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イライダ は 勉強熱心 ポラリス に投票した。
勉強熱心 ポラリス は イライダ に投票した。
強がり トロイ は 勉強熱心 ポラリス に投票した。
武術指南 アミル は 勉強熱心 ポラリス に投票した。
勉強熱心 ポラリス は村人達の手により処刑された。
今日は犠牲者がいないようだ。人狼は襲撃に失敗したのだろうか。
暗雲が去り、まぶしい光が降り注ぐ。――全ての人狼を退治したのだ!
[どれだけの血と涙が流れようと、どれだけの命が犠牲になろうと。
陽は沈み、陽は明ける。
『奇跡の時』が終わりを告げ、代わりに続いた無惨な夜。
その無惨な夜が明けた朝。
希望の朝陽は人間か憑狼か……希望の光は必ずどちらかを照らす。
誰が残ったのか? 本当に本人なのか?
モノガタリの最後は決まってあなたに問い掛ける。
『who are you?』と**]
[朝陽を浴びて溶けかけた雪が枝から落ちる。]
『皆様ご参加ありがとうございました。お疲れ様でした。
灰は解禁となります。
ご自由にご歓談下さい。』
[雪が落ちた痕は、涙の様にも見えた**]
─ アナスタシアの部屋 ─
[黒い袋が無情に並び、管理していたリー・リーさえ冷たい遺体の列に加わっている。
アミルは入口付近に。ポラリスとイライダの動向を目端に入れつつ、ドラガノフに戻ったと思われる一体の前に膝まずいた]
……おっさん。
[喉を裂かれ、腸を貪られたその姿。
その傷は、目から離れない偽りのミレイユのモノと同じに見えた。
やはり、記憶と同じように、表面の姿は入れ替わっても傷は当人に付いたモノが受け継がれるのだろう。ならば、あの日>>4:156なぞらえ傷のうち、違和感のあった肩のモノは、もしかしたらドラガノフが。
そのまま感傷に流れそうになるのを振り切って、倒れて見届けられなかったリー・リーの処刑について聞こうと口を開いた]
……先生。
リー・リーをやったのも、あんたか。
その時、『ドラガノフ』だったアレは立ち会っていたのか。イライダは?
……票数が割れても、迷わなかったのか。
[あの日イライダに入れ替わったなら、傷付いたうえに抵抗する気のない『ドラガノフ』とはいえ、庇われたのを利用して仲間へ橋渡ししただろう。
白出しで場をコントロールしようとしたなら、襲撃との噛み合いも悪い。
4日目に成り代わり占い師の立場を利用するなら、2狼いるうちに誰かに黒を出して疑心暗鬼を煽るべきだった。
己の命さえ駒にして盤面に向かう奴らが、博打のように半端に潜伏幅を狭めるだろうか。
そんな疑問をぽつぽつと発する]
[姿を取り戻していたのは、当然ながらドラガノフのみ。リー・リーやテレーズの亡骸を前にして、彼や彼女はどうだっただろうか。
ひとりひとりじっと見つめてから、ポラリスに声をかける]
なぁ。
[一粒のクルミを放って渡した時のように、軽くなった刺繍の袋を投げた。静かに降る雪のように、ふわりと『彼女』へ向けて]
……お前は、誰だ。
[ここに、ポラリスはいない。そう確信した。
結社員としての彼女も崩れていく真白な少女も、この世には。
オレは、まだもう少し逝けないから。投票用紙を投じるように重々しく、死者から1歩離れて剣を引き抜いた*]
− 夜明け −
[ミレイユにそっと寄り添ったまま建物に視線を投げた。
あの中にはまだ魔物が残っている。
残してしまった若者たちは真実に辿り着けるだろうか。]
……あいつらの未来も……こんなに白ければ良いのにな。
[まだ外に出るには雪は深い。
この雪の様に、彼らには悲しみと絶望と苦悩が
降り積もっているのだろうか。]
本当に儂は何も出来ないな。
[実感の無い手でミレイユの髪を梳いてやる位しか。]
[生者に関われなくとも、向こうからの感覚は届くのか。
気付くと流れて来た危険な匂いに思わず顔が歪んでしまった。
これは食堂からだと思うが、食べ物の匂いか?]
ミレイユ、判るか?
食堂が大変な事態になっているな。
お前、自分が半人前だと思ってるか?
人狼を見つけ、裁き、人間を守る。
確かに結社員はそうで無くてはならんが。
その結社員達がしっかり働ける様に食事や薪や風呂や
見えない、当たり前の事を続けて支えてくれている。
お前やフィグネリアも立派な結社員だ。
[陰気な女だと思っていたが、フィグネリアも
しっかりやってくれていたな。
機会があれば謝っておくか、儂が覚えていれば。]
お前は立派な結社員だ。
[だから、自分の、兄の、他人の死を認めろ。
そこまでは言葉が出なかった。
結社員だから、最後の日をしっかり見届けてやろう。
そんな鼓舞する様な言葉、何処の口で吐けると言うのだ。]
祈ってやろう。
[勝利とは言えなかった。
これだけの犠牲を出して何を勝利と言うのか。
せめて人間達が生き残る事を。]
……皆の姿を見てみるか?
