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[泣いているイライダ>>4:159や座り込むトロイ>>4:156の背中を撫でてやりながら、少し落ち着くのを待ったこともあっただろうか]
……アミルさんも手伝ってくれますか?
お願いします。一人だとやっぱり重くて……。
[アミルが手伝いを買って出てくれたのなら>>5ありがたいと手伝ってもらう。途中黒髪の女について尋ねられれば]
……いえ、知りませんね。
少なくとも記憶の限りでは。
[実際、この姿を見た記憶はもう無い。もともと無かったか思い出せないかは分からないが]
……ええ、お休みなさいアミルさん。
アミルさんも疲れているようですし、ゆっくりと休んでくださいね。
[そう言って別れたか**]
[“もうひとり”が何か言っている>>4:157
このまま今日の処刑を終わらせて夜を迎えれば、また誰かが犠牲になる。
それはイライダかもしれないし、トロイかもしれないし、――アミルかもしれない。
“明日に備え”などしたら、彼女の思う壷じゃないか。]
[けれど、誰のものとも知れない名を呟き涙を零すイライダも>>4:159、無感情に呟くアミルも>>4、呪詛を吐くトロイも>>6、ひどく憔悴しているように見えて、彼らに休息は必要だろうとも思った。
“明日に備え”て。]
[“ポラリス”やアミルらが、“ドラガノフ”――いや、長い黒髪の女を運ぼうと移動する。
すれ違いざま、血に濡れた手へ触れようとして、
首を横に振って、自身の手をぎゅっと握り込むと、そのままフィグネリアの姿は掻き消えた**]
―― 早朝:資料室 ――
[死体も片づけられたが、嫌な匂いも残っているだろう資料室で早朝から資料の整理をしていた。
ある意味癖のようなものだ。この支部に来てから、毎日毎日繰り返してきたことだから]
……そう言えば新しい資料と本は届かないんですよね……。
[それだけが少し残念だ。今日が終われば、どのような結果であれここで本に囲まれる生活などできないだろうから]
……さぁ、行きましょうか。
[主の居なくなった資料室の簡単な整理と掃除も終わり、廊下へ出る。
今日被害が出てない事を、支部の人間はどう思うだろうか。
トロイを探しに歩き回るが、途中で誰かに会うだろうか**]
ー 資料室 ー
[死体の片付けを始める前に、片膝をついているイライダ>>0に歩み寄る]
あんたは…どこか悪いんだな。心臓か?
こんな状況だが、その薬は飲んでおけ、な?
辛ければ、片付けはしておく。明日に備えて無理はするな。
[惨劇はこれで終わりではない、と言外に含みながら、手短に労わりの言葉をかけた。
先程のやりとりや、胸を抑えるようすから、彼女が何か体の不具合を隠していたらしいことは嫌でもわかった。
何が彼女をそこまで突き動かすのだろう。
壊れかけた体を酷使して、仲間の姿に短剣を突き立てさせるものは。
芯の強そうな彼女が涙を流すまで自らを追い込む理由は。
きっと、自分にはわからないのだろう。
だから、例え彼女が薬を飲まずとも、休もうとしなくても、それ以上押し付けることはせずに、側を離れようとした]
─ 昨夜・食堂 ─
[そこかしこに死が、失われた日常の欠片が無残に転がっている。何度か立ち尽くしながら簡単な作業を続ける。
最低限腹を満たせるだけの味気ない食事を用意して、会えたならば押し付けるように三人に渡してきた帰りだったろうか。空っぽの胃に酒を流し込み、少し手洗いで吐いてきて、震える胃を水で宥めながら自分も食事を始めた。
暖炉は、つけていない。煮炊きの名残の熱に寄り添って黙々と静けさを食んだ。
堅くなったパンとチーズの残り、茹でただけの芋に塩を振って口に運ぶ。味なんて感じなかったし吐き気がしたが、それでも食べなきゃいけなかった。
時間と死だけが平等に降り注ぐ。
ケダモノより一息でも長く生きたければ、ただ、疾く腹を満たせ。人らしく一口を味わえ。唯一の信条だった。
覗きこんだ水瓶に過る己の影を、見るともなしに見る]
[……この青い目は、たぶん母親《クソばばあ》似だ。父に髪を掴んであちこち殴られても、顔を殴られた事はなかったから。
