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海が珍しいのかい?
[幾度となく海を見つめるローザに、そんな言葉をかけて歩く。
よもや実際の海を珍しがるとは思ってはいないけれど。
そうやって頭に浮かんだ言葉をを掛けて回る。
“知りたい”とそう言って、
少女は私と共にセカイを巡る。
“知りたい”と思うのは私とて同じだ。
知るためにセカイを巡るのだから。
その“知りたい”
その裏の見えない思いは同じ“知りたい”なのだろうか?
違う“知りたい”なのだろうか?]
ハルの子は、花のセカイ
星狩りの子は 星のセカイ
おひさまの子は 太陽のセカイ
潮騒の子は 海のセカイ
いろんなセカイ……
[どれひとつ同じセカイはない
セカイも違う 人も違う。
同じでなければわからない。
だから旅するようにセカイを巡る
言葉を 表情を 身体を巡り
私の知らないあなたを探る旅を続ける]
[瞬きする様子を、下から見上げ頷いた。
なお、中身は少年だが外見10歳程度の少女のスカートを
覗き見る趣味はない。]
――――わぉ
[やはり、と言う感想と同時に理解できても感情は驚く。
草原の花畑に樹齢、何年だろうか?
桜が聳え立ったのだから。
淡い花びらが舞い仕切る。
その花々は地面に柔らかな木漏れ日を作り。]
………お花見、いいね。いい、お花見日和だ
シンのところのパンでも一つ貰ってくればよかったよ
[頷きながら、照る日を避けるように
桜の根元へと草原を這って
……この桜は、いつまでも散りきらないのだろうか?
そんなことを、花吹雪の中思う]
んー?
[こてり、3者の会話に首を傾げる。
話題となっていたシンのカルテに手を伸ばす]
ああ…そうね。
眠ってしまってからしばらくも、ずっと手元においていたし。
適応…、ね。
……ご両親が、お話し合いに応じてくれればいいのだけれど。
どうかしら。
[連絡先が書かれた行を指でなぞり、むーん、と悩みこんだ]
[当たり前のように花を咲かせる桜の木。
少女の中に、"たった今存在するようになった"という認識はない。
既に少女の中で、存在して当たり前のものとなっている。
だから、驚くダハールに、にこにこと笑ったまま首を傾げた]
シンちゃん?
ふうん。
[少女はシンという女の子に、会ったことがない。
己の領域を離れない者同士、今までそんな機会はなかった。
海辺に住んでいる、ということだけは聞き知っている。
だから少女は無関心をつらぬく。
海は、嫌いだ]
やあおひさまの子。
[振り返れば見知った少女の姿。こちらのセカイの歳は近いはずなのに、まったく異なる小麦色の肌。
快活な髪
手に持ったバケツを覗き込めば、川魚の群れ群れが淡水にキラリと輝いた]
今日はお魚かい? ふふ、海のお魚は良く目にするけれど、川のお魚はちょっと珍しいねぇ。焼いて食べるのかな?
ローザ、すぐにかくれんぼはいけないなぁ。
かくれんぼはちゃんと挨拶してからだよ。
[自らの後ろに隠れるローザの背をとんっと押して、ミズキの前へ進めようとする]
[暖かなそよ風が吹くたびに、桜の木は花びらを舞わせる。
けれど、決して散りきってしまうことはない。
永遠に満開の花を咲かせながら、ひらひらと花びらを舞わせ続ける。
それは、とても美しくて。
とても幻想的で。
とても不気味な光景かも、しれない]
[呼吸が傍目にも普通に見えるくらいになってから。
もそもそと両手をついて起き上がる]
――そら、が。
[落ちてきそうだ。
なんて脈絡の無い事を思う。
そして恐らく事実でもないのだと思う。
ただ、1人の少女を送り出した時。
翼に感じた、重さ]
――……。
[翼を引き摺り、歩き出す。
誰かに会わなければ、そんな気持ちで]
[…黙って、一度ダハールの頭を小突き]
そうね…
探ってもらえる?
あまり、ご両親が話したがらないの。
何度かお会いしたのだけれど…原因については口を噤むの。
[一段と薄い彼女のカルテ。
ふ、と溜息を付くと、グレートヒェンのほうに向かって頷いた]
[消して散りきらず、ただ、ただ
あたり一面を薄紅に染め上げる木の根元。
幹によっかかる。永久機関、
そんなものはありはしないのに。
今、思いついたばかりなことを忘れてしまったように
新たな植物を新鮮味をもって
触れる様子もないハル。]
嗚呼……そっか。
[シンの話題はすぐに途切れた。
興味がない、と言う風に。
あの子も、この子もここから、離れられない。]
[けれど、ハルの様子に何か思うことは
きっと、己にはおこがましい。
自分も、この世界に介入と言う形で帰らないのだから。]
――ハルはお花見、楽しいかい?
入院してる間で出来る範囲…ね…
何があるかしら。
[リヴリアのことはダハールにほぼ任せている状態。
シンについて、夢のなかの情報を読みながら、
やりたそうで、可能なことはなんだろうと、考え始めた*]
[花畑を出て、しばし後。
さほど歩いてはいないのに、頭上にはもう星空が広がっていた。
ちかり、ちかり。
瞬く星が、いっせいに尾を引いて動き始める。
視界に映る星が全部流れ星になったのか――いや、それにしては遅い、ような]
…………。
[この現象を説明できる言葉を少女は持っている。
持っているけれどここは夢の中。言葉は隠れて頭に浮かばない。
花水木の少女といると、月という言葉までも隠れてしまうように。
道化師たちが仮面に顔を隠すように。
あるいは花畑の少女が、周囲から夜を遠ざけてしまうように。
隠して遠ざけてしまいたいものが、少女にもある]
……にせものの星空、みたい。
[呟き、そして――思い出す。
その「にせものの星空」は、一夜の星の動きを説明するためのものだから、]
夜が――明けちゃう。
[時間の流れが早いのだ。
そのことに気付いても、しかし少女にはどうしようもなく]
[足は水辺へと向いていた。
分かれ道で、立ち止まる]
――……。
[片方は水の流れのままに海へ通じる。
そして、もう片方は常夜の領域]
あはは、キミに不覚を取ってしまったからねぇ。
その伸びているだろうピノキオさんの鼻を折ってあげないと、狩りに邪魔だろう?
そう思って秘密の特訓をしていたのさ。
[『たくましくなっただろう?』とボロをひらひらさせて素足を見せるが、勿論なんの変わりもない、青白い脚。
どこまでもちがう彼女と仮面の脚。
この脚が山野を奏ね駆け抜ける]
[何か納得したような言葉を漏らすダハールに、少女は特に興味を示さない。
にこにこと笑顔を向けるだけ。
ずっと綺麗な桜を咲かせてくれる木の根元に座って、少女はご機嫌で花吹雪を見上げる]
うん。いいお天気で、本当にお花見日和だねえ。
お花もとってもきれいだし。
あっ、そうだ!
ハル、リヴリアちゃんに花冠作ってあげるんだった!
[ぽんと手を打つと、桜の木にもたれて、少女はレンゲを編み始める。
舞い散る桜の花びらもいくつか混じったかもしれない]
ダハールちゃんも、花冠、ほしいー?
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