[雪の世界にいても寒さ等微塵も感じない。
だが魂が凍り付く様に、張り付くものは何だろう。
気付かないふりをしたまま、ミレイユへと問い掛けよう**]
― アナスタシアの部屋 ―
ああ、そうだよ。リー・リーも、やったのは俺だ。
あの時何人かいた気もするが…ドラガノフは多分いなかった、か?イライダも見た覚えは無いような…
あまり覚えていないな。あてにするなよ。
[トロイに声を掛けられ>>3、思考を中断する。
そもそもあの時誰が生きていたのかさえ曖昧だ。
続く言葉にはわずかに目を細めて]
迷えば、あいつらの恐怖が長引くだけだ。
あの日は偶然リー・リーが選ばれた。俺が決めたわけじゃない。
詰りたきゃ詰れ。それで気が済むならな。
[トロイの声が詰問のように聞こえ、少しばかり喧嘩腰に言い返す。
が、その理由は痛いほどに分かっていたので、彼が剣を抜く>>5のが見えたとき、それは自分に向けられるのだろうと思っていた]*
どうしたらいいのかもわかんないっ。
わかんないけどっ。
[すんと鼻をすすって、両手で涙を拭う。
起こった事全てを受け入れるとは言えない。
けれど、何もなくなったと思ったのに、酷い臭いとはいえ生きてる気配が此処に届いた。]
判っているのは……憑狼だと言いたいが。
[先程吹雪に消えた黒い女に、知性等は残っていなかった。]
案外奴らも、何をしてどう生きたいのか、なんて。
判っておらんのかも知れんな。
[奴らの矜持でもあれば、反論なり憎悪なりぶつけられたのに。
虚しさ以外残らない手応えがまた、儂の不甲斐無さを煽る。]
生きている事を実感させる料理人はきっと人間だろう。
[誰が犠牲となったのかまだ知らない。
ミレイユの問い掛けに、儂の予想だと返して。]
結末、見に行くか?
大丈夫だ……お前の兄ではないが、儂が傍にいてやろう。
[数日前までなら笑い合っていた仲間たち。
もう二度と笑い合う事は無いかもしれん。
それでも生きている顔が見たい。
本当に、儂は業が深い。
傍にいて欲しいのは儂の方だと、
ばれないようにミレイユの手を握ってやろう。]
―アナスタシアの部屋―
ドラガノフ、ごめんなさい、ごめんなさいね…。
姿しか、還してあげられなくて…。必ず仇はとるから、ね…。
[元の姿に戻った喰らわれたドラガノフの遺体の傍ら、
片膝をついて。彼がアナスタシアとシュテファンにしていたように、
そっと冷たい頬に包む様に触れる。
涙の零れそうになるのを唇を噛んで堪えた。
彼の命も笑みも冗談を言うあの声も、二度と還らない。
遺体を改めるトロイ>>2に問われれば]
…私はリー・リーの最期には、いてあげられなかったわ。
ドラガノフだった獣が立ち会ったかも、分からない…
[トロイが傷つけた怪我の手当をした後。ドラガノフの姿を奪った獣
を先に行かせ、薬を飲んで意識を失っていたから。
ややあって、トロイが確信めいた口調でポラリスに“何者か”と問い
剣を抜くの>>5に、はっと息をのんだ**]
―― →アナスタシアの部屋 ―― <<『ポラリス』>>
……ええ、どこにも見つからなくて。
……凝ってましたね、本当に……。
テレーズさんの家に伝わっていた魔よけの刺繍らしいですよ。
[無くしたかというトロイの言葉>>1にそう返す。
本当に凝ってしまった。まだ憑依したての貴族だった頃を必死に思い出しながら『テレーズ』は……『私』は作ってしまった。
ただ、ポラリスに信頼させる道具、安心させてから落とすだけの道具なら、そこまで凝らずにそれらしいものにすればいいだけの話なのに。
『テレーズ』ならそうしただろうから?テレーズはここに来る前にいなくなっているというのに?
なら『ポラリス』である今の『私』がその袋に執着するのは?
ポラリスに持っていてもらいたいというのなら、それは『私』……『テレーズ』の願望では?
分からない。今の『私』が何なのか、分からない。
なぜ『私』はあの袋を持って逝きたいなどと思ったのだろう>>5:*2]
―― アナスタシアの部屋 ―― <<『ポラリス』>>
[死体の安置室となっていたアナスタシアの部屋までトロイについていき>>5、亡骸を確認していく。そこには首を無くした『私』……ではなく『テレーズ』の死体があった。その遺体を感情を込めずに『ポラリス』は見つめているだろうか。
ふと、トロイに声をかけられる]
……え?……ぁ。
[投げられた刺繍の袋を慌てて両手で受け止める。その顔は無くした大切な物をようやく見つけたような顔のように見えたかもしれない。
そして、投げかけられるトロイの「お前は誰だ」という問い]
……誰、なんでしょうね、私は。
[本来なら、「何を言ってるんですか?」「意味が分かりません」と、とぼけるべき所だったかもしれないが……。
なぜか素直な言葉が口に出た。
剣を引き抜いたトロイの方を見ずに、手に持つ袋の方をじっと見つめながら呟く]
……『私』は誰?
[思えば、なぜポラリスから入れ替わらなかったのだろう。
疑わせる相手が減る>>5:2と言ったが、結局占い師であるイライダが残っていれば、疑える人数は変わらないのだ。
それなら変わるべき相手はいただろう。
今朝の事もそうだった。なぜ『テレーズ』の頃の習慣を『ポラリス』で行った?
