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次の日の朝、楽天家 ゲルト が無残な姿で発見された。
噂は現実だった。血塗られた定めに従う魔物“人狼”は、確かにこの中にいるのだ。
非力な人間が人狼に対抗するため、村人たちは一つのルールを定めた。投票により怪しい者を処刑していこうと。罪のない者を処刑してしまう事もあるだろうが、それも村のためにはやむを得ないと……。
現在の生存者は、人狼 ダンテ、羊飼い カタリナ、青年 ヨアヒム、行商人 アルビン、仕立て屋 エルナ、村長 ヴァルター、司書 クララ、パン屋 オットー、シスター フリーデル の 9 名。
―帰り道(ゲルト家)―
[なんとなく嫌な予感がしてゲルトの家を覗き込んだのが、全ての間違いだったのだろう]
[目の前にあるのはゲルトの無残な死体。足が折られており、胸のあたりに致命傷と思われる深い傷が残されている。そして腹部には、それが人狼によるものだと一目で分かる大きな爪痕が残されている。寝ている間に一息、とは行かなかったらしく、その顔は恐怖に歪んでいた」
ゲ、ゲルト?嘘…だよね、冗談だよね!?ちょっとした悪戯なんでしょう!?
[勿論、本当に悪戯だなんて思ってはいない。人狼の出現を聞いてから、いつかこうなると思っていた]
でも、なんで!?なんで今日、それにゲルトなの!?
[前日、受付に髪飾りを置いていった青年の笑顔が思い浮かぶ。明日山に行くことは無くなったな、なんて。そんなことを考えている場合ではないというのに」
人狼って怖いよ…私には無理だよ…お父さん…お母さん…
神様…助けてよ…
[いざ傷跡を目の当たりにすると、人狼の凶暴性が痛いほどに伝わってくる。両親の仇である人狼は、既に自分達の誰かとすり替わっていたのだという事実が、重くのしかかってくる]
…このまま、村を出れば。一番近い町の酒場には知り合いがいる。そこで働くんだ。時には酔っ払いに絡まれたりして。それで、年を取ったら小さなレストランを開くんだ。
[人狼騒動とは無縁な生活。町には自警団もいるし、きっと一生を安穏と過ごすことが出来るだろう。そんなことを考えているうちに、手に持っていた形見の本から、声が聞こえてきたような気がした]
(クララ、あなたそれでいいの?私達の仇を取ってくれないの?)
え!?お母さん!?お母さん!会いたいよ!お母さん!ねえ…
…私はこれからどうすればいいのかな。
(いい?一つだけ教えてあげるわ。人狼は村の人達の中に紛れてる。これは紛れもない事実よ。ここまで言えば、賢いあなたならわかるはず)
分かんないよ、お母さん…。私はどうすればいいの?
(簡単な話よ。あなた以外の村の人間が全員死んでしまえばいいの。そうすれば、絶対に人狼はいない。私達の仇を討てるの)
(おねがい、クララ。私達の仇を討って)
[そうして、声は聞こえなくなった]
…そっか。
お母さんの為にも、私が生き残る為にも、人狼を…村の人達を全員処分しなくちゃね。
[そこで冷静になって、今の自分の状況を振り返る。スコップを持って、こんな夜中に死体を前に佇んでいる状況は明らかに異常だ。誰かに見られたらまず疑われるだろう]
…取り敢えず、図書館に戻ろう。
[羊飼いの朝は早い。
今日も羊達を連れて、牧草地へと向かう。
しかし、一つ気にかかることがあった。
今日は誰ともすれ違わなかったことだ。
朝が早い村人は、他にもいるのだけれど。]
・・・。
あ。ガーディ、こっちだよ。
[いつも通りに、仕事をこなす。
いつも通りは、どこかで終わる。
いつかは、いつも通りにはならなくなる。
そんなことは、知っていた。
いつものように、今までどおりに生きていても。
その終わりの日は唐突で、そして。
今日だった。]
僕、死んだんじゃなかったっけ……。
[ 胸も足も無事だピンピンしてる。
なーんだ、人狼なんてやっぱりいるわけなかtt ]
[ 両手で自分の顔を、体を触る。
じわじわと、何があったかを思い出してきた。 ]
そっか……僕……、
し、死んだんだ……ははは……。
[ 僕は死んだ。
……でも、人狼は去った。 ]
へ……へへへ……。
僕やったよ。
ずっと無職のダメ人間だったけど、
最後の最後にやったよ。
皆、褒めてくれるかな。
みんな……、
ー朝ー
[いつものように大きく伸びをして。さてとと腰を上げる
今日は客も母もいないので、朝食は自分で作る
油を敷いたフライパンをコンロに掛けて。ベーコンと卵を敷いてじゅわりと
それをオットーの父が経営するパン屋で買った白パンを2等分した上に載せてぱくりと
とろり食まれた黄身が零れ、顎を滴り落ちる]
ん……とっ、と
[それを指で掬いあげて舐め、さてと今日の予定はと思い返して]
ゲルトとエルナとまた栗拾い、だな。
母ちゃんももうじき帰ってくるだろうし、出かけてもいいよなっ
[なんて言って上着を羽織って広場への道を歩いた
籠の中に手袋入れて、峠の道を下りて]
[ 散々泣いて、
床に転がって、子供みたいにじたばた暴れて、
吐きそうになるまで泣いて、
泣き疲れて寝ころんだ。 ]
ごめん……、
ごめんね……。
カタリナ……ヨアヒム……、
僕は二人に顔向けできないような、恥ずかしいことしたね。
僕みたいな人間、死んで当然なんだ。
死んだのが僕でよかったんだ。
[ 言い聞かせるようにして。 ]
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