さんから依頼があたしに回されたのは……、
『お前を手に入れるに都合がよかったから、ってところか?
何にせよお前、奴らの手に渡っちまったら無事じゃあ済まないだろう』
[かちゃり]
[話しつつも手は止めていなかったらしい。
鍵の外れる音が響く。
枷を外され自由を得た男は祈るような気持ちでノエルに振り返る]
ふ、……ふふふふふふ……、
『!?』
[男が見たのは悪そうに笑うノエルの姿だった。
これは驚くしかあるまい。
程なくしてすぐにいつもの表情に戻ってノエルは告げる]
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