『私』はもう『テレーズ』ではないというのに……。
『私』の事なのに『私』が分からない]
あんたが人狼だって言うなら殺してやるよ。もう殺さなくていいように。
[狂いに近い感情の不安定さ、じわり滲み来た苦痛に、皮肉にも一貫した彼の色を感じたから、同じ後悔を共有しているのだと信じた]
……でも、オレは、自殺志願者を殺す趣味はない。あんたが『アミル』だと、思ったから。
あんたこそ、詰ればいい。
どーして全部自分にやらせたんだって。それで気が済むんなら、ずっと後悔の瓶詰めにでもなってりゃいい。
──後は、オレがやる。
[けれど、後悔は等しくても、償うのは、許すのは自分にしか出来ない。だから、剣を取る。もう子供のまま、任せきりの自分は許せなかったから。
そして、どこか安堵したような『ポラリス』>>19を見た。その声に、言葉に複雑な顔をしながら]
ずいぶん、素直に認めるんだな……。
お前が、訓練場でオレにそれを預けたポラリスじゃないって。
[ぽつりと零れたそのさま。まるで、ポラリスの口を借りたテレーズそのもののよう。『ドラガノフ』に笑って逝かれた時のように、静かに震えを感じた]
憑狼。ケダモノ。魂と肉体を弄ぶ人外。
…………オレたちの、敵…だろ。
[どうしようもなく相容れないから、討つ。恐怖と血肉を喰らうべき獲物だから、弄ぶ。そういう、モノではないのか。これは、一体何なのか]
……ポラリスの姿で、テレーズの魂を騙るんじゃねえ…!
[『テレーズ』に引き摺られたようなその様子に、一度に二人に剣を向けるような罪悪感がじわりと襲ってくる。
扉のそばのアミル、ドラガノフのそばのイライダを庇うように立ちふさがり距離をはかったものの、剣の切っ先には戸惑いが僅かに滲んでいた*]
……認める?
[先までの思わずつぶやいた自分の言葉を反芻し]
……ああ、確かに認めてるような発言ですね。袋、本当にトロイさんが持っていたんですか。
……返してくれてありがとうございますね?
[最初に何食わぬ顔で返してとでも言っておけば良かったのだろうか。今となっては意味がない仮定だが]
……それでどうするんです?
あなた達をこうなるまで追い込んだ憎い憑狼が目の前にいますよ?
……その剣で刺しますか?それとも首を吊って殺しますか?
……昨日のように『ドラガノフ』を殺した時のように。
……リー・リ―やフィグネリアを無駄に殺した時のように。
[そう言って、体を差し出すように両手を広げてトロイの方を向く。
憑狼。ケダモノ。魂と肉体を弄ぶ人外。まさしくその通りだ。『私』達はまさに人間にとって、トロイやポラリス達にとって敵である。
相容れる事はこれまでも、これからも……ない、はずだ]
……ポラリスの姿でテレーズの魂を騙るな……ですか。
……じゃあ
[戸惑いの滲む剣などないかのように、獣の瞬発力でトロイの目の前まで移動し、トロイの首と剣を握る手を獣の膂力でつかむ。アミルとイライダは見守るだけだったか、それとも……。ともあれ]
トロイ、あなたは『テレーズ』を……『私』をどれくらい知っているというの?
『私』はここに来た時からすでに『テレーズ』>>1:*5で、あなた達は以前の『テレーズ』を知らない。
そんなあなたがテレーズの魂を騙るな……ね。
……面白いじゃない。
[そういう『ポラリス』の顔は幾分も面白そうな顔には見えないだろう。いつの間にかテレーズの頃の口調に戻り、言い終わる頃にはトロイを掴んでいた手を離し、背を向ける]
……『私』は『私』……?それとも『テレーズ』……?
[片手で頭を押さえながらぶつぶつと呟く声は周りに聞こえたかどうか]
[やめろと叫びたかった。
人を殺すあの感覚を、知ってほしくはなかった。
けれど、自分達を庇うように立つ>>26トロイの背中は、小さな子供から大人になろうとしていた。
守られてばかりは嫌だと、全身から血を流しながらも、古い皮を脱ぎ捨てようとしていた。
だから、止めることはできなかった。
たとえ声を上げられても、かわりに剣を握ることはもう出来ない。
今は信じるしかない。自分にはない、彼の強さを。
異常な静寂の中、低く声を発する。乾いて掠れていた]
俺は…ポラリスが狼だと思う…
[自分が「処刑」を行ったときも、「投票」という手段で皆が罪悪感を担い合った。
彼が手を下そうとするのなら…今出来るのは、その判断の一端を担うことだ。それが間違いだった時、共犯者になることだけだった]*
[嘘だと思いたかった。
『ドラガノフ』のように、最期に心をなぶりたいのだと。家畜の味をよくしたいのだと。けれど、彼女の表情と口調>>28は愉しむ事を忘れているように見えて]
て、れー……ず…。は、げほっ!
[そのまま一息に引き裂かれずに済んだ体の代わりに心を突かれた気がした。
最初から偽りの平穏だったのか? ポラリスを可愛がり、いつだって分かりやすく教えてくれた彼女は、幻想だったか?]
