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―回想/孤児院―
[>>3:110ある日、声が聞こえれば――、
ゆらり、金の瞳が揺れる。其れは血の色には遠いけれど赤味を帯びた金の色をしていた。ざわり、と周囲の気が動く。]
……ばけも、の…?
………ッ、俺はちがう…!お前もいい加減な事言うなッ…!
[急に飛んできた言葉に、キッ、と睨んでは放り投げられた餌に食いつく様に噛みついて。目を見開ければ、一気に部屋内の重力法則が歪む。其れでも妖刀と言う名の分けた力が無かった分、彼には及ばなかった訳なのだが。其れを何時も何時もいなされてる内に、自分を化け物扱いする彼に浮かんだのは対抗心。]
(…アイツにだけは、負けない)
[そこから、恐れてた心は対抗心へ。
既に虐めた者達は自分を恐れて近寄らなくなっており、暴走の回数は少なくなっていた。制御が再び自身で出来る様になってきていたのは気付かぬ儘――ある日起こったのはミツルの暴走で。]
…ッ、あぶな…!
[其れでも魔術制御が出来る事が自分で分かっていなかった中で、歪んだ重力場で近くの本棚が幼かったクロロの方へと本棚が落ちていくのを見れば、無意識的に魔術を使っていた。
重点を操作するだけの簡単なものだったが。それでも確かに制御出来るようになっていたのだった]
[セシルの言葉と笑う様子>>2に、警戒こそ解かないものの彼女の真剣さを悟る。
「怒れる立場じゃない」というセシル――彼女が聖職者に扮して表舞台に現れた頃、風の噂でマオの死程度は聞いていた。そこで、不自然なほど優等生然としていた彼女が歩む道を変える何かがあったのだろうとは察しつつ]
――異端だから、化け物だから。それを知ったら俺がてめえを見限ると思ってたから、何も言わずに総司令官側近なんてご大層なものになりやがったんだろ?
それのどこが見縊ってねえってんだ!!
[徐々に闇が濃くなっていく中、月明かりを浴びてアレクの姿はますます異形らしさを増していく]
ー2d昼・連合ー
[あの後。ミツルはどうしたか。多分どんな反応でも曖昧に濁して廊下に出ただろう。仕事があるのは事実で、それの要請をしに行かなければならない。]
…観戦だけなんてつまんないもんねぇ
[自分は指揮を執る側に立つべき人間じゃない。戦場に立ってはじめて役に立つのだ。そうしてここまで上り詰めたのだから、他のことばかりで本来の“仕事”に支障が出ては意味がない。
コンコン、と軽い音を立てて戸を叩き、返事を待たずに部屋に体を滑り込ませる。手を後ろでロッドを握るように組み、軽やかな足取りで机に歩み寄る。]
たーいちょ、お話が
[親に菓子を強請る子供のような無邪気さで、そう話し掛ければ。相手はきっとこう言うのだろう。]
「好きにしなさい」
ー3d夜ー
[出来るだけ早く。そうして手続きやら引き継ぎやら何やらを済ませたらこんな時間になってしまった。
夜風に軍服の裾をはためかせ、月光に煌めくロッドに口付けを落とす。願掛けでもなんでもないただの癖だ。]
さてーお仕事と行きますか
[秘密の庭で、花に落とすようにそう言って。一踏み出せばくしゃりと花が潰れる音がする。何を踏んだかと靴をどければ、桃色の小さな花。
やっちゃったーとしゃがみ込み指でなんとか戻そうとして。]
これ、で…よしっ
…いってきまーす
[隣に生える緑の一見すれば雑草のようなそれに寄り添わせるようにして。なんとか立ったように見える花に、ばいばいと手をふった。**]
……見た目なんざどうだっていいんだよ。
ちっと人外になったくらいで「化け物」なら俺だってそうだ。
薄皮一枚変わる程度、そんなの知ったこっちゃねえ。
[きっと幼い頃のアレクに何もかも投げ出せる信頼は自分から押し付けすぎていた。年齢差があるとはいえ、親友ならば心を委ねた分だけ自分も委ねられねば真に対等とは言えなかっただろう]
――俺は、ガキの頃暴走する度あんたの姿を、あんたの人の心を真似ていくことで「人間」になったんだ。
詳しい事情は知らないし、あんたに去られる前に打ち明けられていたなら同じように化け物になる事で受け入れたかもしれねえ。……またあんたに、何もかも丸投げして。
[けれど今の自分は13、14のガキではなく、この五年間自分の道を歩んできたひとりの男のつもりだった。仮定は意味をなさないし、痛みも悲しみも受け入れて守ろうとするセシルと同じやり方で受け入れる事は出来ない]
…………答えろアレクシス。アレク。
[がしゃん。音を立てて両手を離れた銃が地に落ちる]
望むなら命でも何でもくれてやる。そんなもんで満足できるならな。
同じ化け物にはなってやれない。
俺は、あんたと出会って「人間」になって――仲間たちと戦争を止めて女神の影響力をこの世から消してしまうまで、選んだ道を変える事はできないから。
[セシルのように歩み寄り手を差し伸べる事はせず。
幼い頃のように全てをぶん投げ、しかし今度は同じ分だけ友の重さを背負う覚悟を決めてその場に立つ]
俺は、「人間」のアレクを信じる。