思えば、それに気付いてからだろう。隈が消えない日が増えた。
生きる/食べることはキラキラ鮮やかで楽しい一方で、バカみたいに青い目も汚ならしい血を巡らせる心臓も保つであろうことが嫌で仕方なかった。
抉りとるその日を想って>>1:60、ようやく許せた。許される気がした。
クソみたいなモノがなくなった世界で、いつも通りみんなは平和に暮らせばいい。たとえば鈴の音。空のした駆け回る訓練場の春の陽射し。もうすっかり馴染んだ誰かのやさしい眼差し。そういう、……]
[現実にはわかりやすい『敵』なんていなくて、仲間を疑ったあげくにぼろぼろの支部だけが残っている。浅い呼吸がうっすらと白い跡を残した]
最後に本当に皆で食べたのは、いつ、何だったんだろうな……。
[直接触れ合ってミレイユだった憑狼がドラガノフになった黒髪の女と自分は確信しているが、他がそうとは限らない。特にポラリスはテレーズと親しかったから、受け入れがたいのか?>>7とも思う。
アミル、ポラリス、イライダの信じたい部分と信じられる部分と疑わしく思えるささやかな何かがぐるぐると渦巻く。
痛みと悼みを抱きながら冷えた食堂で長い時を過ごして、ようやく微睡むためだけに、自室へ戻ったのだった]
[生きていて欲しかった。けれど彼女はそれを望まなかった。
あの一票を投じたとき、自分が何を思っていたのか、今はもうわからなくなってしまった。
ありがとう、彼女の最後の言葉が聞こえる。>>2:314]
助けて、くれ……
[思わず言葉がこぼれた。
無意味だと知りつつ、心の堰は壊れかけていた]
疲れたよ…なあ…今度は俺を、助けてくれ……
[俺が本当にあんたを助けられたというのなら。
目を瞑り、額を窓に押し付けるようにして、助けて助けてとうわごとのように繰り返す。
窓の上をゆっくりと滑りおちる指が、透明な痕を残した。
先程までの賑やかな声はいつのまにか止んでいた。
代わりに、裏庭の隅から何かが折れる鈍い音が響いてきた]
『ドラガノフ・ヴォーテ』。
『ミレイユ・セロン』。
あとは……。
『エトワルド・セロン』?
それより以前は覚えていない。
[指折り『自分』――犠牲者の名を挙げて、少し前まで『自分』だったドラガノフへと微笑みかける。]
― 裏庭 ―
[資料室ではない別の場所で、瞼を開いた。]
[辺りが白い。建物がすぐ近くに見える。ここは朝の裏庭か。]
……今度は、“誰”になったの……。
[きっとまた犠牲者が出ている。
どこかで惨劇が起こっている。
建物の中へ戻ろうとして――
近くで物音が聞こえた>>18]
[どこかの部屋の窓からか。
雪を蹴って、少し浮いて近づいてみる。]
……あ、
[幸せになってほしいひとの顔が目の前に見えて>>19、なぜか頬が熱く感じた。
もしかしたら、彼はもう既に“アミル”ではないかもしれないのに。]
た すけ て…… ……?
[彼の唇が、そう動いているように見えた>>20
ちゃんと聞き取りたくて、耳を当てるように窓へ顔を近づける。]
[彼が何を思って零した言葉なのかは解らない。
けれど、ここ数日の感情を殺したような彼とは、全く異なるように映った。]
あなたは、アミルさん、なんですね……?
[何度も繰り返される、助けを求める声。
誰に求めているのか、理解できないのに。]
…………ごめんなさい……。
[窓に残る透明の痕は、まるで彼の涙のよう。
反対側から、指先でそっとなぞりながら、絞り出すように呟いた。]
私……間違っていたのかな……。
[自分の為に、幸せを望んでくれる人がいた。
それだけで充分だった。満たされた。
自分の人生に意味があったのだと思えたから。]
[幸せを望んでくれた、彼が幸せになること。
これが成されれば、もう思い残すことはない。
けれど、もしかしたら――いや、これはきっと、自分の思い上がりだ。]
……ううん。
全てを終わらせれば、きっと……。
[今は疲れていても、心を痛めつけられても、憑狼を処刑できれば、きっとその先に救済はある**]
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