それが、それが本当なら……。
オレが知ってるのは、テレーズじゃなくて『あんた』だったってわけだ…。
は、はは。
[答えは、否だった。
手の震えを、少女の肉体にも淑女の精神にも不似合いな膂力に痛め付けられたせいだと思えたら、よかったのに]
なんなんだ。なんなんだよ。
お前は…お前らは、なんなんだ……。
これだけ皆死なせて、傷付けたうえで、まだ足りないってのか。オレに、残った数少ない『仲間』の命を選べってか。
はは…は……わけ、わかんねえ。
[世界を創りたまいし御方は、なんてご趣味がよろしいんだろう。くそったれ。
相容れようがないから、どちらかが滅ぶまで騒動は終わらない。結社として取るべき行動は決まってる。何も持たないトロイとして精一杯守るために何をすべきかだって。
自分の世界の根底がひっくり返ったようで、それでも自分にとっての『テレーズ』だって大事な仲間だった事が否定できなくて、呟き>>28に掠れた笑いが混じった。あぁ、やっぱり皆を守る事なんて、できない]
[その声にハッと我にかえり、イライダ>>5:115のように世を去った彼らの名に祈りを捧げてから、無防備な背>>28に、同じく無防備に近付いた。
少し考えてから、剣を置いてナイフに持ちかえる。少女の首に宛て、抱き寄せるように肩を引き寄せて、ようやく口を開く。
騒動の当初>>2:162は、万一テレーズが憑狼だったなら、その姿の持ち主があの世で怯える間もなく一瞬で、と思っていたけれど、もはや取り返しのつかないモノが多すぎる今、せめてアミルとイライダの命を、獣心のどこかに宿るテレーズの魂を僅かでも守れるなら、自分が切れる唯一のカード>>3:137くらい切ったって構わなかった]
今、この世にはあんたが誰かはっきり言ってやれる奴なんて、きっといねえよ……。
少なくとも、オレにはもう…何にもわかんない…… 。
[目の前にはポラリスの姿があるのに、ここにあの日信じたポラリスはいない。首のない遺体と成り果てて、死後の行く末など祈る事しか出来ない無力な生者には手の届かない場所にいるのだから]
終わりに、しよう。逝こう。無駄死には嫌だから、刺し違えても殺す。けど…。
テレーズ…オレは、皆の事もあんたの事も、ただの報告書1枚に終わらせたくない……。
[何も還らずとも、彼らに遺されたからには遺したかった。
ただでさえ本部がどうするとも知れないのに、この隙を逃してアミルとイライダの命まで危険にさらすのは躊躇われたが、仲間だったテレーズに、せめて伝えたくて]
「 」
[『ポラリス』は、テレーズはどうしたろうか。
何にせよ、目前の人を、仲間を殺す覚悟を決めて。
最期にそっと囁きかけてから、鋭く刃を滑らせた*]
……『私』が……『私』達がなんなのか?
……憑狼よ、そう『私』は『憑狼』……。
そう、まだ……足りない。『憑狼』なら人をただ殺していく。
[呟くような返答は、まるで自分に言い聞かせているように見えただろうか。
ぶつぶつと呟きながら振り返り、その右手は赤黒い獣のそれへと変化させた。
同時にトロイによって肩を引き寄せられて首にナイフを当てられた>>35]
『私』は誰か……はっきりわかる人は……いな、い?
――じゃあ『私』はいったいどこにいるの!?
ここにいる『私』はいったいなんなの?!
[『憑狼』とも『テレーズ』ともイメージに合わないような激昂。
その怒声と共にトロイの顔を真正面から見据えながら獣の腕で頭を掴む。
即座に潰されはしないだろうが、それでもみしりと嫌な音がなったりするだろうか。
『私』の中にある『憑狼』と『テレーズ』の部分が混ざりあい、『私』の定義が曖昧になる。
『私』という存在があやふやになれば、視界もぐらぐらとし、足元の感覚も覚束なく、腕に込める力も抜けていっただろう。
言われた言葉>>36の半分も頭に入らなかった。だが、]
……やるなら躊躇なくやりなさい。結社員なのでしょう?
[トロイの最後の囁き>>37にだけは、そうはっきりとしたテレーズの口調で返す。
そして、トロイによって滑らされた刃によって血の花が咲いただろう。
傷口と口から血があふれ出し、目の前のトロイの体を汚すだろうか]
……ぉ……ぁぃ……
[トロイの頭を掴んでいた獣の腕は力を無くし、血を床にまき散らしながら崩れ落ちただろう。
やがて、『テレーズ』の首無し死体と『ポラリス』の血まみれの死体は、ほどなく赤い靄に包まれる。
その靄がおさまれば、『テレーズ』の死体はポラリスの死体に。
ポラリスの死体は、真っ赤な長髪の少女へと変貌した。テレーズの存在など最初からいなかったかのように、資料室の主の痕跡は無くなっていた]*
憑狼どころか、人狼さえ初めてだものな。
怖くて当たり前だ。
恐怖から人は逃れようとする。
恐怖に人は呑まれてしまう。
人も獣も、そうやって狂っていくのかも知れないな。
[何を恐怖と成すのか、それは人それぞれだろう。
死だけでなく、人に疎まれる事、人を信じられなくなる事、様々だ。
生き残って欲しいと願う人達が、それに呑まれないで欲しい。
それだけは切に願う。]
行こうか……。
[どんな結末が待っているのだろうか。
黒髪の女が残したこの汚泥の様な感情。
彼らが死ななかっただけで、何1つ救われないこの感情が。
彼らに積み重ならない様に祈るだけだ。]
雪は……手に落ちるとあっと言う間に溶けてしまうのに。
[広げた掌に雪は留まるは無い。]
気付けば積り、家すら潰してしまう。
[少しずつ降り積もったものが、彼らを押し潰してしまわない様に。
彼らに積もったものを払ってやる手が無いのが悔しくて。
せめてミレイユの手を離さない様に、しっかりと握ってやった**]
[自分がいて、皆がいて、平和な日々がある。もう、どれも在りし日の姿を失って取り戻せはしない。
自分がどこで、何を思って、何者として生きるのか、自分は人間だからと胸を張っていられるだろうか。
少女の細い首にあてた刃で、『テレーズ』とケダモノの狭間で叫ぶ『仲間』を殺す手で、これからずっと、奪う事しかできないのに]
これからは、躊躇なんかしねーよ…。
