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[>>*24顔を出せば、なんともないと二人は散っていった。
あの体でも、こちらの体でも
うまく二人と関われていない気がする。
小さくため息をついて消えるグレイヘンを見送った。*]
グレイヘンの・・・?
[彼女は同じ立場といえる介入者であり
そして、要観察の患者でもあった。
棚からグレイヘンの点滴をつかみ
一式をもって声がしたほうを探す]
[担当医がすることに、・・・は逆らわない。
逆らえない。逆らう理由がない。
安らかに眠ることを選んだ先生に
やせ細ったグレイヘンを見て
瞳を閉じて黙祷をささげた*]
[不意に身体が浮いたように錯覚する。
……いや、錯覚ではない。身体に伝わる微かな体温が、今誰かが私を持ち上げて、そしてさっきまでいたベッドに戻そうとしているのだ。]
ぃや……
[抱え上げる手から逃れようと手足を動かす。
……ばたばたと。
私にとっても多大な苦労だったものが泡沫に帰す。
元より那由他が如き離れていようと行こうとした場所。
それだけ強固に渇望した想いだった。
夢のセカイの私ならば、その飛び逝く翼めがけて一億の夜をも越えていこうと。
それほどに焦がれた想いであった]
[だが……これは夢のの話ではない。
あくまで現実
幻想世界で己が欲望に浸り溺れていた代償は
現実で重く重くのしかかる。
……抗い逃れようと振り絞った力は、いとも容易く防がれる]
やらぁ…!
……ぁましないれぇ!
[抱え上げる腕をふりほどこうと、まとわりつく腕に爪を立てる。
食いちぎろうと歯を立てる。
その者は当然自身の身を案じて籠の中へ戻そうとしていたのだろう。
取り乱しさえしていなければ、きっとわかったことだ。
その者は現実を知る者なのだから。
けれど、その時の私は現実をまだ理解してはいなかった。
だから暴れた。渾身の力を振り絞って逃れようと殴りつけようとした。
自らの行動を阻害しようとする名も顔も知らぬ邪魔者へ──]
ぁして! ぇいへんのぉこいぐのぉ!
[──現実は現実だ。
息の根すら止めてやるつもりで殴った拳は、ただ弱々しく彼女の胸をぽすぽすと叩いただけ。
骨まで砕くつもりで噛みついた歯は、ただあむあむと彼女の皮膚を甘噛みしただけ。
懸命に這った足跡も距離にすればたかが知れてるだろう。
健常者ならば一歩、二歩と闊歩とすら言えぬ距離でしかなかったはずだ。
この距離を進むのにいったいどれほどの時間を費やしたことだろう。
これが現実、これが身の程]
[その、常の者からすればささやかで、けれどうざったい抵抗は
そう、腕や足を縛り付けられるか、弱り切った身体が生命の危機を察知し脳との伝達を遮断して強制的に眠りにつかせるまで続いた。
だから、目の包帯を外され>>20語りかけてくる彼女の声>>21を感知したのはあれからしばらく経った後のこと。
落ちたときの衝撃で、腕の骨と…あとは肋骨もやられたか?
全身を強烈な痛みが駆けめぐる。
病み上がりどころか病んだままの身体が、その無理な行動によってオーバーヒートする。
そんな鬱屈とした熱……熱と痛みを歯を食いしばって耐えながら……
私は“身の程”を知ったのだった。]
……あなたは だれ?
[解かれようとする包帯。その箇所は私の責であり恥部でもあった。
解かれていく感触に、羞恥と恐怖で身を強ばれば、そんなことなどお構いなしに包帯の感触は消えていった。
触れてくる外気がやけに冷たい。
解いたということは目をあけろということだろうか?
私はおそるおそる瞼をあけようとする。
──霞む白、ただ白い霧が眼前に広がっていた。
いや、右目は漆黒の中だ。そこには元からもうないものしかないのだから。
では左目は? 思い起こすのは閃光……翻る光と染め上げられる赤の世界。
けれど、今は…ただ白の世界が横たわるだけだ。
嗚呼……見えない。何も見えない。
見て良いと言ってくれたのに、皆を見てと言ってくれたのに。
その術を私は持てず……おめおめと現実に横たわる]
ぅう……
[悔しさでこみ上げてくる涙を必死に堪えながら、それでも私は声の方へ顔を向け、そんも声に向かってひとつを尋ねる]
『ぐれいへんはどこか』……と*
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