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集会場は不信と不安がない交ぜになった奇妙な空気に満たされていた。
人狼なんて本当にいるのだろうか。
もしいるとすれば、あの旅のよそ者か。まさか、以前からの住人であるあいつが……
どうやらこの中には、村人が7人、人狼が3人、占い師が1人、霊能者が1人、守護者が1人、囁き狂人が1人含まれているようだ。
ええ、いたわ?グレンから本を借りたの
…というか、よくわかったわね…さすがね!
[本当にびっくりした。いる人を当てることができないため余計に。]
ええ、また今度借りるわ
[ニコッと笑い、おいで?と。]
場所指定は特にありませんが、他軍とは諜報・潜入か何かの連絡手段を使って会話する形で…つまり、戦闘は明日からですがそれ以外なら何をしても問題ありません。
狼については他の人には極秘で連絡が取れている、ということで。
[暗い暗い闇の底、祈り続ける女が1人。]
あぁ、あの子たちも死に近づいてしまった…
尊き調和の女神ハルモニア様、なぜこのようなことに?
私の祈りを聞き届けて、せめてあの子たちの命だけでも救っては下さらないのですか…?
[女神の加護を微塵も疑うことはなく、彼女は祈り続ける。]
もう会いたくないのです、次に会うときはきっとあの子たちがこの地の底へ落ちてしまった時でしょう。
[戦争の原因がこの女神であり、その女神に自分は祈っているのだ、と愚かな女は気づけなかった。]
―回想―
[昔から、何でもそれなりに器用にこなしてしまう性質だった。
両親が教育熱心だった為でもあるだろうが、勉強も、剣技も、魔法も、音楽も、そつなくやってのける自分は、両親にとっては都合が良かったのだろう。
妹だって出来が悪いわけではなかった。ただ、どうしても魔法だけが上手くいかなかった。何時の頃からか、両親は妹に見切りをつけたように冷たくなった。あんなに冷たい顔をした生物を、僕は知らない]
…ごめんね。
護ってあげられなくて、ごめんね。
[日に日に衰弱していく妹を。次第に表情を失っていく妹を。助けたくて、でも、僕は気の利いた言葉一つかけてはやれない。
妹と同じになれば良いと、魔法を使うのをやめた。両親は快くは思わなかったが、既に僕が水を操れることを知っていたので、それ以上は咎められなかった。
妹を喜ばせようと、オルガンの音を響かせた。好きな曲を弾いてやっているときだけは、少し妹は元気になったように見えたけれど。そんな一時しのぎが何になるというんだ]
[妹は、こんな役立たずの兄を、優しいと言ってくれる。
僕は優しいというのがどういうことなのか、よく分からなかった。だって、兄が妹を護るのは当たり前のことじゃないか。どんな本にもそう書いてある。だから、それに従うのだ。だって早くしないと、手遅れになってしまう。
…この子が、死んでしまう。
このまま衰弱をつづけたら、セシルが死ぬかもしれない。そう思い当たった瞬間、初めて恐怖というものを知った。理由は分からない。ただ、怖い。
なんとか、しなくては]
ああ、そうか。
簡単なことだったんだ。
[必死に考えれば、答えは案外あっさりでた]
壊せば良いんだ。
[その足で、僕は両親がくつろいでいる居間へと向かう。当然、セシルの姿はない。きっと外の小屋か何処かへ追いやられているのだろう]
父さん、母さん。
[世間話をするような態で、僕は彼らに手を翳した]
さようなら。
[幼子の魔法で、二人の命がとれるとは思っていない。ただ、掠めるような水の斬撃を部屋中に放った。
そのうちの一つが、窓ガラスを突き破る。周囲にも音が伝わり、騒ぎになった。元々近隣からよくない噂を立てられていた両親は弁解する方が不利だと考えたのか、子供二人を置いて夜逃げした]
―帝国同盟本部・参謀長室―
失礼します。参謀、総司令官殿が至急会議室へとお呼びです。
どうやら現在交戦しているA地点から報告があるようで。
……えぇ、もしかすると策を変える必要があるかもしれません。
総司令官もお待ちですので、参りましょう。
[後ろで一つに纏めた真紅の髪が揺れる。
ここは帝国同盟本部、参謀長執務室。
白い髪に眉間の皺を濃く刻んだ軍服の男が重い腰を上げ移動しようと絨毯の上を歩く。
その男の少し後ろに、黒い軍服に同じ色の制帽をかぶり、優しそうな笑みを張り付けた若い男が続いた。]
―闇の底で―
[何がどうなったのか、よく覚えていない。
だけどおそらく自分は死んだのだろう。両手両足の感覚がなく、浮いたようだ]
……僕が行き付くのは、地獄ですかね。
[碌な行いをしてこなかった、自覚はある]
もう、逢えることもないのでしょうね。
[浮かんだ顔は誰のものだったか]
ー帝国同盟 外交部ー
[青い空。鳥の鳴き声。
それに戦争の無粋な音が混じるようになったのはいつからだっただろうか。]
国々の間で痴話喧嘩を起こさせるなんて、女神はよほどいい女よねぇ。
[そう苦笑いしながら手元にある資料を読む、男一人。
そこには敵である国々とで交わされる予定の条項がつらつらと並べたてられている。
魔法の使用・女神像の行方の捜索──どうせ今度もお互い本分を譲らぬ国々の交渉破棄で終わりだろう。
やれやれと肩をすくめると、アルフはその書類を茶封筒にいれて机にしまい、鍵を閉めた]
――――…?
[ふと、よく知った声が聞こえた気がした。
幻聴だろうか?今はそれでも、構わないと思った]
シスター…。
シスター、イリア様。
[その微かな声を頼りに、彼女の元へ辿り着く]
どうして、そんなに悲しそうに祈っているのです。
[男はまだ状況をよくは分かっていない。
それは彼女から見ても一目瞭然だろう。
ただ、困ったような表情で、修道女の元へ跪いた]
[礼拝堂で聞くともなしに司祭の御言葉を聞く。まさか自分が聖職者なんて役職に着くとは……今だってちっとも女神様なんて信じてはいないのだが。聖職者というのは往々にして知識人が集いやすい。古くからの聖書の解読や思想の理解には、研究が不可欠だからだ。表立った出世に興味がなかったので、早々に昇格ルートから一線外れたことに悔いはない。祈りの時間が退屈にすぎることだけは、我慢ならなかったが。]
んー……何、会議?え、僕もなの?何それ聞いてないよ。
[司祭の抑揚のない声を縫って聞こえた伝令の声。身動ぎせずに問うた所、どうやら会議の招集のようだ。聖職者まで呼び出すってどういうことだ。まあ軍属である以上、上からの命令に背く訳にもいかない。溜息をついて、ポーズとして開いていた聖書を閉じる。続けて人目も憚らずに伸びをして、伝令に振り返った。]
じゃ、案内してくれる?飽き飽きしてたんだよね。あの親父の説教。
[小馬鹿にするように笑って、礼拝堂を後にする。後から伝令が慌てて飛び出してくるのが視界の端に見えた。あの親父の顔笑えたなー。もしかしたら道中、自分同様呼び出された人々と出会うかもしれない。]
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