『最初』が、あんたら、とか……もう、怖いもんなんか、ねーからな…。
[掠れた声での強がりは、果たして彼女に届いたろうか。
最期の声が、かつてテレーズがポラリスを呼んでは語り合っていた姿を思い起こさせるようで、掴まれた頭と腕の痛みに託つけて目を閉じた]
[どうして化け物の癖に血は紅いのだろう。
色が違えば、冷えた体液なら、何か何処か違うなら。]
苦しまずに済むのにな。
[ミレイユの手を握ったまま、赤が広がる世界を見た。
やはりテレーズが憑狼だった。
それでも鮮やかな色は人間の様で、割り切れないものを残す。
生き残った喜びや人間の勝利を高らかに謳う事など
出来るわけがない。
そんな事を言っていた結社のエラい奴らは、こんな光景を
知らないに違いない。]
全滅したのが人狼か人間か、それだけの違いだ。
いや……人狼が残ればきっと爽快に笑ったのだろうがな。
[残った連中の顔を見ろ。
これが真実だ。]
……頑張ったな……。
[不真面目な儂も、これでも本は読んだ。
経験値もそれなりにある気がする。
だが彼らへの言葉が探せない。
謝罪でも激励でも応援でも感謝でも怒りでも無い。
絞り出せた言葉は意味の無い、お飾りの様な言葉だ。]
本当に……よく頑張った……。
[いつも現実から目を逸らしてばかりだったが、
この時だけはしっかり見届けようと思ったのに。
ダメだな……目頭が熱くて、霞む**]
[私はいったいなんなのか。
>>38悲痛な声に対しても、フィグネリアは表情を変えない。]
[人の姿を借りて生きてきたモノ。
“自分”というものを持っていなかったのだろうか。
だからといって、哀れんだりはしないけれど。]
……私は、本当にちっぽけね。
[誰に望まれなくたって、自分は最初から最期まで“フィグネリア”だった。
それはとても幸せな事だったのかもしれないと、今更ながらに思う。
もっと早くに気がついていれば、あるいは。
――考えても詮無いことだ。
首を横に振って、払い除けた。]
[すぐ近くで、労いの声が聞こえた>>52,>>53]
…………。
[言葉が出てこない。
声をかけたところで、生きている者へ届くことはないとわかっている。
それでも、何と言えばいいのだろうと考えてしまう。]
……ごめんなさい……
[本来なら、自分も背負うべきだった痛み。
放棄して、何もかも押し付けて、ひとり幸せに死んだことが、ひどく罪深いことのように思えて、意味のない謝罪が零れた**]
いつもばかみたいに威勢いいんだから。
[恐怖にだって負けない、と。
現実を直視することに震えながらも信じられた。
信じられたから歩けた。
けれど―――。]
[その悲惨な現場は少女の知識と想像の両方を遥かに超えるものだった。]
…………ひっ……。
[血塗れで倒れているのは『テレーズ』。
それに幾つも並べられている黒い袋は丁度人の大きさだ。
息を飲んで後退り、繋いだ手を後ろに引く。]
…………っぃぁあああああぁぁぁっ!!!!
[喉が張り裂けそうな絶叫が上がる。
生者には聞こえない絶叫が。
悲鳴を上げ続けながら、繋いだ手を更にがむしゃらに引いた。
固く強く握っていた手を振り払おうと。
この場から逃げ出そうと力の限り引いて。
不意に、その手がすり抜ける。]
…………っ…!
[ドラガノフはどうしたのだろうか。
少女は一瞬よろけ足を止めると、涙の溢れる顔で振り返り、一度、二度首を横に振ると再び雪の中へと走り出す。]
……お、に……ちゃん……!
おにいちゃん!
おにいちゃんっ!!
[もういないと聞いた、でも確かに雪の中で会った兄を呼んで。
闇雲に走る少女の小さな姿は、風に巻き上げられた雪にあっという間に覆い隠された。]
待て! ミレイユ! ミレイユ!
[儂はやはり愚かだった。
先程まで何も知らぬ少女に押し付けた現実は、雪崩のように
彼女を呑み込んで、押し潰した。]
何処に行く気だ!
[乱れた心のまま吹き荒ぶ風と共に消え去るのではないかと
恐れて、掻き消えた後を追う様に走り出す**]
え…………
[高い声、女性の悲鳴が聞こえた>>61
思わずそちらへ振り向くと、ミレイユの姿をしたドラガノフ……ではない、あれは。]
ミレイユ・セロンさん……?
[彼女の隣にいる男が、真のドラガノフか憑狼かを考える暇も与えられない。
錯乱した様子のミレイユが、ドラガノフの手を解いて逃げてゆく>>62
ドラガノフもまた、彼女を追って行ってしまう>>64
吹雪のような出来事を、フィグネリアは呆然と見つめていた。]
[私はもう、この凄惨な光景を目にして叫び声を上げられるほど、正常な感覚を持っていない。
少しだけ、彼女を羨ましく思った**]
/*
− アナスタシアの部屋 −
よし、ぼやぼやしてる時間はないな。
逃げろ。今すぐに。十中八九、本部の奴が近くまで来てる。
[表情を引き締めて立ち上がる]
ほら、立て、トロイ。しゃんとしろ。
あの啖呵でその様子じゃ、あの世でミレイユに冷やかされるぞ?
[揶揄うように言って、腕を掴んで引っ張り上げようとした]
血を洗い流す時間があるか…少なくとも服は変えたほうがいいな。
行くあてはあるか?なければ、あのおっさん>>0:182>>1:54の所へ行くのはどうだ?
ついでに言伝を頼む。絶対に戻って来るなって。
生き延びろよ。ま、あんたなら本部連中にも負けないさ。
[励ましを込めて、とん、と背中を叩いた]
[ついでイライダに近づく。少し心配そうな表情で、掴めるように片手を差し出した]
イライダ、立てるか。
リーリーじゃないんだ。オトモダチと話してないで、目の前の問題に集中してくれよ?
[おどけたように言ってから、少し真面目な顔になり]
少なくとも、あんたは今すぐここから離れろ。
無理は出来ないんだろう?どこか遠くに身を隠してくれ。
足止めはするが…いつまでもつかはわからない。
[落ち着いた声で、一言一言ゆっくりと語りかけた]
まとまっていると人目につく。ばらばらに動いた方がいい。
2人は先行してくれ。
俺は本部連中の足止めをして、後から追いかける。
門を開けてくる。その間に荷物をまとめておけ、いいな?