…居場所がねえとかふざけた事ぬかすなら、ぶん殴ってでも連れてくぞ。
――全てを受け入れてくれるセシルの手を取ったっていいんだ。
「神の敵」ってのは、あながち目的から遠くもねえしな。
だから、もう……せめて、何も相談せずに、どっか行ったりするなよ…。
[必死に虚勢を張りながらも。
最後に小さく付け足した声が、身体が震えているのに気付かれてしまうだろうか]
…帝国が化け物の力を求めてるだけでも別に良かったんだよ。
昔みたいに拒絶されるよりか、さ。
[恐らく二人は知らないで有ろう、そのトラウマに。
其れでも過去の記憶が叫ぶ様な罵声は聞こえて来る事は無く。
その叫びの熱は、何処か薄れ始め、からん、と手から零れ落ちる剣。
暫し待っても何よりも怖がった拒絶が無い事に、
張り詰めた心は拍子抜けしたかの様に――、
全身の力が抜ければ、地面へと膝を付いて。]
[歪んだ重力法則が緩やかに元通りへと戻る。
一歩、また一歩、と近寄る足音>>12にも顔を伏せた儘で。
それでも人の温かさの残る手に触れられては、恐る恐ると顔を上げ。
守りたい、と言う声には何処か情けなさを感じながら。
化け物としての自分ごと――自分も化け物になると。
受け入れようとしてくれる彼女の手を自分の弱い心は思わず縋る様に掴みそうになる。
神の敵どころか――彼女が救いの光にさえ思えたから。]
(置いてかれたなあ、)
[嫌われたくないというのに、結局孤児院を去ったのも自分。
それでいてやはり嫌われたくないと願った自分は
大した自己愛のエゴを抱えているものだ、と零すは自嘲。]
[がしゃん、と地に墜ちた銃を、視線で追う。
求められた答え。眼前にあるのは三つの道で。
全てを受け入れてくれる、セシルか。
それともあくまでも「人間」としての自分を信じてくれる、グレンか。
もしくは、このまま利用される為だけに帝国に留まるか。
そんな明確に、直ぐ答えが出せる様なものでも無かったけれど。
――どれくらい悩んだかは分からない。
数分だったかもしれないし、数十分、否数時間。
恐らくはたった数分の事なのだろうけれど。
酷く長く感じたのも、また有って。]
[再び下げていた顔を上げれば、
その双眸は今の彼のモノと同じ、金の色を示していた。
地面から膝をついていた体制から、再び地面に立てば、
先程の消え入る様な声とは対象的に、凛とした声で、
セシルとグレンを交互に見つめてから――、
――自らの親友の方へと振り向き、
着ていた帝国軍である事を示す黒衣のコートを脱ぎ捨てた]
………答えてやるよ、グレン!
お前の命なんか要らない。自分の命は自分の為に使え。
……確かに、俺が化け物である事は変わりない。
いっそセシルに全て受け止めて貰って――。
……一緒に化け物になるのも、良いかもな。
[一瞬、俯いて。握った手に力が入るのを感じる。
すう、と一息置く様に深呼吸をして。
それから再び、言葉を紡ぐ。]
(――でも、それじゃ、駄目なんだよ)
……でもな、セシルに守って貰って。
それじゃ、情けないって今更だがよ。…駄目なんだよ。
――化け物を抱えても、俺の心は化け物のモノじゃないから。
(『自分が化け物で無いと言い張るのか?結局お前は、『そういうもの』でしかないというのに、)
[心の中で、誰かが嗤った。でも、それでも。だからこそ。
自分の心は、人間のものだと確信出来る。奥に潜む声こそが化け物で。
同じかも知れないけれど。別なのだ。
そう思えば――、いつの間にか身体の獣化は収まって再び人間として彼を取り戻していた。完全に暴走は未遂で終わっていて。。]
……もう居場所が無いなんて言わない。
俺はこんなでも、『人間』で居たいと思う。
お前が『人間』の俺を信じてくれるって言うなら――。
――俺も、お前を信じるよ。グレン。
[何処か吹っ切れた様に、悪戯っぽく、にやり、と嗤って。
それは昔とも、先程迄の歪なものともまた異なっていた]
……俺は女神なんて最初から信じちゃいない。
それにこんな身体だ。神の敵でもなんでもなってやるさ。
[それから一つ頷いて、]
…ああ。もう勝手にどっか消えたりしねえよ。
――ほら、格好良かったのに最後に震えちゃ決まらねえだろ?
[そう茶化しながらも、グレンの手を取る事に決めて。
セシルの方へと再び向き直る。]
……悪い、セシル。
――俺は組織の方に付く事にする。だから、その誘いには乗れない。
…セシルは、連合の方から…、動く気はねえんだよな?
―闇の底―
[腕の中に収まった彼女は、小柄で、思っていた以上に華奢に感じられた。強く抱けば壊れてしまいそうな気がして、腕に込める力は、そっと緩やかに]
面倒くさいだなんて、
思ったことは、ありません。
……仮にそうでも、貴女なら、許します。
[冗談交じりにそう告げて、顔をあげた彼女を間近で見つめ返した]
涙を流す貴女も、綺麗でしたが。
やっぱり、ツリガネには、笑顔が似合います。
[最後にそっと頬に触れて、彼女を腕の中から解放した]
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