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[ああ、エルナはここを悪夢だと思っているのか
なら悪夢を本当に夢にしてしまおうか]
ゲルトは一攫千金にどっか東に旅に出たんだよ。アル兄ちゃんの案内で
おじじは村長ペーターに譲って世界一周旅行に出かけたんだよ
オットーは山向こうの村にパン修行に、リナだって旅に出たのさ
だから俺達は村で彼らの帰りを待っていよう?
[そうだったらどんなにいいか]
[夕闇切り裂く慟哭を、ただその儚い願いを繋ぎ止めるかのように抱き締めながら聞く
どうしてこんなことになったんだろう
唇を噛み締めていないと自分まで泣いてしまいそうだった
夢であればどんなにいいか。ゲルト、アル兄ちゃん、おじじ、リナ、オットー
夢なら覚めてくれ*]
[夢の中の人物たちが、夢であれ。夢なら覚めよと嘆いている。奇妙だなあと思った。
4人の容疑者たちの騒ぎに気を取られ、"かつて人だったモノ"を囲む暴徒は減っただろうか?
叩き砕かれ切り裂き突かれたそれが何か分からなくて、首を傾げる]
疲れでも溜まってるんですかね。
誰も彼も、支離滅裂で滅茶苦茶だ。ひどい夢。
[自分や誰かの澱んだ心をいっしょくたに煮込んだかのよう]
……かえろう。かえらないと。
[特別な事なんて何も望んでなかった。
なのに、どうして帰る場所が分からないんだろう?
ふらりと立ち上がると、ことのほか体が軽い。青年と少女に背を向けて、あてどなく歩き始めた]
― 羊厩舎 ―
[あの子たちは、待っていた。
守ってくれていた。
うろうろとして、今か今かと帰りを待っていた。
カタリナが入ってきたとき、こちらを見ていたような気がした。
幽霊が見えるのか、と思ったけれどすぐに伏せてしまった。
やはり気づかれていない。
羊たちは、飢えているようだった。
食べ物がなくて、ハーディとガーディに困ったように鳴いている。訴えかけるように、おなかがすいたと。
ハーディも耳を揺らして、それには気がついている。
でも、どうにも出来ない。
カタリナの帰るべき場所は、ここだった。
でも、帰っては来れなかった。]
[もしかしたら動物には見えるかも、なんて期待は簡単に外れてしまった。
その代り、羊厩舎のあちこちに羊の霊がいた。
他の羊と混ざって、ごく普通に中にいる。
まだ生きているつもりなのかもしれない。
死んでも、ここにいたようだ。
死んでも、平穏な日々を過ごしていた。]
[懐かしい声がした。
おぼろげながら、昔、飼っていた子たちが微かに見えた。
もう消えかかって見えた。
近くに寄って、撫でたら消えた。
ああ、いつかは消えていくのか。
ずっと、守ってくれていたのかもしれない。
死んでからも、この場所を。]
[記憶が、遠くなっていく。
どうしてだろう。
色々なことが、どうでも良くなってくる。
楽しかった思い出も。
大切な思い出も。
消えていった、あの子たちの名前はなんだったろうか。]
[近くにエルナの声が聞こえる…
ヨアヒムもいる……。
泣くのを堪えて二人の会話を聞く。
>>19>>21>>25
狂ってる…
みんなみんなもう…
[よろっと体を起こしてカタリナをおぶさると無言でその場から立ち去っていく。
とてももう他に構おうとする余裕なんてなかった]
[それはどのくらい続いただろうか。抵抗しなくなったシスターの腕を放すと、そのまま仰向けに倒れこむ。左腕にはカタリナの最期の意思が刺さったままで]
返して…返してよ…
[自分でも、こんな行為に意味が無いという事は分かっていた。それでも今はただ呟き続ける]
お母さんを返してよ…お父さんを…
―図書館―
[気が付けば、図書館に戻って来ていた。腕に刺さった槍は抜け落ちて、その傷痕からは赤黒い血が腕を滴っている]
[私はこの空間が嫌いだった。本に…両親があの村に行くきっかけとなった本に囲まれている空間が]
[棚の上に置かれていた本を掴む。これは確か、あの偽善者の聖職者が好きだったか。それを無造作に本棚へと投げつけた]
[これはゲルトの、これはヴァルターの、これはカタリナの、これはアルビンの、これはオットーの、これはヨアヒムの、これはエルナの、これは…]
[一つ一つに怒りや悲しみを込めながら投げつける。一つに込められた力は強くないけれど、それがすべて集まればそれは感情のうねりとなって]
[棚が一つ倒れれば、後は連鎖するようにすべてが倒れた]
[こんな、物語に出てくるようなモノは知らない。なのにどうして、目の前に在るんだろう?]
爪を――爪を、向けないでください。
ひどく嫌な感じがする。
[右胸が痛い。本能的にゲルトに証を刻んだそれを疎んだ]
あなたは、いったい何者なんです。
どうしてここに?
[空腹ではない、という言葉と圧迫感に何か思い出してしまいそうだった]
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