[そう言い残して、部屋を出て行った]*
― 正門 ―
[食堂の暖炉の上から鍵を拾う。ずしりと重たい感触が手に伝わる。
無音の廊下を通り、玄関へ出ると、すっかり雪が積もっていた。
仕方なく物置からシャベルを取り出し、門まで細い道を繋いだ。
通れるだけましという程度の道だが、なかなかに苦労した。吹雪が大分弱まっていたのが救いだ。
錠に鍵を差し込んで回す。
門の周りの雪をかき分け、全身の力で扉を開いた。
久しぶりの外の風景だった。
村の方では煙突の煙が上がり、真白な世界のなかで小さな染みのような人影が動いていた。
その向こう、遠い空には雲の切れ間が見えた。
差し込む光に、雪がきらきらと光っている]
ほらみろ、おっさんが仕事やめた途端にこれだ。
[なんだか可笑しくなって、つい声を上げて笑った]
[門の脇には、食料の配達箱が積み重なって雪をかぶっていた。
配達人も驚いたに違いない。何十年も開けっ放しだったのだから。
シャベルの先端を突っ込んで蹴りつけ、蓋をはがした。
なかからパンやチーズ、果物や干し肉といった調理の要らないものを選びだし、麦が入っていた麻袋に2つに分けて詰めた。
わびしいが、仕方がない。
当面の食料はこれでいいか。食堂において置けば気づくだろう。
他に何か使えるものがあったかと思案しつつ、建物の中へ戻った]
[どうして血は赤いのか。
疎ましく恐ろしいモノほど熱いのか。
あたたかな思い出も皆も冷えきって無惨に横たわっているのに。
父や『ドラガノフ』や『テレーズ』の、魂を揺さぶる死だけが熱となってかろうじて心臓を動かすならば。
これまで謳歌していた生は、柔らかな思い出は、これからゆく道は、なんの意味があるんだろう。掌を滑り落ちるばっかりなのに、手放すことさえ出来ないなんて]
[それから、イライダの体調を気にかけつつフラフラと『テレーズ』だった女のそばに近寄る]
……オレの知ってるあんたは、影ひとつ残さず逝っちまったんだな。
[複雑な思いと震えが走ったが、赤い靄の失せた体をそっと首のないポラリスの横に並べた。
袋の中から半ば出された彼女と手を繋がせる代りに、クルミの袋を介して獣と人を繋ぐ]
ポラリス、中身は死んだら地獄に堕ちる前に十倍返しするから。それだけ、先に渡しとく…。
[焼き付けずとも、きっとこの光景は死ぬまで忘れられないだろう。
痛む頭を押さえながら、横たわるひとりひとりの名を呼んだ]
[生者を眺めていたって、何かができるわけじゃない。
自分もミレイユを追うべきか。
そう思ったのに、アミルの声>>67,>>68に、足が止まった。]
“生き延びろ”……?
…………。
本当に……追いかけるんですよね?
[貴方だって生き延びるのでしょう?
杞憂ならいいのだけれど。]
[そうではないかもしれないと思っても、トロイのように>>73“許さない”とは言えなかった。
代わりに、祈る。]
(――何を?)
[生きて幸せになって欲しい。 になって欲しい。]
[“過去”を忘れて欲しい。忘れ 欲しい。]
[わからない。わからなくなった。
自分は彼にどうなって欲しいのだろう。]
[祈りのかたちに手を組んだまま、視線を宙へ泳がせた。
紡がれる死者の名が>>74、鎮魂歌のようだと考えながら**]
― 結社支部・数日後 ―
[誰もいなくなった食堂で、手慰みに藁を編んでいた。
何処で習ったかは忘れたが、器用に藁を糸で束ねては小さな動物を作り、作っては黙々と炉辺に並べた。
そろそろか。
藁の動物を火に投げ込んで、立ち上がった。
手にシュテファン・イエーガーの剣を下げていた。
廊下へ出ると、幾つかの部屋から炎が噴き出していた。
薪の蓄えが充分あったお蔭で、すぐに館中が炎に包まれるだろう。
アナスタシアの部屋の前を通った時、並んだ遺体が炎に呑まれるのがちらりと見えた。
死体の身元が不明になれば、少しなりとも時間稼ぎになるはずだ。
火の回りを一通り確認してから裏庭へ出た。
固い雪に膝をつき、剣の鞘を払う。
あの日は半分しか抜かれなかった狩人の剣。無念のこもった剣。
刀身に顔が映っている]
[『お前は誰だ?』
まるで呪いのように、その言葉と嗤った顔が消えなかった。
わからなかった。何のために生まれ、生きたのか。
悲しかった。腹が立った。
どうしても許せなかった。
許されたかった。けれど、贖罪の方法などなかった。
どうしても、許せなかった。
泣いて謝る相手はどこにもいなかった。
皆消えてしまった。ただ消えてしまった。
助けなど、もとより乞う資格もなかった。
もう疲れてしまった。
『また…皆や…てんなら…許さね…ら!』
呆れたような諦めたような笑みが微かに浮かぶ。
悪いな。その程度の恨みは今更なんだよ]
[曇天を仰げば、いつかのように雪がちらついていた。
ずいぶんと静かだ。いつからだろう、音が聞こえなくなったのは。
柄頭を地面にあてがい、切先をひたりと胸に押し当てる。
今までをかえりみることも、これからを思うこともない。
ただ、願った。
彼らの怒りが、悲しみが、これで少しでも慰められるように。
そして、叶うなら…どうか、どうか許して欲しい、と。
剣にのしかかるように体重をかけ、自身に刃を突き立てた。
激痛が胸から背へ貫通し、耐え切れずに呻き声を漏らす。
咳込むように血を吐く。立ち上がろうとした体がぐらりと揺れる]
[雪の上に横ざまに倒れ込んだ。
血から、息から、投げ出された手から熱が消えていく。
ゆっくりと閉じた瞼の向こうで、世界も静かに閉じられた。
かすかに開いた口が小さく何かを呟く。
やがて力尽きたのか、ぴくりとも動かなくなった。
一筋の冷たい涙がこぼれ、雪も融かさずに*消えた*]
………あなたは……
……“憑狼”で……『テレーズさん』、ですよ……
“私”と一緒にここで過ごしていた……テレーズさんですよ……
[繰り返し問いかける彼女に、私はぼつりぼつりとと呟く。
“私”にとってはどちらも本当で。
でもちゃんと『テレーズさん』との思い出は“私”の中にあって。
………ああ、そうか。
“私”も同じだ。
この支部で過ごした“私”はいた。
“結社員”らしくなかったところは、それも全部“私”で。
それが、皆にも見えていたのだ。
“結社員”でない“私”は、いたんだ。]
[ああ、だから私は、泣くことを許してもらえるだろうか?
共に過ごした人間側の勝利を。
共に過ごした人狼側の敗北を。
願った終わりが来たことを。
私の視界には、飛び散る赤と、この騒動の終わりがあった。]
…………おつかれさま…でした……
[この心は言い表すことができないけれど。
ただ一筋涙は流れた。**]
[うわあぁ!?なんだか火が回ってきたよ!?
事務所に駆け込むと鳩を逃がそうと頑張った!
でも指先は閂を空回って何もできない。
どうしよう!このままでは鳩が焼け死んじゃう!!
ぎゅっと目を瞑ると横に置いてあった花瓶の野ばらが弦を伸ばし、
閂を持ち上げた。
シベッタだ!!
ゲージから飛び出した鳩は暫く部屋を飛び回っていたけれど、
窓の隙間を見つけて逃げ出す事ができた。
鳩の後を追いかけて部屋を出ると、
外はまた雪が降り始めていた。
へこまない足元を見ると、見慣れた男が倒れている。]
アミル…。
ミレイユ!! ミレイユ! 何処だ! 何処にいる!?
[手を振り払い、兄を探して消えたミレイユ。
声を張り上げて探しても見つからない。
どれだけ探しただろう。
不思議な事に、雪は吹雪へと変わっていた。
何時の間に吹雪になったのだろう。
ミレイユはこの吹雪の中、何処へ行ったのだろう。
寂しくて心細くてずっと泣いている筈なのに。]
ミレイユ! ミレイユ!!
[どれだけ叫んでも吹雪の中に儂の声も呑まれていく。]
[不意に、吹雪が紅く染まった。
慌てて紅い吹雪の中心を見遣る。
そこには焔の柱があった。
平和の象徴であり、忌わしい惨劇のあった場所。
紅い魔物が舌を、爪を建物全体に這わせていた。]
いったい、どうして? 何があった!?
トロイは? アミルは? イライダは?
[止まぬ吹雪の中、何があったのか。
どれだけ時間が経ったのか。
彼らは、生き残った彼らは無事なのか?
ああ、ミレイユも見つからないのに。
儂は、儂は。]
ダメだ、燃えてしまっては。
[生き残った者達の間で何があったのか知るわけがない。
ただ残った彼らの安否が気掛かりで、
ミレイユも見つかっていないのに、
儂の足は紅蓮の吹雪の中へと消えた。
ごおごおと唸る炎の中。]
トロイ!? アミル!? イライダ!? ミレイユ!?
フィグネリア!? ポラリス!? リー!?
アナスタシア!? シュテファン!?
[渦巻く焔と吹き荒ぶ吹雪の中、呑まれたとも気付かぬまま
儂はただ、呼び続ける────永遠に**]
[重くも慌ただしく準備を終え、アミルへの気掛かりにひとつ首を振って、支部を出た。
いくらか落ち着いたなら、見つからずともミレイユとエトを探して、皆と一緒にしてやりたいと、無理にも気を奮い立たせながら。
熱く赤いモノが痕跡ごと彼を焼き払う事に、気付いていたならと。長く短い夜の物思いについてまわる後悔を、この時はまだ知らなかった]
私の元に留まるのは処刑に立ち会った魂だけだと思っていたけれど、
皆が理不尽だと思ってい訳でもないのかな。
どんな形で現世を離れたかは問題じゃないんだ。
アミル、
"君は、君の中で、君だけの答え"を持っているんだろう?
ならば先に進むと良いよ。
─ ??年後・とある小さな村の跡で ─
[体には数多の傷が増え、心はいくぶん乾いて熱を失いつつあった。傷付けたのも傷付けられたのも、獣より人間が多いのだ。少年の日に夢見た晴れがましさなど、どこにもない。
思えば、人生の中で最も豊かだった少年期の終焉から今まで、あっという間だった。ドラガノフを越える頃には、十年すら一日の夢と等しくなるのだろうか。そもそも、それまで軋む心を保てるのだろうか]
……昼過ぎには、出るぞ。夜には街に着くように。
子どもだけで森には入るなよ。
[ひとつの人狼騒動を生き抜いた幼い少年と少女が、固い表情で頷く。涙も枯れはて、彼らにはお互いしか残らなかった]
[二人とも能力持ちだから、知識と技術を身に付ければ生き延び戦う術は格段に増えるだろう。
結社本部に対して思うものがないわけなかったが、身寄りを失った彼らが望むなら結社に連れていくのがいいとは思う。
不自然に騒動やその予兆に関わる人物としてこれまでに何度か接触されてきたが、こうして長らえている。人であり、獣に利する狂い方さえしなければ、見逃せる範囲ということか、トロイ・ボールドウィンもあの炎のうちに消えたのか。
子どもたちには、激しい感情に焼かれてしまう前に、組織で闘う事もひとつの道として教えておこう。彼らはひとりではないし、磨り減りにくくはなるだろうから、……たぶん]
[これまでに何度か惨劇に触れてきたなか、こうして奮起する事で生きようとする者もあった。くずおれ二度と立ち上がれない者もあった。
一度生き延びた者の手を再び血に濡れさせるのは、惨くもあろう。命を賭け、全てが終わった後、怨嗟の的になるのもよくある話だ。
それでも、遠くない未来に奈落に突き落とそうとも導かずにはいられない。
オレは、生き延びて、今も生きているから。
この子らもそう出来ると信じる、という綺麗事にくるんで、あの日救えなかった誰かを助けてくれと願わずにいられない。
正気と狂気の狭間以外に、進む道がどこにあるのか、教えてほしい。
この手には何もなく、ただ死者に託されたモノだけが静かに積もり続けるばかりなのに。
胸の裡には融けない雪が、隈と同じく常に共にある]
[『最初』の騒動が火のうちに消えた後、雪が消える少し前。
本部の動向を探るという建前で、唯一遺体の見つかっていないミレイユを探した。
『ドラガノフ』が告げず逝ったからには易々と叶うまいと思われたが、何の奇跡か偶然か──傷みながらも微かに少女の面影を残した遺体に直面したのだった。
ひとりひとりの顔が、無惨な遺体や苦痛の表情に刷り変わったなか、唯一融けぬ雪のなかで微笑んでいた少女が、掌から消え失せた瞬間だった。
そして、小さな骨と灰になった彼女を連れてうかがった支部近くの村で、事の顛末を聞いた。突如上がった炎が、余さず支部を焼いた事を。
以来、どこに落ち着く事もなく、騒動と騒動の切れ間を渡り歩き続けている]
[“フィグネリア”だったものが燃えていく>>79
幼い頃は火刑が怖くて仕方がなかったのに、今となってはどうしてあんなに恐れていたのかわからない。]
[ああ、そうか。
貴方の放った火で灼かれてるから、何もこわくはないんだわ。]
[少しおかしくなって、笑みが零れた。
私以外の皆が熱がっていないと良いのだけれど。]
[裏庭へ視線をやると、彼の姿があった。]
[貴方はこれからどうするつもりなんですか。
すぐにそこから離れないと、貴方だって危ないんですよ。]
……パメラ。ヨアヒム。
墓を回ったら、行くぞ。飯の時間だ。
吐いてでも食え。食って寝ろ。そうすりゃ、いくらかマシになる。
[別れを惜しんでのろのろと歩く子どもたちの腰で、くれてやった鈴がちりん、と鳴った。オレの鈴は鳴らないが、眠れぬ夜の伴である。
もう、幸せだった支部での僅か数年を夢に見る事はない。
代わりに、日常のふとした瞬間に誰かが目の前に立ったような錯覚を覚える事がある。草むらに横たわっていた小さな少女が、いつものように振り返りはしないかと探す事がある。惨劇の最中であれば、いっそうそれらに近付けた。
……狂気とは、呼びたくない。感傷を、ひとり思い出と呼ぶに差し支えはないだろう。地獄なり煉獄なりにも、それだけは携えてゆけるから]
[>>81柄頭が地面に充てがわれたとき、あぁ、と声が漏れた。
落胆したような――ほっとしたような。]
どうして、“それ”を選んだのですか。
貴方の選択の理由に…… は在りますか?
[わからない。
彼は何も語らないまま選んでしまったから。]
[裏庭へ降りると、倒れる彼へゆっくりと近づいた。]
[動いた唇が紡ぐ言葉も聞き取れない。
彼の傍で膝をつく。]
[零れた雫を掬おうと指先を伸ばすも、すり抜けて雪の上へ落ちた。]
生きて幸せになって欲しかったの。
(私のいない世界で幸せになる姿を見たくなかったの)
私を忘れて欲しかった。
(忘れて欲しくなかった。心の片隅に置いて欲しかった)
貴方から聞くまで……私、ここを去れないじゃないですか。
[あの日、誰に助けを求めていたのか。
私は貴方の心の中にあったのか。
――私はどの程度、貴方の心を冒していたのか。
もう、生きている彼から知る術はない。]
[さぁ、食欲がないようならすっぱい林檎でも食わせてやろうか。パンは固いけれど、半分に切って薄切りのハムと村に残された野菜でも挟んでみたら口には入れるだろう。
今日も、食べて、走って、息をして、転びながら生きている。死ねば二度と目を開ける事はないのだから、今は眠れずともそれでいい。どの宿り木にもとまれずともそれでいい。
青眼が、やっと晴れ間を見せた空を仰ぐ。次の閉ざされた舞台に辿り着くまでの、前座のような青だった**]
貴方が来るまで待ってます。
ずっと待ってますから……
教えてください。
アミルさん。
[いずれ、彼の魂が此方へ来る事を信じて。]
私は、貴方を、――――
[貴方が瞼を閉じたここで、私は永遠に待ち続ける**]
おにいちゃーんっ!
[泣きながら何度も何度も兄を呼んだ。
後ろから追いかける自分の名を呼ぶ声にも、気づかぬくらいに声を張り上げて。
辺りは真っ白だった。
幻の兄の姿どころか自分の姿すら見失う程に。
何もない真っ白な世界で少女は泣き続ける。]
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